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第11回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)

2022年1月31日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点」として、定期的に私が何度も遭遇してきた「シナリオの欠点(あな)」について書いていこうと思います。今回取り上げるトピックは・・・

「起承転結に囚われすぎたシナリオの欠点(あな)」です。

「起承転結」は、漢詩をもとにした文章構成のことで、「起部」「承部」「転部」「結部」の4部から成り、小学校から中学校の頃に習う代表的な物語構成のひとつです。4コマ漫画はこれを利用したものだ、と教わった人も多いことでしょう。

実際、シナリオの教則本や、ライタースクールの講義などでも、この「起承転結」は取り上げられることが多いです。ゆえにシナリオ本編執筆の前段階である、プロット作成において「起部」「承部」「転部」「結部」の4部にわけたパラグラフ(文節)で記述、提出する人もよくみかけます。

「起承転結」にあわせてストーリーを記述しなければならない、という決まりがあるわけではありませんが、定番や定石として幅広く知られた文章構成であり、実際、テンポよく4部で展開されるストーリーが書かれたプロットはとても読みやすいです。

そんな「起承転結」ですが、先日、本学東京工科大メディア学部で映画用シナリオを書いていた学生から、こんな質問がありました。

「起承転結にあわせてストーリーを書いているのですが、起部から書き始めて、なんとか承部までは書けても、転部で行き詰まってしまいます。文字通り、そこまでのストーリーをうまく『転』させたいのですが、なにかいい方法やコツはないでしょうか」

シナリオを「起承転結」の構成で書いたことがある人なら、これはよくある悩みだと思います。渾身のアイディアを元にした登場人物、世界観を「起部」で述べて、それらに基づいた「承部」で諸々の出来事が展開させたのは良いものの、その後が続かない思いつかない状態となり「転部」で筆が止まってしまう・・・。

一度そうなってしまうと、なかなかその状態から抜け出すことができないもので、それでも締切に差し迫られ強引に書き切ると、後半の内容が残念な展開になり、シナリオの欠点(あな)となってしまいがちです。「前半は見ていて面白かったのに後半が尻すぼみでがっかりした」などと言われる映画のシナリオがそれです。

では、この問題にはどう対処すればいいのでしょうか。

私は、この質問をしてきた学生にこう解答しました。

『そもそも、最初に起部を書いて、次に承部を書いているのが間違いです。最初に書くべきは結部で、その次に起部です。その2部が書けた後に、承部と転部は書きましょう。そして、承部と転部に必要なのは起部と結部を繋ぐことであって、奇をてらったことをしなければならないというわけではありません。強いて言うなら前半の承部より、後半の転部にインパクトのある出来事を記述するよう心がけることぐらいです。観客は前半より後半に期待するからです』

質問の内容は「転部をどう書くか」というものだったので「転部の上手い書き方」を教えて欲しかったのだと思いますが、ストーリーというものは因果関係の連続であり、一部だけの問題はその場だけの問題のように見えて、全体を見直さなければ解決しません。

さらに付け加えるならシナリオ執筆未習熟者は、自分の考えた登場人物や世界観の設定が思いついただけで書き始めてしまい、そもそも結末を考えていない傾向にあり、不思議なことに「起承転結」の前から順番に書いていけば「そのうち思いつくだろう」と思い込んでいる人がとても多いです。

思いついたアイディアをすぐにでも形にしたくて書き出したくなる気持ちは大変よくわかるのですが、せっかくのアイディアなのですから、それが最も活きる瞬間がどこなのかを見定めるべきで「起承転結」はそのために用いるべき文章構成と言えます。シナリオを書くときには特にうまく用いたいですね。

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