こんにちは。伊藤彰教です。
わたしたちの研究室では、ITを活用した音楽制作の研究を行う学生も所属しています。そんな学生のひとりに、パラグアイからの留学生がいます。フルネームが非常に長いため、ニックネームである「アレくん」としてご紹介します。アレくんは母国にて一度社会人を経験したあと、日本の音楽大学に1年ほど研究生として滞在したのち、本学メディアサイエンス専攻の大学院生として入学しました。
彼が取り組む研究は、機械学習を活用した音楽生成。特にハープや琴などを「じゃらららん」と奏する、グリッサンドやアルペジオの生成を中心に熱心に取り組んできました。
このブログの読者であれば、機械学習による音楽制作はホットなトピックであることはご存知かと思います。こうした最先端の音楽情報処理研究の国際的なカンファレンスのひとつにCMMR (Computer Music Multidsciplinary Research) があります。この会議が2023年に東京で開催されるよい機会であり、アレくんの大変な頑張りもあってめでたく査読が通り、発表のために参加することができました。
飯田橋の東京理科大学会場にて行われた<CMMR2023>には、ドイツ、フランス、スペイン、イギリス、台湾、韓国など、世界各国から100名以上の参加があり、久しぶりに対面開催になったCMMRは、非常に国際色豊かな雰囲気のなか、熱気あふれる議論がそこここで行われていました。廊下での雑談も、フランス語、ドイツ語、スペイン語、英語が飛び交い、私自身も「久しぶりに国際会議に来たなぁ」という実感がふつふつと湧いてきました。
アレくんの発表は「ポスター&デモ発表」というセクションにて行われ、実際に生成した音楽フレーズを多くの方に聞いていただけました。アレくんは母国語はスペイン語で、日本語が流暢であるのはもちろんのこと、英語も非常に堪能で、3ヶ国語を上手に使い分けながら、自らがとりくむ研究について多くの国の人たちに伝えていました。
アレくんの言語能力、プログラミング能力、そして音楽についての深い造詣は本当に素晴らしいのですが、それらの能力の有無に関わらず、音楽は文化を超えて直観的に伝わるメディアということもあり、音楽生成のデモを実際に聴いてもらうことで研究ディスカッションが大いにもりあがりました。世界中の研究者との刺激的な意見交換を踏まえ、さらなるシステムの向上にむけて意欲を燃やすアレくんです。
「ところでサウンドデザインの研究室なのに音楽も研究できるの?」
という疑問があるかと思います。
サウンドデザインという広い活動を示すひとつのサブ分野として<フィルム・スコアリング>といった音楽創作分野があり、映像音楽・ゲーム音楽などが代表例として挙げられます。こうした創作活動の基盤研究として、ITを活用した音楽制作や音楽ツール開発も含んで研究活動をしています。
最新情報としては、統計的手法や機械学習を用いた楽曲分析によるアルゴリズムを、ゲーム音楽に応用する研究テーマにかかげたフランスからの研究生もプロジェクトの仲間入りを果たしました。
国際的な環境の中で、サウンドの研究も、音楽の研究も、柔軟に行き来できるのがメディア学部のひとつのメリットであるといえましょう。