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物語構造における「満足」

2025年1月 8日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部の兼松です。

私が普段授業で解説しているシナリオ執筆手法は、私の学部生時代の指導教員である金子満先生が本学で開発した、段階的執筆手法です。
この手法には13フェイズと呼ばれる、いわゆる「箱書き」の一種を用いた工程があります。

これは、様々な既存作品のストーリーから導き出した、簡単に言えば「よくある話の構造・展開」を、ストーリー制作の際のテンプレートのようにしたものです。
厳密に言えば、よくある話が書けるだけということではなく、「頭の中にある物語に関する様々なアイディアを、他人に伝わりやすい物語に落とし込むためのガイドライン」だと私は捉えています。

映画の中では様々な事件やイベントが起こりますが、他人に伝わりやすい・理解しやすい物語に仕上げるためには、これらのイベントを無秩序に並べていくだけでは当然だめです。
ですので、13フェイズでは、「日常」「異変」からはじまり、「糸口」「対決」「勝利」「満足」のように、物語の展開の中で果たすべき「機能とその順番」がガイドラインとして設定されているわけです。

しかし、これも完璧なものではありません。実際、演習などで学生が物語制作にチャレンジすると、うまくいかない学生がいます。
うまくいかない学生によくある共通点のひとつに、「悲劇やバッドエンド」の作品を書こうとした場合があげられます。

13フェイズの元になっている分析ではハリウッド映画によくあるハッピーエンドの作品が対象になっていたことも事実です。
実際、13フェイズの機能名を見てみると、最後のフェイズの名前は「満足」です。一応13フェイズには動的なストーリーの場合の機能名と、静的なストーリーの機能名が用意されていますが、いずれにしても悲劇やバッドエンドには一見適用しづらい名前がついています。

では、悲劇には「満足」という機能は必要ないのでしょうか?
そんなことはありません。

次回はこの辺りについて書こうと思っています。

(文責:兼松祥央)

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