授業紹介

最終講義のご案内 「コンピュータグラフィックス研究からの学び」

2020年1月12日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

次のように最終講義を行います。学内の学生、教職員、さらには学外の皆さんも聴講可能です。

多くの皆さんのお越しをお待ちしています。

講師: 近藤邦雄教授

題目:「コンピュータグラフィックス研究からの学び」

開催日時:2020年1月20日(月)10:45~12:15

会場:八王子キャンパス メディアホール

「コンテンツディベロッピング論」の15回目の講義の中で行う。履修者以外の学生及び教職員は入室できます。

近藤邦雄の研究紹介ページ

メディア学部近藤邦雄教授 は、2020年3月31日をもちまして御定年を迎えられます。先生は、名古屋工業大学第Ⅱ部を御卒業後、名古屋大学、東京工芸大学、埼玉大学工学部情報システム工学科を経て、現職の東京工科大学に着任され現在に至っています。

その間、コンピュータグラフィックスにおけるNPR(Non Photorealistic Rendering)とスケッチモデリング、感性情報処理に基づくデザイン支援の研究に従事され、それらを展開させたアニメーションやゲーム作品のためのコンテンツ制作支援技術に関する研究テーマを開拓しつつ、多くの優秀な人材を育てられました。

また、画像電子学会会長、Visual Computing研究委員会委員長、芸術科学会会長、Asia Digital Art and Design Association会長、情報処理学会グラフィクスとCAD研究会主査、日本図学会副会長、ISGG理事などを歴任され、国内外のコミュニティーの発展にご尽力されました。これらの貢献により、2014年に画像電子学会フェロー、2019年に情報処理学会フェローの称号を授与されました。



メディア学フロンティアシンポジウムのご案内
 このシンポジウムはどなたでも参加できます。近藤教授のほか4名の講演者と卒業生のパネル討論があります。

2020年3月14日(土)10:00-18:00 (予定)
東京工科大学 蒲田キャンパス
http://www2.teu.ac.jp/lenz/mediafrontier/

メディア学部 兼松 祥央

2020年1月12日 (日)

先端メディア学/ゼミナール(ミュージック・アナリシス&クリエイション)で「打ち込み」に打ち込みました

2019年12月21日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の伊藤(謙)です。

私の先端メディア学/ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」では、その名の通り、楽曲分析や音楽制作を軸に、それらに関連したさまざまなトピックを毎回取り上げています。

先日の授業では「打ち込み」をしました。

音楽の分野で「打ち込み」というと、一般的にはシーケンサーやドラムマシンに演奏データを入力する作業や、その作業によって作られた楽曲を指します。メディア学部では、主に専門演習「作曲演習」やプロジェクト演習「DAW演習」で行なっています。

Photo01_20191215150901
「作曲演習」での打ち込みの様子

でも、なぜ「打ち込み」というのでしょうか? コンピュータにデータを入れていくのですから、普通に「入力」で良いですよね?

実は今から40年ほど前は実際に演奏データを「打ち込み」していました。当時はデスクトップPCやシーケンスソフトはもちろん無く、音楽制作専用のディジタルのハードシーケンサーが音楽制作スタジオに設置され始めたころです。

その初期のシーケンサーとして有名なのは、日本の電子楽器メーカーであるRoland社のMC-8(1977年)とMC-4(1981年)です(※MCは「Micro Composer」の略です)。音の「高さ」「長さ」数値化し、その数字を本体のテンキーで一つ一つ入れていたことから「打ち込み」という言葉使われるようになったようです。

さて、今回はMC-4を使って、履修生5名が本来の「打ち込み」を体験しました。MC-4はMC-8と違って鍵盤からも入力できるのですが、ここは敢えて厳しい「いばらの道」を。全ての作業をテンキーのみで行いました。入力したのは、MC-4のマニュアルにサンプルとして掲載されている2小節の簡単なフレーズです。

Photo02_20191215160301
いざ、テンキーを使ってMC-4に「打ち込み」中

まず、「ド[8分音符]ーミ[8分音符]ーソ[8分音符]ーミ[16分音符]ーソ[16分音符]…(続く)…」の音高を数値化したCVデータと呼ばれる「24」「28」「31」「28」「31」…の数字を打ち込みます。次に、音価(音符の種類による音の長さ)を数値化したステップタイムというデータを入力します。ここでは1拍(4分音符)を「120」としているので、「60」「60」「60」「30」「30」…の数字を打ち込んでいきます。最後にテヌートやスタッカートなど、音符の表情付けに関わるゲートタイムのデータを打ち込みます。マニュアルに記載された「40」「40」「50」「10」「10」…の数字をそのまま入れることにしました。

