江戸の和算のたしなみ(5):算木による一次方程式の解法
2023年3月 3日 (金) 投稿者: メディア社会コース
皆さん、突然ですが、一次方程式13x-819=0を解いてください。なんてことはないですね。ただ単に819を13で割るだけで、答えはx=63です。おそらく筆算を行ったことと思いますが、そのプロセスを頭に入れておいてください。
では、算木を使って解いてみます。使う算盤は前回出てきたものです。上の“百・十・一”は各位を表します。右の“商・実・方”ですが、今回の(実質的な)割算計算では、“商”は答えを格納するところで、“実”には被除数を、“方”には除数をそれぞれ入れます。
①が初期状態です。被除数はマイナス符号も含めた-819を入れます。ですので、黒木を用います。除数13は赤木を用いて表します。
さて、ここからは割算をするときのプロセスです。算木を移動したり、入れ替えたりするので、複雑そうに見えますが、実際には皆さんが最初に行った割算の筆算と同じで、それを算木で表したにすぎません。まず、②ですが、ここは“方”の13を左に一つシフトしているだけです。そして、縦に並ぶ(-)81と13に着目し、81から13の算木を取り除きくという手続きを、もう(13が)取れないというところまで繰り返します。そうすると、5回まで13の算木を取り除けて、“実”の十の位に(-)3が残ります(83-13-13-13-13-13=3)。③はその状態を表しています。“商”の十の位には5を入れます。
次に④ですが、ここは“方”の13を右に一つシフトしているだけです。そして、ここは先ほどと同様で、縦に並ぶ(-)39と13に着目し、39から13を繰り返し取り除いていきます。結果として、3回取り除いたところで、“方”からの算木がきれいに無くなりました(39-13-13-13=0)。⑤はその状態を表しています。“商”の一の位には3を入れます。これで解が63であることがわかりました。
西洋数学を学んできた私たちにとっては一瞬の手続きも、算木を使うとかなり面倒そうに見えますね。ただ、当時の和算においては、これは効率的な解法だったのです。今回は極めてシンプルで実質的な割算である一方程式における算木・算盤の活用法を紹介しましたが、二次方程式も算木で解くことができ、そのための算盤もあります。興味のある方は調べてみるとよいでしょう。
次回は、再び算額について話をしたいと思います。
文責: メディア学部 松永
(2023.03.03)
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