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2024年2月

2023年度後期「音楽創作論」での作曲(その2):部分動機の作成から動機の決定まで

2024年2月28日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の伊藤(謙)です。

学生の投票によって、作成する部分動機の条件が「ラを開始音とする4分の4拍子」に決まったことを前回お話ししました。

本日は、その条件で作られた部分動機と、さらにそれを使って作られた動機をご紹介しましょう。

136名の学生がそれぞれのアイデアで部分動機を作り、投票の結果、AさんとM君が作った部分動機がともに6票を得て選ばれました。ちなみに、部分動機を選ぶ投票で同票となったのは、この授業が始まって以来、初めてのことです。


【Aさん考案の部分動機】
A


【M君考案の部分動機】
M



二人ともフレーズの始まりに休符を置き、連符(3連符・5連符)のリズムを入れていますね。フレーズが上行と下行を繰り返す点も共通していますが、Aさんは全体的に順次進行を中心とした緩やかなラインでまとめているのに対し、M君は始まりの半音進行とそのあとの跳躍進行との対比による躍動感のあるラインを描いている点にそれぞれの個性が感じられます。

どちらも動機を作る素材として魅力的ながら、再投票でAさんが65票、M君が69票を獲得したため、動機の作成にはM君の部分動機を使うことが決定しました。Aさんの部分動機は授業課題の動機作成の素材にはなりませんでしたが、作曲の素材の一部として使います

さて、次はM君の部分動機にもう1つ部分動機を加える作業に入りますが、その前に、追加する部分動機の形態を決めなくてはなりません。つまり、最初の部分動機をAとした場合、続く部分動機を、A(Aと全く同じ、あるいはほとんど同じフレーズ)、(Aに若干変化を加えたフレーズ)、B(Aとは音楽的に大きなコントラストをもつフレーズ)のどれにするかということです。これも投票を行ったところ、A(8票)、A´(68票)、B(58票)という結果になり、A+A´の部分動機の組み合わせによる動機を作ることになりました。

この条件での動機の作成には126名の学生が挑戦し、投票の結果、N君が考案した部分動機を加えて作られた動機が6票を獲得して選ばれました。


【N君が考案した第2の部分動機(赤色部分)を使って作られた動機】
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以上により、今年度の「音楽創作論」での作曲には、「M君考案の部分動機+N君考案の部分動機で作られた動機」「Aさん考案の部分動機」の2つを素材を使うことが決定しました。

次回は、この2つの素材を用いて私が作曲したピアノ曲をお聴きいただきましょう。


(メディア学部 伊藤謙一郎)

2023年度後期「音楽創作論」での作曲(その1):開始音と拍子の決定

2024年2月26日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

皆さん、こんにちは。メディア学部の伊藤(謙)です。

今週のメディア学部Blogは、今年度の「音楽創作論」で私が作った曲について3回にわたってご紹介します。

「音楽創作論」はメロディの作り方や楽曲構成に関する講義科目ですが、説明だけでなく、学生が考えたフレーズをもとに私が作曲し、最終回の授業で披露するイベントを毎年行っています。過去の作品についてもBlog記事にしていますので是非ご覧ください。

 ・2022年度:「音楽創作論」での作曲(その1):部分動機の作成
       【制作曲】『揺蕩う夜空』
 ・2021年度:「音楽創作論」での作曲 〜今回は難易度高し〜
       【制作曲】『雪月夜』
 ・2020年度:「音楽創作論」での作曲
       【制作曲】『Next Step』


過去のBlog記事にあるように、学生が考えるフレーズの開始音と拍子はいつも私が指定していましたが、今年度は初めてそれらの決定も学生に委ねました。

開始音は「ドレミファソラシ」の7つの音から、拍子は「4分の4拍子(4/4)」「4分の3拍子(3/4)」「4分の2拍子(2/4)」「8分の6拍子(6/8)」の4種類から選んでもらい、144名の投票の結果、開始音は「ラ」、拍子は「4分の4拍子(4/4)」に決まりました。

