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物語制作におけるセントラルクエスチョン

2025年1月 6日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

あけましておめでとうございます。メディア学部の兼松です。

年は変わったばかりですが、メディア学部のスケジュールとしては、今週が多くの授業の最終回の週です。
昨年度やそのもっと前と比べると、今年度は様々な授業を担当しました。私は主要な研究テーマの1つが「物語の構造」ですので、様々な授業でこの物語の構造を例に出して説明することがあります。

年末年始に振り返ってみると、物語の構造の中でも、セントラルクエスチョンとオチの作り方に力を入れて解説したなぁと感じました。
セントラルクエスチョンは物語を作る上で軸となる重要な要素なので、授業をする中で正しく掴んで欲しいという思いがあるのはもちろんですが、様々な学生の研究相談を受ける中で、セントラルクエスチョンという概念への理解が少ないから、(シナリオやそれに関する)研究や分析の軸もぶれていて、うまく説明できないと感じたからでもあります。

セントラルクエスチョンとは、簡単に言えば、「物語を読み進めていく中で、常に読者・視聴者に作品側から投げかけ続ける問い」のことです。
例えば王道的なミステリー・刑事物・探偵ものの場合、シンプルに言えば「主人公は事件を解決できるのか?」がセントラルクエスチョンになります。
作品によって起きる事件も違いますし、派生的に起きるイベントの種類も数も違います。これらの作品は、最初に事件が起きて、主人公が捜査し、犯人っぽい人を特定したけどそれはフェイクで、それでも頑張って努力を重ね、最終的に事件が解決するというのがよくある構造です。
これは、物語序盤、発端である第一幕から第二幕展開へ移行する際に「事件を解決できるのか?」という問いを投げかけてそこに没入するからこそ、途中途中で挟まる様々なトリックやミスリードに一喜一憂しながら、視聴者はワクワクしながら最後まで物語を読む気になるのです

言われてみれば、当たり前のことですよね?そんなに大々的に言うようなことでもありません。

ただ、いざ自分で物語を書こうとすると、結構難しいです。シナリオを書く授業でも、これがうまく実現できない学生が多いです。既存作品を分析する際も同じですね。その作品のセントラルクエスチョンがなんなのか、なかなか掴めません。さらに言えば、確実にセントラルクエスチョンを抽出できる手法や技術も存在しないというのが現状です。

この辺りが、センスや経験・暗黙的なノウハウを中心に作られてきたコンテンツ制作を体系化する際の難しさでもありますね。

(文責:兼松祥央)

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