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2023年12月

これから研究発表(だけではなくプレゼンテーション全般)を控えている皆さんへ

2023年12月30日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

本ブログをご覧の皆さん,こんにちは.

メディア学部教授 菊池 です.

いよいよ 2023 年もあとわずかとなりましたね.
年が明けると,卒業研究・修士研究の最終発表や,課題のプレゼンテーションなどを控えている人も多いと思います.

そのような皆さんに,私の「学生時代最大の恐怖体験」(笑)を教えようと思います.

こちらの「ブログ記事」を「自分に起こったこと」だと思ってご覧ください.




ね?いかがでしたか?恐ろしかったでしょ?(笑)

おそらく,現代ならこれより酷い状況になることはまず考えられません.
大丈夫!それまでに十分に努力し,しっかり準備をしていれば,恐れることなどなにもありません.
自信を持って,堂々とプレゼンテーションを行ってください.
PS.
上記記事に登場される近藤先生は,2019年度で定年退職されました.
現在は,東京工科大学名誉教授として定年前と変わることなく(いや,より一層精力的に)各方面でご活躍されております.

文責:菊池 司

【授業紹介】メディア専門演習「ビジュアルコミュニケーション」

2023年12月27日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

本ブログをご覧の皆様,こんにちは.

メディア学部教授 菊池 です.

本日のブログでは,私が担当している「メディア専門演習:ビジュアルコミュニケーション」(2年次後期・3年次前期)の中で,
受講生が制作した課題作品を紹介したいと思います.

本日紹介する作品は,「有名人の似顔絵イラスト」です.

「メディア専門演習:ビジュアルコミュニケーション」は,ビジュアルコミュニケーションのための技術と理論,およびその価値を学びながら,その可能性と多様性を探求するため Adobe Illustrator と Photoshop を用いて自身のアイデアをビジュアルとして制作し,他者に伝えることができるようになることを目標としています.

授業内では,数回の「課題作品」の制作を通してツールとしてのソフトウェアを学びながら,現実の中にある”シンボリックな本質や普遍性”を見出し,自身の表現力でそれをビジュアルとして提示することを学んでいきます.

「有名人の似顔絵イラスト」という課題では,外見の特徴だけではなく対象人物の性格や雰囲気などの無形の本質を捉え、人物のユニークな要素として表現することを目指します.

受講生の皆さんが制作した作品の一部が,以下のようなものです.


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いかがですか?
受講生それぞれが,対象人物の外見的な特徴だけでなく内面さえも捉え,表現手法を検討しながら作品制作を進めていった様子がよく現れていると思います.

文責:菊池 司

【授業紹介】メディア学部でのグラフィックデザイン系の授業

2023年12月25日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

本ブログをご覧の皆様,こんにちは.

メディア学部教授 菊池 です.

東京工科大学にはデザイン学部がありますが,メディア学部でもデザインに関することを学ぶことができる授業が複数あります.
それは当然,「メディア学」と「デザイン学」が密接に関りがあるからです.
たとえば,グラフィックデザインの知識は,映像での画面構成やカメラワーク,ゲームでのユーザインタフェースのデザイン,商品パッケージやポスターのデザインなどに必要となります.

本日のブログでは,「グラフィックデザイン」に関することを学ぶことができる「視覚情報デザイン入門( 1 年次)」と「メディア専門演習:ビジュアルコミュニケーション( 2 年・ 3 年次)」のうち,「視覚情報デザイン入門( 1 年次)」を紹介したいと思います.



ところで,皆さんは「センスは生まれたときから持っている人と持っていない人がいる」と思っていませんか? すなわち,「生まれ持ってセンスがある人がいて,センスがない人はどんなに努力してもセンスを磨くことはできない...」とは思っていませんか?

はっきり言いましょう!
それは間違いです!!!

デザインにおける「センス」とはすなわち,「知識」です.

実際,皆様の身の回り(例えば友人など)で「おしゃれ」な人って,いますよね?
その人はおそらく,ファッションが好きで,常日頃からファッション雑誌などをチェックし流行にも敏感ではないでしょうか?
それは言い換えれば,「ファッションに対する知識」が豊富で,その知識を得るためなら勉強を惜しまないために,「おしゃれ=センスがいい」という結果になっているのではないでしょうか?

