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シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その37後編

2022年2月 6日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品の37本目「梟の城」について、どこに注目すべきか述べていきます。

今回取り上げる「梟の城」は1999年に公開された日本の映画です。1960年の第42回直木賞を受賞した、司馬遼太郎の長編小説が原作の作品です。今となっては珍しくありませんが、当時としてはまだ珍しかったCGを用いつつ、SFXのミニチュアと合成することで、安土桃山時代の町並みや城の風景を再現しています。

この作品でシナリオライターとして注目すべきは「歴史小説原作シナリオの難しさ」です。

作品概要としてふれましたが、この映画は原作小説が刊行されてから40年後当時に映像化された作品ということになります。当たり前ですが、映画化されることを想定して書かれた作品ではありませんし、CGなどという技術が生み出されるよりもはるか昔のことなので、当時この小説を読んでいた人たちがイメージしていた映像ではないはずです。

もっと言うと、この原作小説は「歴史小説」なので、元になった史実があるため、CGを含めて、どれだけ優れた映像表現技術が開発されていたとしても、全部使えばいいというわけでもないわけですし、それ以前に舞台となっている時代背景を踏まえて、登場人物たちの言動を記述する必要があります。

その点において、この作品は主人公の葛籠重蔵(つづらじゅうぞう) という忍者が、信長・秀吉・家康という天下人たちが移り変わっていく激動の時代に、翻弄されつつも自分の矜持を曲げず、何とか生き残っていこうとする様を描くシナリオになっていると思います。

・・・しかしながら、原作となる小説という媒体と比べてしまうと説明不足感は否めません。

このブログでも何度か書いたことがありますが、シナリオは小説と違って「地の文」が無く、映像にできることしか記述できません。原作の小説であるような小話、解説、注釈、さらには心理描写や文学的表現は、ほぼカットされてしまいます。

どうしても表現したければセリフやナレーションにするしかないのですが、それも多用しすぎると説明くさくなってしまうので多用できません。実際、この作品では歴史的背景をナレーションしていたりするので、それ以外の箇所でその手段(セリフやナレーションでの説明)を用いることが難しかったりします。

『事実は小説よりも奇なり』という言葉が知られているように、人間の歴史における出来事の数々は、シナリオを書く上で、とても魅力的な題材やテーマではあるのですが、それらの題材やテーマを安易にそのまま記述できるわけではありません。

「梟の城」はそういった課題を、うまく表現できている箇所もあれば、そうでない箇所もあって、たいへん興味深い作品になっています。ぜひ一度みていただきたいと思います。

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