ボーっとしてみよう (2)
2022年5月 3日 (火) 投稿者: メディア技術コース
メディア学部の大淵です。
昨日の記事では、スマホを見たりしないでボーっとしている時間が重要なんじゃないかという話をしました。今日は、その話を、最近はやりの人工知能の話に結び付けて考えてみたいと思います。
近年の人工知能ブームの中心となっているのがニューラルネットワークです。ニューラルネットワークとは、ニューロンと呼ばれる演算素子を大量に用意し、それらをシナプスと呼ばれる線で結んで信号をやりとりする仕組みのことです。その中でも、フィードフォワード型と呼ばれるタイプのものは、取り扱いが簡単なこともあり、早くから研究が進められてきました。
上の図の左側がフィードフォワード型です。上から入力信号が入ってきて、それを順番に下に流していって、最下層から出力が得られたら終わりです。それに対して、少し遅れて研究されるようになったのが、図の右側、リカレント型と呼ばれるニューラルネットワークです。リカレント型では、途中の層のニューロンから、上の層に戻っていく信号の線があったりして、情報の流れが複雑になっています。そして、こうした仕組みを取り入れるようになって、私が専門としている音声認識の分野などでも、人工知能の性能がどんどん向上していきました。
リカレント型のニューラルネットの特徴は、外部からの入力信号が止まっても、ネットワークが状態更新をしつづけるということです。これって何だか、人間がボーっとしているときに似ていると思いませんか? 図の青い矢印の入力が無くなっても、上から下へ、下から上へと情報が延々と流れ続けて、ネットワークの状態を更新していきます。でも、リカレント型のネットワークでも、外部入力に反応してそれで終わりだと、その強みを発揮できません。右の図で、一番上の層への入力が一番下の層に到達するまで2ステップかかりますが、それで学習をやめてしまったら、下から上への結合は何の役目も果たさないことになってしまいます。
こんなふうに、いつもスマホを見つづけていると、フィードフォワード型の結合の性能ばかりが良くなり、リカレント型の結合の性能が弱まってしまうのではないか、なんて言ったら、ちょっと疑似科学っぽいでしょうか? 私は脳科学者ではないので多少不正確なところはあるかもしれませんが、情報科学の観点からはそれほど外れたことは言っていないような気がしています。
そんなわけで、今日の結論は、旅先でも家でも、ちょっとスマホの電源を落として、ボーっとする時間を作ってみませんか、ということです。私もこの記事を書き終えたら、しばらくPCの電源を落として過ごそうと思います。
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