ゲーム技術に関する学会発表紹介(1)
2022年11月30日 (水) 投稿者: メディア技術コース
メディア学部の渡辺です。こんにちは。
11月4日から6日にかけて、NICOGRAPH2022という学会が開催されました。私の研究室からは、1件のフルペーパー口頭発表、2件のショートペーパー口頭発表、7件のポスター発表として採録されました。これから数回に渡って、それらの研究を紹介したいと思います。
1件目は、修士2年の柴山叶さんの研究を紹介します。題目は「バトルロイヤルゲームのアイテム探索におけるマルチエージェント移動経路最適化」というもので、フルペーパーとして採録されました。この研究は、大人数で対戦する「バトルロイヤルゲーム」というジャンルでのアイテム収集を効率的に行うことを目的としています。一人のプレイヤーがアイテムを収集する場合の理論としては「巡回セールスマン問題」と呼ばれる問題を解く理論が適用できますが、複数人のチームで効率的に収集する場合は「配送計画問題」と呼ばれる問題を解く理論が必要となります。現時点で提唱されている多くの理論は「確実に全てのアイテムを収集する」という前提で理論が構築されていますが、バトルロイヤルゲームでは必ずしも全てのアイテムを収集する必要はなく、一定の時間内に収集を切り上げないと不利な状況になってしまう場合があります。そのため、「ある程度のアイテムを収集し、短めの時間で探索を完了する」という前提が最適なのですが、その条件を満たす理論というのは提唱されていません。柴山さんの研究は、そのような前提の効率的なアイテム収集を実現するためのものです。
アイテム収集経路算出の様子
2件目に、修士2年の吉田涼真さんの研究を紹介します。題目は「NPCの行動の最善手探索に関する研究」というもので、ショートペーパーとして採録されました。ゲームAIの理論の一つに「ゴールベースAI」というものがありまして、これは目的達成を保証する手法として近年注目されています。ただ、現時点では大ざっぱな行動しか実現できておらず、一般的な行動への適用には莫大な計算量が発生するという問題があります。吉田さんの研究は、彼はこれまで研究してきた経路探索を高速化する理論をゴールベースAIに応用し、より精緻な行動においてゴールベースAIの適用を実現するというものです。まだ現時点では研究が萌芽段階であったためフルペーパーには至りませんでしたが、アイデアの秀逸さが評価され、「優秀論文賞(ショートペーパー)」を受賞しました。
ゴールベースAIの概念図
(メディア学部教授 渡辺大地)