脳活のためのパラドックス(6):消えた千円の謎
2022年8月27日 (土) 投稿者: メディア社会コース
次のような話を考えてみましょう。久しぶりに会った旧友3人が居酒屋に行き、楽しい時間を過ごしました。お勘定は1万5千円だったので、割り勘でそれぞれ5千円札を出し、ウェイターに渡しました。ウェイターはそれをレジに持っていったのですが、レジ係から計算が間違っていて正しくは1万円だったというのです。そこで、レジ係は千円札5枚をウェイターに渡し、客に返すよう言いました。客の方に戻るウェイターは、ここで悪知恵を働かせます。割り勘だから返すのは3千円の方が客の都合もいいだろうと考え、客には「すみません、先ほどの勘定は間違っていて正しくは1万2千円でした」と謝罪して3千円を渡し、2千円を懐に入れたのです。客はこれで一人4千円に抑えられてラッキーと喜び、ウェイターも心の中で喜びました。
さて、この話の中で最終的に客が支払ったのは1万2千円で、ウェイターの懐に入ったのは2千円です。しかし、1万5千円で動き出したお金ですので、帳尻が合いません。千円は一体どこに行ったのでしょう。これは古典的なパラドックスですが、もちろん千円は消えたわけではありません。
冷静にお金の動きを考えてみましょう。まず、1万5千円が客からレジに移ります。そして、レジに1万円が留まり、5千円が客の方に戻っていきます。その過程で、客に3千円が渡り、2千円がウェイターの懐に入ったのです。3ヵ所に分散しましたが、確かに合計は1万5千円です。数式で表すとわかりやすいと思います。“1万円(レジ)+3千円(客)+2千円(ウェイター)=1万5千円”ですね。ちなみに、客1人の財布からは4千円が出て行ったのですが、その内訳は、飲食代としての3333.33…円とウエィターによって搾取された666.66…円です。このことを知ったら、喜びは怒りに変わることでしょう。
文責: メディア学部 松永
(2022.08.27)
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