ろう学校はどこにある?
2022年12月28日 (水) 投稿者: メディア社会コース
突然ですが、皆さんの家の近くにろう学校(聴覚特別支援学校)はありますか?
もし、自分の子どもが難聴だと分かったら、どこに行けば良いのでしょうか。
⑴ろう学校の数はとても少ない。
生まれてくる赤ちゃんの1000人に1人が難聴であると言われています。1000人に1人というと、多いのか少ないのか分かりません。2021年度の統計データによると、小学校のクラス人数の平均は23.1人で、ボリュームゾーンは26-35人となっています。1学年に3クラスあるとすると、1つの学校の同じ学年の生徒数が約100人で、10校を合わせると1000人になります。その中に1人難聴児がいることになります。このようなデータを見ると、難聴児の数がとても少ないことが分かります。しかし、その子どもがろう学校に行くとなれば、健聴の児童が難聴児に出会うことはないでしょう。これは、私たちが聴覚障害について知る機会が少ないことの要因の一つと言えます。
47都道府県の中で、ろう学校が1校しかないのは21県もあります。場所によっては学校まで車で2時間かかると言われています。難聴児が少ないのでろう学校をたくさん設置することが出来ないのも理解できますが、遠距離通学しなければならないことを見過ごすことも出来ないと思います。
⑵コロナ禍に実施された遠隔療育
コロナ禍に多くの学校でZoomなどのオンライン会議システムを導入したのと同じように、難聴児の療育でも遠隔指導が実施されました。手話でコミュニケーションをとる場合は、自分の後ろに緑の幕を張ることで、見やすくなります。補聴器や人工内耳をしている場合は、音が聞こえるとは言え、電話の音などは音質が悪いので聞き取りづらいことが多くあります。同じように、Zoomなどの音も聴覚障害者には少し聞き取りづらさがあります。そこで、パソコンの音をワイヤレスで補聴器や人工内耳に送信するシステムを使うことで、聞き取りやすくなります。また、指導者は難聴児の様子を把握するために、体全体をカメラで映す必要があります。
実は私の娘も難聴であるため、コロナ禍に遠隔療育を受けました。これまで遠くまで電車を乗り継いで通っていましたが、遠隔でもある程度指導が出来ることが分かりました。
⑶これから求められる遠隔療育
コロナ禍に大学ではオンライン授業を実施してきましたが、改めてその要素を図にまとめてみました。Zoomをしている時に「聞こえない」とか「聞こえにくい」ということがあった場合に、考えられる要因はいろいろあります。例えば、ネットワークの速度、使用しているパソコンのスペック、カメラやマイクの接続や設定などです。
快適な遠隔コミュニケーションを実現するためのポイントをまとめると図のようになります。良い機材を使っていても、設置する場所や部屋の環境、そしてネットワークの状況によって配信がうまくいかない場合もあります。分かる人が各家庭に1人いれば対応できるかもしれませんが、必ずしもそのような状況とは言えません。これからの将来、このような遠隔システムを活用していくのであれば、誰もが快適に使えるようなガイドラインやマニュアルがあると良いと考えています。
▶︎まとめ
コロナ禍で注目されたZoomなどの遠隔会議システムは、これから私たちの暮らしに浸透していくのでしょうか。対面の良さはもちろんありますが、遠隔システムを取り入れることで助かる人もいるのではないでしょうか。いろいろな場面に置き換えて考えてみましょう。
メディア学部 吉岡 英樹
略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。
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