« 2022年2月 | トップページ | 2022年4月 »

2022年3月

情報文化学会九州支部会(鹿児島高専)

2022年3月31日 (木) 投稿者: メディア社会コース

同支部会は、毎年2月11日に、九州地区の各高等工業専門学校で開催されてきました。そして筆者が知る限り、毎年、鹿児島大学名誉教授の中山茂先生による量子コンピューターに関する基調講演が行われています。2018年に現地(鹿児島高専)参加した折、難解な原理を素人にもわかるように工夫された、ブルーバックスを読むような報告が今でも目に浮かびます。ちなみに当日の朝、JR鹿児島駅(鹿児島中央駅ではない)で列車や桜島を(カメラを忘れたので)PCを広げて写真に撮っていた姿を目撃されており、非常に恐縮した記憶もあります。

本年は、鹿児島県霧島市隼人町にある鹿児島高専が開催校ですが、遠隔開催になりました。例年、開催校の学生が報告する多様なアプリの紹介からは、実用的な工業技術とはかくあるべし、という発想が伺われ、大変感心します。当ゼミからは、E君が情報文化学会全国大会に引き続き、2回目の報告です。

E君「日本国内における煙草業界の現状と今後について」

http://jouhou-bunka.jp/920

さて、今年も成功裡に終了し、開催校の武田先生から、次回2023年2月11日も遠隔で実施するとの閉会挨拶がありました。しばらくして戦慄を覚えました。われわれの社会生活は、大学教育を含むすべての活動領域で、新しい制度設計を余儀なくされていると感じたからです。一昨年以来、われわれは少なからず数年のうちには元の生活に戻れると期待しながら生活してきたと思います。しかし、新型ウィルスの変異が治まり、病原性が低下するという科学的事実は未だ見出されていません。根拠のない期待に理性を見失う、あるいは都合の悪い実態を無かったことにする愚を冒してはなりません。社会生活の中ですでにその地位を占めるようになってきた遠隔活動を中核として、あるいは、現実の交流を前提とした既存の社会活動の大半を代替した、社会制度をあるいは再構築しなければならないということです。われわれの意識は、現実の諸制度は、この再構築に耐えていけるでしょうか。

(メディア学部 榊俊吾)

社会情報学会中国四国支部会2021年度第1回研究発表会(島根大学法文学部)

2022年3月30日 (水) 投稿者: メディア社会コース

昨日ご紹介したビジネス科学学会の2週間後、2021年 12 月 18 日(土) 13:00~18:00に、島根大学松江キャンパスに現地参加しました。当ゼミからも、K君、Hさん、S君の3名が報告しました。もちろん、筆者と本田先生も現地参加しました。報告テーマは以下の通りです。

K君「女性アイドルグループ音楽作品のビジネスモデル研究」

Hさん「和菓子の消費・業界動向と今後の展望について」

S君「日本の地方の現状と地方活性化成功例の分析」

http://www.ssi.or.jp/committee/2020pdf/commit14_20201130.pdf

3名とも、夏学期中に開催された他学会に引き続き、2回目の学会報告でした。前回は遠隔参加でしたので、緊張感を漂わせながらも、他の8人の報告者と同じ土俵で、報告、質疑共に十分な出来で、非常に良い経験を積むことができたと思います。また、当日は、現地参加のほか、北海道天塩町、東京からの遠隔参加も交えたハイブリッド開催になりました。機材の操作や突発的な不具合に臨機応変に対応しながら、他大学における対応ぶりを垣間見ることのできた研究会でした。

さて、松江入りにはいくつかのルートがあります。まず航空便では、日本航空の出雲空港経由、全日空の米子空港経由の二つがあります。いずれの空港からも松江までは、空港バスで30~40分ほどです。そして陸路では、岡山経由の伯備線/山陰本線ルートがあります。小生とHさん、S君は出雲経由の日航ルート、K君は伯備線ルート、本田先生は米子経由の全日空ルートでした。本田先生は例によって日帰りの強行旅程でしたが、筆者と学生3名は大事を取って前日入りしました。

しかし、数日前より日本海側は低気圧通過の影響で、荒天が予想されていました。当日は10メートルを超える強風で、空路は欠航、陸路も中国山地を越えて行くため降雪が心配されました。わが国では、冬は北西、夏は南東の季節風が強いため、出雲も米子も一本しかない滑走路はこの方向に造られています。飛行機は向かい風でなければ離着陸できないからです。したがって、冬の低気圧通過ですから強い北西の風だけなら、大丈夫かなとは思っていました。

まず、始発便に搭乗したS君の無事到着を羽田で確認し、筆者も次の便で、天候によっては羽田に引き返すという条件付き出発ながら、特段の揺れもなく出雲空港に到着しました。松江市内に入り、松江の冬の天気を思い出しました。1時間ごとに雪と晴れが交互に目まぐるしく変わるのです。午後便のHさんも、ほぼ定刻に到着し、今年の初雪を松江で見たそうです(筆者もそうでした)。伯備線ルートのK君は早朝に出発し、筆者が出雲空港に着陸する頃、まもなく岡山到着との連絡が入り、17時少し前に無事松江入りしました。全員無事に松江入りし、ようやく安堵しました。もっとも松江在住の島根大学の先生方からは、今回の荒天ぐらいはいつものことで、欠航など経験したことないと笑われてしまいました。

(メディア学部 榊俊吾)

ビジネス科学学会九州部会(中村学園大学流通科学部)

2022年3月29日 (火) 投稿者: メディア社会コース

感染状況が全国的に小康状態になっていた12月5日(日)、同学会は、2年ぶりに福岡中村学園大学で現地開催されました。当ゼミからは、M君、当ゼミ演習講師の本田先生、筆者の3名が現地で参加しました。報告テーマは以下の通りです。

M君「地下アイドルのビジネスモデル調査」

H先生「事業継続マネジメントの手法としてのChaos Engineering」

筆者「社会シミュレーション技術の基礎:社会実態への接近とシミュレーション結果の解釈」

https://businesskagaku-gakkai.org/tournament-information/

当日の報告件数は少なめでしたが、その分十分な時間をかけて立ち入った議論ができ、充実した研究会になりました。特にM君の研究発表は、自ら手がけているマネジメントを事例として紹介したもので、中村学園大の片山先生をはじめ、経営学者揃いの参加者から次々と質問、コメントが寄せられました。

ここで現地の地理について若干紹介しておきましょう。JR博多駅から城南区にある会場へは、福岡市営地下鉄七隈線と、路線バスが利用できます。地下鉄は、便数も多く渋滞もないので時間が計算できます。しかし、福岡の中心地天神で博多駅乗車の空港線から乗り換える際、七隈線の天神南駅までの移動がやや厄介です。地下街を見て歩くのも楽しいのですが、急いでいる時には結構遠く感じます。最寄駅の別府(ベふ、と読みます。)も正門前というほど近くなく、交差点を一つ通過します。

一方バスは、博多駅前、博多バスターミナルの二カ所から、複数ルートを経由する便が比較的頻繁に出ています。しかも正門前に停留所があります。しかし、中洲、天神、六本松という福岡切っての繁華街を経由するので、時間に余裕があれば観光気分に浸れるのですが、常に渋滞を覚悟しなければなりません。