デザインには,かっこたる「理論」が存在します.
色彩調和理論や黄金比,グラフィックデザインにおいてはグリッド法やジャンプ率,タイポグラフィなどなど...
数多くの理論が存在し,それらを学び,そして自分の作品に活かせるようになると,それが「センス」となるのです.



メディア学部のグラフィックデザイン系授業である「視覚情報デザイン入門( 1 年次)」では,グラフィックデザインの基礎であり最も重要とも言えるタイポグラフィから,グラフィックデザインにおけるレイアウトの 4 原則,色に関する理論と色彩調和理論などを学習し,下記のような課題作品を制作します(下記の課題テーマは”キャンパス内での日常のひとコマ”です).

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このような課題作品の制作を通しながら,授業で学んだグラフィックデザインに関する理論を自分で活用できるように練習を重ね,最終課題である「自分しか知らない情報を可視化する」という作品制作に取り組みます.
最終課題に関してはまた,別の機会に紹介したいと思います.

文責:菊池 司

観光における情報行動(その3)

2023年12月22日 (金) 投稿者: メディア社会コース

こんにちは、メディア社会コース助教の鈴木です。

今週は『観光とメディア』についてお話ししています。

 

その2では旅マエの予約や旅行行程の作成についてお話ししました。その3では旅ナカと旅アトの情報行動についてお話しします。

 

まず、旅ナカで観光客はどのような情報行動を取るでしょうか。有名なお寺について調べる、綺麗な景色や美味しい食べ物を記録するといった際にはスマートフォンを利用することが多いと思います。現代では当たり前に使われているスマートフォンですが、持ち歩けるサイズの端末でインターネットが利用可能であり、カメラ機能だけでなく編集機能も備わっている「高度情報端末」を多くの観光客が所有しているという現状は、観光客の利便性を向上させると同時に、観光客を誘致する側にも大きなインパクトを与えています。

 

過去の回と同様にインターネット普及以前を振り返ると、観光客が現地で情報を入手するには、観光案内所に行って係の人に口頭で教えてもらう、あるいは紙媒体の案内冊子を入手する必要があります。現地での思い出を記録するにはカメラを持参し、撮影した内容を確認するには、地元に戻り、お店でお金を払って写真を現像してもらう必要があります。当然、写真を編集することもできません。また、誘致者側の視点で見ても、観光客のために多くの人員や紙媒体を用意すれば人件費や印刷費用が必要となります。その際に需要に対する供給量を見誤れば不必要な出費が発生するリスクも抱えてしまいます。現代では基本的にはインターネットに情報を掲載し、現地対応に割く資源は必要最小限とすることが可能であるため、スマートフォンの普及はこうしたリスクは低減していると言えるでしょう。

 

最後に、旅アトは旅行の思い出や情報を共有するフェーズとなります。近年では様々なツールが登場しており、繰り返し登場しているSNSの中でも動画を用いた情報共有(VLOGなど)も増えてきています。また、Googleマップでは自身の移動が自動的に記録され、タイムラインとして旅行を振り返ることができます。その他にも、旅行記やアルバムを簡単に作成することができるアプリも登場し、容易に様々な形式で思い出を他者と共有することが可能です。

 

過去の方法を振り返ると、SNSが普及する前はテキストと写真を組み合わせたブログが利用され、インターネットの普及前には上述のように現地で撮影した写真を現像し、必要に応じて焼き増しをしながら現地での思い出を振り返っていました。写真を共有する際にも、基本的には対面でのコミュニケーションが前提となり、遠方の友人には写真を郵送する必要があります。もちろん当時のスタイルにも良さはあり、実際にかつて使われていたインスタントカメラが再流行するといった事象もあります。しかし、総合的に見るとやはり現代の方が旅ナカ、旅アトでの利便性は向上し、観光客の体験価値は向上していると考えらえれます。みなさんもぜひ情報技術の進化に伴う観光体験の変化(≒進化)を感じながら、様々な場所を旅してみてください。

観光における情報行動の変化(その2)

2023年12月20日 (水) 投稿者: メディア社会コース

こんにちは、メディア社会コース助教の鈴木です。

今週は『観光における情報行動の変化』についてお話ししています。

 

その1では旅マエの情報行動として、受動的な情報への接触、能動的な情報の検索についてお話ししました。その2では引き続き旅マエの情報行動として、各施設やサービスの予約について、さらに旅行行程を一括して作成するWebサービスについてもお話しします。

 