以下は投票結果のグラフです(※クリックすると拡大表示されます)。

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この「開始音と拍子の決定」を皮切りに、「部分動機・動機の作成」(学生担当)、そして「作曲」(伊藤担当)に入っていきます。

今年度は次のようなスケジュールで作業が進められました。


 【1】第7回授業[11/13]:開始音と拍子の投票・決定【授業内】
 【2】第8回授業[11/20]:部分動機の作成(「ラ」を開始音とする)【授業外】
 【3】第9回授業[11/27]:部分動機の一覧公開【授業内】・投票【授業外】
 【4】第10回授業[12/4]:(1)投票で選ばれた部分動機の発表/再投票【授業内】
                (2)再投票で選ばれた部分動機に続く
                第2小節の形態の投票・決定【授業内】
                (3)上記(2)に基づく動機の作成【授業外】
 【5】第11回授業[12/11]:動機の一覧公開【授業内】・投票【授業外】
 【6】第12回授業[12/18]:投票で選ばれた動機の発表【授業内】
 【7】第13回授業[12/25]:作曲のアイデアに関する説明【授業内】
 【8】12/28〜1/1:作曲
 【9】第14回授業[1/15]:作品披露(ピアノ演奏)と解説・曲名募集【授業内】
 【10】1/22:曲名決定・曲名の一覧公開/履修学生への楽譜公開



次回は、部分動機の作成から動機の決定まで(【2】〜【6】)をお話ししましょう。


(メディア学部 伊藤謙一郎)

誰でも楽しめる「インクルーシブな音楽イベント」を目指して

2024年2月23日 (金) 投稿者: メディア社会コース

音が聞こえなかったり、聞こえにくかったりしても、音楽を楽しむことができることは昨年のブログでご紹介しました。

昨年のブログはこちら>
▶️聴覚障害者と音楽イベント

アメリカでは著名なアーティストのステージに、手話通訳者も立って、人によっては音楽に合わせてパフォーマンスをしているかのような素敵な手話を披露しています。「メタリカ」というロックバンドの手話通訳者が有名なので、ぜひネットで検索してみてください。

日本でも音楽イベントに手話通訳者がつくことが増えてきていますが、まだまだ一般的ではありません。では、なぜこのような差が生まれているのでしょうか。もちろん、いくつかの理由があるでしょうが、法律に着目して日米を比較してみます。

アメリカでは、障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act of 1990、略称ADA)が1990年に制定されました。障害者が他の人と同じように生活する機会を保証する法律です。2008年には、このADAの修正法が成立し、保護範囲や障害の定義が広がりました。

日本では、障害者差別解消法が2016年に施行され、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けた取り組みが行われてきました。しかし、この法律は公共施設などでは義務化されていましたが、民間企業や私立学校などでは努力義務に止まっていました。

そして、2024年4月から改正法が施行され、全ての場において義務化されることになります。これについて、まだ大きく報道がされていないという印象がありますが、音楽イベントの場においても当然合理的配慮が必要となるのです。

法律があるから配慮をしようということではなく、社会全体が皆んなで共生していこうという雰囲気になることが重要です。しかし、何をすれば良いかが分からないというケースもあるでしょう。障害のある人と、そうでない人が、うまくコミュニケーションをとって、その場で双方にとってベターな方法を考えていくことが望ましいのではないかと個人的には思います。

私も研究を通じて、誰でも楽しめる「インクルーシブな音楽イベント」を目指していきます。

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メディア学部 吉岡 英樹

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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。


 

サイエンスアゴラ2023に「サイレントコミュニケーション体験」を出展

2024年2月21日 (水) 投稿者: メディア社会コース

昨年11月18日(土)・19日(日)にお台場テレコムセンターで開催されたサイエンスアゴラ2023に吉岡研究室が出展しました。詳細は公式サイトや大学からのリリースをご覧ください。

