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2022年7月

プロジェクト演習成果発表会

2022年7月31日 (日) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。

私はいくつかのテーマでプロジェクト演習を実施していますが、今回はそのうちの、「実践的プログラミング基礎」「実践的AR基礎」の最終成果発表会について書きたいと思います。この2つの演習はともにUnityを用いてプログラミングを学ぶテーマです。成果物はゲームやARアプリを目指します。授業は多数のUnityプログラミング講座を実践されている演習講師の藤森先生にお願いしています。

この演習の受講対象者は全くのプログラミング初心者です。したがって特に前期は新入生の受講者が多いです。しかし、プロジェクト演習の特徴には様々な学年の学生が一緒に学ぶという点もあり、本テーマでも2,3年生で初めて受講する人や継続受講でより高度なプログラミングを目指す人もいます。演習の時間は、レクチャー、オンライン教材を使った自学習、質問やトラブル対応などで構成されていますが、受講者は多くても十数名と少人数なので講師とTAがかなり個別的にサポートできています。全14回の授業の後半に入ると、自分の最終成果物とするゲームのアイディアを練り、中間発表を経て各自の制作主体に進めていきます。もちろん、授業時間外にも各自が制作を進めます。

Unity1 Unity2

一つ目の画像は「実践的プログラミング基礎」の受講生、もう一つは「実践的AR基礎」の受講生の発表です。ARの方ではノートPCに外付けでWebカメラを接続して紙に印刷したマーカーをとらえています。4か月弱の14回の授業ですが、はじめてプログラミングをする人でもこのような作品を作ることができます。ゲームは学生にとってもなじみが深く、よく知っている機能や世界観を実現したいという思いが原動力になっているのかもしれません。

(メディア学部 寺澤卓也)

おめでとうございます!

2022年7月30日 (土) 投稿者: メディア技術コース

東京工科大学には前年度の成績優秀者を表彰する「学長賞」と、各学部の特色に応じて優れた活動等を行った学生を表彰する「学部長賞」があります。メディア学部では7月18日、19日に学部長賞の2,3年次受賞者の表彰式、21日に学長賞の2,3年次受賞者の表彰式(学部長代読)をそれぞれ対面で行いました。また、学長賞のうち、各学部学科最優秀の学生については26日にオンラインで学長出席の授賞式が行われました。受賞された皆さん、おめでとうございます!

 

学部長賞は年度初めにその年度の各学年(1~3年)の選考基準が示され、それに基づいて選出された受賞者を次の年度に表彰します。したがって、今回表彰された皆さんは、2021年度の実績で選ばれています。現4年生については各研究室で表彰してもらいました。これらの賞は大学の正式な賞ですので、受賞された皆さんはその実績を大いにアピールしてほしいと思います。

表彰式の準備をされた関係者の皆様ありがとうございました。

(メディア学部 寺澤卓也)

確率の不思議 - 4. 議論が噛み合わないときは

2022年7月29日 (金) 投稿者: メディア技術コース

4日間続けて確率の話をしてきました。昨今は、パンデミックや気象変動、原子力発電など、ものごとのリスクを科学的に評価して考えなければならない社会問題が数多くあります。そんなときに、我々科学者は、データに基づいてリスクを確率化して考えることが多いのですが、その結論と異なる考え方をする一般の人に対して、「確率をちゃんと考えられなくて困った人だなあ」というような対応をしてしまうことがあります。

でも、こんなときに科学者が見落としている重要な要素があります。それは、確率の元となるデータを、どれぐらい信じられるかということです。「〇〇の値が××だったら、事故が起きる確率は△△%」みたいな話をするとき、「〇〇の値は××」の部分が、どれぐらい確かなのかは必ずしも自明ではありません。

科学者といえども、すべてのデータを自分で実験して求めているわけではありません。多くの場合、どこの学会で発表されたからとか、どの研究者が発表したからとか、そういうことをもとに、データの信頼性を判断しているというのが実情です。つまり、科学者が頭が良いからデータの真贋がわかるというわけではなく、単にそういう業界に長くいるからわかるという側面が大きいです。

科学者のコミュニティの外にいる人から見れば、議論の前提のところで誰が嘘を言っているかもわからないのですから、いろんなリスクの見積もりが難しいということになります。モンティ・ホール問題の司会者が、意地悪な人かもと心配になってしまうようなものです。そうすると、どんな現象も「確率が著しく小さい」とは言いにくくなり、全体的に安全志向になってしまうのもやむを得ません。

ということで、今回の結論は、

  • 科学者は、科学者が信頼できると思っている前提部分について疑っている人もいるということに自覚的になろう。
  • 誰もが科学的議論を理解することも大事だが、「誰が言っていることなら信じてもいいか」を見る目を養うことも同じくらい重要だ。

ということです。この夏も、いろいろ心配なことがありますが、誰もが納得できる科学的結論で、社会が良い方向に進んでいくといいですね。

(大淵 康成)

確率の不思議 - 3. 条件付き確率の重要性

2022年7月28日 (木) 投稿者: メディア技術コース

昨日からさらに話が続きます。実は、モンティ・ホール問題の話が本当に面白くなるのはここからです。

これまで、司会者は何も考えずにハズレのドアを開いてくれるだけの人だと思ってきました。でも、実はこの人がとても意地悪だったら、どうなるでしょうか。この司会者は、モンティ・ホール問題のことが世間で知られていることもわかっていて、ハズレのドアを教えてあげたら、解答者は選ぶドアを変えるだろうと思っています。そこで司会者はこんなふうに考えました。

もし解答者が選んだドアがハズレだったら、何も言わずに黙っていよう。ハズレでざまあみろだ。でも、もし解答者が選んだドアがアタリだったら、片方のドアを開けてやって、「選ぶドアを変えてもいいですよ」と言ってみよう。それでドアを変えたらハズレになってしめしめだ。

嫌なやつですね。それはともかく、この状況で、司会者がハズレのドアを開いて「選ぶドアを変えてもいいですよ」と言ったら、ドアを変えない方が良いことは確かです。この状況を条件付き確率で表現すると、解答者が選んだドアを1として、

  • 1のドアが正解のとき、司会者が2のドアを選ぶ確率:50%
  • 1のドアが正解のとき、司会者が3のドアを選ぶ確率:50%
  • 1のドアが正解のとき、司会者が何もしない確率:0%
  • 2のドアが正解のとき、司会者が2のドアを選ぶ確率:0%
  • 2のドアが正解のとき、司会者が3のドアを選ぶ確率:0%
  • 2のドアが正解のとき、司会者が何もしない確率:100%
  • 3のドアが正解のとき、司会者が2のドアを選ぶ確率:0%
  • 3のドアが正解のとき、司会者が3のドアを選ぶ確率:0%
  • 3のドアが正解のとき、司会者が何もしない確率:100%

となります。この中で、司会者が2のドアを選ぶ確率が0でないのは一番上だけなので、ベイズの定理で考えても、1のドアが正解である確率が100%ということになりますね。

モンティ・ホール問題にまつわる議論が混乱したのは、「司会者がどういう原理に基づいて行動するか」が問題文に明記されていなかったことが大きな原因でした。多くの人が考えるであろう、「司会者は、解答者が選んでいないドアのうち、ハズレが1枚ならそれを開く。ハズレが2枚なら、ランダムに片方のハズレを選んで開く」という前提が正しければ、ドアを変える方が良いという結論で間違いありません。実際には、司会者が親切な人か意地悪な人かというのも確率的な現象なので、その確率も含めてベイズの定理を考える必要があります。世の中の確率に関わる様々な議論は、こんなふうに前提となる確率そのものが異なることのせいで混乱することが多いのです。(明日に続く)

(大淵 康成)

確率の不思議 - 2. ベイズの定理

2022年7月27日 (水) 投稿者: メディア技術コース

さて、モンティ・ホール問題の続きです。

この問題を確率論的に説明するときに出てくるのが、ベイズの定理というものです。データサイエンス全盛の昨今は、いろんなところで耳にすることがあるかもしれません。ベイズの定理の基本にあるのは、条件付き確率というものです。これは、単に「○○が起きる確率は…」と考えるのではなく、「××が起きたときに、〇〇が起きる確率は…」と考えた場合の確率のことです。