さて、当日は福岡国際マラソンの歴史に幕が閉じられた日でもありました。筆者はいつもほぼバスを利用します。始発停留所の博多バスターミナルで、初めて開催を知りました。開催時間帯は多くの幹線道路が通行止めになるので、路線バスも大幅に減便するというのです。幸い、この日は午前中に会場入りを予定していたので、無事バスに乗車し、懸念していた渋滞もほぼなく、順調に到着しました。本田先生とM君にもこの情報をメールで伝えましたが、二人とも福岡空港から地下鉄で直行したので、大きな混乱はなく、無事会場入りしました。本田先生は、別府駅前の交差点で、ちょうど選手団の通過待ち規制の最中でしたが、あっという間に全員通過、解除されたそうです。

来年度は、6月に鹿児島で開催を予定しています。是非とも、山形屋で、これまで躊躇してきた薩摩切子を購入しようと考えています。

(メディア学部 榊俊吾)

情報文化学会第29回全国大会

2022年3月28日 (月) 投稿者: メディア社会コース

本日より連投で、2021年度秋冬学期の学会参加について報告しましょう。

今年度も、新型感染症の世界的な流行の煽りを受け、授業ばかりでなく、ほとんどの学会で遠隔実施を余儀なくされました。しかし、当ゼミでは12名のうち9人が学会報告を行いました。加えて、内5名の学生諸君が2~5件にわたる複数の学会に参加しました。学部学生が人文社会科学系の学会で複数回報告するのは全国的にも珍しいのではないかと自負しています。

本日は第一弾として、例年東大/本郷で実施されている情報文化学会全国大会における活動実績を紹介しましょう。同大会は10月30日(土)9:30~16:00に遠隔で実施されました。昨年に引き続き小規模の大会になりましたが、今年は並行セッションを組めるだけの報告がありました。そして、当ゼミの非常勤講師も務めてくれている本田先生が実行副委員長として、遠隔開催を成功裏に運営してくれました。当ゼミからもO君、E君、Y君の3名が報告を行いました。

http://jouhou-bunka.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/09/ver.2final_newsletter_No.69_2021_program.pdf

3人の研究発表は以下のとおりです。

O君「薄顔男性の流行要因とその顔印象から未婚化改善への検討」

E君「日本国内における煙草業界の現状と今後について」

Y君「東京ディズニーリゾートの創造性と人気の関連性」

遠隔ではありながら、座長の明治大学の後藤先生をはじめ参加者から大変貴重な指導を受けることができました。こじんまりとしたセッションでしたが、質疑は大変活発に行われ、盛り上がっていました。

(メディア学部 榊俊吾)

卒研生の学会発表(2)

2022年3月27日 (日) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。寺澤です。

学会発表の2件目は伴 明吾さんによる「オンラインゲームの大会運営におけるトラブル対応のためのチャットボットの提案」という研究です。Webで展開されているサービスの中には、担当者への問い合わせなどにチャットボットが用意されていることがあります。オンラインゲームの大会運営は少人数でリアルタイムに行われているのでゲーム参加者からの問い合わせに対応するのが大変であるというのが伴さんの問題意識であり、ならば、チャットボットを用いてそれを軽減しようという解決法を提案しました。

このチャットボットは、ボタンを順に選択するなど一定のパターンで処理できる「シナリオ型」と、勝敗判定を行うため画像の中から物体検出を行う「人工知能型」のハイブリッド構成として実装されました。デジタルカードゲームのHeathStoneを対象とし、全体的にはコミュニケーションツールDiscordのチャットボット開発用のライブラリを使いPythonでプログラムを作成しました。勝敗判定はクラウドサービスによる物体検出(機械学習型)を利用しています。対戦している2人が使用しているキャラクタを画像中から検出し、また、負けた時のキャラクタの変形アニメーションを学習してどちらが勝ったのかを判定できるようにしました。その精度は93%くらいまで高めることができました。付加機能としてオンラインサービスを利用したスコア登録・トーナメント表にも対応しています。

実際にオンラインゲーム大会を開き、このシステムをゲーム参加者、大会運営者に使ってもらう評価実験を行って有効性を確認しました。まだまだ改善点はあるものの、多くのオンラインゲームに対応できそうな手法のめどをつけることができました。

(メディア学部 寺澤卓也)

Anime Japan 2022 出展中!

2022年3月26日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部助教の兼松です。

本日から東京ビッグサイトでAnimeJapan2022が始まりました!

先日の記事でもお伝えした通り、メディア学部も出展しています。

主に川島先生、早川先生がご担当のアニメ制作に関する専門演習、プロジェクト演習で学生が制作した作品を展示しています。

特にプロジェクト演習は様々な学年の学生が協力してアニメの制作を行っています。今回展示している作品も、上級生ばかりではなく、1年生も制作に大いに携わっています。

アニメ制作の道に興味がある高校生のみなさん。ぜひメディア学部のプロジェクト演習を調べてみてください。

メディア学部のブースは東7ホールです。今日、明日共に出展していますので、会場へお越しの際は是非お立ち寄りください!

(文責:兼松祥央)

B3840e39d4aa47328d2a742c3f2c838e

38246c4f58c649808658e75f48deb68e

卒研生の学会発表(1)

2022年3月25日 (金) 投稿者: メディア技術コース

皆さんこんにちは。

3月は学会シーズンです。私の研究室からも先日卒業した卒研生2名が情報処理学会全国大会で発表しましたので2回の記事に分けて紹介したいと思います。ハイブリッド開催でしたが、残念ながら現地(愛媛大学)に行くことはできずオンライン参加での発表となりました。

1つ目は田中駿哉さんの「ECサイトにおける視覚障がい者向け商品説明のための画像認識に基づく説明文自動生成」という研究です。視覚に障がいのある方はインターネットを利用する際、画面読み上げソフトを使っている方が多いです。Webページなどの画像の場合、その画像に対する適切なキャプション(説明文)が設定されていれば、それを読み上げてくれます。このキャプションはWebページを用意する人が設定するのですが、簡単な単語のみだったり設定されていないこともあります。ECサイト(オンラインショッピングのサイト)では商品画像があるのが普通ですが、もしその画像に適切なキャプションがなければ、どのような商品なのか判断することができません。

そこで田中さんはファッションを対象に商品画像に自動的に適切なキャプションを付けることを考え、画像の中の商品を種類、色彩、性別、デザインの4つの観点で判別し、結果をテンプレート文の穴埋めに利用する形でキャプション生成することに挑戦しました。色とモデルの性別の判別についてはクラウドサービスを利用し、商品の種類とデザインに関しては、ResNet110という畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて分類を行うプログラムを作成しました。

ファッション画像のオープンデータを用いて学習を行い識別を試みましたが、商品のみが写っている画像にはかなり対応できるものの、モデルが着ている画像ではかなり精度が落ちてしまいました。対象商品がジャケットなど着ているものの一部のみの場合に、モデルがコーディネートされた服装をしているとボトムスの方を判別しようとしてしまうなど、判別に失敗する原因はいくつかありました。改善策を立て、再評価、再々評価まで行いましたが、大きく改善することは今回はできませんでした。学習に用いた画像の中に、あまり適切ではなかったものが含まれていたことが後からわかり、それを除外して学習をやり直したうえで評価実験をする必要がありそうです。時間切れになってしまったので、これを引き継いで再度実験を行うのを新4年生のメンバーの練習課題にしようかと考えています。

