シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その44後編
2022年10月15日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品の44本目「パイレーツオブカリビアン~呪われた海賊~」について、どこに注目すべきか述べていきます。
今回取り上げる「パイレーツオブカリビアン~呪われた海賊~」は2003年に公開されたアメリカの映画です。原作はなんとディズニーがテーマパークに設置している「カリブの海賊」で、ボート型の乗り物に乗った観客が、カリブの海を冒険するような体で楽しむアトラクションです。
あくまでアトラクションなので明確なストーリーがあるわけではありません。映画内のストーリーは映画独自のものですが、共通の世界感と登場人物で続編が作られ続けている、人気シリーズの第1作目になります。
さて、この作品でシナリオライターとして注目すべきは「主人公はいったい誰なのか」です。
「カリブの海賊」が原作ということもあって『「パイレーツオブカリビアン」といえば「海賊・ジャックスパロウ」』と、海賊の名前を挙げる人は少なくないと思いますし、ほとんどの人は「ジャックスパロウが主人公」と答えるでしょう。
確かに作中における登場時間の長さや、登場回数、活躍シーンなどを考えれば、最も目につくのはジョニー・デップ演じる「ジャック・スパロウ」です。エンディングクレジットでも俳優陣のなかで一番手の表記なので、それらを根拠に「ジャックスパロウが主人公」と言いたくなるのは自然なことです。
あくまで一人の観客や映画ファンとしてはそれでかまわないのですが、このブログは「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い昨品」なので、シナリオライターの視点から見たときに「主人公はいったい誰なのか」と考えると、それは「ウィル・ターナー」です。
今回このブログの前編のあらすじは、主に「ウィル・ターナー」を主語にして記述しましたが、そういう解釈の元に書きましたし、実際にそう書けてしまう内容なのです。
本作のストーリーは、簡潔にいうなら「ひとりの青年が、自身の出自に悩みつつも攫われた最愛の女性を助けるべく戦い、添い遂げる」という内容であり、その過程の助けや障害として海賊が大きく関わってくるものの、大筋は青年ウィル・ターナーを軸に映画は進みます。
ジャック・スパロウは、確かに存在感の大きな存在であり、映像の中でも常に華々しく活躍する存在として映っていますが、この映画のストーリー内ではそこまで大きな目的を持って動いていません。敵海賊たちにかかった呪いに関わっていたり、自身の海賊一味を取り戻したかったり、無関係ではない動機を持ってはいますが、それ自体はメインストーリーになっていないのです。
別作品の例ではありますが「ドラえもん」というタイトルの漫画昨品において、実際のストーリーはドラえもんではなく「のび太」が主人公として活躍する形に似ています。
ドラえもんは、未来の技術をあつかえる『ひみつ道具』という、圧倒的な力と目をひくモノを扱える存在ではありますが、実際にそれらを用いてストーリーを展開させる人物は「のび太」であり、ジャックとウィルの二人はまさにそれを彷彿とさせます。
非力な存在が、強力な相棒の力を借りつつも、決してすべて依存してしまうのではなく、本人なりに努力と工夫をして、なんとか目的を成し遂げようとする様は、定番すぎる展開のストーリーとも言えます。しかし、だからこそジャック・スパロウのような華々しい存在を引き立たせる作品にすることができたともいえます。
ヒロイックな登場人物を描くには、必ずしもその登場人物を主人公にしなくてはならない、というわけではないのです。そういう工夫を知っておく上でも「パイレーツオブカリビアン~呪われた海賊~」は見ておくべき作品といえるでしょう。
「コンテンツ」カテゴリの記事
- あにめたまご2019「文化庁若手アニメータ等人材育成事業」(2019.03.12)
- 学会紹介:ADADA Japan学術大会と情報処理学会EC2019(2019.03.09)
- 大学院授業:プロシージャルアニメーション特論の紹介(2019.03.08)
- ゲームの学会?!(2019.03.07)
- 香港理工大学デザイン学部の紹介(2019.03.04)