モンティ・ホール問題の確率論的な説明では、こんなふうに考えます。解答者が1のドアを選び、司会者が2のドアを開いたとしましょう。このとき、仮に1のドアが正解だとすると、司会者は2か3のどちらかのドアを選ぶはずなので、2を選ぶ確率は1/2です。「1が正解のときに2を選ぶ条件付き確率は1/2」ということですね。一方、2が正解の場合、司会者は必ず3を選ぶはずなので、「2が正解のときに2を選ぶ条件付き確率は0」ということになります。同じように、「3が正解のときに2を選ぶ条件付き確率は1(100%)」となります。

次に出てくるのが事前確率というものです。これは、先ほどの「1が正解の場合…」という部分の確率ですね。もともとの問題がランダムに作られているとすれば、1,2,3それぞれのドアが正解である確率はいずれも1/3ということになります。

事前確率と条件付き確率を掛け算すると、「××が起きて、そのあとに○○が起きる確率」を計算できるようになります。上記で考えると、1が正解で、なおかつ司会者が2を選ぶ確率は、1/3と1/2を掛けて1/6ということになります。一方、2が正解で司会者が2を選ぶ確率は0%なので無視してよく、3が正解で司会者が2を選ぶ確率は、1/3と1を掛けて1/3ということになります。

ベイズの定理の最後のポイントは、司会者が2を選んだ以上、1が正解で2を選んだか、3が正解で2を選んだかのどちらかしかありえないということです。前者の確率が1/6で後者が1/3、足しても1(100%)になりませんが、気にすることはありません。その比率がそのまま確からしさになるので、後者の方が2倍の確からしさであると思って良いということです。(確率で言うと、前者が1/3、後者が2/3となります)

これでめでたしめでたし、と言いたいところですが、この話には実は続きがあります。(明日に続く)

(大淵 康成)

確率の不思議 - 1. モンティ・ホール問題

2022年7月26日 (火) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

私が研究している音響信号処理という分野は、いろんなことを確率の枠組みで表すので、確率論の基本を理解していることがとても重要です。最近はやりの人工知能という分野も同様で、データサイエンスの基本になるのも確率の考え方です。

確率の話でよく出てくるのが、「モンティ・ホール問題」というものです。どういう問題かというと…

Fig1_20220729171001

  1. 司会者と解答者がいて、その前にドアが3つある。3つのドアのうち1つはアタリ、あとの2つはハズレである。
  2. 解答者はドアを1つ選んだ。
  3. すると司会者が「あなたが選ばなかった2つのドアのうち、こちらはハズレです」と言って、ハズレのドアを1つ開いて見せてくれた。
  4. さらに司会者は「さあ、今からどのドアを選ぶか変えてもいいですよ」と言った。
  5. さて、解答者はドアを変えるべきか、それとも最初に選んだドアのままにすべきか?

もともとは、モンティ・ホールさんという人が司会をしていたアメリカのテレビ番組に出てきた問題のようです。これに対し、よくある議論は、「残ったドアは2つ。どちらがアタリかは五分五分なので、変えても変えなくても同じ」というものです。

これに対し、確率論に詳しい数学者が「ドアを変えた場合、アタリである確率は三分の二、変えない場合の確率は三分の一。なので変える方が良い」と言ったため、それに納得できない人が出てきたりして、大きな論争になったらしいです。

さて、どのように考えると「変える方が良い」という結論が出てくるのでしょうか?(明日に続く)

三人寄れば文殊の知恵

2022年7月25日 (月) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

私が担当する大学院科目「先端音声処理特論」では、音声を扱う様々な応用を題材に、データ処理や機械学習の原理や手法についての講義を行っています。

今日は全7回の授業の最終回だったのですが、これまでにやったことのまとめとして、アンサンブル学習という話をしました。

機械学習にもいろんな手法があるので、目の前の問題に対してどの手法が最適なのか見当が付かない場合もあります。そんなとき、とりあえずいろんなやり方でやってみて、それぞれの結果の多数決を取ればいいというのが、アンサンブル学習の基本的な考え方です。また、一つの手法を決めたとしても、どんなデータを与えるかでも性能は変わってくるので、そうしてできた複数のモデルを使って多数決を取るという方法もあります。

さらに詳しく考えると、沢山のモデルにはそれぞれ得意不得意があるので、単純な多数決よりも、得意不得意に応じて重みづけをした方が良いと考えられます。数学の問題をグループで解くときに、全員で解いて多数決を取るより、普段から数学が得意な人の答を重視した方が良いというようなものですね。でも、どの問題にどのモデルが有効なのかを見極めるのも決して簡単ではないので、その判定もデータに基づき機械学習で行うということになります。プレイヤーのAIだけでなく、マネージャーのAIも作ってしまおうという感じでしょうか。

「三人寄れば文殊の知恵」という発想は、AIの世界にも生きているというお話でした。

7月17日オープンキャンパス開催報告(次世代CGクリエイション 川島研究室)

2022年7月24日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

皆さんこんにちは。メディア学部 特任講師の川島です。
今回は、7/17に実施したオープンキャンパスについて紹介します。
川島研究室では、プロのCGのクリエイター・ゲームクリエイターを目指す学生らのための研究指導を行っています。
7月のオープンキャンパスでは、感染症対策のため各研究室10名程度のキャパシティで紹介を行うルールで実施しました。そのため、来場者1人あたりにじっくり時間をかけて対応できない難しさはありましたが、なるべく多くの方と直接お話する機会を作りたいと考え、短時間の説明と個別のご相談・質問等への対応を繰り返し行いました。
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お陰様で多くの皆さんに興味を持っていただき、1日で200名ほどの方々に立ち寄っていただきました。
お待ちいただく間に少しでも時間を無駄にしないよう、学生スタッフが廊下でも紹介資料や学生作品を上映しながら説明してくれました。
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ご参考まで、このブログにも当日上映していた学生作品のダイジェストを貼っておきます。
8月は8/7、8/21にオープンキャンパスがあります。川島研究室は8/21に再び出展しますので、ご興味のある方々はぜひお立ち寄りください!

メディア学部でシナリオをやる価値(OCでよくある質問)

2022年7月24日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.

そろそろ前期の授業も終わりが見えてきました.
私が担当するプロジェクト演習も,シナリオアナリシスはこの間の金曜日に最終回でしたので,恒例の最終発表会を実施しました.

私がオープンキャンパスで研究や授業の紹介を担当するときは,大抵このシナリオアナリシスの紹介も話の中に混ぜています.そのせいだと思いますが,私の説明を聞いてくださった高校生や保護者の皆様から,よく「シナリオの授業で大事にしていることはなんですか?特徴はなんですか?」という趣旨の質問をいただきます.今年度も6月,7月に1回ずつオープンキャンパスに参加しましたが,両方の回で聞かれました.

シナリオに限りませんが,今はさまざまなことをwebなどを通じて学ぶことができます.
シナリオを書くための共通的なルールを学ぶだけであれば,わざわざ大学や教育機関に通う必要はありません.書籍もさまざまなものが売っていますし,それこそwebを活用すれば現役のプロの方の話も見つかるでしょう.
ですが,シナリオを書くために必要なこと,そして,むしろ一番難しいのは,こういったルールを勉強することではありません.

私が授業で扱っているシナリオは,読んで楽しむための読み物ではありません.
あくまでも,映像コンテンツを制作するための設計図・仕様書です.
設計図であるからこそ,内容が他の人(他の制作スタッフ)に誤解なく伝わるように書かなければなりません.
また,仕様書であるからこそ,明確な企画意図と,この意図を映像コンテンツの視聴者に伝えるための工夫が必要になります.
そもそもシナリオを書くために必要なルールなんて,ごくわずかしかありませんので,これを勉強するのは簡単です.ですが,そのルールに則って,前述した意図や工夫を,伝わるように盛り込むのが難しいのだと,私は考えています.

自分の好き勝手に物語を妄想するだけであれば,アニメ好き・ゲーム好きの多くの人にとって容易なことだと思います.小学校に上がったばかりの甥っ子ですら,色々なおもちゃをつかってやっています.
そこで私の授業では,シナリオの書き方自体よりも,なぜこういうストーリーを書いたのか,なぜキャラクターにこういう行動をさせるのか,といった,「なぜ」を大事にしています.これはさまざまな製品を作る上では当たり前のことです.例えば車であっても,形であったり色であったり機能であったりには,必ず理由があって設計されていると思います.
この「なぜ」を明確にしながら書くためには,単にシナリオの書き方を学ぶだけでなく,さまざまな視点での知見・経験を持っていることが大切です.