旅行に行くことが決定した後には各施設やサービスの予約を行いますが、特に重要になるのが宿泊施設と交通機関の予約です。近年ではインターネット上で宿泊施設を予約することができるOTAOnline Travel Agency)経由での予約が主流となっています。また、各OTAを一括して検索し最安値を表示してくれるキュレーションサイトも存在します。交通機関も同様にインターネットからの予約が容易であり、宿泊施設と交通機関がセットになったパッケージツアーもWeb限定商品の展開等によってその種類は増加傾向にあります。

 

一方で、インターネットが普及する前の人々はどのように宿泊施設や交通機関を予約していたのでしょうか。インターネットが普及する前にはOTAが存在しないため、事業者へ直接予約の申し込みを行うか、旅行代理店の実店舗へ訪れる必要があります。事業者へ申し込みを行う場合は、インターネットがなければ直販サイトやメールアドレスも存在しないため、電話やFAXによる予約が必要となります。現在はインターネット経由で予約をしている多くの人たちが電話を使用すれば回線が込み合うことや宿泊施設側の手間が増えることは明白です。また旅行代理店を訪れる場合も、インターネットという選択肢がない場合、パッケージツアーを申し込むには店舗に行くしかないため混雑は避けられません。交通機関においても、年度初めの定期券購入時期の窓口の行列を思い浮かべてもらえれば、利用者が実店舗に集中することのデメリット、インターネット経由という選択肢を用意することのメリットが想像しやすいのではないでしょうか。

 

また旅マエには、どの施設をどの程度の滞在時間や順番で巡るか、各施設の間の移動時間はどの程度かといった情報をもとに計画を立てる必要があります。この作業はとても煩雑で、各施設の営業時間をそれぞれのHPで調べたり、移動時間を時刻表や乗換案内アプリで調べたりする必要があります。より効率の良い順番を考えるためには地図を参照し、それぞれの位置関係を俯瞰的に把握する必要もあります。こうした煩雑な作業を一括して行える「CT-Planner」というサービスがあります。CT-Plannerは東京都立大学と東京大学の共同研究によって誕生したもので、旅行行程の作成を支援してくれます。興味のある人はぜひ一度使ってみてください。

 

参考URL

CT-Planner ,https://ctplanner.jp/ctp5/

観光における情報行動の変化(その1)

2023年12月18日 (月) 投稿者: メディア社会コース

こんにちは、メディア社会コース助教の鈴木です。

今週は『観光における情報行動の変化』についてお話ししようと思います。

 

情報行動とは「人間が情報とかかわる行為」のことを指します。人間が情報とかかわる際には基本的にメディアを利用することになりますので、情報行動≒メディアの利用と考えてもらってもかまいません。今週のブログでは観光行動を旅マエ・旅ナカ・旅アトに分類した上で、各段階における情報行動を過去と現在を対比しながらお話ししていきます。

 

その1では旅マエの情報行動についてお話しします。旅マエにおける主な情報行動は受動的な情報への接触、能動的な情報の検索と各施設やサービスの予約です。みなさんはこれらの時にどのようなメディアを利用するでしょうか。「旅行に行きたい」という欲求が湧くタイミングはどのような時でしょうか。いくつかの調査において、SNSが旅行に興味を持つきかっけとなることが報告されています。また、旅行先について情報を検索する際にもSNSが利用されていることが示されています。つまり、近年ではSNSが旅マエにおいて重要なメディアであると言えます。またSNSが普及する前には、各施設の公式HP等のオフィシャルな情報にも触れながら、ブログやインターネット掲示板等の消費者発信の情報源(ソーシャルメディア)が重宝されてきました。

 

それでは、インターネットが普及する前の人々はどのように情報に接触し検索していたのでしょうか。インターネットが普及する前には当然ソーシャルメディアも企業のHPも存在しません。この時代に人々に影響を与えていたのがマスメディアです。特にテレビは自分自身が意識せず受動的に情報に接触する媒体として、旅行意欲を刺激していました。そして、テレビ番組を見て旅行に行きたいと思い、情報を検索する際には雑誌やパンフレットといった紙媒体が利用されていました。しかし、これらを入手するには店頭まで足を運ぶ必要があり少し手間がかかります。また、紙媒体にはスペースの制限や広告主等との利害関係もあるため、必ずしも求める情報が掲載されているとは限りません。

 

