最先端のARやVRの制作の前に②エイゼンシュテインのモンタージュ理論
2022年10月18日 (火) 投稿者: メディア技術コース
新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる全国唯一の健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインしたり、多くの人たちに役立つ健康改善するための健康アプリを制作するための研究を行っている研究室です。
最近、プロジェクションマッピングやAR・VRの活用において多数のCG映像作品を見ることが増えてきました。そこで今回はその際に役に立つ映像テクニックあるいは心理学的効果として、前回のクレショフ効果につづき、最も有名なモンタージュについて紹介します。
モンタージュとは、日本の警察が犯人捜しで、目撃者がモンタージュ写真を選んでいくシーンがあまりに有名ですが、映画の世界ではちょっと意味合いが違います。今回はその中でもエンゼンシュテインのモンタージュ理論についての話題です。
Wikipediaによると
モンタージュ(montage)は、映画用語で、視点の異なる複数のカットを組み合わせて用いる技法のこと。元々はフランス語で「(機械の)組み立て」という意味。映像編集の基礎であるため、編集と同義で使われることも多い。
フィルムのつなぎ合わせが独自の意味をもたらすことは、映画の創成期から知られていた。たとえば米国エジソン社の『メアリー女王の処刑 (The Execution of Mary Stuart) 』(1895)では、撮影途中でわざとカメラを停止する「中止め」を用いて、首がギロチンで落ちるショッキングな演出を行った。また、映画の魔術師と呼ばれるメリエスは、編集によってさまざまな映像的トリックを試みただけでなく、『月世界旅行(Le voyage dans la Lune)』(1902)の最後のシーンでは「コマ撮り」のアニメーションを実現している。
この後のモンタージュ技法は、純丘曜彰によれば、大きく2つの方向へ分岐するとされる。一方はソ連の映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインに代表されるエイゼンシュテイン・モンタージュであり、他方は米国の映画監督D・W・グリフィスに代表されるグリフィス・モンタージュである。
エイゼンシュテイン・モンタージュは、当時流行し始めたソシュールの構造主義の影響を受け、台本の言語的要素を映像に置き換えて編集していく手法であり、エイゼンシュテインの映画『戦艦ポチョムキン(1925年)』の「オデッサの階段」がその典型とされる。
この現在ウクライナにあるオデッサ(オデーサ)の階段は、当時ソビエト連邦にはポチョムキンの階段と呼ばれ、今でも戦争中な場所で今現在このままであるかどうかはわかりません。
この映画史上最も有名なポチョムキンの階段シーン(オデッサの階段、1925Movie, Russia)についてのさらに詳しくした解説が以下になります。
https://kokai.jp/escalera-de-odesa/
ウクライナのオデーサ(オデッサ)にある長さ142mの「ポチョムキンの階段」を舞台とした、世界の映画史上最も有名な6分間シーンです。ソビエト連邦の映画監督セルゲイ・エイゼンシュテイン(ロシア語:Серге́й Миха́йлович Эйзенште́йн Sergéj Michájlovič Ėjzenštéjn, Sergei Mikhailovich Eisenstein)により、1925年に製作・公開された名作映画「戦艦ポチョムキン」のオデーサ市民に対する虐殺シーンです。エイゼンシュテイン監督は映画「戦艦ポチョムキン」で、有名な映像編集の基礎「モンタージュ理論」を確立させています。
モンタージュ理論を確立できたのは、セルゲイ・エイゼンシュテイン氏が一時期、日本人教師に漢字を習っていたからだという説があります。漢字という象形文字の持つ抽象的な概念をデザイン描写的に表現しているという基本コンセプトから、「身」と「美」で「躾」とか「口」と「鳥」で「鳴」になる等、全く別の意味になるという事に興味を持ち、このコンセプトを基にモンタージュ理論を確立したということです。
エイゼンシュテイン、プドフキン、グリゴーリ・アレクサンドロフの共同署名による「トーキー映画の未来(計画書)」(「トーキー宣言」)に、「モンタージュ」についてこう書かれています。
現代の映画は視覚的映像を操作することで、人間に強力に働きかける。当然ながら、その力はさまざまな芸術のなかでも首位の座を占めるものの一つである。映画にこのような強力な働きかけの力をあたえている基本的で唯一の手段は、明らかにモンタージュである。
モンタージュこそ働きかけの主要な手段であるという主張は、疑問の余地のない公理となっており、世界映画文化の磁石となっている。ソヴィエト映画が世界のスクリーンで収めた成功のほとんどは、ソヴィエト映画がはじめて発見し、確立した数多くのモンタージュ手法によるものである。だから、映画をより一層発展させる重要な要素は、観客に働きかけるモンタージュ手法を強化し、拡大することだけである。
山田和夫「エイゼンシュテイン」より
ここでの気づきで象形文字である「身」と「美」からそれぞれの意味を融合したり統合したり超越した意味である「躾」(しつけ)が出来上がることろが興味深いです。「口」と「鳥」で「鳴」となるのも興味深いですね。そして日本にはこのかな混じり漢字を使った俳句や短歌があります。これについても次回以降に紹介したいと思います。
さらにこのように映像のカットを巧妙に組み合わせることで極めて強い印象を視聴者に与えることができる、ということも興味深いです。そしてこのエンゼンシュテインのモンタージュ理論は時代の別の違った利用法をされていきます。これについても次回以降に!
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