第19回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)
2022年8月31日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
今回も「シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点」として、定期的に私が何度も遭遇してきた「シナリオの欠点(あな)」について書いていこうと思います。今回取り上げるトピックは・・・
「日常ものシナリオの欠点(あな)」です。
シナリオというと、何らかの目的達成をメインストーリーにしたものを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。例えば「勧善懲悪もの」などは、「主人公が悪を打ち倒す」という目的が明確であり、シナリオを書きやすいジャンルのひとつです
しかし、そういったジャンルがある一方で、逆に「あまり明確な達成目的のない『日常もの』シナリオを書きたい」と希望する人もたまにおり、今期も東京工科大学メディア学部でシナリオ執筆課題に取り組んできた学生の中にも数名いました。
「日常もの」を書きたい、という意向はまったく問題ありません。実際、一定のファンがいるからこそ、そういうジャンルとして認識されているわけで、需要もあると思います。
しかし、そういう意向でシナリオを執筆してきた彼らは「日常ものだから、これといったストーリーが無くてもいいだろう」という判断をしがちですが、これは問題です。
確かに『日常もの』は、あまり明確な達成目的のないように見えますが、「まったくなにも達成しない」というわけではなく、平凡な日常の中なりに「小さな目的を達成する」ことで、ストーリーが構成されています。達成したことのスケールが小さいがゆえに、目立たないかもしれません。しかし、むしろそういったことで観客を楽しませる、という点では難易度の高いジャンルとも言えます。
その点を見誤って作られた「日常もの」シナリオは、欠点(あな)だらけになってしまいます。典型的な失敗としては「日常もの」ではなく、単なる日記かニュース番組になってしまうパターンです。
登場人物の日常を描いているものの、着地点が見当たらず、一つ一つの言動に必然性が見いだせず、ただただ時間経過を知らされるだけでは、観客は
その作品を最後まで見よう、という興味を持続できません。まったく縁のない人間のホームビデオを見せ続けられるようなものです。
バンド活動、キャンプ、料理などをテーマに人気を博した「日常もの」はこれまで沢山ありますが、しっかりとした取材や下調べがあって、インパクトは小さいながらも気になるストーリーに沿って展開してきたものばかり。「日常もの」のシナリオを書くのであれば、そういった前例をよく調べてから書きたいものです。