▶️サイエンスアゴラ2023公式サイト

▶️「サイレント・コミュニケーション体験」展示紹介サイト

大学からのリリースはこちら>
▶️メディア学部の吉岡研究室がサイエンスアゴラ2023に出展

2日間で約200名の来場者に私たちの展示を体験していただきました。聞こえにくい状況をヘッドフォンで体験したり、2つのグループに分かれてジェスチャーゲームをしたり、手話を覚えたりと、家族や友だち同士で楽しく体験していただきました。

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では、なぜこのような取り組みが必要なのでしょうか。

私は5年近く聴覚障害支援に関する取り組みをしてきましたが、聞こえる人に「聴覚障害」について説明をするのがとても難しいと感じています。もちろん、私も最初はそうでした。聞こえる人にとって、音を聞くことはあまりにも日常過ぎて、意識をしたことがありません。むしろ、どこにいても音があふれていて、それらの音を意識してしまうと情報が多過ぎて疲れてしまうため、人間は必要な音だけを意識して生活しているのです。

体験した方は、「聴覚障害について少し分かった気がする」「これまで聴覚障害について考えたことが無かったが、これからは意識したいと思う」と感想を話していました。

そう、私が求めていたのは、これらの反応でした。「ゼロ」から「いち」になることで、社会が少しずつ変わっていくことがあると考えています。社会を変えるための「コンテンツ」を、これからも作り出していきたいと思います。

ここで質問ですが、聴覚障害のある方は音楽を楽しむことができるのでしょうか。聞こえる人には想像するのが難しいかもしれません。

次回に続きます、、、、、

 


メディア学部 吉岡 英樹

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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。


 

高大連携による聴覚障害理解のためのハイブリッド授業

2024年2月19日 (月) 投稿者: メディア社会コース

コロナ禍に活用したWEB会議システムを応用し、高大連携のハイブリッド授業を実施したことを昨年7月にブログでもご紹介しました。

昨年7月にご紹介した記事はこちら>
▶️ハイブリッド配信を活用した中高大連携プロジェクト始動!!

実は、この時は高校生とオンラインでのみ交流していたのですが、その後8月に八王子にあるキャンパスに来ていただくことができました。詳しくは以下のリリースをご覧ください。

大学からのリリースはこちら>
▶️吉岡英樹メディア学部講師が立教女学院とハイブリッド連携授業を実施

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高大連携の一番の難しさはスケジューリングだと感じています。中高生と大学生の時間割は大きく異なりますし、お互いのキャンパスに移動するのには時間も費用もかかります。しかし、オンラインで交流ができれば、お互いの教室をつなぎコミュニケーションをとることができるのです。

今回の取り組みは読売新聞オンラインでも取り上げられました。来年度もさらに発展させる予定です。

読売新聞オンラインの記事はこちら>
▶️【特集】「他者に寄り添う心」を持って有志が続ける障害者支援活動…立教女学院

ところで、今回実施した授業のテーマは「サイレント・コミュニケーション体験と情報工学による聴覚障害支援」でしたが、ここからスピンアウトさせた「サイレント・コミュニケーション体験」を昨年お台場で実施された「サイエンスアゴラ2023」に出展して多くの来場者に体験してもらいました。

次回に続きます、、、、、

 


メディア学部 吉岡 英樹

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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。


 

用語発明術の重要性

2024年2月16日 (金) 投稿者: メディア技術コース

 前回記事では、研究の過程や発表において、新たに考案した物事や概念に新しい名前を考えて付与することについて話しました。良い名前の条件も紹介しました。
 
 今日の記事では研究に限らず、専門性を含む活動全般でそのような「用語発明」が重要であることを話します。
 
 プログラミングはその典型的な活動です。少しでも経験したことのある人は分かると思いますが、プログラムを書くことは新しい名前を発明することの連続です。
 
 特定のデータを表すためには変数名を発明する必要があります。ある一つのまとまった処理の単位に対しては関数名を考案する必要があります。このときも前回紹介した良い名前の条件、特に(2)(具体的)(3)(そもそも何なのかの前提)(6)(誤解されない)がプログラミングにおいても重視されます。
 