これら一連の作業を5人で分担して行なったのですが、初めての体験ということもあって、マニュアルと睨めっこしながら30分ほどかかったでしょうか。たった2小節で30分…。もちろん、慣れれば5分もかからずに入力できると思います。

Photo03
悪戦苦闘しながら「打ち込み」に打ち込んでいるところ
(※左側に写っている2台もシーケンサーです)


なんとか「打ち込み」が終わったので、再生モードにしてプレイバックしてみると無事に入力できていました! …演奏時間はわずか5秒…。入力30分、演奏時間5秒です。最新の機材やソフトを使えば入力作業は1分もかかりません。

でも、過去の音楽制作を追体験することで、当時このようにして作られていた音楽を聴くときの「意識」は明らかに変わるはずです。それと同時に、音楽を取り巻くテクノロジーの発達や音楽制作の手法を知識としてだけでなく、実感をもって知ることでしょう。音楽に限らず、土台となっている基礎的な部分の理解は先端的な技術や知識の習得にも役立ちます。

Photo04
ようやく音が出てホッと一安心

ところで、無事に入力と再生ができてバンザイ!といきたいところですが、このMC-4は電源を切ると、これまで苦労して打ち込んだデータが消えてしまうのです。では、どのようにデータを残すか?

実はカセットテープにデータ(音ではありません)を記録するのです。上の写真で、MC-4の背面に置かれているのがポータブルカセットレコーダーです。これを使ってカセットテープにデータを記録し、再びMC-4に読み込ませたところ、しっかり再生できました。メデタシメデタシ。


[文責:伊藤謙一郎]

2019年12月21日 (土)

バウハウスを主題にした国際ゲーム開発の様子がCGWorldに掲載

2019年12月 5日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース

伊藤彰教です。

三上先生・安原先生と共に継続的に取り組んでいる、学生による国際的なゲーム開発教育プロジェクト「International Game Studio」ですが、今年はバウハウス100周年ということで、バウハウスを主題にしたゲーム開発に取り組んできました。

『3回目のハルツ大学(ドイツ)との国際共同遠隔ゲーム開発』(三上先生)

『ゲーテ インスティトゥート東京での「"Playing Bauhaus" プレイングバウハウス展」を振り返って』(安原先生)

特に今回はアート&デザインがテーマのゲームということで、エンタテインメント系のゲームに興味がある学生だけでなく、プロジェクト演習「クリエイティブ・アプリケーション」を担当する近藤先生および演習講師の渡邊賢悟先生にもご協力をいただき、幅広い分野からの学生が集まった多様性豊かなチームになりました。

そしてこの度、IGDA Japan(国際ゲーム開発者協会日本支部)で重責を担っておられる小野憲史さまに取材をいただき、CGWorldに掲載いただきました。

『バウハウスをテーマにどんなゲームをつくる? 日本とドイツの学生が共同制作で挑んだ「プレイング・バウハウス」発表会レポート』(CG World.jp 2019/12/5公開)

「Playing Bauhaus」は、世界的なバウハウス100周年の記念を世界中で祝う1年がかりの大イベント「100 Jahre Bauhaus」の一環として、ドイツ国際文化交流機関であるゲーテ・インスティテュートが公式のイベントとして企画したものです。いわばドイツ公式のバウハウス記念イベント。これにゲーム開発として参加できたことを非常に光栄に思います。

Img_1218Img_1227

「バウハウスって建築とかビジュアルデザインなんじゃないの?」

今回の展覧会は「バウハウスの理念・手法などを未来に活かすには」という意図でまとめられた「バウハウス・オープンエンド」という一連の企画展の一部であり、今日的な、そして未来に向けたあらゆる意味での「デザイン」の可能性を示すという意味が込められています。「グロピウス、イッテン、カンディンスキーらが2019年のいま生きていたら…ディジタルメディアのデザインやゲームにもきっと興味をもったはず」。ドイツ・日本でこのプロジェクトに関わった教員や学生は、デザインという意味の源流・本質を再確認しつつ、現在に写像する試みにチャレンジしました。

会期中では、これまでオンラインでしかコラボレーションできなかった日独の学生が、ライブでゲームの新しいステージをゲームジャム形式で作ってしまうなど、学生さんたちの目覚ましい伸びは素晴らしかったです。

Img_1248Img_1233

最初はお互い慣れない英語でおどおどと話し合っていましたが、会期が終わる頃には笑顔で仲良くなっていました。ことばの壁を超えてゲームが「メディア」となっていることを実感します。これからを生きる学生さんたちが才能をのびのびと羽ばたかせられる環境を、メディア学部はこれからも整備し続けます。

Img_1225

Img_1241

2019年12月 5日 (木)

ポーランドの美術大学 その3

2019年11月27日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

コンテンツコースの佐々木です。

このシリーズを読んでくださって、
Dziękuję! (ジンクイエ= ありがとうございます!)

