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プログラミング教育は本当に必要なくなったのか?

2023年12月11日 (月) 投稿者: メディア技術コース

昔からプログラミングは必要なのか,その教育も必要なのか的なお話をちらほら聞きます.特に,去年末(3.0)から今年の頭(3.5)に公開され,流行り始めたChatGPTがプログラミングコードも生成してくれるので,そのような意見が強まった気がします.しかし,本当にプログラミング教育は意味をなさなくなってきたものでしょうか?このことに対して,私が学部生であった2006年とその10年後の2016年の出来事を思い出したものです.

2006年は,ちょうどグーグル機械翻訳サービスが始まった時期です.どこの大学・学科でも学部生は必須で英語を必須科目として受講すると思いますが,ある日クラスメートが講師の先生に「機械翻訳が発達すれば,こんなに英語を勉強する必要があるのか」問いかけたものです.当時,留学1年も立たず日本語もそこまで流暢にしゃべれなかった私は使えるかと思って,あれこれ性能チェックをしたものでしたが,当時の機械翻訳の性能なんてそんなに使えるレベルのものではないのが分かっていたので,考慮する価値のないお話だと思っていました.しかし,それに対する先生の対応が素晴らしかったのだけは覚えています.細かい文言はもはや思い出せませんが,肝心な内容は次のようなものだったと覚えています.

そうかも知れません.しかし,その翻訳が正しいかどうかをチェックするにも英語能力は必要になります.

2016年にはそのグーグル翻訳が,翻訳エンジンをニューラルネット基盤に変えるとの発表があり,2017年当たりからはグーグル翻訳は物凄く改善された話をあちこち耳にしてきたものです.今度はどこかの教室での雑談ではなく,れっきとしたニュースメディアにも似たような話をしているのをみかけたものです.しかしながら,上記の指摘はいくら技術が発達してきても通用する話だと思います.当時の記事でも,似たような話でまとまった気がします.同じ論理がプログラミング教育にも通用するものではないでしょうか.プログラミングもある種の言語であり,似たような話になってくると思います.実際,「プログラミング言語」と呼びますね?

その特殊な言語を仕事としては使わない人ならば,多くの学習時間を費やさず通訳家を雇うのは悪くない選択肢だと思います.しかしながら,一回切りで終わる程度の頻度ではなく,ずっと何かをやっていくような状況,つまり仕事としてその言語を使い続ける分には,最初から通訳なしに自分でもお話できるようになるのがベストだと思います.

もし,それが本当に難しく,常に通訳を伴うような状況を想定しても,通訳が正しいかどうかを判断する程度の能力は必要です.社会学あたりには似たような状況の「プリンシパル=エージェント問題」というものもあるそうです.しかし,まだ意思も持たず依頼主を騙したことで利益も得ない人工知能ツールにそのようなややこしい概念まで入れなくても,それが出力してくれるものが正しいものなのかが判断できる程度の能力を備える必要はあると思います.

 

メディア学部 盧 承鐸

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