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CG画像作成処理の最終段階「トーンマッピング」

2022年11月10日 (木) 投稿者: メディア技術コース

 2年次後期の講義科目「CG数理の基礎」では、コンピュータグラフィックス(CG)技術を学ぶ基礎となる概念を勉強します。基礎なので、3次元CGの話題は少ししか出てきません。
 
 第7回授業「ディジタルカメラモデルと投影変換」はその数少ない3次元CGの話題です。授業冒頭では、3次元CGの処理(1枚のCG画像を作成する処理)は写真撮影手順と類似点があることを説明しました。以下のスライドです。
 Cg_20221118120301

 この授業では事前に資料を公開し、履修生から質問を受け付けて、授業中にはそれらを紹介し回答します。ここのスライドでは3つの質問がありましたので私の回答とともに紹介します。
 
 【質問】
 
 屋外なら太陽があり、室内ならライトがあるように、写真を撮るときに元から光源がある場合が多いと思います。その場合、光源に合わせてカメラの位置や向きなどを調整するため、手順2と手順3の順序が入れ替わると考えました。そこで質問なのですが、三次元CGにおいて、1~5の手順の順番が前後することはあるのでしょうか?
 
 【回答】
 
 質問の答えはYesです。前半でおっしゃる通り、場合により2と3は入れ替わることがあるでしょう。
 
 状況によっては1のうち「モデルの配置」もその順番の前後に入ってくるでしょう。
 
 ただし、4と5はそのままですし、1のうちの「モデルをつくる」もやはり一番最初です。
 
 【質問】
 
 カメラを設定してから光源を用意するのはどういった意図によるものなのでしょうか。先に設定したカメラの画角の中で、被写体が特に綺麗に写る位置に光源を配置するためでしょうか。
 
 【回答】
 
 一つ前の質問でもあるとおり、カメラの設定と光源の用意は場合により順番は変わります。実写の話で説明すると、カメラ設定が先で光源設定が次、というのはスタジオでの写真撮影を想定した場合です。
 
 自然光での撮影や照明条件が固定の室内だと、光源が先でカメラが次、ということになります。
 
 屋外の撮影であっても、人間の被写体にレフ版で光を当てる場合はカメラが先で光源が次、と言えそうです。これは質問の後半でおっしゃっているケースですね。
 
 【質問】
 
 5番の画像の調整の際にはどのような処理を行うのですか。
 
 【回答】
 
 あまり難しい話ではなく、意図通りの画像になるように明るさやコントラストの調整処理を行います。具体的な技術は次回授業で紹介します。
 
 より発展したトピックとしては「トーンマッピング」が、CGの処理の最終段階での画像の調整処理です。
 
 本講義では触れませんが、特に実写のような現実感のあるCGの描画処理で使われる技法です。各画素の輝度を計算する途中は実数計算を行います。輝度の値の範囲は0から数万あるいは数億にもなります。
 
 このような画像はHDR(High Dynamic Range)画像と呼ばれます。ただし、最終的なCG出力画像は輝度がRGBそれぞれ[0,255]の範囲(LDR, Low Dynamic Range)に収まる必要があります。
 
 最終段階では必ずHDRをLDRに変換する必要があるのです。このときの処理がトーンマッピングです。明るさやコントラストの調整はもちろんなのですが、どの部分がより細部まで見えるようにするかの調整がトーンマッピングの設定では必要です。
 
 もちろん設定内容によっては、明るすぎて真っ白に見えてしまう部分(白トビ)や暗すぎて真っ黒に見えてしまう部分(黒ツブレ)ができてしまいます。それは仕方ないことですし結果的に現実味のある画像ができます。
 
 欲張って画面全体がなるべく細部までわかるようにトーンマッピングを設定すると、全体的にコントラストが弱く平板でメリハリのない印象を与える画像になってしまいます。
 
 【質問回答は以上】
 
 最後の回答で説明したHDR画像に対するトーンマッピングの例を紹介しましょう。
 Photo_20221118120401  
 「CG数理の基礎」としては発展トピックですが、実は「メディアのための物理」という別科目の教科書で紹介しています。この教科書から抜粋しました。右の図(b)が画面全体が見やすくなるように処理した結果です。画像を区分けした部分画像ごとに異なるトーンマッピングを施しています。

参考書籍:
大淵, 柿本, 椿, 「メディアのための物理 ーコンテンツ制作に使える理論と実践ー」, コロナ社, 2022年4月.

メディア学部 柿本正憲

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