身体知研究会(2023年2月)のご報告2
2023年3月14日 (火) 投稿者: メディア技術コース
文責:榎本
私が聞けた身体知研究会のお話の紹介です。
16:15-16:45 「身体動作と発話の意味性に着目した演劇作品の主観的分析手法の提案」(熊谷 啓孝・慶應義塾大学院政策・メディア研究科)
SIG-SKL-39(http://www.sigskl.org/activity/papers/sig-skl-20230228.pdf)
p.23-30
慶応の熊谷さんの発表は、演劇を見た熊谷さん自身の視点から何が表現されているのかを表すというものでした。それを構成要素の互いの関係性に基づいて、いくつかに分類していくという方法(KJ法)が取られています。以下にその一部を抜粋させてもらいました。第二階層表札というのが小分類で、さらにそれを大きくまとめたものが第三階層表札と呼ぶようです。そして、それぞれに属する演劇表現が作品中のどのセクションで生じたのかの頻度をM1〜M5が表しています。これを使って、どのシーンでどんな表現がされているのかが一望できるというわけです。
図 1 熊谷論文から引用
小川さんの発表は、食器と食材と料理と食べるまでの体験とというお話でした。平松洋子さんの「買えない味」を引用されていて、今度買って読もうと思いました。
「わずか電話一本、行ったこともない京都の老舗の鍋セットとか北海道のたらばがにとかトスカーナの
搾りたてオリーブオイルとか、つまりお金さえ出せばなんでも手に入る時代である。もちろんその便利
さおいしさはいうまでもないのだが、いっぽう「金に糸目はつけんぞ」といくら騒いでみても、けっし
て買うことも出会うこともできない味がある。買えない味。そのおいしさは日常のなかにある。
昨夜こしらえたいもの煮っころがしは、今朝はずしりと腰のすわった味わいだ。おかずの汁のしみこ
んだごはん。ざぶざぶ淹れた土瓶の番茶。うっかり捨てかけただいこんの皮だって、塩もみをして煎り
ごまでも振ればたちまちりっぱな酒の肴である。風の通り道にぶら下げて塩梅よく干した肉となれば外
で買えるはずもなく、乾かしかげんを自分ではかりながら思わず舌なめずりする。だからこそ、のっぴきならない味。飽きずにいつでも食べたくなる味。たまらなく恋しい味。(p.230-231) 」
16:45-17:15 「食に見出す自分ごとの価値 ー器の使用から、食べる/つくる/買い物をする行為へー」(小川 功毅・慶應義塾大学 環境情報学部)
SIG-SKL-39(http://www.sigskl.org/activity/papers/sig-skl-20230228.pdf)
p.31-38
小川さん自身が作成したお料理の体験談が詳細に語られていて非常にお腹が空きました。図2参照。
図 2 小川さんのお料理の写真
お話を聞いていて、茶道具なんかを考えると、季節との兼ね合いとか部屋のどの位置に置かれているとか、光がどこから差しているとか、生花との関係とか、誰が客人で来るのかとか、無数のファクターで選ばれていますよね。松永秀久の平蜘蛛の茶釜とか、茶会の基軸になる品物もあれば脇役になるものもある。無限に考えることがあるなあと思いました。
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