(メディア学部 寺澤卓也)

遠隔会議でカメラ目線にする装置の研究

2022年3月24日 (木) 投稿者: メディア技術コース

 今月開催された情報処理学会第84回全国大会で卒研生の原田風磨くんが発表した「遠隔会議における視線一致手法」の研究を紹介します。
 
 遠隔会議で話す場合、相手の画面にちゃんと相手を見て話しているように映ること(視線一致)はよい印象を与えます。ただ、カメラを見ながら話すのはなかなか難しいです。ついPC画面を見がちになり、相手の画面にはうつむき加減の自分の顔が映ってしまいます。視線一致はできていません。今回の研究は、ノートPC内臓カメラをそのまま利用しながらなるべく簡単に視線一致を実現しようという研究です。
 
 すでに世の中では画像処理で撮影画像の両目の部分だけを合成する方法が使われています。ソフトウェアだけで処理するきわめて手軽な方法で、Apple, Microsoftなどの錚々たる企業がこの技術を提供しています。しかし、常に自然な処理ができるとは限りません。ときどきは不自然な目が合成されてしまいます。
 
 遠隔会議をそれなりの時間続ければ目だけ合成していることが露呈します。見苦しいだけでなく、相手によってはとても悪い印象を与える危険性があります。つまり、対話の際にもっとも重要な目の画像をいつもフェイクにするなんてとんでもない、と思ってしまう危険性です。
 
 そこで今回の卒業研究では、画像処理は使わずに光学的な方法つまり鏡を使った方法を考案しました。記者会見などで使われるいわゆるテレプロンプターと同じ原理ですが、ノートPCに取り付けて内臓カメラをそのまま利用する装置です。
 
 二枚の鏡を使います。ノートPCの画面の前に置く「対人鏡」はハーフミラーになっていて使用者が画面を見ることができます。対人鏡に反射された使用者の顔はカメラレンズの前に置いた小さな「集約鏡」でさらに反射されカメラに映るという仕組みです。使用者が画面を見ると光学的にはカメラレンズを見ているのと同じになるはずです。
 
 今回の研究ではシミュレーションでそのような二枚の鏡で視線一致ができるかの検証に留まり、実際の装置製作は継続研究課題となります。シミュレーションによる検証結果は、確かに使用者の視線がカメラレンズに向かい視線一致が実現できることがわかりました。
 
 今後の課題はいろいろありますが、何とか実物を完成させたいです。ノートPCに簡単に取り付けられる製品として量産できれば面白いと思います。
 
参考文献:原田, 柿本, 戀津, 「遠隔会議における光学的視線一致手法」, 情報処理学会第84回全国大会, 学生セッション1ZG-02, 2022年3月.
 
メディア学部 柿本正憲

映像表現・芸術科学フォーラムでの発表~曲に合わせて映像を自動生成

2022年3月23日 (水) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

映像表現・芸術科学フォーラム2022での発表を紹介する記事の3件目は、小堀隆昌さんの「音楽からの高次特徴抽出に基づく映像生成」です。

この研究は、以前のブログ記事でも紹介した、ライブコーディングについての研究が元になっています。以前の研究では、即興で作った音楽を分析して、「明るさ」とか「リズムの秩序」といった抽象的な情報を取り出すこと、そしてそれをもとに映像を自動生成することを試みていました。今回は、この中でも映像の自動生成の部分に立ち戻り、取り出した情報に適した映像をどのように表現すれば良いかということを検討しました。

今回、卒業研究として進める中で、音響分析の部分を再現したり、映像生成の枠組みを作ったりする部分では、進捗が芳しくなくて苦労するところもあったのですが、秋になって具体的な映像化の実装が進んでからは、次から次へとアイディアが出て、みるみる研究が進んでいきました。毎週の定例ミーティングで、ある週に一つアイディアを思いつくと、次の週にはその実装を見てみることができるという感じで、とても楽しくなっていったのが印象に残っています。

研究室ではいろんなテーマの研究を行っていて、担当する学生さんの卒業で中断してしまうものも多いのですが、このように先輩から後輩に受け継がれていくテーマを、これからも大切にしたいと思っています。

映像表現・芸術科学フォーラムでの発表~声帯が振動していない音声

2022年3月22日 (火) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

映像表現・芸術科学フォーラム2022での発表を紹介する記事の2件目は、坂本涼介さんの「雑音駆動音声を用いた緊迫感の音響的分析」です。

人間の声は、声帯を振動させることで生じた音源が、のど・口・鼻など(まとめて声道といいます)で共振し、強まったり弱まったりしたものとして口から発せられます。のどに手をあてて「あー」と言うと、のどが振動しているのがわかると思います。一方、'k', 's', 'p'などの、いわゆる無声音と呼ばれる音では、声帯は振動していません。

声帯を振動させる音(有声音)は、基音と様々な倍音を含み、その間隔から「音の高さ」を定義することができます。一方、無声音に高さはありません。また、有声音は音の強弱を付けるのが簡単ですが、無声音では極端な強弱の表現は難しいです。そして音の高低や強弱があると、韻律情報(いわゆるイントネーション)が生成され、そこに感情を込めることができます。では、韻律情報以外の部分には、感情に類するものを伝える力は無いのでしょうか?

今回の研究では、音が伝える感情的な要素の中でも、特に「緊迫感」に着目し、韻律情報以外の要素がどのように緊迫感を伝えるかを調べました。韻律情報とそれ以外を同時に聴き分けることは難しいので、雑音駆動音声というテクニックを使っています。これは、普通に録音した音声をフーリエ変換し、わざと少し粗い分解能で周波数ごとの強度に変換した後、各周波数帯に対応する雑音に差し替えて再合成するという手法です。さまざまな音源とさまざまな雑音の組み合わせで声を作り、いろんな人に聴いてもらいました。その結果、元となる声の性質によって最適な雑音が変わることや、内容の伝わりやすさと緊迫感の強さは必ずしも一致しないことなど、いくつかの重要な知見を得ることができました。

災害時のアナウンスなど、声で緊迫感を伝えるというのはとても重要な研究テーマです。今回の成果を活かして、さらに研究を進めていきたいと思っています。

映像表現・芸術科学フォーラムでの発表~演奏を人間らしくする

2022年3月21日 (月) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

2021年度の卒業研究も無事に終わり、4年生がそれぞれの成果を卒業論文にまとめてくれました。私の研究室では、その中の3人の研究成果を、映像表現・芸術科学フォーラム2022という学会で発表することになりました。さっそくその内容を学部ブログでも紹介させていただこうと思います。1件目は、林隼也さんの「MIDI音源に人間らしさを付与するゆらぎの自動生成」という発表です。

MIDIというのは、コンピューターで音楽を表現するための楽譜のようなものです。原理的には、音を鳴らすタイミングをミリ秒単位で指定したり、音の強弱を細かく設定したりすることも可能ですが、一般的なDAWソフトなどを使ってとりあえず作曲した時点では、楽譜と同じように、タイミングや強弱がある程度固定的なものになることが多いです。楽譜の場合には、それを見た演奏者が、自分なりの解釈でタイミングや強弱を調整するのですが、MIDIファイルを演奏するコンピューターは、厳密に指示を守って演奏するのが基本です。それに対して、適切な「ゆらぎ」を加えることで、人間の演奏のような雰囲気を出そうというのが研究の目的です。

