吉岡研究室から6名が学生発表会に参加
2025年1月24日 (金) 投稿者: メディア社会コース
大学コンソーシアム八王子主催の学生発表会に、吉岡研から6名が参加しました。そして、2名が優秀賞を受賞しました。
では、研究テーマごとに分かりやすく解説します。
◯東久保 一輝
研究テーマ「聴覚障害児を対象としたオノマトペ学習のためのデジタル教材開発」
日本語は外国語と比較してオノマトペを多く使う言語です。オノマトペの中には音を元にした表現も多くあり、聴覚障害児にとってそれらの言葉の意味を理解するのが難しい場合があります。そこで、本研究ではアプリを使い、動画による教材でオノマトペを覚える手法を提案します。聴覚障害児の療育を行なっている言語聴覚士の方々にもご意見を伺いながら、教材開発を進めています。
本研究では、私が開発した言葉を楽しく覚えるアプリ「Vocagraphy」を使っています。
▶︎Vocagraphy
https://blw.jp/
◯飯泉 春香【優秀賞】
研究テーマ「聴覚障害児の保護者を対象とした情報提供手法の検討」
聴覚障害児を持つ保護者は、専門的な情報をインターネットで調べる必要があります。例えば、医療・福祉・補聴器・特別支援学校・助成金といったキーワードがあげられます。先天性の聴覚障害児は1000人に1人いると言われており、しかも障害の種類も多様で、自分に必要な情報がインターネット上にあるとは限りません。そこで、本研究ではChatGPTに聴覚障害児に関する情報を学習させ、チャットで質問をした時に正しい情報を提示するかを検証しました。結論としては、ChatGPTに正しい情報を学習させた場合でも、回答が100%正しいという訳ではありません。今後は、別の生成AIについても研究対象とすることが望まれます。
◯岩館 結名
研究テーマ「聴覚障害者が音楽イベントに参加する際の課題及び実態の調査と提言 」
聴覚障害者の中には、補聴器や人工内耳を装用して音楽イベントを楽しむ人々がいます。2024年4月より障害者差別解消法の改正法が施行されたことにより、民間企業を含めた全ての場所で合理的配慮が求められています。一方で、音楽イベントにおいては、聴覚障害者が聞こえる人と同じように楽しめる環境は整っていません。本研究では、聞こえに関わらず音楽イベントを楽しむことができることを目標に、アンケート調査の実施準備としてフォームの設問設定について作成と検証をしました。アンケートは、来年度以降に実施する予定です。
◯梶原 翔【優秀賞】
研究テーマ「アニメーションと振動デバイスによる英語発音手法の提案 」
今は小学校でも英語の授業が行われており、ネイティブスピーカーの先生が指導することもあります。聴覚障害児は英語の発音を正しく聞き取れないことがあるため、正確に発音することも困難な場合があります。本研究では、英単語の発音記号から「ネイティブ・カタカナ(造語)」に変換し、それを読むことで、実際の発音に近いサウンドになるかを検証しました。検証には、リアルタイム字幕アプリを使い、英語発話者として正しく認識されるかを分析しました。実験結果から、文字数が多い英単語の場合は、「ネイティブ・カタカナ」から プロソディー(アクセント、イントネーション、音の長さなど)を読み取ることが難しいため、英語として正しく認識されない場合があります。カタカナのフォント・色・大きさなどを工夫することで、発音を正しく視覚的に表現する改良が求められています。
◯迫屋 光華
研究テーマ「聴覚障害児の保護者によるSNSの活用 ~テキストマイニングによるブログ分析~ 」
聴覚障害児を持つ保護者は、ブログで情報交換をすることが知られています。インターネットで検索すると、ブログへのリンクが上位に表示されることからも、情報源といて利用されていることが分かります。本研究では、これらのブログの内容や、コメント欄に書かれたやり取りを分析し、保護者同士が情報源としてブログを選択する理由を明らかにしました。特に、人工内耳に関する情報がインターネット上には少なく、皆さんが困っているようで、実体験を元にブログに情報をまとめる人が一定数いることが分かりました。
◯渡部 日和
研究テーマ「聴覚障害児の保護者を対象としたクローズドコミュニティの研究 」
聴覚障害児を持つ保護者が情報交換をする場として、LINEオープンチャットがあります。いくつかのチャットが存在しますが、コミュニティの構成メンバーによって、そのやりとりに差があります。本研究では、3つのチャットを対象にやり取りを分析し、構成メンバーや質問の内容などによって、どのような傾向があるのかを明らかにしました。聴覚障害児は少ないため、通常の子育てとは違い、情報が少ないことが保護者を困らせています。そんな中で、LINEオープンチャットのように、匿名で気軽に質問ができる場は、保護者の不安を解消するために必要なコミュニティとなっているのでしょう。
発表した皆さん、お疲れ様でした。
メディア学部 吉岡 英樹
略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「サイレント・コミュニケーション」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。
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