在学生向け

メディア学部における新入生SNS利用率調査

2025年6月13日 (金) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の盛川です。

 

毎年、学部1年生の必修授業である「情報リテラシー」の中で、ミニ課題と称して様々なアンケートをとっています。その中で、面白い結果となったものを紹介します。

東京工科大学では、毎年新入生全員を対象にコミュニケーションツールの利用実態調査を行っています。結果については公式Webサイトでも公開され、2025年度の結果は以下のリンクから確認できます。そこで掲載されているグラフを図1として引用しました。

新⼊⽣の「コミュニケーションツール」利⽤実態調査を発表

アンケートの結果から、本年度はInstagramの利用者がX(旧Twitter)を抜いて第2位となったことが特徴的であると読み取ることができます。さらには、Discord利用者の減少、TikTok利用者の増加なども見て取れます。

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図1 現在使用しているSNS(上記URLより引用、クリックで拡大)

 

この結果は八王子キャンパス、蒲田キャンパスすべての学部の新入生を対象としたものでした。それでは、メディア学部の新入生に限って言えば、どのような結果になるのでしょうか。最初に挙げた「情報リテラシー」の授業は1年生の必修授業なので、同様の質問を行うことで新入生調査と比較することができそうです。

結果は次の図2のグラフのようになりました。LINEが1位であることは全体調査と同じですが、2位はX(旧Twitter)で3位はDiscordとなっています。全体調査で2位であったInstagramは4位となっています。InstagramがXを抜かすどころか、Discordよりも順位が下となる結果となりました。

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図2 メディア学部における新入生SNS利用率調査(クリックで拡大)

 

利用率の数値についてみてみると、全体調査ではDiscordの利用率が約40%ほどであったのに対し、メディア学部の調査では75%近くの値となっています。Instagramについては、全体調査に比べメディア学部では10%ほど低い値になりました。

二つの結果を比べると、大きな違いがあることがわかります。特にDiscordの利用率の差が大きいことが特徴的でした。Discordはゲーム分野での交流やチャットに用いられるSNSですので、ゲーム分野に興味のある学生が多いと思われるメディア学部で大きく利用率が上がったのだと考えられます。

メディア学部でこのような差があったということは、他の学部ではInstagramの利用率が極端に多いところや、他のSNSが利用されているところがあると予想されます。学部の特徴がSNSの利用率として表れているとすれば、学部に合った情報共有や交流方法を考えるのも面白いでしょう。これから新しいSNSが生まれるとすればどういった機能や形態になるのか、自分ならどういったSNSを作るか、といった想像をしてみると、新しいメディアの形が思い浮かぶかもしれません。

(文責:盛川浩志)

2025年6月13日 (金)

専門演習で映画字幕つくり

2025年6月 9日 (月) 投稿者: メディア技術コース

本年度から2年生からの「メディア専門演習」という演習科目で、”映画字幕の作成”というテーマを一つ立ち上げました。

長年、映画ファンをしている傍ら、小さな上映会や、映画祭の日本語字幕作成などを細々とやってきたので、そのノウハウを学生に伝えることが出来たらいいな…という、それっぽい理由もありますが、実は不純な動機も少しあって、昔のまだ(自分が)観ていない日本未公開の映画など、学生のパワーで発掘できないか、と考えた次第。つまり、学生が字幕を付けたいろんな映画を採点と称して楽して沢山観ることができるのではないかという、そういう悪だくみが根幹にあったわけなのですが…。

で、いざ演習を立ち上げてみると、よくよく考えたら学生の演習なので、先生側は見本(お手本)を示さねばならず、そうすると先回りして全部の字幕の訳文を用意しておく必要があり…。と、ただいま作業地獄の泥沼に沈んでいる所です。