以上のような過去の状況を踏まえると、インターネット、ソーシャルメディア、SNSの普及は旅行に関する情報への接触機会を増やしたと言えます。また、能動的な情報の入手を容易にしたことに加え、手に入る情報の量も格段に増加させました。これにより従来では観光客が訪れることのなかった地域にも観光客が訪れるようになり、売上や交流人口の増加といった観光による恩恵を受けることができています。

NICOGRAPH発表紹介: 音ゲーの難易度を操作音だけで判別

2023年12月15日 (金) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

NICOGRAPHでの発表の2件目は、渡邉南さんの「リズムゲームのタップ音からの難易度推定」です。

みなさんの隣りの席で、友達が音楽ゲームをしている状況を思い浮かべてみてください。その画面まではよく見えないとしても、操作している音を聞いただけで、どれぐらい難しいゲームをしているのかわかるでしょうか?

もちろん、難しいゲームほどノート(音符)が沢山降ってくるので、画面を叩く回数も多くなります。なので、打音の数だけでもある程度の推定はできるのですが、音のスペクトルなどの特徴を調べたら、さらに正確に推定できるようにならないでしょうか。発表者の渡邉さんは、そのような問題意識から、実際にゲームをしているときのタップ音(画面を叩く音)のデータを集めてみました。最初に集めたのは自分自身のデータで、それを使って機械学習をしてみると、まずますの精度を得ることができました。次に別の人(Aさんとします)を呼んできて同じようにデータを集めたところ、それでもうまくいきました。Aさんのデータだけで実験しても、渡邉さんとAさんのデータを混ぜて実験しても同様です。

ところが、渡邉さんのデータで音のモデルを学習し、それを使ってAさんのデータを分析したところ、ほとんど正解が得られません。これは、客観的に同じ難易度のゲームでも、人によって難しさの感じ方は違うので、操作音に現れる特徴が異なるということです。そこで、前回紹介した研究と同じように、さまざまな音の特徴量を取捨選択して、個人差が現れにくい特徴だけを見つけるということを試みました。結果として、データを混ぜた場合と比べてもさほど遜色のない推定精度を得ることができ、今回の発表に至ったというわけです。

ある条件ではうまくいった実験が、別の条件では全然うまくいかないということは良くあります。そこでがっかりするだけでなく、「なぜうまくいかないんだろう?」と考えて、その原因を取り除いていくことを考えると、研究がさらに進んでいく、そんなことを実感した今回の発表でした。

NICOGRAPH発表紹介: 声の経年変化と環境の経年変化

2023年12月13日 (水) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

11月30日から12月3日まで、4日間にわたって開催された"NICOGRAPH2023"に参加してきました。私の研究室からも毎年何件かの発表をしている学会で、今年は2件のポスター発表を行いました。会場は、富山県南砺市の「南砺クリエイタープラザ(桜クリエ)」で、写真のようなこじんまりとしたおしゃれな建物でした。

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2件の発表のうち、まずは山崎祐奈さんの「長寿アニメのキャラクターの声優の声の変化に関する研究」を紹介しましょう。この研究は、一人の声優さんが、同じキャラクターを長年に渡って演じている場合に、時代とともに声の質は変わっているのだろうかという疑問から始まった研究です。二十数年にわたって放送されているアニメ番組の声のデータを集め、機械学習によって、何年頃の声なのかを判別できるかどうかを実験してみました。

実は、最初の実験でとても高い判別精度が得られてしまい、これは逆に面白くないかと思ったのですが、そこから話は思わぬ方向に進みます。別の研究で使っていたSpleeterという音源分離ツールで、試しにセリフとBGMを分離してみたところ、BGMだけでも同じくらい高い精度で年代判別できてしまったのです。

ということは、収録に使った機材の変化とか、ミキシングの音質調整の変化とか、声優さんの声の変化とは関係ない情報に基づいて、機械学習が行われている可能性があります。そこで山崎さんは、機械学習で用いる音の特徴を取捨選択しながら、セリフの年代判別率が高く、なおかつBGMの年代判別率が低くなる条件を探していきました。結果として、声の基本周波数(F0)に関連するいくつかの特徴量が重要だという、リーズナブルな結論を得ることができたというわけです。

山崎さんは、かれこれ2年以上にわたって声優さんの声の研究をしており、昨年のNICOGRAPHでも発表を行いました。そこから1年間で着実に研究が進み、より完成度の高い発表になったのではないかと思います。

 

プログラミング教育は本当に必要なくなったのか?

