RGB範囲外の色を人工的に再現することは可能でしょうか?
2021年12月27日 (月) 投稿者: メディア技術コース
RGBの三つの数値(光の三原色の強さ)は、コンピュータのディスプレイで表示する画像の各画素の色を指定するのに使います。数値の範囲は[0,255]の整数ですが、計算時には[0,1]の範囲の実数と想定する場合もあります。
標題の質問は、メディア学部2年生向け講義「CG数理の基礎」での「色の表現」の授業回で履修生から出されたものです。結論から言うとその答えはYesです。
RGBの値は特定のディスプレイが再現できる色です。ということは、ディスプレイ以外の光源であればその範囲外の色が出せる場合があります。もっとも典型的な例はレーザー光です。ほぼ単波長の光と言ってよい、純度の高い特定の1色が出せます。
レーザー光と違い、液晶ディスプレイの光源である蛍光灯やLEDは多くの波長が含まれた光です。そのような光源からRGBを取り出すカラーフィルタは、絞り込んではいるもののやはり多くの波長を通す特性があります。結果的に、ディスプレイが再現できるRGBの範囲はレーザー光を含むことができません。
図に示すxy色度図は、RGB範囲外の色も含め物理的に存在する可視光のすべての色の種類を含む模式図です。もちろん、ディスプレイに描いたxy色度図が本当にすべての色を表示しているわけではないです。だから模式図と呼びました。
RGBが再現できる色の種類は色度図の中の三角形で示される範囲(sRGBという標準)に限られます。レーザー光のような純粋な単波長の色は色度図の曲線輪郭部分(逆v字型)のスペクトル軌跡と呼ばれる線上に対応する色となります(波長の数値が小さく付してあります。単位nm)。各色がもっとも鮮やかになる部分です。内部に入るほど多くの波長が混じり合い、中央部は多くの色が混じった白となっています。
ということはレーザー光をディスプレイのRGB光源として使えばかなり広い範囲の色を再現できそうですね。検索してみると確かに研究開発事例がありました。
[新倉栄二, 2016, RGBレーザーバックライト液晶ディスプレイ, ITUジャーナル, 46(2), 32-35.]
タイトルで検索すればPDFが入手できます。この論文では色度図としてxy色度図ではなく、CIE1976 UCS色度図というのを使って説明しています(下図)。色度図上のどの場所でも距離の違いが人間の感じる色の違いに近い色度図です。
上記文献[新倉2016]より引用
BT.709で示した三角形が前のxy色度図のsRGBの範囲に相当します。この研究で実現したレーザー光を使ったRGB(RGB LD Backlit)がより豊かな色を再現できていることがわかります。BT.2020というのがこのような高色域のRGBの世界標準として定められていて、これに準拠したディスプレイはこの研究以外でも開発されています。
とはいえ、RGBの3原色でディスプレイの色を表現する限りは色度図の全部をカバーすることはできません。純粋なレーザー光(スペクトル軌跡)はほぼすべてRGBの範囲外にあるということになります。
メディア学部 柿本正憲
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