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脳活のためのパラドックス(7):時空旅行のロマン

2022年8月28日 (日) 投稿者: メディア社会コース

本日はシリーズの最終回ですので、少しロマンのある話にしましょう。皆さんは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(Part I-III)という映画をご存じでしょうか。主人公の青年と少しいかれた科学者が、架空のタイムマシーンで過去や未來に行って騒ぎを繰り広げるというSFコメディーです。夢のあるタイムマシーンの概念は古くからあり、その名を冠した「タイムマシーン」という小説が19世紀末に出版されました。日本では(小説ではないですが)アニメ「ドラえもん」が有名ですね。ドラえもんは、どこでもドアも持っており、正に時空を自由に行き来できるのです。

さて、タイムマシーンがパラドックスとどういう関係があるかということですが、それを話す前に物理学における時間の捉え方について少し説明します。18世紀に活躍したニュートンは、「時間は絶対的なものであり、一定である。誰にとってもどこであっても不変のものである」と主張しました。それを裏付ける科学的根拠というものはなかったのですが、当時の人々は、日々の生活を通じて時間はコントロールできるものではないと実感していたので、ニュートンの主張は真理であると受け止めていました。

しかし、20世紀になりアインシュタインが登場すると、新たな時間に対する概念が出てきます。それが、有名な相対性理論(特殊相対性理論・一般相対性理論)です。理論自体は難解なのでここでは詳細に立ち入りませんが、簡単に一言で説明します。特殊相対性理論は「時間は移動物体の速度と関係があり、時間は相対的に伸縮可能である」という考え方です。また、一般相対性理論は「質量またはエネルギーによって、時間は歪められる」という考え方です。これらには科学的根拠が与えられています。

ここで、パラドックスに話を戻しましょう。まず、双子のパラドックスと呼ばれるものについて紹介します。一組の双子ABがいるとしましょう。Aは地球上に残り、Bは超高速の宇宙船に乗って旅をし、やがて地球に帰還します。このとき、BはAよりも歳をとっていないという話です。私たちの常識からすると非現実に映りますが、特殊相対性理論は(まさに理論上)この話を裏付けているのです。

もう一つ、別のパラドックスを紹介します。過去に戻って両親や親族に会うというものです。このネタは、先のバック・トゥ・ザ・フューチャー(Part I)でも用いられています。主人公が30年前の世界にタイムトリップし、若かりし頃の父親と母親に出会います。当時2人はまだ結婚していませんが、そこで起こった史実に主人公が介入した結果、母親は父親ではなく主人公に恋をしてしまうことになります。最終的には、父親と母親が結婚することになり、史実が(少なくとも部分的には)変わらずにメデタシメデタシということになるのですが…。こちらの話は、一般相対性理論が(まさに理論上)裏付けとなっています。

少し整理しましょう。特殊相対性理論では、超高速(例えば光速)で移動できると時間がゆっくり経過するとしています。最初の双子のパラドックスの話はこのことを利用したもので、未来へのタイムトリップという否定できない事象を私たちに突き付けているのです。一方、一般相対性理論では、重力が大きければ大きいほど時間や空間を歪める作用があるとして、過去へのタイムトリップという否定できない事象を私たちに突き付けているのです。ただ、理論上可能であることと実現可能であることは異なり、そこにパラドックス性を見出すことができます。超飛躍的な科学技術の進展により、将来タイムマシーンができれば、もはやパラドックスではなくなります。なんともロマンのある話ですね。

文責: メディア学部 松永

2022.08.28

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