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用語発明術の重要性

2024年2月16日 (金) 投稿者: メディア技術コース

 前回記事では、研究の過程や発表において、新たに考案した物事や概念に新しい名前を考えて付与することについて話しました。良い名前の条件も紹介しました。
 
 今日の記事では研究に限らず、専門性を含む活動全般でそのような「用語発明」が重要であることを話します。
 
 プログラミングはその典型的な活動です。少しでも経験したことのある人は分かると思いますが、プログラムを書くことは新しい名前を発明することの連続です。
 
 特定のデータを表すためには変数名を発明する必要があります。ある一つのまとまった処理の単位に対しては関数名を考案する必要があります。このときも前回紹介した良い名前の条件、特に(2)(具体的)(3)(そもそも何なのかの前提)(6)(誤解されない)がプログラミングにおいても重視されます。
 
 名前を付けるということは、当たり前ですがあとでその名称を使う場合があるということです。使われる状況としてさまざまな場面が想定されます。適切な名称であればその事物あるいは機能が何であるかすぐ理解できます。そうすると、その名称を使うプログラムを読むときに進行中の思考を円滑に展開できます。そのような名称を付けるのは簡単なようで意外と難しいです。
 
 一般に良い名前を付けるには時間をかけて考える必要があるということは前回記事でも言いました。プログラミングでも同じで、変数名一つ付けるのに半日かけるというようなことも珍しくないです。これはひとえに、後から名前を使う場面(自分以外の人が使うこともある)での思考の流れを妨げないためです。
 
 そこまで神経質にならなくてもよいのでは、と思うかもしれません。確かに、1回使えばいいだけのプログラムや行数の短いプログラムならそれでいいでしょう。でもどんどん機能追加して行数が長くなるプログラムでは、各種名称が適切であることは重要です。最初の命名時に時間をかけて熟慮する必要があります。
 
 そのほかにもプログラミングにおいて各種の名称を付けることがなぜ大事か、なぜ時間をかける必要があるか、学会誌の記事としてそのことを紹介しました。プログラミングをある程度行う人であればぜひ読んでみて欲しいです。
 
柿本正憲, 命名に時間をかけよう, 特集 フレッシュマンに向けたプログラミングのススメ, 情報処理, Vol.60, No.6, pp.494-497, June 2019
 
 冒頭で「専門性を含む活動全般で」用語発明が重要であることを話すと言いながら、プログラミングだけの話になりました。あと一回まったく別の事例をいずれ紹介します。

メディア学部 柿本正憲

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