今回の研究では、いくつかの仮定に基づくゆらぎの付加を行い、それをいろんな人に聴いてもらって有効性を検討しました。楽譜通りの杓子定規な演奏から、少しでも人間らしさを加えようというところまでが目標だったのですが、発表を聞いてくれた方からは、「演奏家によってもゆらぎの加え方は違う。有名なピアニストなどの演奏を分析して、それぞれの個性を再現できるようにならないか」といったコメントもいただきました。まだまだこの先の発展の余地がある研究だと感じています。

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その38後編

2022年3月20日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品の38本目「フック」について、どこに注目すべきか述べていきます。

今回取り上げる「フック」は1991年に公開されたアメリカの映画です。イギリス・スコットランドの戯曲「ピーター・パン」が原作で、自由に空を飛びまわり、永遠に大人にならない少年、ピーター・パンが大人になったら?という想定で映画内の物語は進行します。作中のピーターの浮遊シーンで用いられたSFXなども当時話題でした。

この作品でシナリオライターとして注目すべきは「結末まで観客の関心を引き続ける点」です。

この作品は、前述した原作「ピーター・パン」を、監督のスティーブン・スピルバーグが大好きだったことから実現した、とされているのですが、親子愛をテーマにした映画には定評のあるスピルバーグ監督が手掛けていることもあって、原作そのままではなく、親子愛を強く押し出す形の作品になっています。

なにしろ「永遠に大人にならない少年」のはずが、いきなり40歳の中年男として登場してくるので、もはや別物というか、妖精ティンカーベルが出てくるまでは本当にピーター・パンが原作なのかと疑いたくなります。

その後、おなじみの舞台ネバーランドや、タイトルにもなっている宿敵フック船長が登場してくることで「これは間違いなく『ピーター・パン』が原作なのだな」と確信できるようにわけですが、シナリオ上、巧みなのはそこまで確信ができても、主人公ピーター・パンの代名詞とも言える「空を飛ぶ力」がなかなか取り戻せないことです。

「あきらかに作中の世界は『ピーター・パン』原作の舞台だとわかっているのだが、主人公の中年男が本当にピーター・パンなのか?」という疑問がつねに尽きず、実際、主人公をとりまく人間たちはおろか、本人すらピーター・パンだと思っていないため、「ピーター・パンではない誰かなのではないか?だとしたら何者なのか?」という興味をもたせる作りになっています。

実際は間違いなくピーター・パン本人であり、それがきちんと作中で明かされ、ピーター・パンとしての力も取り戻すので、最後まで視聴すれば疑問は解消されますし、見終わってみれば全て杞憂だった、ということになるのですが、シナリオライターには、結末に至るまで観客の関心を引っ張り続けることが何より求められる仕事のひとつなので、それが実現できている、ということは高い評価ポイントなのです。

「フック」はそういった工夫をシナリオにうまく組み込みつつ、いざ空を飛ぶ力を取り戻したときに、見事なSFXによってインパクトのある映像に仕上げている作品です。ぜひ一度見てみてほしいと思います。

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その38前編

2022年3月19日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。

前編となるこの記事は、あらすじのまとめが中心です。

後編ではその内容をもとに注目すべきポイントを述べますので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。

取り上げる映画は次のタイトルです。

『フック(1991)』

○監督
スティーブン・スピルバーグ

○脚本
ジム・V・ハート
マライア・スコッチ・マルモ

○あらすじ

ピーター・バニングは、妻モイラと二人の子供ジャックとマギーをもつ、敏腕の弁護士であるが、あまりに仕事熱心すぎて、家庭を顧みないところがあった。

モイラの母、ウエンディと10年ぶりに再会することになり、一家でロンドンへ向かったものの、片時も携帯電話を手放さず、仕事の連絡を取り続けるピーターの姿には、ウエンディも呆れるしかなかった。

そんな矢先、ウエンディを連れ立ってピーターはパーティへ参加。巧みにスピーチを終えて、ウエンディの家に戻ったが、留守番していたはずのジャックとマギーの姿が無い。残されていたのは「フック船長」を名乗る者が子供たちを連れ去ったメッセージだけだった。

この状況に対してウエンディは、ピーターが、かつて「ピーターパン」だったことを告げ、その因縁ゆえにフック船長から狙われたに違いない、と話すも、当のピーターにその記憶はまるでなく、困惑する。

しかし、その晩、ピーターのもとに妖精ティンカーベルが姿を現し、強引にピーターはネバーランドへ連れて行かれることになった。

ピーターは、ジャックとマギーを取り戻すべくフック船長のもとへ向かったが、空を飛ぶこともできない単なる中年男のピーターを見たフックは失望。子供たちもろとも殺してしまおうとする。

しかし、間一髪ティンカーベルの交渉により、子供たちを人質に、3日後にかつての力を取り戻したピーターパンとの決闘実現を約束して事なきを得た。

ピーターはティンカーベルによって、かつてピーターパンがリーダーだったロストボーイズたちのアジトへ連れて行かれ、特訓することになったが、やはり当時の姿は見る影もないピーターへの不信感は強く、当たりは厳しかった。

それでもピーターは次第に打ち解け、空は飛べないまでも、少しずつ身のこなしを取り戻し、決闘を有利に運ぶべくフックの鉤爪奪取作戦を決行。催しものに沸き立つフックから鉤爪を奪い取れそうだったものの、我が子ジャックが懐柔されフックを慕う姿にショックを受けて逃亡してしまう。

なんとかフックに打ち勝って子供たちを取り戻したいピーターは、空を飛ぶ力を取り戻すべく高所からの飛び降りに躍起になるも失敗。しかし、それがきっかけで、アジト内の隠し部屋を発見する。

そこには、ピーターが初めてネバーランドへ来たときの品々や、ウエンディたちと過ごした思い出の痕跡が多数残されており、それをきっかけにピーターは、ピーターパンだった頃の記憶と、ジャックたちが生まれて父親になった喜びを思い出すことになり、再びピーターは空を飛ぶことができるようになった。

約束の3日後。ピーターは再びリーダーとしてロストボーイズたちを率いてフックの海賊船へと攻め入った。空を飛ぶ力と、たくみな剣技を取り戻したピーターは、またたく間に海賊たちを打ち倒し、ジャックとマギーを取り返した。

子供たちを取り戻せば、退却するするつもりだったピーターだが、孫の代まで復讐を続ける、というフックを見過ごすことは出来ず、一対一での戦いに応じたピーターはこれに勝利しトドメをさした。

ロストボーイズたちに後のことを託し、子供たちとロンドンへと帰ったピーターは仕事の携帯電話を放り投げ、家族との再会を心から喜ぶのだった。


・・・次回は、この作品でシナリオライターとしてどこに注目すべきか、について述べていきます。どうぞお楽しみに。

卒業する皆さんへ

2022年3月18日 (金) 投稿者: メディア技術コース

ご卒業おめでとうございます。

卒業生の皆さんは、今どんな気持ちでしょうか。楽しかった学生生活を思い出してしみじみしている人、コロナ禍で十分にできなかったことに後ろ髪を引かれている人、4月からの新生活が楽しみな人と不安な人、それぞれだと思います。