さて、映画の日本語字幕、普段意識して観ている人は少ないでしょうが、実は結構な分量があります。2時間弱の長編映画で大雑把な目安を言うと、サイレント映画では50くらいから200程度の文章(セリフ)、これがトーキーになると1000~2000程度の文章(セリフ)の量になります。一文一文を吟味しながら、一文を1分で字幕を付けていくと考えても、200文あれば200分かかるわけで、結構な重労働だとお分かりいただけるでしょうか。

字幕付けにはルールがあって「一秒間に4文字程度で読むように文字を配置すると読みやすい」とか「句読点は使わない」とかあります。オールドな映画ファンとしては、特にビデオ媒体で映画が視聴されるようになって、文字数制限が厳しくなり、映画字幕の情報量が大幅に減ったような印象もあります(その分文字は読みやすくなりましたが…)。

さて、字幕の演習を行うにあたって、自分のつけた字幕が、市販されているソフトの映画字幕とどのくらい違うものなのかを、半ば答え合わせのような感じで見比べてみました。今回の例は1928年のジョセフ・フォン・スタンバーグ監督による、「紐育の波止場(The Docks of New York)」というサイレント映画の序盤の一コマです(画像の字幕は私)。

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図:映画「紐育の波止場(1928)」の中間字幕の字幕例

冒頭部分のナレーションにあたるような文字字幕で、英文の前半部分にあたるところは私の字幕だと、

> 私:「燃料が石油になり 火夫の仕事が楽になる前―」

としていますが、これが既存ソフトだと

> 既存ソフト:「燃料を補給するまでの数日は仕事も楽しかった」

となっていました…いや…このソフトの訳文、絶対違う…気がする…(自分にあんまり自信がないので半分疑心暗鬼…)

これだけ違っていると、情報が落ちてるどころの騒ぎではなく、なんだか別の話が進行しています。

実はほかの映画も色々と検証して観てみたのですが、市販ソフトの字幕は訳す人によって個性が ”かなり” バラついており、、あまり有名どころでない映画の場合、妙な字幕が横行しているのは普通だったりします。ただ、鑑賞してる側はあまりじっくり文を吟味して聞いたり読んだりはしていないので(一瞬で流れてしまいますし)、なんとなし見過ごされている様子。ということで、今まで皆さんが見てきて感動した映画も、実は「ほんとはそんなこと言っておらず、字幕作成者の作ったお話」という可能性や、「全然言葉が頭に入ってこないのは、訳文が矛盾しているから」という可能性もあったりします。(もちろん、うまく意訳して名訳になっている字幕も多々あります)。

ということで、かなり強引な今回の教訓ですが <好きな作品なら自分で翻訳してから観るとより楽しめます> ということで。

(以上 文責:永田)

2025年6月 9日 (月)

【学部長Blog005】コンテンツとの出会い(3)<アニメ編>

2025年6月 8日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の三上です

少し間が空きましたが,私が興味を持ったコンテンツのアニメ編です.
前にも書いた通り,微妙に映画館へのアクセスの悪い横須賀の片田舎に住む私にとって,映像コンテンツはテレビから入ってくることが多かったです.しかし,外を駆けずり回っていた私がリアルタイムにテレビ見る機会にはそれほど恵まれませんでしたw.
それが変わったきっかけは家庭用のVTRの復旧とレンタルビデオの普及です.
高校に入ったぐらいの時に,少し大型のテレビ(当時は4:3のブラウン管)とVHS方式のビデオデッキが家に来て,話題になった映画を後から見れる機会が実現しました.

そこで,当時高校の時の友達の間で話題になっていた作品を借りてみんなで見ようということになりました.その中にあったアニメ作品が2作品あり,その作品がそれまでのアニメに対する私の印象を変え,今でも記憶に残っています.

一つ目は「風の谷のナウシカ」です.シリアスなストーリーやキャラクタの存在感,立ち振る舞いもさることながら,私が当時特に印象に残ったのは「腐海」の美術表現でした.幻想的な世界を細部まで描写した世界観が印象的で,もともと美術が好きだったこともあり,当時の課題だったエッチング(版画)で「腐海」を題材にして制作するほどでした.

