第15回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)
2022年4月 9日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
今回も「シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点」として、定期的に私が何度も遭遇してきた「シナリオの欠点(あな)」について書いていこうと思います。今回取り上げるトピックは・・・
「自分の大好きな要素を詰め込んでしまって発生したシナリオの欠点(あな)」です。
新年度2022年を迎えたということで、シナリオに興味を持って本メディア学部に入学してきた人もたくさんいるということで、前回「第14回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)」では、こんなことを述べました。
『いちばんやってはいけないのは、そういった説明(※既存作品との違いについて)もできずに「これは私の完全オリジナルです」と主張してしまうことです。教科書レベルで扱われている作品との違いを説明できずに、自身のオリジナルと言い放つのは、たとえ本当に何も知らずに思いついたことだとしても、問題になりかねません。』
きっかけは個人ごとによって様々ですが、作品を享受する側でしかなかった人間が「自ら作品を供給する側にまわりたい」と思うようになる瞬間は間違いなくに存在し、本メディア学部においては、映画・ドラマ・アニメ・漫画・ゲーム・ドラマ・ラノベなど、様々な分野における飛躍を目指して入学してくる、意欲的な学生がたくさんいることは、特徴と言っていいでしょう。
きっかけとなった媒体やコンテンツの違いはもちろんあるわけですが、彼らに共通する点のひとつは「感銘を受けた作品」つまりは「大好きな作品」があって、「自分もそういう作品を作ってみたい!」というモチベーションにあったりします。
このモチベーションはとても大事なものです。一見すると、未熟者の浅はかな思いつきのように思われがちですが、とても純粋かつ素直な創作な意欲の現れで、プロでもそう大差ないのです。
以前、私は「シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その38後編」で、映画「フック」を取り上げ、こんな一節を書きました。
http://blog.media.teu.ac.jp/2022/03/post-34e81d.html
『この作品は、前述した原作「ピーター・パン」を、監督のスティーブン・スピルバーグが大好きだったことから実現した、とされているのですが、親子愛をテーマにした映画には定評のあるスピルバーグ監督が手掛けていることもあって、原作そのままではなく、親子愛を強く押し出す形の作品になっています。』
数々のヒット作を世に送り出してきた映画監督スティーブン・スピルバーグですら、映画を撮影しようとするきっかけは、大好きな作品「ピーター・パン」なのです。そのきっかけには巨匠監督と本メディア学部の学生に差などありません。
違いがあるとすれば、これも同エントリーに記述しましたが・・・
「あきらかに作中の世界は『ピーター・パン』原作の舞台だとわかっているのだが”主人公の中年男が本当にピーター・パンなのか?”という疑問がつねに尽きず、実際、主人公をとりまく人間たちはおろか、本人すらピーター・パンだと思っていないため、”ピーター・パンではない誰かなのではないか?だとしたら何者なのか?”という興味をもたせる作りになっています。」という部分です。
こういった、映画を最後まで観ようと思わせる興味を、ストーリー上に「しかけ」として組み込めるか否か、という点はプロと素人の明確な違いであり、なかなか一朝一夕に真似できることではありません。
一歩間違えると、まさに「自分の大好きな要素を詰め込んでしまって発生したシナリオの欠点(あな)」となりうるのです。
うまく見極めていきたいものです。
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