第12回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)
2022年2月26日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
今回も「シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点」として、定期的に私が何度も遭遇してきた「シナリオの欠点(あな)」について書いていこうと思います。今回取り上げるトピックは・・・
「文字数の時間換算が完璧なシナリオの欠点(あな)」です。
シナリオライターの納品要件として、文字数やペラ(200字詰原稿用紙)枚数、ゲームだとKB(キロバイト)換算が
適用されることはよくあり、例えば「ペラ60枚程度でお願いします」といった発注がなされたりします。
契約上、おおまかなボリュームの目安としてこういった換算がなされるわけですが、必ずしもこの要件を満たしていればシナリオとして十分な機能を満たすわけではありません。
なぜなら、シナリオは基本的に「柱」「セリフ」「ト書き」の3つで構成される文章ですが、それぞれに費やされた文字数が、実際に制作されるコンテンツにおいて、同じ時間を費やす内容になるとは限らないためです。
例えば、登場人物の発言を記述した「セリフ」については、比較的文字数と費やされる時間が比例関係になるため、予測が立てやすいです。まれに意図的に早口で話させるような演出がなされることもありますが、基本的にはセリフが多くなれば費やされる時間も多くなります。
それに対して「ト書き」は、各シーンにおける登場人物の行動や、出来事の動き、シーン環境の変化を記述するため、一概に文字数が時間と一致しません。
あまり良い例ではありませんが「激しい戦いが繰り広げられる」などとシナリオ書いた場合、文字数だけなら1行以内に過ぎませんが、実際に映像として表現しようとしたら数分を費やすことになります。
かといって、詳細な動きを事細かに書きすぎて文字数をいたずらに増やしてしまうのも問題で、余計に時間がかかることになって、後々の工程で演出や撮影が窮屈になってしまう、なんてことになったりもします。
ゆえに実際のシナリオライターは、そのへんのバランスを考えてセリフとト書きを記述することが求められるのですが、仮にそういった時間計算ができていたとしても、油断はできません。
文字数に見合った時間のシーンで構成されるシナリオが出来ていても、そのシーンの一つ一つの必然性が弱いシナリオは、そこが欠点(あな)になりやすいのです。
3分想定のシーンがあったとして、セリフの長さやアクションの数、状況の変化を、3分で適切に表現できるようシナリオに記述できるようになるだけなら、実はそんなに難しいことではありません。
むしろ重要なのは、そういったシーンが「作品上で欠かせないシーンになっているか」を視聴者の納得できるものになっているか、ということだったりします。
どれだけ単独で目を引くようなシーンが記述できたとしても、それがなんの必然性も脈絡もなく作中に差し込まれては、作品の価値をあげることに繋がりません。むしろ異質なポイントとなって総合的な評価を下げることにすらなってしまうのです。
こだわりのセリフ、こだわりのアクション、こだわりのシーンをシナリオに記述するときは気をつけたいですね。
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