 名前を付けるということは、当たり前ですがあとでその名称を使う場合があるということです。使われる状況としてさまざまな場面が想定されます。適切な名称であればその事物あるいは機能が何であるかすぐ理解できます。そうすると、その名称を使うプログラムを読むときに進行中の思考を円滑に展開できます。そのような名称を付けるのは簡単なようで意外と難しいです。
 
 一般に良い名前を付けるには時間をかけて考える必要があるということは前回記事でも言いました。プログラミングでも同じで、変数名一つ付けるのに半日かけるというようなことも珍しくないです。これはひとえに、後から名前を使う場面(自分以外の人が使うこともある)での思考の流れを妨げないためです。
 
 そこまで神経質にならなくてもよいのでは、と思うかもしれません。確かに、1回使えばいいだけのプログラムや行数の短いプログラムならそれでいいでしょう。でもどんどん機能追加して行数が長くなるプログラムでは、各種名称が適切であることは重要です。最初の命名時に時間をかけて熟慮する必要があります。
 
 そのほかにもプログラミングにおいて各種の名称を付けることがなぜ大事か、なぜ時間をかける必要があるか、学会誌の記事としてそのことを紹介しました。プログラミングをある程度行う人であればぜひ読んでみて欲しいです。
 
柿本正憲, 命名に時間をかけよう, 特集 フレッシュマンに向けたプログラミングのススメ, 情報処理, Vol.60, No.6, pp.494-497, June 2019
 
 冒頭で「専門性を含む活動全般で」用語発明が重要であることを話すと言いながら、プログラミングだけの話になりました。あと一回まったく別の事例をいずれ紹介します。

メディア学部 柿本正憲

用語発明術

2024年2月14日 (水) 投稿者: メディア技術コース

 卒業論文や修士論文の審査の時期です。研究は何らかの新しいことを行い、最終的にはその内容をほかの人に伝えるための論文を書きます。このときに大事なのは、新しく考案した物事や概念に新しい名称を付けることです。
 
 今の時期いろいろな研究論文を読む機会があり、そのことを改めて感じています。「これに何か名前を付けた方がいいなあ」と思うことがしばしばあります。
 
 名前を付けた方がいい対象は大きな研究の名称だけに限りません。研究の中では、ほかの人がやっていない調査・実験やさまざまな道具やちょっとした考え方の工夫などが行われたり使われたりします。そういったことがらにも独自の名称を付けることによって、他の人にうまく内容を理解してもらうことができます。
 
 研究発表のときだけではなく、研究室の中で研究を進める際にも、よく使う概念に名前を付けておくことで議論の効率が高まります。
 
 良い名前を付けるのは大変です。条件として、
 
(1) 短い
(2) 対象物の特徴を具体的に表す
(3) そもそも何の一種なのかの前提を示している
(4) 対象物の利点ができればわかる
(5) 検索しても出てこない
(6) 誤解を生じさせない
 
などがあります。これら条件を満たす切れ味のある名前は時間をかけ、できれば複数人で議論して決めるといいでしょう。
 
 一つ事例をあげます。ある学生の研究論文の中で、2つの調査実験に「第1回実証実験」「第2回実証実験」という名称が付けられていました。この名前そのものを論文中でその後ほとんど使わないのであればそのままでいいでしょう。ところが実際には実験結果の記述や考察で何回もこれらの名称が呼ばれています。
 
 読む方としては「第1回ってどういうやつだっけ?」とか「あれ、どっちがどっちだっけ?」という混乱が生じます。議論の効率が悪くなるということになります。上記条件でいうと(2)が満たされていない名称です。
 
 「第1回」と「第2回」は同じ内容の実験だけど被験者が違っていました。「第1回」は若い世代で、実験で行う行動に慣れている人がほとんどという被験者グループで、「第2回」はもっと広い世代でその行動に慣れていない人たちも多いグループでした。
 