そんな皆さんにどのようなはなむけの言葉を贈ろうかと考えて、古いブログ記事を読み返してみました。4年前の4月、入学直後の皆さんにあてて、柿本前学部長が書かれた記事です。そこには「自分の才能を見つけよう」ということが書かれていました。友達や家族との会話の中で、相手のちょっとした良いところを褒めあえるような関係を築き、そこから自分の得意なことを見つけていこうという内容です。さて、皆さんはこの4年間で、自分の得意なことが見つかったでしょうか。

皆さんはこれから社会に出て、これまでとは違ったコミュニティに属していくことになります。そこで私からのアドバイスは、得意なこと探しをあと数年続けてみてください、ということです。メディア学部にいると当たり前のように誰でもできることであっても、社会の中では意外と褒められることというのは多いものです。面と向かって凄いとか偉いとか言われなくても、一度やった仕事を二度目も頼まれたら、それはその仕事が得意だと認められたということです。どうか自信を持って、その仕事をもっともっと上手にやれるように勉強を続けてください。

皆さんの輝ける前途に期待しています。

(メディア学部長 大淵康成)

[三上・兼松研]映像表現・芸術科学フォーラム2022で発表しました③

2022年3月17日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.
今回も前々回に続き,3月8日火曜日に映像表現・芸術科学フォーラム2022で三上・兼松研から発表した研究について紹介します.

今回は紹介する研究は,
[曽根卓憲,兼松祥央,茂木龍太,松吉俊,三上浩司,”オリジナルアニメのストーリー分析に基づくシリーズ構成支援”]
です.

この研究もタイトルの通り,ストーリー関連,シナリオ関連の研究です.

これまでにも私たちは数多くのシナリオ関連研究を行っています.その中には,私と同じくメディア学部助教の戀津先生が開発している”シナリオエンジン”をはじめ,シナリオ執筆を直接的に支援するシステム開発のような研究もあります.

ただ,この曽根くんの研究は,そういった直接的な支援ではありません.
この研究では,1クールのアニメのストーリー構造がどのようになっているのかを調べました.

ストーリー構造の分析や,それを活用した支援に関する研究は数多くあります.
例えば,私の学部生時代,修士時代の指導教員である金子満先生の研究・著書では,多数の映画のストーリーを分析し,その結果からシナリオを段階的に執筆するバイステップ手法が提案されています.
この手法は,私が担当しているプロジェクト演習シナリオアナリシスでも基盤になっていますし,私たちの研究室で行っている研究の多くが金子先生の手法をベースにしています.
金子先生の手法以外にも,例えば有名どころだと三幕構成とか,箱書きとか,ストーリー構造を設計するための手法はたくさんあります.

私自身も金子先生の授業を受けてシナリオをしっかりまとめる力を養ってきた1人なので,もちろん素晴らしい手法だと思っていますし,博士課程在籍中には外部の企業の方に金子先生の手法を教えたり使ったりする仕事をしました.
ですが,その当時からずっと感じている疑問というか違和感というか・・・適切な言い方が思いつきませんが,「この手法はあらゆるストーリー構造の設計に耐えうるものではない」という不満がありました.研究者の最初の動機はとしてはありきたりかもしれませんが(笑)
実際,前述の仕事の際にも,この手法を使ってうまく行く人もいれば行かない人もいましたし,作品によってもうまく行く場合と行かない場合がありました.

多くのシナリオ支援手法は1つの完結した作品を作るための手法です.
はっきり言ってしまえば金子先生の手法もこの枠を出ていません.
ですが,みなさんご存知のとおり,映像作品の「ストーリー」は1話ごと・または1エピソード,1イベントごとに完結していくストーリーだけでなく,1クール,1シーズン通して展開していくストーリーもあります.それよりもさらに大きい枠組みだってあります.
そういったストーリーの「大きな枠」は,既存のストーリー構造設計の手法では当てはまらない部分や無理が出てくる部分があります.

曽根くんの研究は,そんな「大きな枠」を対象とした分析を行いました.
まだまだ研究の入り口ですが,実際に既存のシナリオ手法やセオリーで言われていることを,1クール全体のストーリーに当てはめてみると通用しないという結果が見えたおもしろい結果になりました.

このテーマは今後も私自身を含め,次期卒研生・院生たちと進めていきたいと思っています.

(文責:兼松祥央)

AnimeJapan2022に出展します!

2022年3月16日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.

まもなくAnimeJapan2022が開催されますね!
今回のAnimeJapanにももちろん東京工科大学メディア学部は出展します!

出展情報はこちら

東京工科大学のブースでは,主にアニメ関係のプロジェクト演習で制作した学生作品を展示いたします.
アニメ関連のプロジェクト演習については,以前川島先生がこのblogで記事(こちらこちら)にしてくださっていますので,ぜひご覧ください.

ブースでご案内するスタッフも,こういった演習に関わっている教員や,実際に演習を受講している学生です.
今回はリアル開催ということで,ぜひ現地にお越しの際にはお立ち寄りください.
「アニメの演習ってどんなことをするんだろう」「大学でアニメの勉強って何をするの?」と言ったような疑問をお持ちの高校生のみなさん.ぜひ現役の大学生に話を聞いてみてください.

(文責:兼松祥央)

[三上・兼松研]映像表現・芸術科学フォーラム2022で発表しました②

2022年3月15日 (火) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.

今回は前回に引き続き,3月8日火曜日に映像表現・芸術科学フォーラム2022で三上・兼松研から発表した研究について紹介します.
今回は紹介する研究は,

[渋谷鷹,兼松祥央,茂木龍太,松吉俊,三上浩司,”女性アニメキャラクターの性格に基づく学校制服の着崩し方分析”]

です.
この研究では,既存のアニメに登場する女子学生のキャラクターにフォーカスし,学校制服の着こなし方・着崩し方を調査し,分析・分類しました.

この研究は,私たちの研究室で行っているたくさんのキャラクター関連研究の中でも,「キャラクター原案制作支援」にカテゴライズされる研究です.
以前もこのblogで紹介しましたが,キャラクター原案制作支援は,簡単に言えば既存キャラクターをたくさん調べて特徴などを分類し,新しいキャラクターのビジュアルを作るときの土台となる原案を作る支援をするものです.

作品のストーリーやテーマを伝える,世界観を表現するためのキャラクターは,そのビジュアルにもしっかりと設定を反映し,説得力がなければなりません.そして,往々にして設定を考える人と,実際に絵を描く人は違います.そのため,ディレクターをはじめとするそもそもの企画や大枠を考える人や,ストーリーを考えるシナリオライター,そして実際に絵を描くデザイナーなど,様々な役割のクリエイターが相談しながらデザインを詰めていきます.したがって,そこには誰かが頭の中で想像した物・形を他人に正確に伝えなければならない難しさがあります.

