点群データの問題と見せかけて透視投影の問題(続き)
2024年5月31日 (金) 投稿者: メディア技術コース
前回記事の続きです。
実世界を計測してxyz座標を得た点群データに対し、これを直接CG画像として描画する研究事例を授業で紹介しました。
この画像を見ると描画時の視点に近い方は点群がまばらに分布しています。一方遠くの方は密に分布し、画面上で一定サイズに設定した円盤状の点はすき間なく描画されています。なぜそのように見えてしまうのか、という問題でした。
レーザーを照射した計測点の位置に対して、描画時の仮想視点が前方にありその視野角が計測時の視野角より大きいから、というのがその答えです。これを図示して考えてみます。
左の図のうち、白く描いたのはレーザー計測時のレーザー光線です。一定範囲の視野角の中で多数のレーザー光を照射しますがここでは6本だけ模式的に示しています。赤く描いたのは描画時に設定したカメラ(視点)位置から視界が拡がる様子です。長短の水平線は視界を区切るために設定する必要のあるクリッピング面です。
右の図は描画時にシステムが実行する投影変換(透視投影)の結果です。ちょうど左図の視界の台形(逆台形)部分が正方形になるような空間の変換が行われます(もちろん実際には3次元空間でのことで、台形は四錐台に、正方形は立方体になります)。左の赤い線は「カメラ座標系」での視界で、右の赤い四角は「正規化デバイス座標系」(あるいはクリッピング座標系)での視界です。
正規化デバイス座標系の図に付記した小さな矢印は視点からの視線の向きです。視点に近い方ではレーザー光線の間隔が大きく、遠い方ではその間隔が小さいことがわかります。
各点群は必ずどれか1本のレーザー光線上の1点に位置します。視点からの距離によってレーザー光線の分布間隔が狭くなっていくことが、近くの点群はまばらに見え遠くの点群が密に見える理由です。
点群の性質に関する問題のように見えて実は透視投影を理解しているかを判定することができる問題です。研究としての意味は薄いですが、3次元CG技術の教育上はたいへん興味深い問題と言えます。
メディア学部 柿本正憲