【多様性について考える①】カーブカット効果から学ぶ
2022年6月20日 (月) 投稿者: メディア社会コース
カーブカット効果から学ぶ
-自ら作ったコンクリートの塊が、世界中に広まり多くの人の助けになった話-
今や車椅子のためのスロープはいたるところにあります。1970年代初頭にはそれらがほとんどなく、車椅子での移動が非常に困難だったことをご存知でしょうか。
多様性を生み出した事例としてすぐに思い浮かぶのが、スタンフォード・ソーシャルイノベーションレビューでも取り上げられている「The Curb-Cut Effect(社会を動かすカーブカット効果)」です。
この論文では、カリフォルニア州バークレーのとある歩道の縁石にセメントを流し込んで、簡易的なスロープを勝手に作ってしまった話が紹介されています。本来であれば警察に捕まってしまう行為ですが、このスロープにより車椅子で移動する人々が助かるため見逃してもらったそうです。
当時、全米のあらゆる都市において車椅子での移動は簡単ではなかったようで、車椅子で道路を渡る時は障害物競走のようであったと表現されています。政治活動が盛んなバークレーではこの小さな簡易スロープから車椅子を使う人々の声が広がり、何百ものスロープが作られ、後に全米に広がり何十万ものスロープが作られました。
するとスロープを使ったのは車椅子を使う人々だけではなかったのです。ベビーカーを押す人々、台車やスーツケースを運ぶ人々、そしてスケートボードで楽しむ若者までがその恩恵を受けることになったのです。
最初は困っている当事者が自力で作ったコンクリートの塊が、後に多くの人々を助けることになり、行政や政治が動き、それが世界中に広まっていったという、多様性について考える上で欠かせないストーリーですね。
メディア学部 吉岡 英樹
略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。
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