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担当講義科目を振り返る

2025年11月12日 (水) 投稿者: メディア社会コース

筆者の常勤としての本学在職も残り5ヶ月を切りました。筆者は、メディア学部が開設された1999年に着任して以来、丸27年在職することになります。この間、講義科目では経済学、社会情報学関連の授業を担当してきました。ここ何年かは、学部3年次開講の社会経済論、社会経済シミュレーション論、大学院コースワークのビジネスシミュレーションを担当しています。今回は、これらの講義科目について紹介していきましょう。

まず、3年次前期開講の社会経済論は、マクロ経済統計の編集、分析、解釈の仕方を習得することを目標とした科目です。頭はもちろん、PCで手を使いながら、データ解釈の技術習得を狙いとしています。

筆者は本来、大学の授業に実践的な目標を位置付けるより、学生に自由に興味関心の赴くままに勉強してもらいたいと考えています。筆者自身が学生の頃、職業を意識することなく牧歌的な学生生活を送ってきたせいもあるでしょう。しかし、時代も移り、就職対策が大学生活の一部になってきました。本学の方針も実学主義を謳っています。

いずれ社会に巣立てば、日々の仕事を計画、遂行するにあたり、広く社会、産業、経済情勢について事実に基づいた知識の活用が試される機会も増えていくでしょう。これは、業種、職種を問わず、特に5〜10年後、自ら業務を計画し、遂行するべき地位で仕事をするとき、必ず求められる素養になるはずです。当該講義は、学生諸君に対してこのような到達目標を掲げています。

一方、3年次後期の社会経済シミュレーション論は、所属する組織の幹部として合理的な意思決定を期待される地位で仕事をするとき、経営戦略の立案に寄与するような方法論を身につけてもらうことを意図しています。ただし、社会シミュレーションの技術は筆者の研究領域でもあり、本学の掲げる実務教育に加えてマニアックな内容になっています。ちなみに本学部のカリキュラムでは、同時期に卒業研究以外のすべての科目を取り終えることを推奨しています。したがって、同科目は、卒業単位を埋める目的のためだけに履修すると機会費用が高く付くことに注意が必要です。

大学院のビジネスシミュレーションは、一転して、実務的な科目です。なぜなら、同科目は、もともとアントレプレナー専攻に開設されたもので、カリキュラム上必然的に実務に沿っているからです。同科目は、会計から財務指標分析に至るまでを総合した内容を教育していますが、工学系大学であるため、情報システムとしての設計も意識しています。筆者は経営学や、まして会計を専攻してきたわけではありませんが、若干社会人としての実務経験と、国の会計システム(国民経済計算SNA:System of National Accounts)の最適化計画に携わった経験を踏まえて、当該科目における教育を実践してきました。(企業会計とSNAは別物、というもっともな批判もあると思いますが、両者の接合を論じたものとして下記参考文献を参照してください。)

27年の間には、いずれも基礎的な内容ながら、マクロ経済学、ミクロ経済学、情報経済論等も講義してきました。対象年次も、1年次生から始まり、2年次、そして現在は3年次開講に定着してきました(本学では現在4年次開講講義科目は原則的にありません)。現在の科目構成に落ち着いたのは、文科系の教育を受けてきた筆者が、経済学のみならず、制度設計や工学領域の優れた先達の知遇を得て、かつ工学系学部に着任し、研究教育を行なってきた軌跡から生じた、試行錯誤的な、あるいは意図せざる結果に他なりません。

 

参考文献

本学部ではコロナ社からメディア学体系として教科書を出版しています。筆者の担当科目に関連する「ICTビジネス」も同シリーズに出版されています。なお、同書の書籍名は筆者の意図したものではないことをこの場を借りてお断りしておきます。

https://www.coronasha.co.jp/mediastudies/

社会シミュレーションに関心のある方は、例えば下記を参照してください(Open Access)。

https://link.springer.com/article/10.1007/s40844-018-0098-5

https://www.nature.com/articles/s41599-023-01667-1

企業会計とSNAの接続に関しては、下記をご一読ください(残念ながら有料)。

https://link.springer.com/article/10.14441/eier.8.123

 

(メディア学部 榊俊吾)

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