もう一つは「AKIRA」です.壮大な設定の近未来を舞台にした作品で,細部にわたる描写のすばらしさが「カッコよさ」に繋がっていて,何度も見返しました.

東京工科大学で金子先生のつてで,アニメ制作のデジタル化の支援として,業界団体を立ち上げてデジタル化のためのマニュアルを制作することになりましたが,その際に「風の谷のナウシカ」や「AKIRA」に携わったスタッフの方とご一緒に仕事したり,それらのプロダクションの方に使ってもらえるような書籍が発行できたのは大変光栄でした.

このデジタルアニメマニュアルは,今でも多くの人に覚えていただいいます.最近では生成AIの普及によりアニメ制作技術がまた確信することが見込まれています.引き続き「実学主義教育」の観点から,実社会に役立つ教育と研究の社会還元の視点でまた貢献できればと思います.

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デジタルアニメマニュアル
(今でも利用されるフィルムアニメからデジタルアニメへの移行のためのマニュアル

2025年6月 8日 (日)

「2024年度メディア学部長賞」授賞式を開催しました!

2025年5月30日 (金) 投稿者: メディア社会コース

 こんにちは。メディア学部社会コース助教の陳かいんです。

5月28日(水)の昼休み、研究棟Cの大会議室で「メディア学部長賞」の授賞式が行われました。

この賞は、メディア学部の学生たちの学びや活動の成果をたたえるもので、毎年、学年ごとに選ばれた学生が表彰されます。

今年も多くの学生や先生方が会場に集まり、賞状を受け取る姿にはそれぞれの頑張りと達成感が滲んでいて、拍手に包まれる場面もたくさんありました。また、メディア学部長の三上先生と学生委員長の山崎先生から、受賞者に向けたお祝いの言葉が贈られました。

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さて、今年の学部長賞は、学年ごとに以下のような基準で選ばれています。

  • 1年次(現2年生)

「フレッシャーズゼミ」におけるメディア学調査研究のグループ発表が評価の対象になりました。教員による採点と学生同士の投票の結果をもとに、総合順位で上位6グループから候補者が選ばれました。さらに、教員の推薦なども参考にして、最終的に21名が選ばれました。

  • 2年次(現3年生)

「メディア基礎演習II」「アカデミックスキルズI・II」の3科目を対象に、それぞれ2:1:1の比率で成績をポイント化し、スコア上位の学生の中から、21名が選ばれました。

  • 3年次(現4年生)

「創成課題賞」の発表内容をもとに、教員の評価と学生投票の総合結果で上位20名が選ばれました。

 

上記の選考を経て、今年も各学年から優れた成果をあげた学生たちが表彰されました。

試験の成績だけではなく、プレゼンテーション力やチームでの取り組み方なども評価のポイントになっているのが、メディア学部らしいところです。受賞された皆さん、本当におめでとうございます!

これからも、それぞれのフィールドでのびのびと活躍してください!

 

 

 

2025年5月30日 (金)

【学部長Blog004】コンテンツとの出会い(2)<ゲーム編>

2025年5月18日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部長の三上です

ゴールデンウィークで少しお休みさせていただいておりましたがまた再開したいと思います.
前回に続き,私がコンテンツに興味を持つきっかけになり,今でも影響を受けていると思うコンテンツについて紹介してみようと思います.まず今回はゲームの方から.

私はアーケードゲームだと「パックマン」と「ゼビウス」が大好きで,近所の「牛乳屋」や「饅頭屋」と呼ばれる,ゲーセンではないけどゲームが置いてある商店で並んでプレイしていました.そんな私がいわゆる家庭用ゲーム機を購入したのは中学1年(1985年)の冬でした.それまでは任天堂のゲームウォッチを小学校5年ごろに買ってもらって遊んでいましたが,そこまでのめりこむことはなかったです.

