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脳活のためのパラドックス(5):嘘をつかないという嘘

2022年8月26日 (金) 投稿者: メディア社会コース

4月1日はエイプリルフールとして知られ、この日ばかりは世界中で悪意のない嘘が飛び交います。時として、メディアや大手企業も参画します。有名なところでは、イギリスの公共放送BBCが毎年仕掛ける偽ニュースが挙げられます。2008年の空飛ぶペンギンのニュース話は著名で、世界中の多くの人が騙されたとされています。ペンギンが空を飛ぶCG映像を流し、「これまで飛べないと信じられていたペンギンが空を飛ぶことが確認されました」という嘘です。科学や技術に関わることは一般の人にはよくわからないので、ついつい信じてしまうのです。最近はフェイクニュースというよう言葉が浸透してきましたが、人を貶めたり世の中を混乱させるような嘘はよくないですね。

さて、パラドックスに関わる巧みな嘘を一つ紹介しましょう。ある年の41日の朝、父親が息子に「今日はびっくりするような嘘でお前を騙してやろう」と宣言しました。 息子は「絶対に騙されない」と逆宣言し、その日は一日、父親の一つひとつの言動に疑いをもって接しながら過ごしました。やがて夜を迎え、寝ることになったので、息子は父親に「今日は僕は騙された気がしないんだけど、お父さんは何か嘘をついたの?」と尋ねました。すると、父親は「すっかり騙されたじゃないか。嘘をつくという嘘に…」と答えました。

これは、自己言及の一種で語用論的パラドックスと呼ばれたりします。「今日はびっくりするような嘘でお前を騙してやろう」という言葉自体は嘘とも嘘でないとも言えないのですが、言動と結びつくことで嘘の発言ということになったのです。この種のパラドックスはいくらでもあります。上の例とは少し性質が異なりますが、上官から下士官への「私の命令には従わないように。これは命令だ」という指示、教授から学生への「後ろの方、聞こえなかったら手を挙げてください」という指示などは、発言の中に矛盾が見出せます。

文責: メディア学部 松永

2022.08.26

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