2023年12月11日 (月) 投稿者: メディア技術コース

昔からプログラミングは必要なのか,その教育も必要なのか的なお話をちらほら聞きます.特に,去年末(3.0)から今年の頭(3.5)に公開され,流行り始めたChatGPTがプログラミングコードも生成してくれるので,そのような意見が強まった気がします.しかし,本当にプログラミング教育は意味をなさなくなってきたものでしょうか?このことに対して,私が学部生であった2006年とその10年後の2016年の出来事を思い出したものです.

2006年は,ちょうどグーグル機械翻訳サービスが始まった時期です.どこの大学・学科でも学部生は必須で英語を必須科目として受講すると思いますが,ある日クラスメートが講師の先生に「機械翻訳が発達すれば,こんなに英語を勉強する必要があるのか」問いかけたものです.当時,留学1年も立たず日本語もそこまで流暢にしゃべれなかった私は使えるかと思って,あれこれ性能チェックをしたものでしたが,当時の機械翻訳の性能なんてそんなに使えるレベルのものではないのが分かっていたので,考慮する価値のないお話だと思っていました.しかし,それに対する先生の対応が素晴らしかったのだけは覚えています.細かい文言はもはや思い出せませんが,肝心な内容は次のようなものだったと覚えています.

そうかも知れません.しかし,その翻訳が正しいかどうかをチェックするにも英語能力は必要になります.

2016年にはそのグーグル翻訳が,翻訳エンジンをニューラルネット基盤に変えるとの発表があり,2017年当たりからはグーグル翻訳は物凄く改善された話をあちこち耳にしてきたものです.今度はどこかの教室での雑談ではなく,れっきとしたニュースメディアにも似たような話をしているのをみかけたものです.しかしながら,上記の指摘はいくら技術が発達してきても通用する話だと思います.当時の記事でも,似たような話でまとまった気がします.同じ論理がプログラミング教育にも通用するものではないでしょうか.プログラミングもある種の言語であり,似たような話になってくると思います.実際,「プログラミング言語」と呼びますね?

その特殊な言語を仕事としては使わない人ならば,多くの学習時間を費やさず通訳家を雇うのは悪くない選択肢だと思います.しかしながら,一回切りで終わる程度の頻度ではなく,ずっと何かをやっていくような状況,つまり仕事としてその言語を使い続ける分には,最初から通訳なしに自分でもお話できるようになるのがベストだと思います.

もし,それが本当に難しく,常に通訳を伴うような状況を想定しても,通訳が正しいかどうかを判断する程度の能力は必要です.社会学あたりには似たような状況の「プリンシパル=エージェント問題」というものもあるそうです.しかし,まだ意思も持たず依頼主を騙したことで利益も得ない人工知能ツールにそのようなややこしい概念まで入れなくても,それが出力してくれるものが正しいものなのかが判断できる程度の能力を備える必要はあると思います.

 

メディア学部 盧 承鐸

学生・若手のためのAESジャパンフォーラム2023

2023年12月 8日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

こんにちは。伊藤彰教です。

AES(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティー)東京工科大学メディア学部の関わりについては、10月にもこのブログにてご紹介しましたが、今回はさらなる続報です。

AESの学生支部では例年、秋のシーズンに制作・研究の成果と、学校間、産学の交流を目的として<学生・若手のためのAESジャパンフォーラム>を開催しています。ここ数年はコロナ禍もありオンラインでの開催でしたが、対面発表が復活する2023年度の今年は東京工科大学八王子キャンパスにて開催されました。わたしたちの大学が会場になるのは初めてのことです。

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名古屋芸術大学、洗足学園大学、東京藝術大学など、日本全国のから音響制作・音響研究を学ぶ学生さんたちが一堂に会し、ポスター発表やオーディオデモを中心に、熱気あふれる交流会となりました。

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このフォーラムは、AESの学生会員の中の有志が主体的に運営しており、運営委員会自体が貴重な大学・専門学校の学生同士の交流の場や社会活動の場となっています。2023年度の今年はなんと、運営委員会メンバー内で東京工科大学メディア学部からの参加人数が最多とのことで、「東京工科大学メディア学部は音楽・音響制作を学べる大学」ということを広く他大学、特に音大の方々にも認めていただくきっかけにもなりました。以下は会場運営に勤しむメディア学部生のみなさんです。

