身体知研究会(2023年2月)のご報告1
2023年3月13日 (月) 投稿者: メディア技術コース
文責:榎本
先日(2023年2月28日(火))は第39回身体知研究会でした。
身体知研究会というのは、スポーツ科学,人工知能,認知科学,バイオメカニズムなどの諸科学に渡る横断的な研究領域と位置づけることが出来ます。とくに身体技能(楽器演奏,スポーツ,ダンス,工芸など)に関する様々な研究の発表の場となっています。
本日のプログラムは以下です。
【招待講演】
12:30-12:35 開会/企画テーマ「感覚的情報をどのように「計測」し伝えるか」趣旨説明(松田 浩一・岩手県立大学)
無意識にできることを言葉にして伝えることは容易ではなく,また,感覚的に感じている量を伝えることも容易ではない.このような感覚的情報に共感したり・共有することができるのは,同じレベルの経験知を持っている人たちである.伝承・伝達,という行為は,その経験知ギャップを埋める創意工夫を要するが,これもまた主観に頼る部分が大きい.
これらの課題の解決の糸口として,計測することにより現象を明らかにし,感覚的にとらえてきた動きや量を数値として見ることができるようにするアプローチがある.身体を計測する多種多様なデバイスが入手可能になってきた一方で,計測値を見ればそのまま結果として使えることは稀であり,感覚的情報と計測した量をどのように結びつけるかが課題となっている.これは,対象ごとの個別性が高く,計測したデータのどの部分を見て,どのように加工・解釈すればよいか,もノウハウが必要となることに起因する.
そこで本企画では,身体知の表出に役立つ「計測」について,感覚的情報と計測値を結びつける事例を募集する.招待講演では,理美容ハサミの切れ味の良さを,計測によって伝えようとする取り組みについてご紹介頂く.理美容ハサミは,一本一本職人が㎛単位で研磨加工し,その切れ味の良さを実現しているが,使った人にしかその良さが分からない.髪の毛という非常に小さな対象に対して起きているハサミによる切断の仕組みを踏まえ,現象を計測し,良さを視える化する取り組みを行っている.
12:35-13:45 招待講演「理美容はさみの切断の仕組みと『切れ味』について」(井上 研司・株式会社東光舎)
美理容ハサミは,卓越したモノ作りの職人による工芸品である.弊社の職人は,「現代の名工(厚生労働省)」「黄綬褒章(内閣府)」などで表彰されており,その手によって創られたハサミは工芸品としての価値を認められている.ハサミは複数の部品を溶接して組み上げるが,個々の形状が微妙に異なるため,研磨や形の矯正などを一つ一つ手作業で行う必要がある.このように,いくつもの工程を経てようやく実現できる「切れ味」であるが,その良さをどのように訴求していくかを探究している.本講演においては,理美容ハサミの製造工程と,その加工技能について紹介し,機械工学的アプローチから,その切れ味の定量化に取り組んだ事例について紹介する.
【テーマ関連発表】(4件:発表20分+質疑10分)
14:00-14:30 「手術室器械出し看護師の良い渡し方を形成する要因に関する一考察」(佐藤 大介・岩手県立大学大学院)
14:30-15:00 「上肢関節の角度変化パターンと舞踊の印象の関係についての一検討」(門屋 遥・岩手県立大学大学院)
15:05-15:35 「電子機器組立て技能における新しい技能向上システムの検討」(田中 翔大・職業能力開発総合大学校)
15:35-16:05 「クラシックギターの演奏姿勢に楽曲の音楽的特徴が与える影響」(飯野 健広・北陸先端科学技術大学院大学)
【一般発表】(3件:発表20分+質疑10分)
16:15-16:45 「身体動作と発話の意味性に着目した演劇作品の主観的分析手法の提案」(熊谷 啓孝・慶應義塾大学院政策・メディア研究科)
16:45-17:15 「食に見出す自分ごとの価値 ー器の使用から、食べる/つくる/買い物をする行為へー」(小川 功毅・慶應義塾大学 環境情報学部)
17:15-17:45 「からだマップテーブルを用いた身体動作の比較伝授に関する一検討」(亀田 明男・NTT 人間情報研究所)
各発表の原稿は 研究会のホームページ(http://www.sigskl.org/activity/pg147.html) に掲載されていますので、興味をもった人は覗いてみてください。
実は、途中で教えてもらって、最後だけしか聞いていないのですが、聞けた熊谷さんと小川さんの簡単な紹介を次回しますね。
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