シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その40後編
2022年7月 2日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品の40本目「のぼうの城」について、どこに注目すべきか述べていきます。
今回取り上げる「のぼうの城」は2012年に公開された日本の映画です。1590年の6月16日から7月16日にかけて、現在の埼玉県で実際にあった「忍城の戦い」をもとにした作品となります。原作は第29回城戸賞(2003年)を受賞した脚本『忍ぶの城』ですが、実際の映像化に際しては内容を大幅にカットした脚本が使われています。
この作品でシナリオライターとして注目すべきは「登場人物をまんべんなく活躍させている」点です。
シナリオを執筆する前提条件にも色々ありますが、作品によっては「先にキャストが決まっており、そのキャストにふさわしいシナリオを書く」というパターンも稀にあります。制作の順番を考えると、シナリオの内容を吟味して、そのイメージに相応しいキャストを選ぶ、という流れが自然だと感じる人は多いと思いますが、そういう前提で書かれるシナリオもある、ということです。
出来上がった作品を見ただけで、そういう経緯でシナリオが書かれたか、を判断することはできません。それを確認できるのは実際にその作品を作ったスタッフだけであり、今回とりあげた「のぼうの城」がどうだったのかも、スタッフしか知り得ないことです。
ただ、先に「先にキャストが決まっており、そのキャストにふさわしいシナリオを書く」となった場合、今回とりあげた「のぼうの城」はとても参考になる作品であることは間違いありません。
タイトルにもなっている「のぼう」こと成田長親は、間違いなく主人公であり、他の登場人物と比較しても、登場時間、登場回数、活躍シーンが多いです。しかし、それ以外の登場人物も、主人公に比べれば総登場時間こそ控えめですが、登場回数、活躍シーンがきちんと用意されているのです。
そういったシナリオであれば、どの登場人物をキャストが演じることになっても、あからさまな脇役、端役ということがないので、演じる側は気持ちよく演じることができるはずです。もちろん、前述の通り主人公に比べてしまえば登場時間などには差があるので、ギャランティや業界のパワーバランスなどを考えると、絶対にうまくいくというわけではありませんが。
そもそも、キャストが先に指定されている場合というのは、基本的にそのキャストのファンか視聴してくれることを見込んでのことなので、その視聴するファンにとっても、お目当てのキャストが活躍しているにこしたことはないです。それは決して、誰かに媚びてシナリオを書くということではありません。
どの当時人物も魅力的に描かれているというだけでもよく出来た作品なので「のぼうの城」はぜひ見てみてほしいと思います。
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