例えば心理学的な視点から,自分の作ったキャラクターがどういう印象を与えるのかを考えてみるのも良いでしょう.また,企画としてしっかりとした提案をしていくためには,市場調査の知識があるに越したことはありません.自分の書いたシナリオを土台に,さまざまな専門家達が映像化していくわけですから,シナリオ以外の専門家達がどういう考えでもって仕事をしているのかを知っていないと,わかりやすい設計図は書けないでしょう.

メディアに関するさまざまな専門家である先生方が集まっているメディア学部だからこそ,シナリオをやる価値があると私は考えています.

(文責:兼松祥央)

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その41後編

2022年7月23日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品の40本目「忍びの国」について、どこに注目すべきか述べていきます。

今回取り上げる「忍びの国」は2017年に公開された日本の映画です。現在の三重県にあたる伊賀で、天正6年(1578年)に起きた伊賀軍と織田軍の間で起きた戦い『天正伊賀の乱』をモチーフにした作品です。ジャンルとしては「忍者モノ」といっていいですが、衣装などに「忍者らしさ」を多少加えているものの、魔法や超能力のような忍術は登場せず、各種アクションシーンの強調によって「忍者らしさ」を表現しています。

この作品でシナリオライターとして注目すべきは「歴史的背景のある作品の魅力を伝える難しさ」です。

本作は「忍者」を題材にしていますが、どちらかというと忍者発祥の地として最も有名な土地のひとつ「伊賀」に注目した内容で、当時の伊賀の領民が忍者として各国に傭兵として出向いていた背景や、その当人たちの価値観、思考などを中心に描いています。主人公の無門は確かに無類の強さを持っており、その活躍ぶりは超人的といっていい描かれ方をしているものの、物語上あまり正統派のヒーローとは言えない立ち振るまいが目立ちます。

ある意味、無門は主人公らしからぬ、これといった信念の無い、いい加減な人間で、ただただ金のために動く男です。しかし、それは当時の伊賀の国の状況を考えれば、特におかしなことではなく、そもそも作中において敵対勢力となる織田軍が織田信長に仕えているように、明確な君主が伊賀にはいません。そうなるとなおさら、伊賀の人間が自分の食い扶持を得るためだけに動くことは、とても自然なことになるのです。

もっと言うなら、最終的に主人公の敵となる伊賀の首脳陣「十二家評定衆」は、主人公と同じ伊賀の人間の中でも更に利己的であったがゆえに反感をかっているわけですが、同じ打算的な思考の中でも微妙な差異があることを理解して楽しむには、歴史の予備知識が必要になります。残念ながらそれをすべて説明するには、この映画の125分という長さは短すぎるのです。

この「忍びの国」は、物語の大筋を理解する上で本当に大事な情報はしっかり盛り込み、何も歴史的知識がない人でも楽しめるシナリオにはなっているとは思います。しかし、前述した伊賀の人間の打算的な考え方にかぎらず、例えば本作のキーアイテムである「小茄子」という茶器がどうして国ひとつに相当する価値を持っていて、しかしながらパッと見は小ぶりで脆い器でしかなく、それをラストシーンであっさり砕いてしまうことに、どれだけ重大な意味があるか、は予備知識の有無で大きく印象が変わるでしょう。

もちろん、基本的にはどんなシナリオも初めて見る人が理解できるように書くべきです。ただ「理解が深まるとより楽しめる」という要素をシナリオに組み込むことはとても難しく、またどの程度まで作中で触れて表現するのか、はとても悩ましい部分です。やりすぎてしまうと、観客を楽しませるどころか、映画の進行テンポの悪さを感じさせてしまうからです。

「忍びの国」は、何も知らずに観ても十分楽しめる作品でありつつも、歴史の予備知識があれば、より楽しめる作品になっています。そのバランスが絶対正しいというわけではありませんが、自分がシナリオライターなら何を強調して、何を切り捨てるだろうか、と考える上でもたいへん参考になる昨品です。ぜひ一度見てみてほしいです。

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その41前編

2022年7月22日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。

前編となるこの記事は、あらすじのまとめが中心です。

後編ではその内容をもとに注目すべきポイントを述べますので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。

取り上げる映画は次のタイトルです。

『忍びの国(2017)』

○監督
中村義洋

○脚本
和田竜

○あらすじ

天正4年(1576年)。伊賀の国では豪族同士が小競り合いを繰り返していた。そんな小競り合いの中を巧みに渡り歩いて助太刀しては報酬を稼ぐ男がいた。その名は「無門」。ひとたび城攻めに加担すればこの男に開けられぬ城門は無い、とのことからそう呼ばれた男だった。戦場では無類の強さを誇る無門だったが、家に帰れば妻・お国の尻にしかれる日々。良い稼ぎする暮らしを約束してお国を娶ったものの、不安定な稼ぎの無門はお国に頭が上がらなかった。

この頃、伊賀の国は織田信長による勢力拡大の標的とされていた。伊賀の豪族たちは小競り合いをしつつも、これをのらりくらりとかわしていた。しかし、業を煮やした織田軍はついに信長の息子・信雄が軍勢を率いて伊賀に攻め込むことになった。これに慌てた伊賀の首領組織「十二家評定衆」は詳しい状況を知るべく、無門を偵察に向かわせた。なんなく敵軍内に潜入した無門は今回の織田軍が伊賀を攻め滅ぼすつもりで来ており、勝ち目がないことを悟る。

偵察を終えて脱出しようとした無門は、偶然にも織田軍の捕虜となっていた伊勢の国の姫に出会う。伊勢は織田軍に滅ぼされて間もなく、その後は酷い仕打ちをうけているという。無門は伊賀もまたそうなる前に伊賀から逃げ出そうと考え始めていたが、伊勢の姫は、伊賀には織田信長に負けないで欲しい、と告げ、一国分の金銭にも相当する茶器「小茄子」を無門に託し、自害した。

複雑な想いを抱えながら伊賀へ戻った無門が報告を行うと、十二家評定衆は劣勢でも徹底抗戦を決める。しかし、伊賀は何の報酬もなく戦うことに賛同しない打算的な者たちが多く、十二家評定衆の決定に従わず領民は我先にと逃げ出し始めた。無門もまた、成り行きで手に入れた「小茄子」を売り払って他国で暮らすことを妻・お国に提案し、伊賀をたつことにした。

伊賀軍は織田軍を迎え撃つべく挙兵したが、ほとんど数は集まらず悲惨なもので、到底太刀打ちできない状態だった。そうなることはわかりきっていた無門だったが、妻・お国から「このまま無様に国を捨ててよいのか」という問い掛けに一念発起。周囲にいた伊賀の者たちに「小茄子」を売った金銭で多額の報酬を約束すると、彼らを率いて伊賀へ引き返し、救援に向かった。

織田軍は突如戻ってきた伊賀の増援によって総崩れとなる。なんとか城にたどり着いた将兵たちだったが、大将・信雄を待ちぶせていたのは無門だった。信雄の首を取ることはことは容易かったが、自らの命と引き換えに決闘に臨み、十二家評定衆が内通していたことを暴露した、信雄の家臣・平兵衛に免じて、無門はその場を退いた。

無門が伊賀の国に帰還すると、十二家評定衆は勝利に気を良くして大宴会の真っ最中。何もかもが十二家評定衆らの打算的な思惑によって引き起こされたことに怒りを覚えた無門は、十二家評定衆を糾弾する。それでも全く悪びれる様子のない十二家評定衆は、その場にいた伊賀の者たちに、無門を打ち取れば多額の報酬と地位を与えるとけしかけてきた。

窮地に陥る無門だったが、お国が「小茄子」を掲げて注目を集めた隙をついてその場を脱出。しかし、その間際に無門をかばったお国は命を落としてしまう。どこまでも打算しか考えない伊賀の連中に愛想の尽きた無門は「小茄子」をその場に叩きつけて破壊し、お国の亡骸と共に姿を消した。

その後、織田軍を退けた伊賀の名声は一時的に上がったが、同時に織田信長の怒りを買って再度侵攻され、無門のいなくなった伊賀は滅ぼされてしまうのだった。

・・・次回は、この作品でシナリオライターとしてどこに注目すべきか、について述べていきます。どうぞお楽しみに。

第18回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)

