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シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その35前編

2021年12月 2日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。


今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。


前編とのなるこの記事は、あらすじのまとめが中心です。後編ではその内容をもとに注目すべきポイントを述べますので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。


取り上げる映画は次のタイトルです。


『用心棒(1961)』


<監督>

黒澤明


<脚本>


菊島隆三

黒澤明


<あらすじ>


桑畑に囲まれ風吹きすさぶ宿場町に、放り投げた枝で行き先を決めてやって来た侍がいた。その名をきかれて「桑畑三十郎」と答えた彼の名が本名か偽名かはわからないが、とても腕の立つ侍なのは間違いなかった。


三十郎が訪れたその時、宿場町では2つの勢力が縄張り争いを繰り広げている真っ最中だった。かたや博打場を仕切る清兵衛一味、かたや清兵衛に反目して独立した丑寅の一味。血で血を洗う争いによって街は荒れ果て、景気が良いのは犠牲者のための棺桶を作る桶屋だけだった。


この状況を知った三十郎は自身を用心棒として売り込むべく、まずは清兵衛の元へ向かうと、丑寅の子分3人を切り捨てて見せて50両で契約を結んだ。しかし、この報酬が高すぎると渋った清兵衛の女房おりんが、支払い直前に切り捨てるつもりだと知った三十郎は、清兵衛一味と共に大通りでの丑寅一味に対したところで前金を清兵衛に突き返して戦線を離脱。


引き返せなくなった両陣営は小競り合いをするも、役人が視察に来るとの報が知らされて停戦となった。これにより、清兵衛と丑寅はなんとか優位に立とうと、三十郎を自分の用心棒に引き込もうと動き始めた。都合よくまた契約しようとする清兵衛の女房おりんに対して、丑寅は清兵衛一味の報酬を上回る60両を提示し、すぐにでも自分のところに来てほしいと迫る。


丑寅は、視察に来ていた役人を追い払うため、隣街で部下に騒ぎを起こす殺人を命じていた。そして役人が居なくなり次第、清兵衛一味に攻撃を仕掛けるつもりだったのだ。三十郎はすぐには返事をせず、ようやく思惑通りになってきたかと思いきや、丑寅一味に有力者の卯之助が戻ってきたことで風向きが変わる。卯之助は自分が戻った丑寅一味であれば清兵衛一味に勝てるとの算段から、両陣営の和睦を画策したのである。


三十郎の目論見は外れてしまった。しかし、和睦にむけて一方的に解雇された丑寅一味の子分の中に、隣街で騒ぎを起こした子分二人がいたことに気づいた三十郎はこの二人を捕らえ、清兵衛一味に引き渡した。この二人を役人に引き渡せば、丑寅の失脚を狙えるとふんだ清兵衛は和睦の取りやめを決めた。


三十郎はその情報を手土産に丑寅一味のもとに向かい、再び自身を売り込んだ。するとこれを知った卯之助は直ちに清兵衛のもとにいる子分二人を殺して口封じした上に、清兵衛の息子・与一郎まで捕らえて帰ったが、これに屈するわけにはいかない清兵衛一味は、丑寅一味の後ろ盾である徳右衛門の愛妾おぬいを人質にし、両陣営は人質交換をすることになった。


人質交換は何とか成立したが、徳右衛門の愛妾おぬいは、丑寅の企みによる賭場の借金の肩代わりで夫と子供から引き離された女性だった。その事実に憤慨した三十郎は丑寅の用心棒としておぬいの監禁先を訪れ、監視役切り伏せると夫と子供に引き合わせて逃した上、それが清兵衛一味の仕業であると見せかけて両陣営の対立を煽った。これにより両勢力はいよいよ激しく争いあうようになる。


三十郎の真の目的は、清兵衛一味と丑寅一味が互いに潰し合うことにあり、ようやくその目的は達成されつつあった。しかし、おぬいの夫が良かれと思ってよこした三十郎へのお礼の手紙が、卯之助に露見したことで三十郎は捕らえられ厳しい拷問を受ける。徳右衛門はおぬいに執着しており、三十郎だけがその行方を知っていると思っていたからだった。


三十郎は立つこともできないほど痛めつけられたが、見張りの隙をついて監禁蔵から脱出。清兵衛の陣営に匿われたふりをして、人の寄り付かない墓場近くの小屋に身を隠して回復を待った。


もはやなりふりをかまっていられなくなった丑寅と卯之助によって、とうとう清兵衛の一味は惨殺され、大勢は決したかに見えたが、依然として三十郎の行方は知れず落ち着かない丑寅と卯之助の前に、三十郎はついに姿を現した。あれほど大勢いた丑寅の一味は、もはや丑寅と卯之助を含めても10人に満たなかった。


三十郎はピストルをもって立ちはだかった卯之助を、隠し持った包丁の投擲で封じて切り捨てると、またたく間に丑寅と子分たちを斬り伏せた。これで宿場町に平穏をもたらした三十郎は、住人たちに感謝されることもなく「あばよ」とだけ告げて去っていくのだった。


・・・次回は、この作品でシナリオライターとしてどこに注目すべきか、について述べていきます。どうぞお楽しみに。

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