今日は、ポーランドのシレジア地方にある、シレジア大学の芸術学部での授業についてお話します。この芸術学部には、ビデオ・ゲーム アンド バーチャル・スペース・デザインというコースがあって、私はいまこのコースの短期教員として滞在しています。

ポーランドの美大生に対して、私の授業内容が受け入れてもらえるかどうかドキドキです。特に今日はワークショップ(メディア学部でいう『演習』ですね)なので、学生さんたちが、ちゃんと作品を作ってくれるのかどうか心配です。

課題は「現代の妖怪をつくる」です。





ゲームキャラクターの「ポケモン」や、アニメの「妖怪ウォッチ」のデザインは、実は江戸時代に遡って「妖怪」が創り出されたプロセスに似ているのです。そこには、いろいろな法則性があって、スライドでは以下のようなカテゴリーに分けてみました。




1番のモノ妖怪というのは、付喪神絵巻に出てくるような「古くなったモノたちが化け物になる」というパターンです。2番の動物妖怪は、江戸時代に河鍋暁斎が描いた浮世絵にでてくるような、化け猫や魚たちのキャラクターです。

3番以降はちょっと難しいですよね。3番の怨霊というのは、たとえば「北野天神絵巻」に登場する菅原道真の怨霊などで、4番は「風神雷神」や「龍神」のようなキャラクターです。5番の例としては、蓮華王院(三十三間堂)の、千手観音の眷属たちなどにインスピレーションを受けたものです。

実は、これに加えてもっとコワいものもあります。江戸時代の奇想の画家、曾我蕭白が描く、狂った人間などなのです。これはほんとにコワいですよ、生きてるんですから。

さて、これらの事例を見てもらって...
ポーランドの美大生のみなさんに、現代の妖怪をデザインしてもらいましょう。
制限時間は2時間です。




おお!君はもう5つも妖怪を作ってしまったの!
速すぎるー。しかも上手ですね。



ええー! あなた、これを30分で描いたんですか。脱帽です。



彼女は、結局2時間で、3枚も作品を仕上げました。びっくりです。



彼は「楽器妖怪」を作成中... すごい集中力で作業しています。



これは「ソーシャル・フォービア」という名前の妖怪だそうです。
つまり、SNS中毒になってひとつの固まりになってしまった人間たちです。
うん、これは新しい妖怪だ!

ところで...
今日ご紹介した学生さんたちは、実はまだ1年生です。
この9月に入学したばかりで、まだ大学生活は1ヶ月ちょっと。
なのに、このスピード、この集中力、このうまさ。
私としては、ほんとにびっくりの結果となりました。


シレジア大学とメディア学部との間では、今後も教育的な提携が続きます。
学生や教員による相互の訪問やゲームジャムなど、交換留学プログラムなどが行われる予定です。
高校生のみなさん。メディア学部に入学して、ぜひ海外留学にも挑戦してみませんか?

それではみなさん、Do widzenia!(ドゥビゼーニャ=さよなら)



この記事は、コンテンツコース・佐々木が担当しました。




2019年11月27日 (水)

ポーランドの美術大学 その2

2019年11月26日 (火) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、Dzień dobry!(ジンドブレ=こんにちは)
コンテンツコースの佐々木です。

さて、昨日にひきつづきポーランドのシレジア大学からご報告です。
前回の学部ブログにも書いたように、今回のように2週間ものあいだ外国の大学で授業をするなんて、私にはまるで未経験のことですので、本当にドキドキしながら準備をしてきました。いったいどうなることでしょう?



さて、いよいよ一日目の授業開始です。
さすがに私も緊張気味で、おそるおそる自己紹介などを始めています。

Przedstaw się (プセツダーブ ジェ=自己紹介)
うーん、なんかみんな冷ややかな反応...
いきなり、すべってしまったかも?



それなら、これはどうだ!

ウルトラマンを取り出したら...
おお、一気に受けました!

今回の授業は、日本美術と日本のキャラクターとの関係なので、講義の中でも怪獣やウルトラマンが大活躍します。こちらの学生さんも怪獣は大好きのようです。





それから「鳥獣戯画」!
11世紀の「付喪神絵巻」とならんで、まさに、日本の漫画文化の原点ですよね。
うさぎやカエルが相撲をとったり、みんな可笑しくて笑ってくれてます!