そして,渋谷くんの研究でフォーカスした学校制服を着たキャラクターには,その他多くのキャラクターと比べてさらに難しい特徴があります.それはもちろん,学校制服を着ている,つまり,服装の違いで個性を出すのが難しいということです.
皆さんも学生時代,もしくは今まさに制服を着て学校に通っている方もいるかもしれませんが,制服をかっこよく着こなすのは難しいですよね(笑).
着こなすだけでなく,例えばネクタイをきっちり締めているか,緩めているかだったり,シャツの第1ボタンを開けているか締めているかだけでも,そのキャラクターを見た視聴者が受ける印象は変わります.
そこでこの研究では63作品から296体のキャラクターを分析しました.
もともとは何か着崩し方と性格の関連性が明確にならないかなぁと思って始めた研究なのですが,残念ながら明確に傾向が出た!と言えるものはあまり多くありませんでした.

ただ,今回の研究の価値は,体の部位ごとにどんなものをどのように身につけているのか,そのバリエーションなどを明らかにしたところにあると思っています.
例えばシンプルにわかりやすいところで言えば,「最近の学校制服を着ているアニメの女性キャラクターって,セーラー服を着ているキャラが何割いて,Yシャツ(ブレザー)を着ているキャラがどれくらいいるの?」みたいなことを明らかにするような調査ですね.
私たちはこういった調査や分析が,新たにキャラクターを作ろうとするときの土台・知見になると考え,「キャラクター原案制作支援」を行っています.

また,大変ありがたいことに,この研究は「優秀発表賞(ポスター発表)」を受賞しました.
研究途中では,なかなか思うように成果が出ず,かなり難産な研究だったので,最後に渋谷くんの努力が報われてよかったなぁと思っています.

(文責:兼松祥央)

[三上・兼松研]映像表現・芸術科学フォーラム2022で発表しました①

2022年3月14日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.

3月8日火曜日に映像表現・芸術科学フォーラム2022という学会が開催されました.
この学会には毎年メディア学部の様々な研究室から多数の研究が発表されています.
三上・兼松研からも,毎年卒研生・大学院生が参加しています.今年も次の5件を発表しました.

[戴陽,兼松祥央,松吉俊,三上浩司,”3DCGにおける手描きアニメ調気流表現手法の研究”]
[長谷川傑,兼松祥央,茂木龍太,松吉俊,三上浩司,“温度刺激を使ったARテーブルゲーム体験向上デバイスの提案”]
[片桐蓮,兼松祥央,茂木龍太,松吉俊,三上浩司“スマートフォンを利用したeスポーツ観戦者の盛り上げシステム”]
[渋谷鷹,兼松祥央,茂木龍太,松吉俊,三上浩司,”女性アニメキャラクターの性格に基づく学校制服の着崩し方分析”]
[曽根卓憲,兼松祥央,茂木龍太,松吉俊,三上浩司,”オリジナルアニメのストーリー分析に基づくシリーズ構成支援”]

いずれもこの3月で卒業の4年生が卒業研究として行った研究です.

片桐くんが行った“スマートフォンを利用したeスポーツ観戦者の盛り上げシステム”では,タイトルの通りスマホ向けのシステムを開発しました.近年,eスポーツをはじめ,動画配信や生放送などでゲームプレイを観戦して楽しむ方や機会が増えています.
もちろん,選手の凄まじいプレイ技術や,配信者のリアクションやトークを見たり聞いたりするのはとても楽しいのですが,プレイされているゲームにあまり詳しくない視聴者は,ゲームの内容や,その時々のシチュエーションがあまり理解できないことがあります.
スポーツのテレビ中継や,eスポーツでも大きな大会などであれば実況中継がつく場合もありますが,これは日々増え続けているゲーム観戦の機会全てに対応することはもちろんできません.また,ゲーム配信であれば,当然配信者の話術次第ということになります.
そこで,ゲームから得られるデータなどを利用して,リアルタイムに「今どんな状況なのか」を視聴者に提示しようというのが,この研究の大きなテーマです.

今回の研究ではその最初の一歩をポスターで発表しました.
今後も片桐くんの後輩たちと一緒に発展させていきたいと思っています.

 

(文責:兼松祥央)

専門講義科目 ソーシャルデザイン論の紹介 学生作品 その4

2022年3月13日 (日) 投稿者: メディア社会コース

3年生の専門講義科目 ソーシャルデザイン論では、持続可能な社会の実現のためのデザインについて学びます

毎年、学生グループによるソーシャルデザイン案のPV(Promotion Video)を作成し、学生同士による投票を行っています。今年のテーマは様々で、海洋プラスチックゴミや、途上国の貧困問題、多文化理解促進など幅広いテーマが選ばれていました。その中でも、多くの学生達が選んだテーマが日本の食品ロスの問題でした。その中でもPVの評価が高かった作品をご紹介します。増田莉悠君、川村英知君、山崎悠河君、保田瑞穂さんの作品でタイトルは”規格外食材を利用した学生食堂の提案”です。ここではすべて、紹介しきれませんでしたが、今年も皆さん大変頑張り良い作品が多かったです。


Photo_20220308193801

文責:飯沼瑞穂

専門講義科目 ソーシャルデザイン論の紹介 学生作品 その3

2022年3月12日 (土) 投稿者: メディア社会コース

3年生の専門講義科目 ソーシャルデザイン論では、持続可能な社会の実現のためのデザインについて学びます。テーマとしてソーシャルビジネスや社会起業家、CSR(企業の社会的責任)などについて学び、最終的には学生がグループでデザインのアイデアをまとめています。

毎年ポスターセッションを行いますが、それに伴い、ソーシャルデザイン案のPV(Promotion Video)も作成しています。学生投票により評価の高かった作品を紹介しています。本日は、小林龍弥君、長沼小次郎君、可児強志君、江寺望美さんの作品でタイトルは、
過疎地域の活用~古民家の夢と希望、そしてー”です。


Photo_20220308192401

コマーシャルのようなドラマチックな始まり方がユニークで、多くの学生から高い評価を得た作品でした。文責:飯沼瑞穂



専門講義科目 ソーシャル・デザイン論の紹介 学生作品 その2

2022年3月11日 (金) 投稿者: メディア社会コース

ソーシャルデザイン論での2021年度の学生作品で、学生投票により高い評価を集めた作品を紹介します。

以下は”フェアトレード製品の認知度を高めるための事業”に関するPVです。篠原渚さん、岡さゆりさん、川島優人君、萩野滉大君の作品です。


Photo_20220308191001

PVの中に、フェアトレード製品の認知度を高めるための広告動画の例を実際に制作し紹介したことが評価されたようでした。明日の作品も楽しみにしてください。

文責:飯沼瑞穂

 

 

 

専門講義科目 ソーシャルデザイン論の紹介 学生作品 その1

2022年3月10日 (木) 投稿者: メディア社会コース

3年生の専門講義科目 ソーシャルデザイン論では、持続可能な社会の実現のためのデザインについて学びます。テーマとしてソーシャルビジネスや社会起業家、CSR(企業の社会的責任)などについて学び、最終的には学生がグループでデザインのアイデアをまとめています。

毎年ポスターセッションを行いますが、それに伴い、ソーシャルデザイン案のPV(Promotion Video)も作成しています。今年、学生の作品投票で評価が高かったものを紹介します。こちらは”ご近所保育アプリここっと”です。桑原佳奈美さん、斎藤美幸さん、遠藤真由さん、塚西世奈さんの作品です。児童保育の問題解決に関するアイデアを紹介しています。 明日も学生作品を紹介します。              文責:飯沼瑞穂