 であればその特徴を示す単語あるいは四字熟語を「第1回」や「第2回」の代わりに付けるといいでしょう。単に世代の違いだけでなく慣れているかどうかも示せる単語を使いたいですね。ただし、あまり説明的になると上記条件(1)を満たさなくなります。
 
 もう一つ事例があります。この文章の表題です。上記条件を概ね満たしています。
 
 良い用語を発明することで理解や効率が高まるのは研究だけではありません。専門性を含む活動全般でしばしば当てはまります。次回はそのような話をします。
 
メディア学部 柿本正憲

サウンド×ヒューマン研究室・2023年度卒業研究発表会

2024年2月12日 (月) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

1月30日(火)に、「サウンド×ヒューマン研究室」の卒業研究発表会を行いました。昨年と同じく「ミュージック・アナリシス&クリエイション(伊藤(謙))研究室」との合同開催です。ポスターセッション形式で、うちの研究室からは、最終発表4件と中間発表1件の合計5件の発表を行いました。発表題目は以下の通りです。

  • 歌唱のエンターテイメント性向上のための音響処理システムの研究
  • コーラスにおけるハーモニーの分析
  • 色を用いた直感的なシンセサイザーの操作の研究
  • 長寿アニメのキャラクターの声優の声の変化に関する研究
  • 音声合成のための音素アライメントの効率化 (中間発表)

今年の4年生は、入学直前に新型コロナの流行開始を経験した世代です。入学式は開催されませんでした。1年生の前期はずっとオンライン授業で、勉強はなんとかできたものの、友達を見つけたりするのは難しかったのではないかと思います。そこからがんばって自分のやりたいことを見つけて、その中で「音に興味がある」という人たちが、私の研究室に来てくれました。

ご覧の通り、今年の発表テーマもバラエティに富んでいます。今年も3年生や2年生など大勢の参加者が聞きにきてくれましたが、各発表者は丁寧に内容を説明していました。複雑なアルゴリズムを使ったテーマなど、研究室のミーティングで説明するのとは違った難しさがあったと思いますが、その点でも皆さんがんばっていたようです。

このあと、卒業論文の最終版を提出して、卒業研究は終了です。みなさんご苦労さまでした。

アニメのお仕事(「東京アニメアワード」&「三鷹インディーズアニメフェスタ」)

2024年2月 9日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の三上です.

今回はアニメのお話です.
プロジェクト演習の印象から,ゲーム専門の教員と思われると思いますが,もともとはCGを核に映画やアニメ,そしてゲームと産業界に足場を広げていますので,実は映画もアニメ,CGやVFXなどの映像コンテンツも専門の分野だったりします.

特に,アニメはディジタル技術の黎明期に,本学メディア学部の教授だった金子先生の「つて」もあり,業界全体がディジタル化に舵を切る中で,大学の研究者としてお手伝いさせていただきました.業界としてのスタンダードを作っていったり,様々な会社が協力して対応していけるように「デジタルアニメマニュアル」なる書籍を足掛け10年にわたって出版し続けたおかげで,新しい技術をいかにアニメの中に取り込んでいくのか,かなり俯瞰した視点で見ることができるようになりました.その結果,ワークフロー全体のプロデュースの話や,場合によっては業界全体のビジネスの話,さらにはCGやAIなどの技術を活用した制作技術に至るまで,幅広く経験を積ませていただきました.

そんなおかげもあってか,いくつかのアニメフェスティバルには運営や審査などでお声掛けをいただき,若いクリエイターが飛躍するきっかけになれるように,可能な限り活動したりしております.

そんな中で,これから開催されるイベントを2つ紹介します.

ひとつ目は「三鷹インディーズアニメフェスタ」

こちらは現在は三鷹市が主催する,アニメ作品のためのフェスティバルで,今年で22年目を迎えます.当初は私もアニメーションのデジタル化で活動をご一緒していたNPO法人と本学メディア学部の学生たちが立ち上げ,その後三鷹市の恒例イベントに成長してきました.(なお,当時立ち上げに携わっていた学生は現在でも運営の中心ですし,大手アニメ制作会社でご活躍されています)

私は15年ほど前から,実行委員長兼審査委員長として,市町村が主催する,市民のためのインディアニメフェスティバルという性格を加味してお手伝いをさせていただいています.

