有意差検定
2022年9月 5日 (月) 投稿者: メディア技術コース
メディア学部の大淵です。
9月は学会の季節です。いろんなところで学会が開かれ、学生や教員が研究成果を発表します。
最近は、学会発表のあとの質疑応答の時間に、「有意差検定は行いましたか?」という質問が出ることが多くなった気がします。有意差検定というのは、ある実験結果が得られたときに、それが「たまたま」なのか、それとも何らかの原因によって導き出されたのかを、確率計算を用いて確かめる方法のことです。
例えば、コインを3回投げて3回とも表が出たとして、このコインは表が出やすいように細工されたコインだと言えるでしょうか。仮に何の細工もしていないコインだとしても、表が3回出る確率は1/2の3乗で1/8もあるので、単なる偶然だという可能性も捨てきれないですね。こういう状態を「表と裏の出方には有意差が無い」と言います。一方、30回投げて全部表が出た場合には、普通のコインでそういうことが起こる確率は約10億分の1しか無いので、たまたまそういうことが起こったとは考えにくい、つまり何らかの原因(表が出やすいように変形させられているとか)があると考えられるというわけです。
さて、こういう質問をする人の中には、有意差が無ければ実験には何の意味もない、みたいな反応を示す人がときどきいます。でも、そんなことはないですよね。Aさんがコインを3回投げて全部表だったとして、そのあとBさんが3回投げたら全部表で、Cさん、Dさんという具合に10人の人が同じ結果を得たら、30回分のデータが集まったことになり、重要な発見となります。Aさんの発表は、それだけで何かを断定できるものではないかもしれませんが、後に続く人に対して一定の貢献をしていると言えます。もちろん、単独で新事実を断定するような発表はインパクトが大きいですが、有意差が無い研究にだって、それなりの意義はあるはずだと思うのです。
後に続く人の役に立つためには、実験条件をできる限り詳しく正確に示すことが重要です。人類の英知が巨大な城だとしたら、その石垣に積まれた小さな石のひとつになれるような、そんな研究発表ができたらいいなと思います。
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