第7回シナリオ執筆に役立つ小理論
2023年1月 8日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
今回も「シナリオ執筆に役立つ理論」と題し、知っておくとシナリオの内容が良くなる知識やポイントを簡潔に紹介していこうと思います。
今回は3つ目の「プロット」についてです。
「段階的シナリオ制作その3『L(ロング)プロット』」。
『S(ショート)プロット』は60文字で書くプロット、
『M(ミディアム)プロット』は200文字で書くプロットでしたが、
『L(ロング)プロット』は1600文字以内で書くプロットです。
一気に文字数が増えて、400字詰め原稿用紙なら4枚程度の文字数となり、
小中学校の読書感想文クラスの分量になるわけですが、
それもそのはず、この『L(ロング)プロット』は、
1作品の主要な内容はほぼ書き切るつもりで作成するプロットです。
これまで同様「バックトゥザフューチャー」を例に挙げるなら次のような内容になります
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Lプロット(1326文字)
高校生のマーティは、上司に逆らえない気弱な父と酒に溺れる母や覇気のない兄姉のいるマクフライ家に生まれた末っ子で、学校では教師に一族全員落ちこぼれ呼ばわりされ、趣味のバンド活動もうまくいかず、自分に自信を失いかけていた
マーティは友人で変わり者の老人発明家ドクに依頼され、ドクの発明したというタイムマシンの実験を手伝うことになった
マーティは半信半疑のまま、助手としてドクのタイムマシン実験を撮影していたが、ドクに恨みを抱くリビア人テロリストに襲撃される。ドクは銃撃により倒れたが、マーティはタイムマシンを起動させ、その場を脱出。身を持ってタイムマシンの存在を信じることになった
マーティがたどり着いたのは、なんと自身がいた時代から30年前の世界だった。そこはマーティが生まれる前の時代であり、頼れる人もおらず、タイムマシンの故障したマーティは途方に暮れる
困り果てたマーティだったが、偶然出会った若かりし頃の父・ジョージを助けたことによって、同じく若かりし頃の母・ロレーンとも出会う。マーティはロレーンの家で、この時代のドクの住所を知ることができた
マーティはドクの家を訪れ、事情を話すとドクはマーティの話を信じ、マーティが元の時代に戻れるよう協力してくれることになった
現代に戻るためタイムマシンを再び使うには、巨大なエネルギーが必要になる、と気付いたマーティとドクは作戦を考える。それは数日後に起きる落雷を活用する方法だった
マーティは自身が持っていた写真から兄の姿が消えかかっていることに気づく。マーティは将来結婚する両親、ジョージとロレーンが出会って恋に落ちるきっかけをつぶしていたため、彼らの子供であるマーティ達が生まれなくなる可能性を生じさせていた。マーティは二人を結び付けたうえで帰還する必要があった
マーティは何とかジョージとロレーンの仲を取り持とうとするがうまくいかず、かえってロレーンに惚れ込まれたマーティは、ロレーンからダンスパーティのパートナーにまで指名され、いよいよその身体は力を失い、薄れ始めていく
マーティはパーティ当日、ロレーンのピンチにジョージが助けに現れて気を引く計画を立てていた。その計画はトラブルによりマーティが支援できなかったにも関わらず、ジョージが奮起してロレーンの窮地を救うことに成功する。ロレーンの気持ちは一気にジョージに傾いて二人は結ばれ、失われかけていたマーティの身体は力を取り戻す
落雷の時間が迫ってきた。大嵐によってエネルギー供給ケーブルが外れそうになったが、ドクが必死につなぎとめ、マーティはタイムマシンの起動に成功し、現代へ飛んだ
マーティは、かつて自分がタイムスリップする数分前の世界に戻り、テロリストからドクを守ろうとしたが、間に合わず、ドクは銃弾に倒れた。悲しむマーティだったが、ドクはむっくり起き上がる。実は過去の世界でマーティが残した襲撃予言のメモをドクは保管しており、対策済みだった
マーティが帰宅すると、家族には劇的な変化が起きていた。過去の世界で自信をつけた父ジョージは大きく出世しており、母もしっかりしていて美しく、兄も姉もやる気に満ち満ちていた。マーティは苦労が報われたことを喜び、自信を取り戻した
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これだけの文章だと、かなりの情報量だとおもいます。これだけでも読むのは一苦労でしょう。
何度も繰り返しになりますが、シナリオを書く人はこういった壮大な構想をいきなり話したり、文章で読ませようとしがちですが、聞かされる側、読まされる側は、聞くだけでも、読むだけでも大変なことなのに、制作スタッフならばその内容を理解して、さらには面白いかどうかを判断せねばなりません。
自分が自分のためにシナリオを書くなら気にしなくても構いませんが、誰かと一緒に作品を作る場合はプロットを、Sプロット、Mプロット、Lプロットの長さに分け、段階的に作成して共有すると、スムーズに作品制作がすすむことでしょう。
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