専門演習で映画字幕つくり
2025年6月 9日 (月) 投稿者: メディア技術コース
本年度から2年生からの「メディア専門演習」という演習科目で、”映画字幕の作成”というテーマを一つ立ち上げました。
長年、映画ファンをしている傍ら、小さな上映会や、映画祭の日本語字幕作成などを細々とやってきたので、そのノウハウを学生に伝えることが出来たらいいな…という、それっぽい理由もありますが、実は不純な動機も少しあって、昔のまだ(自分が)観ていない日本未公開の映画など、学生のパワーで発掘できないか、と考えた次第。つまり、学生が字幕を付けたいろんな映画を採点と称して楽して沢山観ることができるのではないかという、そういう悪だくみが根幹にあったわけなのですが…。
で、いざ演習を立ち上げてみると、よくよく考えたら学生の演習なので、先生側は見本(お手本)を示さねばならず、そうすると先回りして全部の字幕の訳文を用意しておく必要があり…。と、ただいま作業地獄の泥沼に沈んでいる所です。
さて、映画の日本語字幕、普段意識して観ている人は少ないでしょうが、実は結構な分量があります。2時間弱の長編映画で大雑把な目安を言うと、サイレント映画では50くらいから200程度の文章(セリフ)、これがトーキーになると1000~2000程度の文章(セリフ)の量になります。一文一文を吟味しながら、一文を1分で字幕を付けていくと考えても、200文あれば200分かかるわけで、結構な重労働だとお分かりいただけるでしょうか。
字幕付けにはルールがあって「一秒間に4文字程度で読むように文字を配置すると読みやすい」とか「句読点は使わない」とかあります。オールドな映画ファンとしては、特にビデオ媒体で映画が視聴されるようになって、文字数制限が厳しくなり、映画字幕の情報量が大幅に減ったような印象もあります(その分文字は読みやすくなりましたが…)。
さて、字幕の演習を行うにあたって、自分のつけた字幕が、市販されているソフトの映画字幕とどのくらい違うものなのかを、半ば答え合わせのような感じで見比べてみました。今回の例は1928年のジョセフ・フォン・スタンバーグ監督による、「紐育の波止場(The Docks of New York)」というサイレント映画の序盤の一コマです(画像の字幕は私)。
冒頭部分のナレーションにあたるような文字字幕で、英文の前半部分にあたるところは私の字幕だと、
> 私:「燃料が石油になり 火夫の仕事が楽になる前―」
としていますが、これが既存ソフトだと
> 既存ソフト:「燃料を補給するまでの数日は仕事も楽しかった」
となっていました…いや…このソフトの訳文、絶対違う…気がする…(自分にあんまり自信がないので半分疑心暗鬼…)
これだけ違っていると、情報が落ちてるどころの騒ぎではなく、なんだか別の話が進行しています。
実はほかの映画も色々と検証して観てみたのですが、市販ソフトの字幕は訳す人によって個性が ”かなり” バラついており、、あまり有名どころでない映画の場合、妙な字幕が横行しているのは普通だったりします。ただ、鑑賞してる側はあまりじっくり文を吟味して聞いたり読んだりはしていないので(一瞬で流れてしまいますし)、なんとなし見過ごされている様子。ということで、今まで皆さんが見てきて感動した映画も、実は「ほんとはそんなこと言っておらず、字幕作成者の作ったお話」という可能性や、「全然言葉が頭に入ってこないのは、訳文が矛盾しているから」という可能性もあったりします。(もちろん、うまく意訳して名訳になっている字幕も多々あります)。
ということで、かなり強引な今回の教訓ですが <好きな作品なら自分で翻訳してから観るとより楽しめます> ということで。
(以上 文責:永田)
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