Photo_20220308185201

専門講義科目 ソーシャルデザイン論の紹介 

2022年3月 9日 (水) 投稿者: メディア社会コース

ソーシャルデザイン論の紹介をして行きたいと思います。ソーシャルデザイン論では、持続可能な社会の実現のためのアイデアやプロセス、ビジネスや社会の仕組みなどを、ソーシャルデザインと定義しソーシャルビジネスや社会起業家、そしてCSR(Corporate Social Responsibility)企業の社会的責任などについて学びます。3年生の講義科目ですが、グループワークをとても重視しており、学期の終わりにはポスター発表を行っています。

このポスター発表ではグループで考案したソーシャルビジネスや社会をよくするためのアイデアについて紹介するという内容です。

今年も、数多くの学生さん達が参加してくれました。コロナの影響もあり、オンラインと対面、併用での開催となりましたが最後のポスター発表は

密に気を付け教室を使って行いました。また学生さん達のアイデアの紹介を明日しようと思います。

 

文責:飯沼瑞穂

海のSDGs!」STEAMワークショップ 親子で遊ぶソーシャルデザインを開催 その2

2022年3月 8日 (火) 投稿者: メディア社会コース

2021年11月23日に日本科学未来館で行われた日本財団、リトルスタジオインク株式会社イエローピンプロジェクト(中山財団協力)主催STEAMで学ぶ「海のSDGs」のワークショップの実施した。

親子17組が参加したイベントで、ソーシャルデザインノートブックを活用しました。今回は、海をテーマとした内容の話を聞いた後に親子でノートブックを作成してもらいました。親子で話あって、海の問題をわかりやすく表現してくれていました。

以下がその例です。メディア学部では、ウェブデザインや視覚デザインの授業がありますが、親子で情報のレイアウトに工夫して

ノートを作ってくれていました。メディア学部のソーシャル・デザインプロジェクトでは、このように子供向けの教材を作って行き、将来は

本学の学生さん達も博物館や、美術間などで、ファシリテーターとして参加してくれるようになるとよいなと思ってプロジェクトを進めています。

Photo_20220306202501

 

文責:飯沼瑞穂

「海のSDGs!」STEAMワークショップ 親子で遊ぶソーシャルデザインを開催 その1

2022年3月 7日 (月) 投稿者: メディア社会コース

2021年11月23日に台東区、日本科学未来館にて、一般社団法人イエローピンプロジェクトが実施した、「プログラミングで海のSDGs!」のSTEAMワークショップの、一つを企画、担当させて頂きました。このイベントは、次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環でした。 サイエンス(S)、テクノロジー(T)、アート(A)の3つの視点からSDGs課題14「海の豊かさを守ろう」について理解を深めてもらうSTEAM学習を行いました。私が企画担当したのはアート(A)ソーシャルデザインワークショップです。以下が日本科学未来館で行った際の様子です

 

1_20220306201501

ソーシャルデザインノートブックをつかい、海に関するテーマを親子で一緒に考えて解決策について話し合いました。

Photo_20220306201501

こちらがそのノートブックの表紙のデザインです。親子17組が参加してくれました。一組づつに、筆記用具やシール、写真やハサミ、色鉛筆を用意してそれらを使ったアクテイビティをします。以下のようなセットを用意しました。

Photo_20220306201601

 

その時の様子が記事になっていますのでこちらもご覧ください。ソーシャルデザインの紹介もしていただいています。明日は子供たちの作品を紹介します。

文責 飯沼瑞穂

親子で学ぶ ソーシャルデザイン

 

複数の立場を持つ人物における対人関係整理手法 ~NICOGRAPH2021発表報告4~

2022年3月 6日 (日) 投稿者: メディア技術コース

助教の戀津です。
昨日一昨日一昨々日に引き続き、NICOGRAPH2021での発表のご報告です。

今回も、以前から時折紹介している先端メディア学「コンテンツビジュアライゼーション」で一緒に研究を行ってくれた学生さんの発表です。
今回は、昨年度後期から参加していただき、初の対外発表になる西村祐真さんの研究です。
今回のNICOGRAPHではポスター形式での発表を行いました。相関図に関する研究のうち、特殊な条件下での情報整理を検討しています。

物語中の登場人物間の関係を示す資料として、登場人物相関図があります。各登場人物を所属などでまとめ、人物間の関係を矢印と文字で示す図です。
所属組織でまとめようとする場合に問題になるのが、スパイ活動をしているなどで複数の組織に属している場合の描画方法です。

同じ人物を一箇所に描いて所属を複数描く場合、関係を示す矢印がどの立場によるものかによって意味が変わってしまいます。
同じ人物を複数組織にそれぞれ描画すれば上記の問題は解決しますが、同一人物であることをうまく示す必要があります。

この問題に取り組むにあたって、まずは複数の立場を持つ人物の対人関係について整理する手法を検討しました。

※図の内容には名探偵コナンの一部ネタバレを含みます。

 

J_20220306065801

作中に潜入捜査をしている人物がいて、それぞれ別名で活動しています。今回はその人物とその交友関係について分析を行いました。
左上部分は各立場(名義)とその色を表しています。右側の四角は、縦に交友関係の深さ、横に敵対関係か友好的かの軸をとり、他の登場人物との関係をプロットしています。
他の各登場人物は、どの立場の人物から見てその関係であるかを示すために、左上で示した色をつけています。複数出てくる人物は立場によってプロット位置が変わることがあります。

先端メディアではまず課題を整理し、これをどのように相関図に適用していくかが今後の課題です。
西村さんも来年度から私の研究室に配属の卒研生になります。これからの展開が楽しみです。

また進展があったらご報告します。

3次元空間を用いた物語時系列構成の可視化手法 ~NICOGRAPH2021発表報告3~

2022年3月 5日 (土) 投稿者: メディア技術コース

助教の戀津です。
昨日一昨日に引き続き、NICOGRAPH2021での発表のご報告です。

今回も、以前から時折紹介している先端メディア学「コンテンツビジュアライゼーション」で一緒に研究を行ってくれた学生さんの発表です。
以前にも発表していただきブログで紹介した、小﨑悠平さんの研究です。
今回のNICOGRAPHではポスター形式での発表を行いました。

前回に引き続き、物語の時系列についてまとめて可視化を試みています。
以前にも書いたように、時系列の移動を伴う作品では、描写された順序と物語中の世界で物事が起きた順序が異なる場合があります。
また、描写順の問題だけでなく実際に時間が戻ったりしている場合は、同じ時間を複数回描写するということも起きます。

前回の発表では描写順と起きた順を描画し、更に時間転移による世界線移動は下方向に展開するという手法を取りました。
今回は同じ時間が複数回描写されるような作品を扱ったので、三次元での描写を試みました。
世界線を超えるような移動の際には奥行き方向に、そうでない移動は下方向に展開しています。
その結果の表示をしてみたのが次の図です。

J

同じ時間が描写された部分は重複するよう描画したので、作品全体の描写順である一番上の段よりも下段以降が短くなることが確認できました。
作品の分析結果をもとにルールを定め、それに合わせた描画を試みましたが、奥行き方向の変化がわかりにくいなど課題が多く残っています。