おかげでやっと、みなさん話についてきてくれたので、話を進めることができました。
古代の仏教彫刻のスタイル変遷を紹介したり、日本の絵巻物のいくつかを解説したりしつつ、これらの中からいかにして、現代のアニメやゲームのキャラクターが生み出されてきたかと解説しました。

なんと、みなさん、本当に熱心に聞いてくれました。
初日の午前中の授業をなんとか無事に終えて、私もやっと安心しました。
これならば、ポーランドの大学での授業も進められそうです。




次回は、この授業内容をベースにした、ワークショップの様子を紹介しますね。
学生さんたちが作った作品もご紹介しますので、お楽しみに!



この記事は、
コンテンツコースの佐々木が担当しました。



2019年11月26日 (火)

ポーランドの美術大学 その1

2019年11月25日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさんこんにちは!
コンテンツコースの佐々木です。

私はいま、ポーランドのシレジア地方にある、シレジア大学・カトヴィツェ校の芸術学部来ています。この学部の「ビデオ・ゲーム アンド バーチャル・スペース・デザイン」というコースの学生にむけて、授業やワークショップを行うためです。

この学部とメディア学部は、2017年より教育的な提携を結んでいて、これまでもさまざまな交流が行われています。教育内容もメディア学部のコンテンツコースにとても似ていて、まさに兄弟のような学部だと思います。

普段、私がメディア学部で行なっている教育的な手法が、ここでも活かせるかどうか不安です。教員としての腕試しのようなところもありますので、私自身、ドキドキ緊張しながら準備を進めて来ました。使用する言語はもちろん英語です。ポーランドに滞在していると、街中で英語が通じる確率は30%くらいな感じがします。タクシーやスーパーのレジなどでは、ほとんど通じません。この大学の教室では、一体どれくらい英語で通じるのでしょうか?




シレジア大学カトヴィツェ校の入り口です。
はじめから圧倒されてしまいますね。

今回の授業とワークショップのテーマは、"Quest to Japanese Traditional Game World"としました。こちらの学部は、芸術学部というだけあって、まさに「芸術」が中心なので、私の授業やワークショップも、日本の美術史を基本として、その中で現代のコンテンツデザインに活かせるようなテーマを選んでみました。

今週のテーマは「日本の美術史から生まれた妖怪」です。日本では7世記〜8世紀の古代に仏教の伝来があり、その後日本の彫刻美術は飛躍的な発展をとげました。それがいずれ、11世紀ころから、日本的な解釈が中で絵巻物などの形で生まれ、ジャポニズム的な芸術に引き継がれていきます。「ポケモン」や「妖怪ウォッチ」に登場するキャラクターは、その後江戸時代に花開いた、自由で発想豊かな絵画芸術にそのルーツを見ることができます。

でも、一体こんなにムズカシそうな固い話をしても、ポーランドの学生さんたちに通じるのだろうか? 教える言葉も英語で大丈夫だろうか? 歴史のあるポーランドの美術大学の学生さんって、一体どんな感じなのだろうか...  教えるほうの私が、ドキドキしていてはいけませんよね。

さて、このポーランドでの授業とワークショップ、いったいどんなことになるでしょう?
次回のブログで、続きを報告いたしますので、お楽しみに!



コンテンツコース・佐々木が担当いたしました!





2019年11月25日 (月)

[シリーズ難聴-10]ICTを活用した聴覚障害者支援

2019年11月24日 (日) 投稿者: メディア社会コース

今回で「難聴シリーズ」の連載も最後となります。10月から新しく始まったメディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」では、「聞こえないフィールドワーク」「指文字と手話の習得」を通じて、聴覚障害者の気持ちを少しでも理解する努力をしました。特に、耳栓をして手話で会話をした際には、慣れない視覚のみのコミュニケーションだと不安になることを実感しました。私たちの社会は聞こえることを前提に設計されていますので、聞こえにくい方の立場を少しでも理解できたのではないでしょうか。また、技術の進歩により補聴器や人工内耳が普及していることも学びました。しかし、健聴者と同じように聞こえる訳ではなく、雑音下や複数による会話の際には苦労があることも知りました。

メディア学部の学生としては、ここからが重要な演習となります。大学で学んだ情報工学を生かして、聴覚障害者にどのような支援が出来るかを提案してもらいます。そこで、まずは現在どのような支援が実現されているのかを2つご紹介します。

<会話のテキスト変換>
聴覚障害の学生が大学で授業を受ける際に、ノートテーカーと呼ばれる学生が先生の話をパソコン上でテキスト変換する支援があります。これを音声認識技術を使って自動的に行うアプリがあります。

