社会言語科学会研究大会(福岡女子大学)でのワークショップ
2024年3月29日 (金) 投稿者: メディア技術コース
メディア学部の榎本です。
3/8,9,10と福岡女子大学で開かれた社会言語科学会の研究大会に参加してきました。
私は3日目のワークショップで話題提供者として参加してきました。
WSセッション 4
一,二,三人称視点のことばに等しく価値を見出して研究しよう
企画責任者:諏訪 正樹 (慶應義塾大学)
話題提供者: 榎本 美香 (東京工科大学), 山内 朋樹 (京都教育大学)
指定討論者:土屋 俊 (大学評価・学位授与機構)
企画主旨は以下のものです。
「ことばはコミュニケーションの手段として社会的に意味を共有するためのメディアである.それをことばの第一義的機能
とする考え方は根強い.言語学,社会学,認知科学,心理学分野で行われてきたことばの研究の多くは,その側面に焦点を
当てたものである.たとえば,言語発達や学習,認知言語学に属する研究は,ひとが生きる中でことばの意味を学習し,社
会で使い,あるいは新しい意味を社会的・文化的文脈のなかで醸成するさまを探究する.相互行為分析,会話分析において
は,観察対象となるひとびとの発話を構成することばは社会的に共有されたルールに基づいているものとみなされ,それに
基づき分析がなされる.小,中,高校から大学に至る教育実践においても,他者に意味が明確に伝わるよう,考えをまとめ
論理的に文章を組み立てたうえで話し,書くことが奨励される.
学問や教育で重要視されてきたこの種のことばの機能や側面を,客観的・社会的効用と称しよう.客観的・社会的効用は
ひとびとが互いに交流し,コミュニティ・社会を形成し,意思疎通したり論を交わしたりする上で欠かせないものである.
しかしながら,ことばの効用は客観的・社会的なものだけなのだろうか? 「客観」を別のことばで表すならば「三人称
視点」である.わたしたちは生きていく上で,三人称視点のことばだけではなく,主観的な内なることばも大いに駆使して
いる.世界で出逢うものごとに触発され,あれやこれやと考えをつくりあげる途上では,内なることばをとりあえずメモに
書き殴ったりする.
内なることばは人生背景に彩られた個人固有の意味合いをはらみ,主観的である.頭を去来したりメモとして書き殴った
りしたことば群はときに散らかっていて必ずしも論理性はなく,その意味は必ずしも他者に伝わりやすくはない.だからと
いって,その種のことばに機能や役割がないわけではない.暗黙性の壁に阻まれて探究が進んでいないだけで,実は大きな
効用があるはずだと我々は考えている.本WS は内なることばの効用を探究することの重要性を説くものである.」(プログラムより引用)
物理の方程式のように客観的に世界を記述する言葉と、日記のように今日あったことや感じたことを私なりに記述する言葉は違っててもいいし、後者も大切だよね、というお話です。
私は、10数年、長野温泉の野沢というところのお祭りを撮影し続けているのですが、10年もみ続けていると、お祭りを取り仕切っている人々の息遣いや心の苦しみや喜びの声が聞こえてきます。それは、実際に話された言葉ではないけれど、そういうものがあるからこそ、祭りの厳しさや楽しさが理解できるということを話しました。