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フォーラム参加者は、学生だけではなく、音響研究で著名な他大学の先生方や放送・音響業界の方々も多く来訪しました。伊藤彰教研究室の立体音響設備でも、名古屋芸術大学をはじめとして様々な大学で制作された音響作品を展示するとともに、こうした専門家の方々にも、本学の音響研究の一端を知っていただける機会となりました。

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運営だけではなく、研究発表についてもメディア学部生が頑張ってくれました。exSDプロジェクトメンバーと、プロジェクト演習「オーディオエンジニアリング」の合同制作による<音源包囲型マルチマイク録音>というレコーディングテクニックとサウンドは、立体音響作品の中でも新鮮なものとして好評をいただきました。

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大学間の学生トークイベントでは「インタラクティブ・オーディオの未来」というテーマで、東京藝大からはMPEG-Hなどを中心とした次世代マルチチャンネル立体音響配信などの取り組みや、洗足学園大学からは舞台芸術・ミュージカルなどと立体音響の取り組みなどが紹介されるなか、メディア学部の学生さんからは、ゲーム制作に関連する音響デザインや制作についての提案がなされ、若者らしいトピックで活発な意見交換や提案が展開されました。(恥ずかしながら、わたくしもゲストトーカーとしてちょこっと参加させていただきました)

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本学学生にも、そして他大学の学生さんたちも、久しぶりの対面によるフォーラム開催はおおいに刺激になったようで、この日以降も活発な交流が継続しているようです。今回関わった学生さんは、2年生・3年生が中心となっており、今後も継続的な活動が期待できるようです。音楽・音響を全国規模の交流の中で学べるメディア学部として、教員としても最大限の応援を続けたいと思います。ともあれ関わった学生のみなさん、本当におつかれさまでした!

音楽情報処理の国際学会<CMMR>にて留学生が研究発表

2023年12月 6日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

こんにちは。伊藤彰教です。

わたしたちの研究室では、ITを活用した音楽制作の研究を行う学生も所属しています。そんな学生のひとりに、パラグアイからの留学生がいます。フルネームが非常に長いため、ニックネームである「アレくん」としてご紹介します。アレくんは母国にて一度社会人を経験したあと、日本の音楽大学に1年ほど研究生として滞在したのち、本学メディアサイエンス専攻の大学院生として入学しました。

彼が取り組む研究は、機械学習を活用した音楽生成。特にハープや琴などを「じゃらららん」と奏する、グリッサンドやアルペジオの生成を中心に熱心に取り組んできました。

このブログの読者であれば、機械学習による音楽制作はホットなトピックであることはご存知かと思います。こうした最先端の音楽情報処理研究の国際的なカンファレンスのひとつにCMMR (Computer Music Multidsciplinary Research) があります。この会議が2023年に東京で開催されるよい機会であり、アレくんの大変な頑張りもあってめでたく査読が通り、発表のために参加することができました。

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飯田橋の東京理科大学会場にて行われた<CMMR2023>には、ドイツ、フランス、スペイン、イギリス、台湾、韓国など、世界各国から100名以上の参加があり、久しぶりに対面開催になったCMMRは、非常に国際色豊かな雰囲気のなか、熱気あふれる議論がそこここで行われていました。廊下での雑談も、フランス語、ドイツ語、スペイン語、英語が飛び交い、私自身も「久しぶりに国際会議に来たなぁ」という実感がふつふつと湧いてきました。

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アレくんの発表は「ポスター&デモ発表」というセクションにて行われ、実際に生成した音楽フレーズを多くの方に聞いていただけました。アレくんは母国語はスペイン語で、日本語が流暢であるのはもちろんのこと、英語も非常に堪能で、3ヶ国語を上手に使い分けながら、自らがとりくむ研究について多くの国の人たちに伝えていました。

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アレくんの言語能力、プログラミング能力、そして音楽についての深い造詣は本当に素晴らしいのですが、それらの能力の有無に関わらず、音楽は文化を超えて直観的に伝わるメディアということもあり、音楽生成のデモを実際に聴いてもらうことで研究ディスカッションが大いにもりあがりました。世界中の研究者との刺激的な意見交換を踏まえ、さらなるシステムの向上にむけて意欲を燃やすアレくんです。

