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観光とメディア(その2)

2023年5月24日 (水) 投稿者: メディア社会コース

こんにちは、メディア社会コース助教の鈴木です。

今週は『観光とメディア』についてお話ししています。

 

その1では前段として「なぜ観光が重要なのか?」についてお話ししましたが、その2ではメディア学部の学生の関心も高い『アニメ』と観光についてお話しします。

 

ご存知の方も多いと思いますが、アニメに登場した舞台を巡る『聖地巡礼』と呼ばれる観光スタイルがあります。アニメの聖地巡礼が一般的に広く知られたきっかけとしては、アニメ映画『君の名は。』の大ヒットをきっかけに、2016年の新語・流行語大賞へノミネートされたことが挙げられます。一方で、アニメファンの間では「何をいまさら?」という反応も多かったと思います(私もその1人です)。

 

アニメの聖地巡礼の起源について研究した岡本(2009)によると、アニメの聖地巡礼行動は1990年代前半から行われていて、『聖地巡礼』という表現も90年代から用いられていた可能性が高いとされています。私の個人的な記憶でも、少なくとも2000年代には聖地巡礼という言葉はインターネット掲示板を中心に使われていたと思います。この古くからある聖地巡礼が、前回お話しした観光客を増やそうとする取り組みと結び付いて近年ではさらに注目されています。

 

地域が観光客を増やすためには魅力的な観光資源が必要です。典型的な例で言えば、温泉、寺社仏閣、テーマパーク(遊園地)などが挙げられます。しかし、観光客を増やしたくても、これらの観光資源を急に作ることはできません。これらと比較すると、アニメの聖地を目指すというのは難易度が下がります(あくまで比較であって、これも難しいですが)。つまりアニメの聖地化は、今まで観光資源を持っておらず、作ることも難しい地域が『観光地』になるための1つの現実的な手段として考えられています。これはアニメ業界にとって大きな変化であると思います。

 

もともとアニメは子どものためのもの、あるいはオタクと呼ばれる一部の大人のためのものと捉えられていましたが、現在では地域を救うための重要なコンテンツと言えます。特に外国人からの評価が高く、人口が減少し続ける日本が経済規模を維持するためには、アニメによる国外からの誘客が欠かせないでしょう。言い換えれば、大学生・大学院生にとって『アニメと観光』はとても意義のある研究テーマと言えるでしょう。

 

参考文献

岡本健:アニメ聖地巡礼の誕生と展開,北海道大学観光学高等研究センター文化資源マネジメント研究チーム編,CATS叢書1号 メデイアコンテンツとツーリズム,pp.31-622009

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