最初の家庭用ゲーム機は任天堂のファミリーコンピュータで,当時発売され大人気だった「スーパーマリオブラザーズ」がどうしてもやりたくって,お年玉を使って購入しました.ところが当時のカートリッジソフトはソフトと言ってもハードウェアでしたから,すぐに大量生産できるわけがなく,欲しくても購入できませんでした.

そこで,ハードと一緒に買ったのは当時アーケードから委嘱されたばかりだった「シティコネクション」(ジャレコ)と「ジッピーレース」(アイレム)と「エレベータアクション」(タイトー)でした.「スーパーマリオブラザーズ」は手に入らなかったものの,アーケードゲームとしてもプレイしていた作品が無限に自宅でプレイできるのは本当にうれしい限りでした.

そして,その後私が出会ったのは,今でもシリーズが脈々と続く「ドラゴンクエスト」でした.
まあ,同世代の結構な人数が当時この大ヒットゲームに魅了されたので,今となってはそれほど新鮮味はないかもしれませんが,それまでのゲームと違って,継続してプレイしてストーリーをたどっていくという遊びは斬新でした.

当時はネットなどもなく,攻略サイトは存在していません.ファミコン通信などの雑誌は存在し,攻略本が出始めたころですが,そこまでタイムリーで詳細な情報は出ていないので,学校では攻略の話でもちきりでした.

どれぐらい時間かけたかわかりませんが,それは夢中になってマップ上を探索しまくりました.そして第2作ももちろんのめりこみました.この当時はプレイデータをゲーム機に保存するという概念はなく,プレイデータは「復活の呪文」と呼ばれる,ドラクエ1では25文字,ドラクエ2では52文字のひらがなによる暗号がセーブデータになっていました.一語づつ間違えなく記すのですが,もし間違えているとその日のプレイの記録がなくなり,前の日に逆戻りしてしまいます.スマフォなどもありませんので,画面を写真でとるようなこともできません.インスタントカメラでも持っている人であれば写真に残すこともできたでしょうが・・・(チェキが発売されるのは1998年なのでまだ敷居が高い).
そして,第3作のときはちょうど高校受験のタイミングでした.プレイを始めたら絶対にのめりこむをはわかっていたので,購入はしたものの手を付けずにずっと保管して,試験が終わった日からプレイしました.

ドラゴンクエストは今でも発売されると必ずプレイするゲームとなりました.ドラゴンクエストの作者である堀井雄二さんとはデジタルコンテンツ協会のデジタルコンテンツグランプリで表彰する側として参加して,受賞される堀井さんと直接お話しする機会がありました.とにかく感謝を伝えたことを覚えております.

ファミコン以前に夢中になった「パックマン」の岩谷徹さんや「ゼビウス」の遠藤雅伸さんには,日本デジタルゲーム学会で理事として学会運営をご一緒したり学会で議論する機会にも恵まれ,子供のころに私に影響を与えた皆さんと,社会人になって今度は次の人材を育成する側としてご一緒できたのは本当にうれしい限りでした.

P.S
当時購入したファミコンのゲームはまだ資料として持っています.意外と几帳面な私はパッケージから出した後,外箱や取説は大切にしまっておきましたので,ほぼ新品に近い状態で保存しております!(今度その写真も紹介します)

 

 

2025年5月18日 (日)

【授業紹介】情報の「見せ方」「伝え方」をデザインする──「情報デザイン入門」の世界

2025年5月16日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

本ブログをご覧の皆様,こんにちは.

メディア学部教授 菊池 です.

メディア学部では,昨年度から1年次向けの新しい授業「情報デザイン入門」がスタートしました(担当は私です).

この授業は「情報をどのように人に伝えるか」をテーマに,日常の中にある“情報”を見つめ直し,それをわかりやすく,効果的に伝える方法を考える内容です.

