ニューヨークのストリートアート①
2025年3月24日 (月) 投稿者: メディア社会コース
皆さん、初めまして。
昨年9月にメディア社会コースに助教として着任しました、陳海茵(ちん・かいん)と申します。
私の専門は、アートに携わる人々の言説や相互行為、芸術家の国際移動とキャリアに関する社会学的研究です。
私が現代アートの研究をはじめるきっかけとなったのは、大学1年の時に約10カ月滞在していたニューヨークでの体験でした。
なにより衝撃を受けたのは、美術館やギャラリーではなく、街を歩けば目に飛び込んでくるカラフルなストリートアートでした。ビルの壁一面に広がるカラフルなグラフィティ、地下鉄のトンネルに堂々と描かれたメッセージ、歩道に並ぶステンシルの作品——どれも、私がそれまで考えていた「(高尚な)アート」とは全く異なるエネルギーを放っていました。
ストリートアートとは?
ストリートアートとは、公共の空間に描かれるアートのことです。日本では、バンクシー(Banksy)が特に有名ですよね。
グラフィティと混同されることもありますが、グラフィティが主に文字を使ったスタイル(タグやロゴなど)であるのに対し、ストリートアートはより幅広く、壁画やポスター、ステンシル(型紙を使った絵)、モザイクなどさまざまな表現が含まれます。特にニューヨークは、1970年代からストリートアートの中心地となり、多くのアーティストが活躍しました。その代表的な例が、バスキア(Jean-Michel Basquiat)やキース・ヘリング(Keith Haring)です。彼らはギャラリーに作品を発表する前から、街の壁に絵を描き、同性愛者への偏見や黒人差別の問題など、多くの社会的なメッセージを届けていました。
なぜストリートアートには価値があるのか?
「壁に落書きするなんて、アートなの?」と思う人もいるかもしれません。(前任校の授業で扱った時も、200名を超える受講生たちがストリートアートの違法性と意義をめぐって意見がかなり分かれ、ちょっとした白熱議論になるテーマでした。)
ストリートアートの価値は、単に「絵が上手いかどうか」ではなく、そのメッセージ性と都市との関係にあります。
例えば、ある地域の壁に描かれた大きな壁画が、その街の歴史や文化、社会問題を表現していることがあります。ニューヨークでは、人種差別や貧困、LGBTQ+の権利など、さまざまな社会的テーマを扱ったストリートアートを見ることができます。街を歩くだけで、そこに生きる人々の声が感じられるのです。また、ストリートアートは、一般の人々が無料でアクセスできる「開かれた美術館」とも言えます。美術館やギャラリーに行かなくても、街を歩けばアートに出会える。これは、アートが一部の特権的な人々だけのものではなく、すべての人に開かれているというメッセージでもあります。
次回は、私が2017年の夏に訪れたニューヨークのブッシュウィックのストリートアートと、その背景にある移民たちの物語を写真とともにご紹介したいと思います。
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