【多様性について考える④】当事者が1歩踏み出す勇気が多様性を生み出す
2022年6月23日 (木) 投稿者: メディア社会コース
当事者が1歩踏み出す勇気が多様性を生み出す
バークレーのスロープにしても、娘が地域の小学校に通っていることにしても、当時者が1歩前に踏み出したことにより、それ以外の人が「課題」に気づき、それに対する「行動」に繋がっていることが分かります。もし、1歩踏み出す勇気がなければ、それらの「課題」を多くの人が知る機会が失われていたでしょう。
「課題」に気づくことはとても重要です。例えば、学校の教室にゴミが落ちていたとします。それを拾うか、知らないふりをするかで、学校が清潔に保たれるかどうかが決まるでしょう。学校がゴミだらけになれば、外から来た人は「汚い学校だな」と感じるでしょうし、ゴミがなければ「キレイな学校だな」という印象が残るでしょう。学校全体の印象が、たった一人の気づきで決まるかもしれません。
私は難聴の娘を育てている中で、言葉を覚えることに困難を感じました。日常生活で覚えて欲しいものがあっても、なかなか覚えてくれません。そこで、思い切ってアプリの開発を思い立ったのでした。
通常は紙の言葉カードを使ったり、ドリルを見ながらノートに書いたりして言葉を覚えます。もちろん、そのような従来の学習方法は重要ですが、子どもの集中力は長くは続きませんし、いつでもどこでも学習できるわけではありません。しかし、スマホアプリにすることで、子どもは自ら進んで操作をしますし、移動中やちょっとした隙間時間に使えるので、学習する時間が必然的に増えます。
子どもが言語を上達させるには、言葉のシャワーを浴びせることが大切だと言われています。つまり重要なのは従来の学習方法にこだわる事ではなく、子どもが言葉と触れ合う時間を増やすことです。音声で言葉を聞き取れないなら、視覚的な情報を増やして学習すれば良いと考えました。
アプリをリリースすると、難聴児だけではなく、発達障害を持つ保護者の方や大人の方でも失語症でリハビリをしている方などが、このアプリを必要としていることが分かりました。さらに、障害のない人々も、外国語を覚えたり、専門用語を覚えたりするのにも使えることが分かってきました。
私はこのアプリがカーブカットにおける「コンクリートの塊」となり、多くの方々の助けになることを望んでいます。そして、誰もが辛い思いをすることなく、どんな人も言葉を楽しく学べるような社会にしたいと思います。
詳しくはホームページをご覧ください。
メディア学部 吉岡 英樹
略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。
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