2022年7月21日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点」として、定期的に私が何度も遭遇してきた「シナリオの欠点(あな)」について書いていこうと思います。今回取り上げるトピックは・・・

「ターゲットを定められずに書かれたシナリオの欠点(あな)」です。

シナリオライターというと、なんとなく真っ白な原稿用紙にペンでイチから文章を書き込んでいくような姿を想像する人は多いと思います。

しかし、シナリオライターがイチから企画を立ててシナリオを執筆することは、実際のところ、ほとんどありません。多くの場合はクライアントやプロデューサーから大まかな企画の内容を説明され、その企画にあわせたシナリオを書く場合が多いです。

とはいえ、依頼された案件であろうと、自分がイチから執筆するシナリオであろうと、よく考えなければならない要素が、その作品を見ることになる「ターゲット」です。これは、言い換えるなら「そのシナリオは誰に向けて書くのか」という命題でもあります。

「誰のために?」という問いがあるとするなら、シナリオ執筆未習熟者には「自分のためにシナリオを書いてしまう」人が多いです。報酬を得るためや、受賞を狙うためなど、そういう意味では確かに自分のためにシナリオを書くことになるわけですが、ここで言う「誰のために」とは、そういう意味ではなく、シナリオの内容自体の話です。

シナリオ執筆未習熟者が勘違いしてしまいがちなのは「自分が面白いと思えるシナリオを執筆できれば評価される」という思い込みです。自身の感性や価値観を信じてシナリオを執筆すること自体は決して悪いことではないですし、執筆者本人の得意分野を活かすこともなんら問題ありません。大いにやるべきです。

しかし、それらがすべての人の理解と共感を得られるわけではなく、ましてその内容を享受する側、消費する側が楽しめるかどうかは別のことだと把握しておくべきです。シナリオを執筆した本人が「面白い」「楽しい」と考えて執筆した内容を、同じように誰もが「面白い」「楽しい」と感じるわけではないのです。

ゆえに「そのシナリオは誰に向けて書くのか」を、しっかり見定めて書く必要があります。「誰でも楽しめるシナリオにしました」と主張することは簡単ですが、本当に「誰でも楽しめる」ようにすることは、決して簡単ではありません。

東京工科大学メディア学部に入学してきて、初めてシナリオの執筆に挑戦したという大学生に「作品のターゲット」を尋ねたとき、最も多い答えのひとつは「10代~から20代前半の、自分と同じぐらいの年齢層」というものだったりするのですが、彼らは自分と近い感性をもった人たちを想定してはいるものの、そのターゲットが、これから作るシナリオのどの部分に理解と共感を示すか、考慮していないことが多いです。

私は「第2回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)」でこう述べました。

http://blog.media.teu.ac.jp/2021/05/post-883c4f.html

『自分が経験してきた年代かつ記憶にも新しい年齢を設定して「10代の若者」をターゲットに想定したくなる気持ちはよく分かるのですが、それでも「10代の若者」という区分はとても広く、また多感な年齢であることも考慮すると、もっと条件を絞り込んで作品を作らないと、適切な形で受け入れてもらうことは難しいです』

大学生の年齢を考えれば「10代の若者」を自分で経験してきたことは間違いないでしょうが、当時10代だった執筆者と同じように、今現在の「10代の若者」が、その作品を受け止めるとは限りません。それはそのシナリオを享受するターゲットの設定としては理解と共感が得にくくなることを意味し、「シナリオの欠点(あな)」になりうるということです。

こういった感覚のズレは、世代が違うほどに大きくなっていきます。得意分野のシナリオを書くときほど、最終的なターゲットの特徴を見誤らないようにしたいものです。

工科大メディア学部でのゲームデザイン「ミニ講義」

2022年7月20日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

皆さんこんにちは、特任准教授の安原です。
いよいよ高校生の夏休みも近づいてきました。東京工科大学メディア学部では、大学進学を控えての高校生の皆さんに向けて、
たくさんのイベントを楽しめる「オープンキャンパス」を開催しています。
拙研究室では、インタラクティブ・コンテンツに関しての研究を行っていますが、それに関連してオープンキャンパスでは
「ゲームはなぜたのしいの?」というテーマで「ミニ講義」をさせて頂いてます。

 ゲームはおもしろくて当たり前、だと思われていませんか?でも、「なぜたのしいのか、おもしろいのか」を考えることはあまりありません。
 たのしい・おもしろい理由、それはゲームも工業デザインのように「デザイン(設計)」されているからです。しかし、その知見はあまり知られてはいません。ヒトをたのしくさせるゲームのデザイン手法は数多く研究されているのです。
 大学でヒトにとってより良いインタラクティブなコンテンツを作るために必要な知識を学び、自分でおもしろいゲームを作るために、ゲームデザイン、ゲームグラフィック、ゲームプログラムにその知識は使われています。
それは一言では言えない知識ですが、前回のオープンキャンパスでは特別に20分という時間にものすごく圧縮してお話しさせて頂きました。
とても大変だったのですが、みなさんに喜んでもらえたようで、多くのポジティブな感想をいただきました。
次回のオープンキャンパスでも機会があればお話しさせて頂こうと思います。
また、大学の演習で学生有志のみなさんが制作したたくさんのゲームを用意しています。ゲームを作ることに興味のある人もゲームを遊ぶのが好きな人も、大学でどんなゲームを作っているのか、興味を持っていただけると嬉しいです。
工科大オープンキャンパスに足をお運びの際には、是非メディア学部にもお立ち寄りください、お待ちしています。

7月17日オープンキャンパス開催報告(片柳研究所棟)

2022年7月19日 (火) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.

今日は7月17日に開催したオープンキャンパスの様子を紹介します.メディア学部では八王子キャンパスの中でも,片柳研究所棟と研究所棟Cの2ヶ所で展示を行いました.今日は片柳研究所棟の様子を紹介します.研究所棟Cの様子は,昨日の椿先生の記事をご覧ください.

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片柳研究所棟でゲーム展示をしている学生チームは,毎回前日の土曜日に会場の設営等,さまざまな準備をしています.土曜日は残念ながら雨が降っていて,オープンキャンパス当日の天気を心配していました.当日の明け方になってもまだ,少し雲行きは怪しい感じがしていましたが,開催時間ごろには天気もすっかりよくなり,安心しました.むしろ,ちょっと暑くなりすぎたくらいでした.八王子キャンパスはとても広いので,ご参加いただいた皆様は移動が大変だったかもしれません.

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メディア学部のオープンキャンパスは,片柳研究所棟地下ホールでの大渕学部長による学部紹介からスタートしました.
単純に理系文系では分けられないメディア学,そしてそのための学部の取り組みや工夫をご理解いただけましたでしょうか?

学部紹介の後は,各所で行われている展示や催物を自由に見学できる時間です.
片柳研究所棟では4階のCTCで,私がCTCやゲーム関連演習,三上・兼松研の紹介などを行い,5階MTCでは学生が開発中のゲーム展示を行なっていました.

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4階CTCにも多くの方にお越しいただきました.
私が口頭でお話しさせていただいた他,CTC内外でゲームやアニメに関する研究紹介パネルの展示と,これまでの研究成果をまとめた動画展示を行なっていました.
普段も授業などで人前で話すことには慣れているはずなのですが,やはりオープンキャンパスで話すとなるといまだに緊張して,だいぶ噛んでしまいました.むしろ,次にご紹介する5階で展示している学生達のほうがスムーズに喋れているなぁと毎回感心しています.

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5階MTCでは,プロジェクト演習でゲーム開発を行なっている学生たちが,開発中のゲームを展示しました.
この学生達は9月に東京ゲームショウ出展を控えています.
彼らのような東京ゲームショウ出展を目指す学生にとって,毎回のオープンキャンパスは出展の練習的な側面も持っていて,毎年学生達自身で展示方法の検討から,準備,必要機材の申請などを行なっています.今年の各チームは,事前に学生同士で相談して自主的に計画を立てることに対してとても力を入れています.