ふたつ目は「東京アニメアワードフェスティバル」です

こちらは,本格的なお手伝いは今年からなのですが,東京アニメアワードは長らく審査委員を続けておりました.東京アニメアワードフェスティバルでは,世界中から集められた短編アニメーションの一次審査を担当しました.力作ぞろいで審査は大変でしたが,選ばれたどの作品をとっても,メッセージ性が素晴らしかったです.この後3月に対象が選ばれます.

このような審査委員会に参加して,最もありがたいと思うことは,他の審査員の作品対する評価や考え方に触れることができることです.このようなコンテストは,それぞれ審査の仕方はありますが,単純に得点を付けるだけでなく,各審査委員がどこを評価しているのかについて解説して合議により決定するコンテストもあります.
そうした場で,多様な考え方に気づき,またそれを教育に還元することもできたりします.

年度末など忙しい時期にやってくるイベントではありますが,学部の教育にも反映できる点も多く,積極的に参加して学んでいっています.

 

今年も熱かった48時間全世界同時ゲーム開発ハッカソン「Global Game Jam 2024」

2024年2月 7日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の三上です.

このBlogでもたびたびご報告している,世界中の会場にプロアマ問わず参加者が集まり,48時間以内に同一のテーマにそったゲームを開発するギネス認定ゲームハッカソン「Global Game Jam 2024」(以下「GGJ」)が2024年1月26日から28日にかけて開催されました.

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東京工科大学会場は2010年1月の開催から,15年連続で会場として参加しております.そして,私は15年連続で会場オーガナイザーを務める,GGJでももはや生き字引的になってきました.

2021,2022,2023年はCOVID-19の影響で,オンラインプラットフォームを利用しての開催となりました.その間にGGJも少しづつ変化して,48時間の枠組みが緩やかになり,1週間ほど開発期間が設けられる(会場によって裁量がある)形に変化してきました.また,現在でもオンラインやハイブリッドなど様々なスタイルでの運営も混在しています.

東京工科大学は,GGJの老舗中の老舗なので,近年のさまざまな変化も受け入れつつ,昔からの伝統を大事にし対面での開催を4年ぶりに行いました.久しぶりの開催にもかかわらず,多くの企業様にご支援いただき,来場者や運営スタッフ,配信スタッフの快適な48時間のための兵糧も万全となりました.

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今年の東京工科大学会場は,プロの開発者と海外の参加者が多くいたのが特徴です.30名の参加者を5チームに分けたのですが,うち2チームはグローバルチーム(多国籍でコミュニケーションを日本語以外で行うチーム)となり,各チームには2名以上プロが参加しているという状態でした.

ゲームジャムについての詳しくは過去のブログや記事などにありますが,開会式,閉会式で私がいつも伝えることは,ゲーム開発を仕事や勉強としてとらえるといつしか作る楽しみというのを忘れてしまったり,新しいことにトライするのが蒸すかしくなることがあります.GGJはコンテストではなくチャレンジなので,「ゲームを通じてこんなことを発信してみたい」とか,「こんなシステム作ってみたかった」,「このツール試したかった」,「こんな開発方法試したい」,「一度いいからリーダーやってみたい」とか,様々な挑戦をする場なのです.

メディア学部の学生も多く参加してくれましたが,全世界の開発者と同じテーマに頭をひねり,プロとともにゲームを作った経験はかけがえのないもので,その体験の中から大きな気付きを得ました.彼ら,彼女らがこれから羽ばたくうえで,この体験は参加したものにしかわからない貴重なものになるのではと思います.

当日の様子は,伊藤彰教先生が指導する「配信チーム」によって,Youtube Live!を通じて全世界に配信しております.ぜひ,お時間のある時に東京工科大学会場のゲームやこの記録映像をGGJTUT Channelにてお楽しみください.

