確率の不思議 - 3. 条件付き確率の重要性
2022年7月28日 (木) 投稿者: メディア技術コース
昨日からさらに話が続きます。実は、モンティ・ホール問題の話が本当に面白くなるのはここからです。
これまで、司会者は何も考えずにハズレのドアを開いてくれるだけの人だと思ってきました。でも、実はこの人がとても意地悪だったら、どうなるでしょうか。この司会者は、モンティ・ホール問題のことが世間で知られていることもわかっていて、ハズレのドアを教えてあげたら、解答者は選ぶドアを変えるだろうと思っています。そこで司会者はこんなふうに考えました。
もし解答者が選んだドアがハズレだったら、何も言わずに黙っていよう。ハズレでざまあみろだ。でも、もし解答者が選んだドアがアタリだったら、片方のドアを開けてやって、「選ぶドアを変えてもいいですよ」と言ってみよう。それでドアを変えたらハズレになってしめしめだ。
嫌なやつですね。それはともかく、この状況で、司会者がハズレのドアを開いて「選ぶドアを変えてもいいですよ」と言ったら、ドアを変えない方が良いことは確かです。この状況を条件付き確率で表現すると、解答者が選んだドアを1として、
- 1のドアが正解のとき、司会者が2のドアを選ぶ確率:50%
- 1のドアが正解のとき、司会者が3のドアを選ぶ確率:50%
- 1のドアが正解のとき、司会者が何もしない確率:0%
- 2のドアが正解のとき、司会者が2のドアを選ぶ確率:0%
- 2のドアが正解のとき、司会者が3のドアを選ぶ確率:0%
- 2のドアが正解のとき、司会者が何もしない確率:100%
- 3のドアが正解のとき、司会者が2のドアを選ぶ確率:0%
- 3のドアが正解のとき、司会者が3のドアを選ぶ確率:0%
- 3のドアが正解のとき、司会者が何もしない確率:100%
となります。この中で、司会者が2のドアを選ぶ確率が0でないのは一番上だけなので、ベイズの定理で考えても、1のドアが正解である確率が100%ということになりますね。
モンティ・ホール問題にまつわる議論が混乱したのは、「司会者がどういう原理に基づいて行動するか」が問題文に明記されていなかったことが大きな原因でした。多くの人が考えるであろう、「司会者は、解答者が選んでいないドアのうち、ハズレが1枚ならそれを開く。ハズレが2枚なら、ランダムに片方のハズレを選んで開く」という前提が正しければ、ドアを変える方が良いという結論で間違いありません。実際には、司会者が親切な人か意地悪な人かというのも確率的な現象なので、その確率も含めてベイズの定理を考える必要があります。世の中の確率に関わる様々な議論は、こんなふうに前提となる確率そのものが異なることのせいで混乱することが多いのです。(明日に続く)
(大淵 康成)
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