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メディア学部でのゲーム教育は,単にゲーム開発に関する個々のスキルを学ぶだけでなく,チームを結成してゲームを企画するところから,ゲームを社会に出すところまで経験できることが大きな特徴のひとつです.ゲーム会社であれば当然やっていることを,1年生のうちから総合的に体験・学ぶことができます.
オープンキャンパスでは基本的に,このように展示しなさいと,教員側から展示方法を強制することはありません.今回のオープンキャンパスは今年度2回目ということもあり,学生達が前回のオープンキャンパスの反省点などを事前に話し合いました.そして,ゲーム機の台数調整はもちろん,お待ちいただく皆様ができるだけ退屈しないような工夫を行なっていました.
次回展示の際には,さらに成長した姿を見せてくれると信じています.

以上,7月17日オープンキャンパス,片柳研究所棟の様子でした!
次回のオープンキャンパスは8月7日です.お申し込みの受付も既に始まっています!

(文責:兼松祥央)

8月7日(日)本年度3度目の来場型オープンキャンパス開催! 事前登録受付中!!

2022年7月18日 (月) 投稿者: メディア社会コース

皆さんこんにちは、メディア学部社会コースの森川です。
昨年までコロナの影響でなかなか実際に皆様にキャンパスに来ていただくことができませんでしたが、今年は人数を制限した形ではありながらも、既に2回来場型のOCを開催しています。
そしていよいよ本年度3回目の来場型OCが8月7日(日)に開催されます!
ご参加には事前予約が必要となります(定員制)。
本日より受付が始まっていますので、是非こちらからお申し込みください。

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今回のOCには、メディア学部から下記の16の研究室が参加します。

【メディアコンテンツコース】
● 菊池研 VFX映像の作り方:CGによるVFX映像がどのように制作されるのかを紹介します。
● 佐々木研 映像のライブ配信を体験してみよう:学生情報局による番組制作と映像配信の実際を紹介します。
● 竹島・戀津研 コンピュータビジュアリゼーション:可視化によるデータ解析の事例を紹介します。
● 伊藤(謙)研 楽曲分析と音楽制作:音楽系研究室での研究・制作の取り組みをポスターでご紹介します。

【メディア技術コース】
● 大淵研 デジタル音響処理と人間の聴覚:いろんな音をコンピューターで作ったり調べたりします。
● 太田・加藤研 UI,UXの研究紹介:人とコンピューターの関わりについて研究を紹介します。
● 柿本・盧研 ビジュアル情報学:CGのモデリング技術とレンダリング技術の応用研究を紹介します。
● 羽田研 メディアとエンタテインメント:ゲームではないエンタテインメントのためのコンピュータの使い方について紹介します。
● 千種研 メディア学部生のデザイン力を地域貢献に:プロジェクト演習で活用しているcanvaによるデザイン制作例を紹介します。
● 永田研 画像処理あれこれ:画像認識の為の技術を紹介します。
● 松吉研 ことばを扱うコンピューター:テキストデータを知的に処理する技術を紹介します。

【メディア社会コース】
● 進藤研 デジタルマーケティング:デジタルマーケティングの最新動向をご紹介します。
● 松永・鈴木研 “進化+深化”の eラーニングの世界:様々なゲーム教材を紹介します。
● 藤崎研 SNSとマーケティングコミュニケーション:SNSを活用したマーケティングコミュニケーションについてご紹介します。
● 森川研 メディア&エンタテインメント研究:メディアの未来を探求する研究の世界にご招待します。
● 吉岡研 聞こえのバリアフリー:情報技術を活用して多様性のある社会を目指します。

お陰様で毎回ご好評をいただいており、特に午前中の枠はすぐに埋まってしまう可能性があります。
どうぞお早めにお申し込みくださいませ。

当日は私の卒研室も出展していますので、ご来場の際は研C-322に足を運んでいただけると嬉しいです。
在籍中の学生が研究に関する説明をさせていただいたり、学生生活についてなど各種ご相談にお答えいたします!

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尚、オンライン型のバーチャルオープンキャンパスも開催されます。
こちらは配信期間中に自由にご覧いただけますので、併せてご利用いただけると幸いです。

東京工科大学メディア学部に興味を持っていただいている皆さんと、直接またはオンラインでお目に掛かれることを楽しみにしています!!

(メディア学部 森川 美幸)

7月17日オープンキャンパス開催報告(研究棟C)

2022年7月18日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の椿です。こんにちは。

7月17日にオープンキャンパスを開催しました。メディア学部は今回も片柳研究所棟と研究棟Cの両方で実施しました。この記事では研究棟C(研C)の様子をご紹介します。研Cでは15の研究室が研究紹介を行いました。上の階から順に写真を載せます。

  • 竹島・戀津研

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  • 飯沼研

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  • 盛川研

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  • 小林研

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  • 山崎研

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  • 菊池研

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  • 羽田研

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  • 吉岡研

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  • 安原研

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  • 椿研

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  • 伊藤[彰]研

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  • 榎本研

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  • 渡辺研

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  • 藤崎研

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  • 川島研

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あと、写真を撮るのが思ったより難しかったです。感染対策で各研究室には10人までというルールでしたので、満員の部屋に入らないように、また、お客様の顔が写らないようになど、気を付けながら撮りました。そのため、実際の雰囲気が伝えきれない部分もあります。お客様の来場直前に撮った写真も載せました。

学生スタッフの皆さんも真剣でしたので、さぞかし疲れたことと思います。お疲れさまでした!

高校生の皆様、8月にも開催しますので、またお越しくださいね。

左手

2022年7月17日 (日) 投稿者: メディア社会コース

 「女性」だけ「男性」だけではなく「全ての人々」が関わることであると主張を昨日はしましたが、
社会は「女性」や「男性」をどう見ているのかということを含むジェンダー研究はとても大事だと思います。
私はジェンダー研究の当事者ではありませんが、様々な研究成果は目を見張るものがあります。
 
 私たちが今普通だと思っている「女性」や「男性」、LGBTQIA+を観察して、
その観察結果を考えることは今を生きる私たちに大事なことだと思います。

 さて、私にこのようなことを考えさせたきっかけは、SF作家ル・グィンの『闇の左手』です。
映画にもなった『ゲド戦記』の作者は、性別が変化する人を全く自然に描いていました。

 この解説だけ読むと、読むのに面倒な本だと思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません。
大学時代に友人とこの本の感想を話すために、2時間近くの長電話をして、
それでも足りず大学に登校しても休み時間も食事の時間も話し合ったことを思い出します。

山崎晶子

 

ジェンダー研究

2022年7月16日 (土) 投稿者: メディア社会コース

「女性」だけ「男性」だけではなく「全ての人々」が関わることであると主張を昨日はしましたが、
社会は「女性」や「男性」をどう見ているのかということを含むジェンダー研究はとても大事だと思います。
私はジェンダー研究の当事者ではありませんが、様々な研究成果は目を見張るものがあります。

 
私たちが今普通だと思っている「女性」や「男性」、LGBTQIA+などを、
例えばジェンダーの当事者性とさらにそれが含む範囲を観察して考えることは、今を生きる私に大事なことだと思います。

山崎晶子

 

当事者は誰か

2022年7月15日 (金) 投稿者: メディア社会コース

 2日目に書いたギデンズの記述は「男性」も「当事者」であること、
歴史的にみて「男性」の方が収入も多く政治的決定権が多いことを加味すると説得力のある意見だと思います。

 しかし、昨日と一昨日書いたように、「女性」が当事者と思われている行為も「男性」が関わることが
あることは火を見るより明らかです。
 同性愛(だけではなくLGBTQIA+)の当事者性と1日目から書いている「女性」が行うこととは違うという批判はうけると思いますが、
ここで私は「女性」だけ「男性」だけと思われたり、考えられてきたことは、実は双方とも関わることであるとしたいです。

山崎晶子

 

セクシュアルハラスメント2

2022年7月14日 (木) 投稿者: メディア社会コース

セクシュアルハラスメントについて「女性」や「男性」と言うことは、性別を基準にして判断することとして

批判もされると思います。しかし、男性だけ女性だけの問題ではなく、誰にでもどんな人にもその人の生まれながらの

属性を基本としてハラスメントがあるかもしれないことは、誰でも考えておくべきことだと思います。

 

山崎晶子

セクシュアルハラスメント

2022年7月13日 (水) 投稿者: メディア社会コース

今回の、裁判所の判決を受けて、男性も多くの意見を述べています。
社会の中にはある種のことは「女性」しかあるいは「男性」しか「知らない」「行わない」「できない」と思われることがあります。