「ところでサウンドデザインの研究室なのに音楽も研究できるの?」

という疑問があるかと思います。

サウンドデザインという広い活動を示すひとつのサブ分野として<フィルム・スコアリング>といった音楽創作分野があり、映像音楽・ゲーム音楽などが代表例として挙げられます。こうした創作活動の基盤研究として、ITを活用した音楽制作や音楽ツール開発も含んで研究活動をしています。

最新情報としては、統計的手法や機械学習を用いた楽曲分析によるアルゴリズムを、ゲーム音楽に応用する研究テーマにかかげたフランスからの研究生もプロジェクトの仲間入りを果たしました。

国際的な環境の中で、サウンドの研究も、音楽の研究も、柔軟に行き来できるのがメディア学部のひとつのメリットであるといえましょう。

研究紹介:視聴履歴の共有によるジェネレーションギャップの可視化

2023年12月 4日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

助教の戀津です。

今回は、以前にも紹介したジェネレーションギャップビューアのお話です。
前回の記事でも最後に少し触れていたのですが、ユーザー登録と視聴作品の登録方法について紹介します。

https://contents-lab.net/ggviewer/
こちらのアドレスからアクセスすると、まずは年表が表示されます。年表上にはデータベース内の各作品がシリーズ別に放映年の位置に表示されています。
ドラッグドロップやマウスホイールで動かしたり拡大・縮小できますので色々操作してみてください。

右上の「ユーザー追加」ボタンから、ログイン・ユーザー登録・年表上への情報追加が可能です。
初めての方はユーザー登録を、登録済みの方はログインをしてユーザーページへ移動できます。

Ggviewer4

 

ユーザーページでは、データベース内の各作品について、あなた自身が視聴したものを選択することができます。
表形式で一覧を出しているので、視聴済みの作品について左端のチェックボックスをチェックにしていただければ入力完了です。

Ggviewer5

 

作品はたくさんあるので、検索欄も準備してあります。図では「プリティー」と入力してみた結果を表示しています。
入力した文字列で各情報を検索するので、プリティーシリーズの各作品と、ウマ娘シリーズがヒットしました。
他にも放送年(2023等)を入れて絞り込むことも可能です。

Ggviewer6

 

こうして入力した情報は、年表上に反映されます。ログイン済みのユーザーであれば、年表ページに戻ると自身の生まれ年からの年表が表示され、視聴済み作品に色が付きます。

Ggviewer7

 

ユーザー追加ボタンから他ユーザーのユーザー名を入力すると、その方の年表と視聴済み作品が色つきで表示されるので、自身の年表・視聴作品と比較ができます。
共通の話題が見つかったり、視聴していたシリーズの他の作品の様子を聞いたりと色んな活用ができると思います。
私自身色々試しましたが、複数人で視聴履歴を持ち寄るだけで結構楽しいです。
「無限にオタクトークができる」という評価を頂いたこともありました。

ユーザー登録は本名である必要なく、半角英数で作成をお願いしているのでSNSのidで作成し、SNSで共有するのも楽しいかも知れません。
私のおすすめ作品リスト!みたいな活用法も考えられますね。是非やってみてください。

デジタル時代のブランド その3

2023年12月 1日 (金) 投稿者: メディア社会コース

みなさん,こんにちは。メディア社会コースの進藤です。

今週はデジタル時代のブランドについて考えていきたいと思います。

ブランド価値は,顧客を含むすべての関係者との相互作用によって共創されるという考えにともない,ブランド戦略を立案する上でも共創のプロセスが重視されるようになりました。ソーシャルメディアなどを活用して,企業と顧客が協働することで,新たな経験価値を共創するのことが可能になったのです(田中,2014)。こうしたブランド価値共創においては企業と顧客に加え,すべての関係者を巻き込むことで,その周囲に広がる生活者へとつながる可能があるとされています(澁谷,2020)。 そのような流れの中で、ソーシャルメディアが発展し,価値共創が行われる中,デジタル発のブランド,DNVB(Digital Native Vertical Brand:デジタルネイティブ世代の直販ブランド)と呼ばれるブランドが生まれています。D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)と呼ばれるビジネスモデルを採用するこれらのブランドとその顧客の関係は,一般の企業にとっても,今後のブランドについて考える上で重要な示唆を与えているといえるでしょう(澁谷,2020)

<参考・引用文献>

田中洋編(2014)『ブランド戦略全書』有斐閣

澁谷覚(2020)「デジタル社会におけるブランドのあり方」マーケティングジャーナル, 39(3), pp.3-6.

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