エスカレーターの片側空けという社会課題とプロジェクト演習「企業・団体のプロモーション技法」による解決案
2024年10月25日 (金) 投稿者: メディア技術コース
全国唯一の健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。健康メディアデザイン研究室では、人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインしたり、研究者本人を健康にして、その成果を多くの人たちに役立てて、健康改善するための提案や健康アプリを制作するといった研究を行っています。
今回は、千種が企画実施しているプロジェクト演習に「企業・団体のプロモーション技法」という演習科目の1コマで実施した、『エスカレーターの片側空けという習慣から2列並びを習慣化へ転換する』という100分の演習授業を紹介したいと思います。
まずポスターデザインのテーマとして取り上げたエスカレーターの片側空け問題は、安全面や効率性といった観点から、長年議論されてきた社会課題です。東日本では左側に立って、右側を空ける習慣があり、西日本では右側に立って、左側を空ける習慣があるなど、その地域性も問題になることがあります。最近、ニュースでも見聞きすることが増えた、多くの駅や施設で「2列に並んで立ちましょう」という呼びかけが強化されていますが、依然として習慣を変えることまでは到達していません。
片側空けは、エスカレーターの構造上、転倒のリスクを高める可能性があります。特に、急な停止時や、小さなお子様や高齢者にとっては大きな危険因子となります。また、急いでいる人にとっては、片側を歩いて移動することで時短ができるので、2列に並ぶことは時間の無駄に感じられることがあります。
2列に並ぶことで、転倒のリスクを軽減し、横に並んで手をつなぐなどにより、より安全な利用が可能となります。さらに、ポスターや動画を活用して、駅や施設に分かりやすいポスターや動画を掲示し、2列に並ぶことの重要性を周知徹底します。
片側を空けることで、エスカレーターの収容人数が減り、混雑を招く原因となります。さらに、片側空けによってエスカレーターにかかる荷重が片側に偏り、長期的に機械に負担をかけます。
2列に並ぶことで、エスカレーターの収容人数が増え、混雑緩和に繋がります。そして両側に均等に荷重がかかることで、エスカレーターの耐久性が保たれ、メンテナンスコストや修理の頻度が減少します。
片側空けがマナーとなっていると、それを守らないと周囲への配慮が欠如しているという印象を与え、社会全体のモラル低下につながる可能性があります。
2列に並ぶことがマナー化すると、上に記載したように周囲への配慮を促したエスカレーター利用が実現され、社会全体のモラル向上に貢献します。
上記の観点からエスカレーターの2列並びが推奨されているわけですが、それを転換するためにポスターデザインを使用することにしました。
ポスターデザインに使用するキャッチコピーを決める必要がありますが、ここでは最近多方面で活用されているChatGPTを使用します。『大学生向けのエスカレーターを2列で乗るためのキャッチコピーを10件』とプロンプトに入力すると以下の10件のキャッチコピーが出力されます。
- 「急がず2列で、安全な未来を歩こう。」
- 「みんなで並んで、安心と効率アップ!」
- 「2列でゆっくり、エスカレーターも長持ち。」
- 「急ぐより大切なこと、安全第一で2列並び!」
- 「安全に進もう、2列でできるスマートな選択。」
- 「2列並びで、みんながスムーズに移動できる。」
- 「2列並びは新常識、仲間と一緒に安全を守ろう!」
- 「エスカレーターもチームプレイ、2列でスムーズに。」
- 「急ぐ前に考えよう、安全と協力の2列ルール。」
- 「未来のための一歩、2列並びでエスカレーターを守ろう。」
「さらに10件」と入力すると、
- 「2列でゆっくり進もう、みんなの安全が最優先。」
- 「スピードよりも安全、2列並びで安心移動!」
- 「エスカレーターは2列が基本、みんなでスムーズに進もう。」
- 「安全な未来は2列から、今日から始める新ルール。」
- 「片側空けはもう古い!新しい常識、2列でゆっくり。」
- 「一緒に並んで、エスカレーターもみんなも快適に。」
- 「2列で乗る、それが賢い選択。」
- 「急ぐ気持ちを抑えて、2列で安全にゴールしよう!」
- 「2列のマナー、未来の自分にもやさしい選択。」
- 「みんなで作ろう、安全と安心の2列文化。」
と簡単に20件のキャッチコピーが出来上がります。受講している学生たちは各自自分のイメージしているキャッチコピーもしくはその修正版などを用いて、60分間でデザインツールのcanvaを用いてポスターデザインを作成します。
レビューの際に提示され秀逸な完成度であったのが、この演習で使用するcanvaによるデザインを初めて1か月の1年生の菅原歩音さんです。最初に提出されたデザインは以下のようなものでした。高校時代にSDGsの総合学習で同様の課題に取り組んだことがあり、その時のアイデアをポスターデザインにしたものが作成したデザイン案でした。
この演習の特徴として、デザイン企業の社長である早川氏が演習講師を勤め、全員のデザイン案に対して、一人ひとりにデザインレビューを行ない、修正のアドバイスをすることです。他の学生からも毎回、感想コメントをもらって参考にします。
菅原さんのデザインレビューの際、キャッチコピーをもっと読んでもらうため、横書きのキャッチコピーを縦書きにして、さらに右上から左下への視線を意識した修正案にしました。余白のスペースも適度に埋まって全体としてバランスの良い仕上がりになりました。
以上、きわめて学修効果の高い「企業・団体のプロモーション技法」というプロジェクト演習の紹介でした。
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