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昔話の続き NetNews

2024年12月27日 (金) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の寺澤です。

前回に引き続き、昔話にお付き合いください。

前回はArchieやGopherなどのお話でしたが、今回は、そもそも、このような新しいツールの情報をどうやって得ていたかというお話です。繰り返しますがWWW前です(当然SNS前です)。UNIX magazineなど、貴重な雑誌も数種類あったのですが、多くの情報が流通していたのがNetNewsです。NetNewsはNNTPというプロトコルを用いて主に文字が主体の「投稿記事」を流通させる仕組みです。記事の見た目はメールにとても似ています。記事はカテゴリごとに投稿先(ニュースグループ)が決まっており、利用者は専用ソフトを使って記事を読んだり投稿したりしていました。

こう書くと現在のインターネットにもある掲示板のように見えると思いますが、仕組みは大きく異なっています。当時のインターネット環境にも依存しているのですが、各地にニュースサーバがあり、サーバ間で定期的に新しい記事が受け渡される形で記事が伝搬していました(バケツリレー方式)。読者は近くのニュースサーバに接続して利用します。元はアメリカで開発されたものですが、日本語が使えるように改良されて使われていました。したがって、英語の記事も日本語の記事もありましたが、これらはニュースグループのカテゴリで分けられていました。これにより、アメリカでの最新の情報にも、やや時間はかかりますが、近くのサーバまでやがて記事が伝搬してくるので触れることができたのです。

英語のニュースグループは comp.* (*にはさらに細分化されたカテゴリarchやlangなどが入ります)や soc.* など、日本語のニュースグループには fj.*(fj.comp.*、fj.comp.lang.*、fj.net.*、fj.rec.*、fj.rec.sports.ski、fj.miscなど)のほかjapan.*などがありました。技術系の記事はとても勉強になるものが多かったです。プログラミングの様々な話題やLaTeXのスタイルファイルの記事など、大変助けられました。また、新しいソフトの情報や入手先などもこちらで仕入れることが多かったです。

この時代でも立場や解釈の違いによる論争はありましたが一部を除いて抑制が効いていました。情報の流通がゆっくりなので炎上というような形にはなりません。記事を見ていると次々と新しい情報がやってくるのでずっと見続けてしまい、次に記事が来る時間が待ち遠しい、というような現在のSNSと同じような中毒効果はありました。NetNewsもWWWの時代になって以降、すたれてしまい、今は動いているサーバはほとんどないのではないかと思います。しかし、当時はとても貴重な情報源でした。

(メディア学部 寺澤卓也)

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