例えば、「セクシュアルハラスメント」に関して正しい答えをもっているのは、
「女性」だけとする場合があることをある研究では示しています。
しかし、「男性」の「男性」に対するセクシュアルハラスメントは以前から報告されていますし、
「女性」の「男性」へのセクシュアルハラスメントも同じように以前から報告されています。

男性の方が「セクシュアルハラスメント」を受けたことを恥としたり言い出せないことは憂慮すべきことだと思います。
実は、「女性」だけが「行われること」「知っていること」は「男性」も当事者であることが多いのです。

 山崎晶子

男性と女性

2022年7月12日 (火) 投稿者: メディア社会コース

 アンソニー・ギデンズは、イギリスの著名な社会学者で構造化理論の研究者です。
ギデンズの院生だったアメリカ人と偶然飛行機の中で話したことがありますが、ギデンズはとても良い教師だったと教えてくれました。
彼の大部の著作である『社会学』は、ギデンズ社会学の代表的なものです。
私の社会学者としての立場はギデンズとはちょっと違うのですが、
ギデンズの『社会学』はちょっと古いし何にせよ厚い本なので読みづらいと思うかもしれませんが、とても面白い本です。
興味がある方は読んでみてください。
 
 ギデンズの説明に時間をとられて迂遠になってしまいましたが、『社会学』で気になる記述がありました。
「同性愛の権利が改革されたのは、同性愛者には男性がいたからである。男性は不当と感じて改革をした」という内容でした。
実際は女性と男性だけではなく様々な性自認の人々が、LGBTQIA+の活動の権利の活動をしています。
それなのに、未だにこの記述がある意味説得的なのはなぜでしょうか?
   
山崎晶子

女性だけの問題なのか?

2022年7月11日 (月) 投稿者: メディア社会コース

 アメリカの連邦高等裁判所が、「中絶は憲法で認められた女性の権利」という判断
を49年ぶりに覆したことは様々なメディアで報じられています(例、NHK等)。
アメリカの州の中では、中絶を違法とすることにしたところもあります。
また、最高裁判事のクラレンス・トーマス氏は同性婚に関しても覆す可能性があることを示唆しており、
このことは、アメリカのみならず世界の潮流に影響を与えると思われます。
 こでは、憲法判断の是非についてお話するのではなく、
「女性」だけの問題なのかというお話を1週間していきたいと思います。

      山崎晶子

 

     

昔話

2022年7月10日 (日) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。寺澤です。

私が東京工科大学に着任したのは1994年です。着任してすぐにかかわったことの一つに本学のインターネット接続があります。WIDEプロジェクトという現在でも活発な研究活動をしている組織横断的な研究グループがあります。著名な村井純先生が創始されたプロジェクトです。当時、国内ではインターネット接続の手段は限られていましたが、WIDEプロジェクトはインターネットの運用自体も研究対象としているため、各大学がインターネット接続をする際にWIDEプロジェクトのバックボーンネットワークに接続させてもらうことが少なからずありました。本学も、八王子及び周辺地域に所在するいくつかの他大学と一緒にWIDEを通じて初めてインターネットに接続しました。その際、WIDEの東京NOC(ネットワークオペレーションセンター)と対向する八王子NOCが本学内に置かれることになりました。つまり、東京からの線が本学まで入った後、各大学へ延びていく形態となったのです。確か最初の東京への接続は1.5Mbpsの専用線接続だったように思います。

メディア学部が開設されたのは1999年ですが、WIDEの研究にも参加してSOI(School on the Internet)や衛星インターネット接続の実験などもやっていました。(記憶があいまいで前後しているかもしれません)

その後、インターネット接続の業者も増えサービスや価格の選択肢も豊富になってきた時点で、各大学がインターネットへの接続形態を変更していき、やがて本学もWIDEと他のサービスとの併用期間を経て、最終的にはWIDEとの接続は解消されました。本学は八王子NOCとしてのサービスをしていましたが、WIDEには長期にわたっていろいろお世話になった側面の方が大きかったように思います。

先日、WIDEのNOCをしていたころの機器類がまだ学内に残っていることが分かり、その対応をしました。博物館に行くような年代物ですが、かえって貴重でもあり、WIDEの側で保管する方向で検討していただけるようです。

(メディア学部 寺澤卓也)

南多摩中等教育学校生徒さんのUnity講座

2022年7月 9日 (土) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。

先日7月6日(水)に東京都立南多摩中等教育学校の生徒さん9名が本学八王子キャンパスに来訪されUnityを用いたプログラミング講座が行われました。今回の訪問は学校側からのSTEAM教育への協力依頼に基づきメディア学部が準備したものです。片柳研究所棟のメディアテクノロジーセンター(MTC)にて2時間の講座が行われました。

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講師はプロジェクト演習でもUnityを指導していただいている演習講師の藤森先生にお願いし、アシスタント5名も演習のTAやUnityでゲーム制作をしている学生にお願いしました。

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生徒さんはほとんどの方はUnityは初めてだったようですが、Unity自体の説明とプログラムの説明を聞きながら簡単なボールゲームを作りました。コインがプログラムで回転し、ボールはキーボードで操作できるようにして、ボールを動かしてコインを取ると音が出るという感じのものです。

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講座終了後に、当日アシスタントをしてくれた学生のうち2名に、実際にUnityを用いてチームで制作し東京ゲームショウに出品したゲームについて紹介してもらいました。

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とても短い時間でしたが、プログラミングの面白さを感じてもらえたかなと思います。特にUnityでは書いてすぐにゲームのように動かせるので、他の環境で地道に(?)プログラミングを勉強するよりも、モチベーションを保てるのではないかと思います。

また、このような講座はぜひやりたいですね。学校側とも継続的に協力関係を築いていければと考えています。

(メディア学部 寺澤卓也)

若者よ!選挙に行こう!! Part3

2022年7月 8日 (金) 投稿者: メディア技術コース

新しい研究テーマを始めた健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアをつかって自らの健康をデザインするための研究を行っている研究室です。

前回のブログで、若者に選挙に行ってもらうためのポスター制作をしてもらいました。しかし、単に「選挙に行こう」と言って、実際にそれが行動につながるでしょうか?たまたま期日を忘れている人がいた場合には効果があるかもしれません。しかし若者に限らず投票率が低いことには別の理由があるのではないでしょうか?

そこで次に三瓶くんの作品を紹介します。

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まず三瓶くんの作品は前回の参議院選挙の時の投票数(世代ごとの投票総数)を可視化して、それによって、若者世代が非常に影響力が弱いことを的確に示しています。理系タイプの人に訴える効果が高そうです。

そして神田くんの作品も紹介します。
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投票日を明示して、あれ何のことだろうと疑問に思わせて、さらに読まないと理解できない構成です。これは過去から今まで散々言ってきた、選挙に行こう、選挙に行こう、と言っても、実際は言ってないのだから別のアプローチで読ませるアプローチにして制作したポスターとのこと。その気づきと解決策としてのポスターデザインが秀逸でした。



若者よ!選挙に行こう!! Part2

2022年7月 7日 (木) 投稿者: メディア技術コース

新しい研究テーマを始めた健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアをつかって自らの健康をデザインするための研究を行っている研究室です。

前回は社会課題として、若者の政治における意見は高齢者に比べて5分の1しか意見が反映されていない、という深刻なものでした。ではそれをメディアの力でなんとか解決する糸口は何かみつからないでしょうか?

この疑問もしくは社会課題を解決する一助として、投票率を向上させるポスター制作を、プロジェクト演習「企業・団体のプロモーション技法」において1コマの課題としました。

その結果、複数の作品が提出されました。1枚目が藺草さん、2枚目が栗原さんの作品です。

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まず、藺草さんの作品を見てみましょう。選挙の日程、期日前投票の日程と、選挙に行こう、というキャッチコピーで必要な情報はそろっていますね。そして、次に栗原さんの作品を見ていきましょう。高校生らしき制服を着た男女が前に進むというイメージと選挙に関連する情報で心に訴えかけている感じがしてきます。

そして、ここで疑問です。これまで選挙の投票を呼び掛けるポスターはたくさんありましたが、そのポスターの効果はどうだったでしょうか?