たとえば皆さんが目にする駅の案内板,アプリの画面,Webサイトのレイアウト,動画のサムネイルや編集.
これらはすべて「情報のデザイン」の成果物です.
情報がただ存在しているだけでは意味が伝わらない場合も多く,それを“誰にでも伝わるように整える”のが,情報デザインの役割です.

授業では,情報デザインの考え方や歴史,そして「センスメーキング(Sensemaking)」といった情報を理解・整理するための方法論も学びます.センスメーキングとは,混沌とした情報の中から秩序を見出し,意味を構築していく人間の活動のこと.こうした理論に基づいて,紙のレイアウトやポスター,インフォグラフィック,さらには映像表現など,実際に手を動かしてデザインを行う課題にも取り組みます.

また,近年の情報デザインでは,単に「きれい」「見やすい」だけでなく,「使いやすい」「気づきを与える」ことも重要です.
授業では,ユーザの視点に立ったデザイン(ユーザ中心設計)や,人とモノとの“対話”を生み出すインタラクションデザインなども扱い,Apple Watch や Spotify などの実例をもとに分析を行います.

情報デザインとは,まさに現代を生きるための“読み書き能力”を磨く学びとも言えるかもしれません.
私たちの生活はますます情報に囲まれ,その取捨選択や見せ方が人生を左右する時代です.

「デザインはアートとは違うの?」と思っている人もいるかもしれません.でもこの授業では,情報を“誰かに届けるための工夫”こそがデザインであるという視点から,身近な例や実践を通して学んでいきます.

将来,メディア・コンテンツ制作,広告,アプリ開発,UX/UIデザインなどに関心のある人には,とても魅力的なスタートアップ科目になるでしょう.



文責:菊池 司

2025年5月16日 (金)

【授業紹介】メディア学部でのグラフィックデザイン系の授業

2025年5月14日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

本ブログをご覧の皆様,こんにちは.

メディア学部教授 菊池 です.

東京工科大学にはデザイン学部がありますが,メディア学部でもデザインに関することを学ぶことができる授業が複数あります.
それは当然,「メディア学」と「デザイン学」が密接に関りがあるからです.
たとえば,グラフィックデザインの知識は,映像での画面構成やカメラワーク,ゲームでのユーザインタフェースのデザイン,商品パッケージやポスターのデザインなどに必要となります.

今期は 4 月から3年次前期の「メディア専門演習:ビジュアルコミュニケーション」が始まっています.
本授業に関しては,こちらのブログで紹介していますのでご覧ください.

後期は1年次を対象として「視覚デザイン入門」があります.
また,今年後期(第3クォーター,第4クォーター)からは新しく「Create with AI」という演習も始める予定です.

機会がありましたら,またこのブログで授業を紹介したいと思います.


文責:菊池 司

2025年5月14日 (水)

【研究紹介】ドライアイスの CG

2025年5月12日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

本ブログをご覧の皆様,こんにちは.

メディア学部教授 菊池 です.

先日,私たちの研究グループによる研究成果が「International Journal of Asia Digital Art and Design」という国際的な論文誌に採録されました.
この研究では,「ドライアイス」を CG で表現するための手法を提案しています.

ドライアイスは,学校の授業や工場,映像制作などでよく使われています.水などの液体に入れると,モクモクとした白い霧が出て,見た目もとても印象的です.動画では霧がたくさん出てくるシーンがよくありますが,実は「水に入れてから霧が出るまでの流れ(たとえば,ドライアイスが溶ける様子や泡が上がる様子,霧があふれる様子)」は,コンピュータグラフィックス(CG)の世界ではあまり詳しく表現されていませんでした.
なぜかというと,ドライアイスがどうやって霧を出すのか,その正確な仕組みがはっきりしていないため,CGで本物のように再現するのは難しいからです.

