素晴らしい社内情報システム
2024年11月11日 (月) 投稿者: メディア技術コース
東京工科大学でも2023年度から学内システム(教職員向け)が刷新され、ペーパーレスの仕組みが導入されました。以前のブログ記事でその話題を出した際に「これまでいろんな会社に勤務したが『これぞ素晴らしい社内情報システム』というのはほとんど無かった」と言いました。
今日は言ったことの回収です。数少ない素晴らしい社内システムの話をします。
1995年、私は初めて外資系の会社(「シリコングラフィックス」)に転職しました。3次元CGのコンピュータシステムを売る会社で、製品開発は米国本社です。まだ一般にはPCも普及していない時代に、世界中の社員は一人一台自社製品を仕事で使っていました。PCよりもはるかに高価なワークステーション(WS)という製品です。
写真はたまたま私の手元で今も保管している機種で、1995年当時私が使っていたものとまったく同型機です。ちなみに当時の価格は1,000万円以上です。シリコングラフィックスのCG用WSが爆売れしてバブルだった時代です。
正確にはバブルというより競合製品に市場で打ち勝ち寡占となった結果の爆売れです。それほど良い製品だったことは確かです。米国本社の開発チームには天才たちが多数集まっていました。彼らがそのような優れた製品を次々と出せた理由はいくつもあります。今日のテーマの「素晴らしい社内システム」はそのうちの一つです。
そのシステムは簡単なことです。各社員は設定さえすれば自分のWSのデータファイルの一部(指定したフォルダの下全部)を全社員から見ることができる、という暗黙の決まりがあったのです。具体的には、"guest"というユーザIDを使えば特定フォルダ下は見たりコピーしたりは自由とする文化です。
もちろん、アクセスするためにはその社員の使うWSのホスト名を知る必要があります。メールで「この製品情報はaaaa(ホスト名)にあるよ」と一人あるいは複数人に知らせることができます。そしたら
rlogin guest@aaaa
と命令(遠隔マシンにログイン)をタイプすれば、パスワードなしでその後はその人が使うaaaaというWSのファイルを見たり自分のWSにコピーしたりできます。あるいはファイルの遠隔コピーだけであれば、教えてもらった場所を
rcp guest@aaaa:~/product/info.sc .
とタイプ(遠隔コピー)すればこの1行だけで情報を自分のWSに持ってこれます。ちなみに.scというのは今のPowerPointのようなソフト("showcase")のスライドファイルです(なつかしい)。
このような文化が、世界中に1万人以上いる社員間の円滑なコミュニケーションにどれだけ役立ったか計り知れません。
ついでですが、各WSはそのままWebサーバーにもなっていて、各社員は自分のWebページを全社員に公開できました。これもWSのホスト名だけは知らせる必要ありましたが。
ちなみにシリコングラフィックスの米国本社はシリコンバレーのMountain Viewという街にあり、キャンパスと呼んでいました。2000年以降はPCに押されて製品は衰退し、会社は倒産し消滅しました。創業者を追い出したビジネススクール出のCEOが90年代半ばに下した経営判断のミスが理由です(結果論だけど)。広大な本社キャンパス敷地は、ほぼ全部の建物もそのまま居抜きでグーグル本社が入っています。
メディア学部 柿本正憲
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