つづく




 

若者よ!選挙に行こう!! Part1

2022年7月 6日 (水) 投稿者: メディア技術コース

新しい研究テーマを始めた健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアをつかって自らの健康をデザインするための研究を行っている研究室です。

そろそろ参議院選挙も佳境ですが、皆さんは選挙に行きますか?またはもう期日前投票をすませましたか?
ということで今回の話題は選挙です。

ヤフーニュースによると、2017年10月22日に投票・開票が行われた衆議院議員選挙、つまり第48回衆議院議員総選挙における投票者ピラミッドなどを作成し、世代間の意見力について投票率の観点から考察しています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20200706-00186658

まず、よく見る世代別の投票率です。一般的に若者の投票率が低くて、高齢者の投票率が高い、という程度の情報です。しかしよく考えてみてください。これだけで全体を把握できているでしょうか?選挙は得票率で当選が決まりますが、そのベースとなるのは投票数ですよね。

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ということは、世代ごとにどれくらいの人数がいるかわかる情報があるとよいですね。これは総務省が良く提示している人口ピラミッドが役立ちます。そして、上記のサイトでは、投票数も各年齢層の四角い箱の小さい部分(単位:万人)としてプロットしてくれています。


Photo_20220709000102その人口ピラミッドの女性18歳~34歳の17歳の年齢幅の投票数は371万人、男性18歳~34歳の投票者数380万人です。また女性65歳~69歳の5歳の年齢幅の投票数は363万人、男性65歳~69歳の投票数は347万人です。おどろくことにほぼ同じ投票数となっています。

つまり、65歳~69歳の高齢者の投票数は、若者の18歳~34歳の約5分の1以下の年齢幅なのに、投票数がほとんど同じです。つまり若者は少ない人口構成であり、さらにはより低い投票率であるため、自分たちの世代の意見を高齢者に比べて5分の1しか意見反映できていないことになります。

つづく
そして驚くことに、この17年間の幅を持つ若者の投票数と

プロジェクト演習(国際交流の試み)

2022年7月 5日 (火) 投稿者: メディア技術コース

Hello, Bon jour!, 今回は、海外の学生と(英語で)協力してなにかするというプロジェクト演習について紹介いたします。といっても、これまでにも何回かブログに書いてきました(記事の最後にこれまでの記事へのリンクがあります)。いままでは、コロナによる渡航制限により、海外大学の人たちとはオンライン(Zoom、SNS)で会話することにしておりました。今期も交流掲示板を用意して文通?相手をみつけてSNSでやりとりする、ということを行っておりましたが、幸運なことにフランス(ISART DIGITAL)から研究生として6,7名やってきており、彼らに声をかけたところ参加してくれることになりました。彼らはフランス語は当然ですが英語もできます。また日本のコンテンツ好きということで、日本語もかなりできるのです(びっくり!)。ということで、今期途中から海外の人達と直接会話するということができるようになりました。本来の目的とは異なるアクティビティに快く参加してくれた研究生達に感謝いたします。

 

さて、実際に対面して簡単な自己紹介の後、はじめは私が間に入っていろいろと話しかけていましたが、そうすると私とフランス人学生がほとんど会話しているみたいになってしまいがちです。そこで翌週からは学生同志で小グループに分かれて好きにお話ししてね、ということにしてみました。フランスの学生たちは日本語の練習をしたいという希望があるので、会話は英語と日本語のちゃんぽんでやってくださいということにいたしました。

 

実際蓋を開けてみると、それなりに活発に話をはじめたように思えました(画像参照)。それなりに話は盛り上がっているようにも聞こえました(私は外からちょっと様子を伺っていたくらいですが…)。ただ、やはりグループとなると、活発に話す人と、なかなか話せない人が存在するようです。これには性格だけではなく外国語で話すという要素もあるのだと思いますが、こういう機会で観察していると、外国語で会話できるようになるには語学力以上に「話す」という意識を強く持てるということがより重要なように思えます。そのためには会話のトピックスを自分から率先してだしたり、YES、NOだけでない返答で会話を盛り上げるようなことも必要です。これらは英会話に限った話ではなく、日本語での会話でも同じことですよね?会話ができないのは英語のせいだという気持ちになってしまいがちですが、実は気持ちの部分が大きいのではないでしょうか…。是非頑張ってこうした得難い機会を活用して欲しいと願っています。

 

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単なる会話を続けているだけでもいいといえばいいのですが、せっかくですから何か成果として残るものができるといいなと考えて学生たちに提案してみました。フランスの研究生達にとっても、個人個人のプロジェクトを行っているだけでは外国の大学に留学している醍醐味?が薄いのではないかと勝手に思い込み、現地の学生と何かを作り上げる結果を残すのはいいんじゃない?…とそそのかし?てみました。無事、皆の賛同が得られたので(本当か?)現在では、それについてのディスカッションをしている状況です。面白い成果ができることを期待しています。成果は後期になるかな?

 

これまでのこのクラスの試みについては、以下のページにありますので併せて御覧ください。

 

プロジェクト演習(英語で取り組むワークショップ #1, 2, 3)

http://blog.media.teu.ac.jp/2021/05/post-d447b4.html

http://blog.media.teu.ac.jp/2021/05/post-db3f60.html

http://blog.media.teu.ac.jp/2021/05/post-b60fb1.html

 

海外大学とのオンラインによる交流クラス(英語で取り組むワークショップ #4)

http://blog.media.teu.ac.jp/2021/06/post-d4efd7.html

 

海外大学との交流クラス最終発表会(英語で取り組むワークショップ #5)

http://blog.media.teu.ac.jp/2021/08/post-ded90c.html

 

 

太田高志

 

 

暑い日の音速

2022年7月 4日 (月) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

私は音の研究をしているので、担当する授業も音に関するものが多いです。そして、音に関する授業で最初に出てくるのが v=fλ という式です。vは音の速さ、fは周波数、λは波長を表しています。高校の物理でも出てくる式ですね。

この式が出てきたときには、たいてい「ちなみに空気中の音速はだいたい秒速340mです」という話をします。音速については、このブログでも書いたことがありますが、そんな話をうんちくとして語ることもあります。

ただ、音速が秒速340mというのは、実は気温が15度ぐらいのときの話で、気温が変わると音速も変わります。その関係は、簡単な近似のもとでは v=331.5+0.6t という式で表され、気温tの値が大きくなるほど音速も速くなります。最近は猛暑が続いているので、音速が340m/sだなんて安易に言うのもよくないかな、と思ってあらためて計算してみると、気温40度では秒速355.5mとなってしまい、すいぶん誤差が大きいことがわかりました。

この違いがどんなところに現れるかを考えてみたのですが、例えばドップラー効果には音速が影響します。救急車のサイレンの音は、高い方が960Hzだそうですが、これが時速60kmで近づいてくるとすると、音速340m/sの場合には約1009.5Hzに聞こえるはずです。一方、音速355.5m/sだと聞こえる音は約1007.2Hzとなり、約2.3Hzの差が生じます。音感の良い人なら、「今日は暑いから救急車の音が低いなあ」なんて感じるかもしれませんね。

第18回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)

2022年7月 3日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点」として、定期的に私が何度も遭遇してきた「シナリオの欠点(あな)」について書いていこうと思います。今回取り上げるトピックは・・・

「ターゲットを定められずに書かれたシナリオの欠点(あな)」です。

シナリオライターというと、なんとなく真っ白な原稿用紙にペンでイチから文章を書き込んでいくような姿を想像する人は多いと思います。

しかし、シナリオライターがイチから企画を立ててシナリオを執筆することは、実際のところ、ほとんどありません。多くの場合はクライアントやプロデューサーから大まかな企画の内容を説明され、その企画にあわせたシナリオを書く場合が多いです。

とはいえ、依頼された案件であろうと、自分がイチから執筆するシナリオであろうと、よく考えなければならない要素が、その作品を見ることになる「ターゲット」です。これは、言い換えるなら「そのシナリオは誰に向けて書くのか」という命題でもあります。

「誰のために?」という問いがあるとするなら、シナリオ執筆未習熟者には「自分のためにシナリオを書いてしまう」人が多いです。報酬を得るためや、受賞を狙うためなど、そういう意味では確かに自分のためにシナリオを書くことになるわけですが、ここで言う「誰のために」とは、そういう意味ではなく、シナリオの内容自体の話です。