そこで私たちの研究では,ドライアイスが水の中で霧を出す様子をCGでリアルに再現する方法を考えました.
まず,ドライアイスが水に入るときの様子を「炎のシミュレーション」を応用して表現します.これにより,水の中で上がってくる泡を滑らかな球体として CG にします.そして,CG の中でドライアイスや容器,泡がぶつかる様子も再現し,よりリアルな動きを出しています(これはAPIC という技術を使っています).
次に,霧を出すために,水面から出てきた泡の位置をもとに「霧のもとになる点(ポイントクラウド)」を作り,それを霧の形に変えます.そのあと,霧が広がる様子を計算するシミュレーションを使って,容器の中に広がる霧を再現します.
霧が上にのぼっていく速さ(風のような流れ)は,この研究で新しく考えた式を使って計算します.
この式では,最初の霧の速さも考えに入れています.また,霧がだんだん薄れて消えていく様子は,水の中に含まれる水蒸気の量によってコントロールしています.

この方法を使えば,水の中でドライアイスが溶けて霧が出る様子や容器から霧があふれてくる様子を,現実に近い形で効率よく CG で表現できます.さらに,今までの「ただ下に流れる霧」だけでなく,もっと自由な霧の表現も可能になります.

論文では,動画へのリンクも紹介していますので,是非ご覧ください.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/adada/28/4/28_97/_article/-char/en



 


文責:菊池 司

2025年5月12日 (月)

【学部長Blog003】コンテンツとの出会い(1)

2025年4月20日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部長の三上です.

今回は,現在の研究テーマとなっているコンテンツとの出会いについてお話ができればと思います.
私の生まれは1972年で,いわゆる団塊Jr.世代(第2次ベビーブーム世代)です.政府の人口動態調査によると2,038,682人ですから,2024年の720,988人と比較すると3倍近いですね.

私の幼少時代から学生時代にかけては遊び,娯楽がアナログからデジタルに変化していった時代なのかなと思っています.私が生まれたのは東京近郊というか神奈川の南の横須賀というところ(の中でもかなり南の方)です.海岸まで1分,野山(山椒魚がいるような清流もあった)は3分ぐらいの環境なので,おのずから野生児さながらの少年時代を送ります.半面,子供が遊びに行ける繁華街は横須賀中央にありましたが,映画館も規模が小さく,コンテンツに触れるにはいささか不便な場所でありました.

そのころの遊びはというとまさに昭和のレトロな遊びそのもの.公園のような整備された環境があまりなく,自然を生かしての遊びがほとんどでした.海岸はそれなりに砂浜があったので,野球(ソフトボール)やったり,山や小川で昆虫採集したり,空き地でケイドロや鬼ごっこなどと,いわゆる昭和の遊び満載でした.また,近所に住む親戚が工務店を営んでいて作業場があったので,余った木切れとかをもらってきて加工して船を作ったり竹馬作って遊んだりなどしていました.(今でも木工やDIYが比較的できるのはこのころの経験のおかげです)

そんな,昭和の野生児丸出しで野山を駆け巡っていたころ,世間では「インベーダーゲーム」ブームが爆誕します.1980年ごろは小学校3年から4年生にかけての時期でしたが,当時はその年齢でゲームセンターに行ってゲームをやるのはなかなかに難しい時期でもありました.多くの私の周りの同年代の研究者も同じように,興味はありつつもなかなか近づけない時代を感じていたのではと思います.
そしてほぼ同じ時期に爆誕したブームが「ガンプラ」ブームです.こちらは欲しくても売っていないから買えないという時代(今も近いかな)です.ケータイもSNSもないので,どこかのお店に入荷してもその情報はわかりません.ですので,自転車に乗って近所のおもちゃ屋さんをぐるぐる回る日々が始まります.海や野山をかけずりまわり,ガンプラ入荷のうわさが出ると自転車を走らせておもちゃ屋を回り,いつかはいりたいなとゲームセンターを遠目に眺めるという少年時代が続きます.