小﨑さんは先端メディアの対象学年を終え、来年度から私のゼミに所属する卒研生になります。
これまで二年間物語中の時系列の研究を行ってきましたが、この一年でどのように発展するかこれから楽しみです。
また進展があればご報告します。

ミステリー要素における登場人物の役割分類と可視化 ~NICOGRAPH2021発表報告2~

2022年3月 4日 (金) 投稿者: メディア技術コース

助教の戀津です。
昨日に引き続き、NICOGRAPH2021での発表のご報告です。

今回は、以前から時折紹介している先端メディア学「コンテンツビジュアライゼーション」で一緒に研究を行ってくれた学生さんの発表です。
以前にも発表していただきブログで紹介した、飯田琴美さんの研究です。
今回のNICOGRAPHではポスター形式での発表を行いました。

今回の研究では物語のミステリー要素における登場人物の役割をまとめています。
ミステリー要素とは、ミステリー作品に限定せず、物語中で起きた何らかの事件や計画を想定しています。
その事件や計画について、物語として描写する際には各登場人物に役割があったり、知識・認識の差があったりします。

この研究ではミステリー要素における登場人物の役割を、首謀者・実行者・加担者・被害者・協力者・解明者・乱入者の7つに分類しました。
首謀者と実行者は同じ場合もありますが、分類上は別としています。加担者と協力者は、協力するという点は同じで、首謀者側と解明者側のどちらに協力しているかの差です。
解明者はそのまま、探偵役のような役割です。これらの役割は物語上の役割とは別なので、主人公が解明者とは限らないのが興味深い点です。
乱入者は扱いが難しいですが、事件や計画に影響を及ぼすにも関わらずどの立場でもないという場合が時折あるので、例外的な分類です。

これらの各役割に色を割り当て、物語の進行に応じて各登場人物がその時点でどんな役割かを可視化してみました。
※ここからの内容には名探偵コナンと憂国のモリアーティの一部ネタバレを含みます。

 

例として、名探偵コナンの赤井秀一死亡偽装計画と、憂国のモリアーティのある事件についての結果を示します。

M1

赤井秀一死亡偽装事件は、主人公が首謀者だった例です。赤井が実行し、早い段階でジェイムズが気付いたけれども黙っているので加担者としています。
ジョディとアンドレは計画については知らず、死亡したと思っています。
この例の場合は各登場人物がどの時点で何を知っているかの整理として参考にできます。

M2

こちらの事件では、シャーロックとワトソンは当初容疑者として始まり、解明者と協力者になります。
各人物がどの時点でどういう役割かを整理する参考になります。

他にも、協力者のふりをしているが実行者だった、被害者として退場したが首謀者だったというような場合もあり、その変遷の整理にも活用できると思います。
現在の形では、描写上の(読者に見せている)役割と実際の役割が異なる場合の描画方法がまだ弱いので、色々と試行錯誤中です。

また進展があったら報告します。

登場人物間の抱く感情による距離の可視化 ~NICOGRAPH2021発表報告1~

2022年3月 3日 (木) 投稿者: メディア技術コース

助教の戀津です。
少し間が開いてしまいましたが、11月に行われたNICOGRAPH2021での発表のご報告です。

今回は私の研究を含め、4件の発表をしてきましたのでそれぞれご紹介します。

まずは私の研究からです。以前ご紹介した、絡みの可視化の続きの研究です。
物語における登場人物相関図を作成するために一連の研究を行っていますが、今回は登場人物間がお互いに抱く感情の情報をもとに人物間距離を可視化する試みをしています。
以前の研究では関係の量を扱っていたのに対し、今回は質について扱ってみました。

登場人物が互いに抱く感情は物語の進展に応じて変化していきます。
この研究では、一話ごとに目まぐるしく感情と関係性が変化する作品である『俺を好きなのはお前だけかよ』というアニメについて分析を行いました。
アニメの公式ホームページに各話時点の相関図が公開されているので、その情報を入力して人物間の距離を力学グラフを使って計算しています。
図は第5話と第6話の各登場人物間距離の計算結果です。

10_20220303173101

主人公を中心として、好意と嫌悪がそれぞれ向けられており、5話と6話では好意の数が増えています。
結果仲良しの登場人物が集まり、その中でも好意の度合いや他の人物との兼ね合いなどが距離や配置に影響を与えることが確認できました。

最終的に相関図に活かすにはまだまだ課題が多いので、順次取り組んでいきます。
また進展があれば報告します。

学会シーズン

2022年3月 2日 (水) 投稿者: メディア技術コース

助教の戀津です。

三月に入り、学会が多く開かれる時期になりました。
世間では時折「大学の先生って春休みとか長くていいよね」と思う方がいたりしますが、そんなことは全くありません。

春休みは次年度の準備ももちろんありますが、学会が多く開催されるタイミングです。
学部の卒業研究や修士の研究、もちろん自身の研究などを発表し、参加者から意見をいただいたり交流したりできる重要な場です。
自身や学生の発表を行わずとも、同じ分野や近い分野の学会には参加しその分野で行われている研究の動向を把握しておくことも大切です。

私の関係では、明日から開催される情報処理学会全国大会と、来週火曜日に行われる芸術科学フォーラムで卒研生がそれぞれ発表を行います。
また、漫画の研究をする学生さんがいるので、中旬にあるコミック工学研究会へも参加予定です。

卒研生の発表内容についてはそれぞれ後日改めてご紹介します。

身の回りで役に立つ数学

2022年3月 1日 (火) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

コロナ禍の中で、いろんな数字に触れる機会が増えています。ニュースを正しく理解するためには、数学的な考え方が重要です。「数学なんか日常生活の役には立たないよ」という人への反論は、以前のブログ記事でも書いたことがありましたが、今日は最近のニュースを題材にお話ししてみたいと思います。

細かい数字はうろ覚えなので、架空の国の話ということにします。A国では、国民の90%が2度のワクチン接種を終えていますが、最新の調査では、新型コロナ新規感染者の30%がワクチンを2回接種した人でした。このニュースを見て、「なーんだ、ワクチンを2回打っても30%の確率で感染しちゃうのか」と思った人は、残念ながら数学の勉強が不足しています。

A国の人口が1億人だとしましょう。2回接種済の人は9千万人です。新規感染者が1万人で、そのうち2回接種済の人は3千人だとしてみましょう。2回接種者の感染率は、9千万人中の3千人ですから、約0.003%です。未接種者の感染率は、1千万人中の7千人ですから、0.07%です。比率で見ると、後者は前者の21倍です。

こんな計算をするまでもなく、数学の心得のある人ならば、こんな考え方をします。人口の90%が2回接種済なのだから、もし接種に何の意味も無いとしたら、新規感染者の中にも2回接種済の人が90%いるはずだ。それなのに30%しかいないということは、接種のおかげで感染率が下がったということだ。実際にどれぐらい下がったのかは、ちゃんと計算して確かめてみよう!

ワクチンを打つか打たないかについては、感染率以外にもいろんな要素があり、考え方は人それぞれだと思います。ただ、前提となるメリットやデメリットについての理解が不十分だと、自分にとって不利な選択をしてしまう可能性が高まりますね。やっぱり数学は日常生活の役に立つんだなあ、と思う今日この頃です。

« 2022年2月 | トップページ | 2022年4月 »