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春の学会シーズン到来!三上研究室卒業研究室の対外発表情報

2024年2月 5日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の三上です.

1月18日に卒業論文の提出,1月29日の卒業研究最終発表を終えて,4年生たちはあとは卒業を待つばかりのこの季節ですが,私の研究室は一定水準の研究成果を達成できた学生たちには,学会発表を推奨しています.そして,今年はなんと卒業研究の4年生全員が学会発表ということになりました.
実は,今年度はすでに早期一貫プログラム(3.5年で大学を卒業し大学院に進学する)学生がいたり,昨年まで助教だった兼松先生が講師として使用されて独立されたこともあり,一部の学生が兼松先生の研究室所属になったなど諸事情ありますが,皆さん各自のテーマを見事に昇華させて大変面白い研究成果が出てきました.

研究の詳細は発表後にまたBlogで紹介したいと思いますので,まずは公になっている学会プログラムから発表者や発表予定を紹介します.参加される方がいらっしゃいましたら,ぜひ発表を聞きに来てください.

日本デジタルゲーム学会 第14回年次大会

國井一志,戀津魁,兼松祥央,松吉俊,三上浩司 「ゲーム開発におけるタスク把握のための企画支援ツールの開発」

下田隆介,兼松祥央,松吉俊,三上浩司 「ゲーム実況動画における視聴者のビューワー操作に基づく用語理解度推定を利用した動的解説生成」


映像表現・芸術科学フォーラム2024(Expressive Japan 2024)

小島慧大・兼松祥央・松吉 俊・三上浩司 「VRホラーゲームにおける嗅覚刺激を用いたゲーム体験の向上」

中川史温・戀津 魁・兼松祥央・松吉 俊・三上浩司 「複数名でのシナリオ制作における時系列キャラクター変化図を用いた情報共有手法の提案」

村上朝陽・兼松祥央・松吉 俊・三上浩司 「タクティカルシューティングゲームにおける プリエイムを用いたプレイヤースキルの判別」

望月恒星・兼松祥央・松吉 俊・三上浩司 「キャラクターの感情抽出を用いた一貫性をもったセリフ執筆支援」


情報処理学会 インタラクション2024

伊藤 匠海,兼松 祥央,松吉 俊,盛川 浩志,三上 浩司「視覚と触覚を利用したスライム系モンスターとのVRインタラクション」

加藤 修朋,兼松 祥央,松吉 俊,三上 浩司 「VRコンテンツにおける硬質物体叩打時に発生する反発力の提示デバイス」

熊谷 拓真,兼松 祥央,松吉 俊,三上 浩司 「矢の接触感覚がある和弓の射撃体験デバイス」

布施 皓輝,兼松 祥央,松吉 俊,三上 浩司 「VRにおける雲上行動の触感表現」

 

【広告は生きている】広告は社会を写す鏡である③メディア学部 藤崎実)

2024年2月 2日 (金) 投稿者: メディア社会コース

メディア学部の藤崎実です。

コロナ禍に作られた広告は、コロナの状況を反映しているものが多くありました。

例えば、ある飲料メーカーのCMでは、飲食店に入ってくるシーンでは主人公たちはマスクをしていました。
そしてカットが変わって、食事をしているシーンでは、マスクを外して食事をしている、という具合です。

また、緊急事態宣言で、外出が儘ならない状況でも、会社に行かなければならない人たちがいました。
例えば、会社の経理担当です。
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そうした人たちは、書類に印鑑を押すためだけに出社しなければならなかったのです。

そうしたテレワークの課題を捉えて、クラウド人事労務ソフトを手掛けるSmartHRは、「ハンコを押すために出社した。」というコピーを全面に押し出した交通広告を掲出したのです。

社会の動きをよく捉えて、誰もが疑問に思うことを味方にして、自社サービスのアピールに成功した事例です。

この広告もタイムカプセルのような存在ですね。広告は社会を映す鏡といえますね。

(メディア学部 藤崎実)

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