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ルールベースと生成AIを併用したTRPGゲームマスターのシステムを試作

2024年3月 6日 (水) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。メディア技術コースの松吉です。

2024年2月29日と3月1日に開催された人工知能学会 言語・音声理解と対話処理研究会 第100回研究会という研究発表会で発表した研究について紹介します。本学大学院の三上・兼松研究室に所属する武田さんが以下の研究タイトルで外部発表してくれました。

テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(TRPG)とは、物語のシナリオに従って、人間同士で会話を交わしながらRPGの冒険や戦闘を繰り広げていく、複数人参加型のゲームです。コントローラーのボタンをポチポチ押すのではなく、自由会話により物語が進んでいくことがTRPGのウリです。TRPGでは、参加者のうち1名が司会を務めます。この司会者はゲームマスターと呼ばれます。ゲームマスターは、事前にシナリオを読み込んで本番に備え、ゲーム本番ではルールブックを参照してルールに従ってTRPGを仕切ります。ゲームマスターは、プレイヤーたちと会話し、物語がうまく進行するように努めます。

テレビゲームやソーシャルゲームのRPGも楽しいですが、複数人で自由会話によりワイワイ遊べるTRPGもとても楽しいゲームです。動画配信サイトなどでTRPGのゲームプレイを見たことがある人も結構いるのではないかと思います。

TRPGを遊ぶうえで、ゲームマスターが不足しているという問題があります。武田さんは、この問題を解決することを目的に、コンピューターにTRPGのゲームマスターを担当させるという研究に取り組み、ゲームマスターのプログラムを試作しました。現在の生成AIは悪意なくハルシネーション(事実ではないこと)を出力してしまいます。ですので、「シナリオを元にルールに従って正確な発言を行う」仕組みと「生成AIを用いて自由度の高い応答を返す」仕組みの両方を採用したシステムとしました。システムの全体像を以下に示します (クリックで大きい画像が表示されます)。各部分を詳しく説明することはしませんが、プレイヤーの発言を自動解析し、それに基づいて図の左下のほうでゲームマスターの発言を自動生成しています。

Takedaai

実際に、コンピューターのゲームマスターシステムに仕切らせて、人間のプレイヤー3名にTRPGを遊んでもらうという評価実験を実施しました。複数人の自由会話によりゲームを進めていますので、構造が複雑でないシナリオでも、エンディングまで5~6回、ゲーム進行不能という状況が発生しました。ですが、事後のアンケートにおいて、プレイヤーから「親近感が湧いて遊びやすかった」、「プレイヤー間の会話にシステムがツッコミを入れてて楽しかった」などの好意的なコメントをもらうことができました。

まだまだ改善すべき点があり、人間のゲームマスターと比べると、うまくできないことが多いです。ですが、ゲーム進行の正確さと柔軟さを兼ね備えたシステムとして、及第点以上の「第1歩」になったのではないかと思います。

本学のメディア学部では、TRPGに限らず、広くゲームやゲームAI、ゲームストーリー等について研究している研究室が複数あります。これらに興味がある方はぜひメディア学部の各研究室の研究活動を調べてみてください。

 

(文責: 松吉俊)

 

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