第22回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)
2022年11月 3日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
今回も「シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点」として、定期的に私が何度も遭遇してきた「シナリオの欠点(あな)」について書いていこうと思います。今回取り上げるトピックは・・・
「ライター自身が好きだからこそ発生したシナリオの欠点(あな)」です。
東京工科大学メディア学部でシナリオを執筆する授業、演習においては、習熟度にもよって作品のスケールやボリュームの大小に差はありますが、最後にシナリオを完成させて提出する場合が多いです。
事前の既存作品分析や、マーケティング調査、そのうえで考案した企画書の内容に基づいてシナリオを執筆する実践的な課題ですが、どんなテーマ、コンセプトでシナリオを書くかは本人が決めて書くことになります。
実際のシナリオライターがそのように自由な設定でシナリオを書くことは稀ですが、だからこそ学生の頃にイチから自分の希望する題材でシナリオを書く経験は貴重かつ重要なものとなるはずですし、その後の進路によってはどこかへ持ち込み、売り込みをする機会もあるでしょう。
さて、自分でテーマを選んでいいとなると、多くの人は「自分の好きなジャンル」を選んでシナリオを書こうとします。
そして「自分の好きなジャンル」なら簡単に筆は進む・・・かというとそうではありません。
いざ提出された課題のシナリオを見てみると、「自分の好きなジャンル」だからこそ見落としていると思しき「シナリオの欠点(あな)」があったりします。
例えば「恋愛ジャンル」のシナリオは、提出される数も多い人気のジャンルです。
こんな性格の人が近くにいたら楽しいだろうと思わせる性格のキャラクター、こんなロマンチックな経験ができたら嬉しいだろうというシーン、ゆくゆくは恋人関係となるであろう二人のために考えられたロマンチックなエピソードなど、「恋愛ジャンル」はライター自身の個性を存分に反映できるジャンルと言えるでしょう。
しかし、思い入れが強すぎるのでしょうか。
肝心の「二人の人間が互いに恋愛感情をいだくに至ったきっかけ、経過、決め手」が明確に書かれておらず「なんとなく登場人物同士が、長い時間いっしょにいたら、恋してたので、どっちかが告白して結ばれた」というシナリオが、わりとよくあります。
恋愛の形やスタイルは人それぞれですし、現実の生活におけるリアルの恋愛というものは「明確なきっかけ、経緯、決め手」なんて無いものかもしれませんが、シナリオはテレビドラマや映画など、一定の放映時間のなかで観客を楽しませる時間芸術作品のために書くものなので、リアルな恋愛を書くことよりも、観客が見終わったときに満足できる恋愛を描かねばなりません。
「恋愛ジャンル」が好きなシナリオライターだからこそ「リアルな恋愛」を描こうとして、最終的にその作品を享受する観客を楽しませるポイントを見誤り、「シナリオの欠点(あな)」になってしまった、というところでしょうか。
今回は恋愛ジャンルを一例として挙げましたが、他のジャンルでも「自分がそのジャンルを好きすぎて、自分以外も楽しめるに違いない」と思いこんでしまう事例は多々あります。好きな題材ほど、冷静かつ客観的に見て、シナリオを書きたいものです。