シナリオ執筆未習熟者が勘違いしてしまいがちなのは「自分が面白いと思えるシナリオを執筆できれば評価される」という思い込みです。自身の感性や価値観を信じてシナリオを執筆すること自体は決して悪いことではないですし、執筆者本人の得意分野を活かすこともなんら問題ありません。大いにやるべきです。

しかし、それらがすべての人の理解と共感を得られるわけではなく、ましてその内容を享受する側、消費する側が楽しめるかどうかは別のことだと把握しておくべきです。シナリオを執筆した本人が「面白い」「楽しい」と考えて執筆した内容を、同じように誰もが「面白い」「楽しい」と感じるわけではないのです。

ゆえに「そのシナリオは誰に向けて書くのか」を、しっかり見定めて書く必要があります。「誰でも楽しめるシナリオにしました」と主張することは簡単ですが、本当に「誰でも楽しめる」ようにすることは、決して簡単ではありません。

東京工科大学メディア学部に入学してきて、初めてシナリオの執筆に挑戦したという大学生に「作品のターゲット」を尋ねたとき、最も多い答えのひとつは「10代~から20代前半の、自分と同じぐらいの年齢層」というものだったりするのですが、彼らは自分と近い感性をもった人たちを想定してはいるものの、そのターゲットが、これから作るシナリオのどの部分に理解と共感を示すか、考慮していないことが多いです。

私は「第2回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)」でこう述べました。

http://blog.media.teu.ac.jp/2021/05/post-883c4f.html

『自分が経験してきた年代かつ記憶にも新しい年齢を設定して「10代の若者」をターゲットに想定したくなる気持ちはよく分かるのですが、それでも「10代の若者」という区分はとても広く、また多感な年齢であることも考慮すると、もっと条件を絞り込んで作品を作らないと、適切な形で受け入れてもらうことは難しいです』

大学生の年齢を考えれば「10代の若者」を自分で経験してきたことは間違いないでしょうが、当時10代だった執筆者と同じように、今現在の「10代の若者」が、その作品を受け止めるとは限りません。それはそのシナリオを享受するターゲットの設定としては理解と共感が得にくくなることを意味し、「シナリオの欠点(あな)」になりうるということです。

こういった感覚のズレは、世代が違うほどに大きくなっていきます。得意分野のシナリオを書くときほど、最終的なターゲットの特徴を見誤らないようにしたいものです。

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その40後編

2022年7月 2日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品の40本目「のぼうの城」について、どこに注目すべきか述べていきます。

今回取り上げる「のぼうの城」は2012年に公開された日本の映画です。1590年の6月16日から7月16日にかけて、現在の埼玉県で実際にあった「忍城の戦い」をもとにした作品となります。原作は第29回城戸賞(2003年)を受賞した脚本『忍ぶの城』ですが、実際の映像化に際しては内容を大幅にカットした脚本が使われています。

この作品でシナリオライターとして注目すべきは「登場人物をまんべんなく活躍させている」点です。

シナリオを執筆する前提条件にも色々ありますが、作品によっては「先にキャストが決まっており、そのキャストにふさわしいシナリオを書く」というパターンも稀にあります。制作の順番を考えると、シナリオの内容を吟味して、そのイメージに相応しいキャストを選ぶ、という流れが自然だと感じる人は多いと思いますが、そういう前提で書かれるシナリオもある、ということです。

出来上がった作品を見ただけで、そういう経緯でシナリオが書かれたか、を判断することはできません。それを確認できるのは実際にその作品を作ったスタッフだけであり、今回とりあげた「のぼうの城」がどうだったのかも、スタッフしか知り得ないことです。

ただ、先に「先にキャストが決まっており、そのキャストにふさわしいシナリオを書く」となった場合、今回とりあげた「のぼうの城」はとても参考になる作品であることは間違いありません。

タイトルにもなっている「のぼう」こと成田長親は、間違いなく主人公であり、他の登場人物と比較しても、登場時間、登場回数、活躍シーンが多いです。しかし、それ以外の登場人物も、主人公に比べれば総登場時間こそ控えめですが、登場回数、活躍シーンがきちんと用意されているのです。

そういったシナリオであれば、どの登場人物をキャストが演じることになっても、あからさまな脇役、端役ということがないので、演じる側は気持ちよく演じることができるはずです。もちろん、前述の通り主人公に比べてしまえば登場時間などには差があるので、ギャランティや業界のパワーバランスなどを考えると、絶対にうまくいくというわけではありませんが。

そもそも、キャストが先に指定されている場合というのは、基本的にそのキャストのファンか視聴してくれることを見込んでのことなので、その視聴するファンにとっても、お目当てのキャストが活躍しているにこしたことはないです。それは決して、誰かに媚びてシナリオを書くということではありません。

どの当時人物も魅力的に描かれているというだけでもよく出来た作品なので「のぼうの城」はぜひ見てみてほしいと思います。

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その40前編

2022年7月 1日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。

前編となるこの記事は、あらすじのまとめが中心です。

後編ではその内容をもとに注目すべきポイントを述べますので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。

取り上げる映画は次のタイトルです。

『のぼうの城(2012)』

○監督
犬童一心
樋口真嗣

○脚本
和田竜

○あらすじ

豊臣秀吉は天下統一を目前にひかえ、北条氏の攻略に動き出していた1590年6月。北条氏の支城のひとつ「忍城」の城主である成田長親は、武芸も勉学もいまひとつで「でくのぼう」とされていたが、領民たちの面倒見が良かったことから「のぼう様」と呼ばれ、慕われていた。

いよいよ石田三成率いる豊臣軍が忍城へ攻め込んでくることになったとき、忍城側は当初降伏する方針で準備を進めており、豊臣側へ降伏の意志も密かに伝えてあった。しかし、いざ豊臣軍からやってきた降伏勧告の使者の態度は実に傲慢で、とうてい素直に受け入れられるようなふるまいではなかった。

このため長親は方針を一転して豊臣軍に宣戦布告し、使者を追い返した。押し寄せる豊臣の軍勢2万に対し、忍城側でまともに戦える兵は500人。完全に劣勢の戦いではあったが、長親を慕う兵と領民たちは長親の決断を支持し、士気は非情に高かった。

数で圧倒的に上回る豊臣軍は一気に押し寄せて勝負を決めに来たが、長親たち忍城側は領内の地形と城までの道を巧みに用い、大人数が身動きできない状態を作り出すことで数的な有利を活かせない状態を強いて、抵抗する。予想以上に攻めあぐねた豊臣軍の石田三成は一計を案じ、忍城周囲の川をせき止めた後に決壊させる水攻めによって城を攻略することにした。

石田三成の策によって押し寄せてきた川の水は、領内はもちろん忍城の城下にも流れ込み、獅子奮迅の活躍をした兵たちも、これには本丸に避難を余儀なくされる。同時に豊臣軍も攻め入ることはできなくなったが、包囲を続ければ忍城側が音をあげる算段だった。

これに対して長親は奇策に出る。家臣に密かに小舟を用意させると、自ら単身で包囲する豊臣軍の眼前に姿を表し、田楽踊りを始め、敵軍を楽しませ、盛り上げると、一緒に歌い踊るよう仕向けた。長親に文字通り踊らされる豊臣軍の姿に苛立ちを覚えた石田三成は、長距離から長親を狙撃するよう命じる。銃弾は長親を撃ち抜き、その場は一転して静まり返った。

この日の出来事は瞬く間に知られることになった。そしてそれこそが長親の狙いだった。自身はかろうじて忍城へ戻っていたが、安否は不明で「のぼうさまが撃たれた」という噂だけが広がった。その結果、長親を慕っていた周辺の住人たちの反感を買うことになり、水攻めによる田畑被害への恨みとあいまって、彼らを堤の破壊へ駆り立てた。

これによって忍城を包囲していた水は、逆流して豊臣軍に襲いかかり、豊臣軍は甚大な被害を出した。

両軍多大な被害を出したところで、和睦の交渉をすることになった。すでに北条氏の本城・小田原城は落城している旨を伝え強気に出ようとする豊臣側だったが、最後まで忍城を守りきった長親は毅然とした態度を崩さず、石田三成に家臣と領民の安全を確保すること、荒らされた領内の復興を手伝うことを約束させたのだった。

・・・次回は、この作品でシナリオライターとしてどこに注目すべきか、について述べていきます。どうぞお楽しみに。

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