そんな少年時代に大きな影響を与える出来事が,1980年台中盤に立て続けに起きます.それは,「ファミコン」の誕生と「レンタルビデオ」の普及です.それまで,近づけなかったゲームセンターや行きたくても行けなかった映画館がいつでもアクセスできるようになる,まさに革命的変化が起きるのです.

次回は具体的に少年時代に遊んで現在でも記憶に残っている作品について紹介できたらと思います.

20250420かけずりまわった海岸です

 

2025年4月20日 (日)

【学部長Blog002】意外と広い専門分野

2025年4月13日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部長の三上です.

隔週更新と思いましたが,頑張れるうちは毎週書こうと思いましたので更新します.

私の現在の専門分野として,大学の教員プロフィールページには「プロデュース、ディジタルコンテンツ制作技術、映画、アニメ、CGアニメーションおよび ゲーム制作技術、制作管理技術
」と記載しています.

プロデュースという点は職種というか,立ち位置の色合いが濃くて,全体を見渡すいわばプロジェクトリーダ的な統括的な部分が専門ですよという意味だったりします.もちろん個々の技術も専門ではありますが全体を統括することが仕事柄多かったことからここを書くようにしています.一方制作技術の込み入った部分も専門とするので,ある意味かなり範囲が広かったりします.実際に同じ業界内でも,つながりがなかったりする人同士が,私を通じてご挨拶する機会があったりするぐらいです.(プロデューサや社長と,現場で面白いツールを開発しているエンジニアなど)

その後ろに「映画」,「アニメ」,「CGアニメーション」および「ゲーム」とつながるのですが,これも「エンタテインメント」,「コンテンツ」という分類では同じように扱われるのですが,要素技術はかなり異なるので,業界は全く異なっているといっても過言ではありません.ここでもゲーム業界の技術カンファレンスであるCEDECCGの世界的なカンファレンスであるSIGGRAPHなどで知り合いとお会いしてお話ししていると,思いもよらない人通しが実は初対面だったりしておひき合わせする機会が多くありました.

こんな経験をさせていただいたのも,やはり東京工科大学でコンテンツ教育を立ち上げた金子先生の影響は大きいと思います.金子先生はもともとテレビ業界の方で,南カリフォルニア大学大学院のシネマ&テレビジョンに留学され,ハリウッドの映画会社MGMでもお仕事をされ,その後CGVFXプロダクションをハリウッドと日本で設立されました.コンピュータを使ったアニメ制作の最先端を走り,3DCGなどの研究も進めました.その後そのCG会社の3DCG部門は当時のナムコ(現在の株式会社バンダイナムコエンターテインメント)に合併されましたので,ある意味ここでゲームともつながってきます.(今年卒業生が株式会社バンダイナムコエンターテインメントにお世話になったのは実に感慨深かったです)

映画,アニメ,ゲームの本来は異なる業界をつないだのは3DCGで,東京工科大学においてもその研究開発をご一緒させていただき,CG業界から映画,アニメ,そしてゲームへと交流の場を広げることができました.

異なる業種や職種の方と仕事をしながらつなげていく力は母校である慶應義塾大学SFC(初代メディア学部長でもある相磯秀夫先生が1990年に立ち上げられました)での経験と最初の職場である総合商社の日商岩井株式会社の影響が強いと思います.

文理芸融合という考え方や,プロジェクト全体の推進のために広くコミュニケーションを図る重要性はこのころから醸成されていたのだと思います.

次回は,この専門領域に興味を持ったきっかけというか,少年時代にコンテンツやエンタメにどのようにはまっていったのかをお話しできたらと思います.

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DMCスタジオでの実写VFX(兼CGアニメーション)のためのMOCAP撮影
(一番右が金子先生,中央にいるのは「FRENDS」のディレクターのRoger Christiansen氏)

2025年4月13日 (日)

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