Img_1478
図:会話の見える化アプリ「UDトーク」

このアプリがあれば会話をリアルタイムに文字化して表示することが出来るので、聴覚障害の方への情報保証が可能となります。このアプリには翻訳機能もあるので、聴覚障害者への支援だけでなく、多言語間のコミュニケーションにも役立ちます。

しかし、コンピュータによる自動変換の場合、変換ミスもありますので、それを人間が見つけて修正するという仕組みになっています。また、優秀なノートテーカーは先生の話を全て文字化するのではなく、必要な箇所だけを伝えます。先生の言い間違いや言い直した箇所などまでテキスト化してしまうと、情報が多すぎて目で追うのに疲れてしまいます。将来的にはAI(人工知能)を使って、効率的にテキスト化することが期待されます。

<音を振動で伝えるデバイス>
携帯電話のマナーモード時は電話やメールの着信を振動で伝えてくれます。これを応用した聴覚障害者支援デバイスがあります。

Img_7627
図:Ontenna(オンテナ)

富士通が開発したオンテナは、音を体で感じることが出来るため、聴覚障害者のコミュニケーションを助けたり、音楽や音響による表現を伝えることが出来ます。写真にある白いデバイスを髪の毛や着ている服などに付けて、音を振動と光で感じとります。これまでに音楽やスポーツのイベントで実証実験を行なっており、聞こえない人でもこれまでにない体験が出来ることを証明しています。すでにろう学校に無償提供されており、新しい形の教育支援インターフェイスとしても期待されています。

現状では、大きな音全てに反応して振動が伝わりますが、テキスト変換アプリと同様に、必要のない振動もあると考えています。健聴者は脳の中で、重要な音とそうでない音を聞き分けて、必要な情報だけに反応をしています。それは音の大きさではなく、音色や音が発する意味と関連づけられています。オンテナも、音をAI(人工知能)を使って解析し、重要な音を選択して振動で伝えることが出来るようになれば、今以上に便利なデバイスとなるでしょう。

最後になりますが、7回にわたる「難聴シリーズ」をお読みいただきありがとうございました。「聞こえることがあたりまえの社会」から、「聞こえにくくても安心な社会」へと進歩するために、何をすれば良いのかを考えるきっかけになれば幸いです。技術を活用することも重要ですが、私たち一人一人の考え方を変えることが大切かもしれません。

 

 


メディア学部 吉岡 英樹

Img_6054

略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在のコンテンツビジネスイノベーション研究室は2020年度にて終了し、聴覚障害支援メディア研究室として新たなスタートを切る。

2019年11月24日 (日)

[シリーズ難聴-9]補聴器と人工内耳

2019年11月23日 (土) 投稿者: メディア社会コース

3回にわたって「手話」の演習についてお話してきました。実は、聴覚障害者の方の中で、手話を使う方というのはごく一部の方なのです。近年では技術の進歩もあり、多くの方は補聴器や人工内耳を装用して、聴覚も活用して生活をしています。では、補聴器と人工内耳には、どのような違いがあるのでしょうか。メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」の次のテーマは、補聴器と人工内耳についてです。

<補聴器>
補聴器は音を大きくする機器です。しかし、大きくなりすぎると逆に耳を悪くしてしまいます。そのため、「フィッティング」をして、周波数(音の高さ)ごとに個々の聴力に合った音量に調整します。聴力は常に変化するので、定期的に聴力検査と共に「フィッティング」をすることが重要となります。

Img_0729
図:補聴器の例

補聴器をする時は、イヤモールドと呼ばれるもので耳を完全に塞いで、耳の中に直接音を伝えます。イヤモールドが無いと音が漏れてしまい、それが耳にかけた補聴器のマイクに入るとハウリングをして「キーーーン」という音がしてしまいます。子どもの場合、耳の成長に合わせて数ヶ月ごとにイヤモールドも作り直す必要があります。

伝音難聴の多くは補聴器により聞こえを改善することが可能です。しかし、蝸牛に損傷がある感音難聴の場合などでは、補聴器の効果がないケースもあります。そこで開発が進んでいるのが次に紹介する人工内耳です。

<人工内耳>
人工内耳の仕組みは、①耳にかけた機器のマイクから音が入り、②サウンドプロセッサで音がデジタル処理され、③頭部にマグネットで装着するコイルまで音声信号が伝わり、④さらに頭部に埋め込まれたインプラントに送られ、⑤蝸牛に入れた電極から聴神経へと刺激が伝わります。

20191112-2300
図:人工内耳のサウンドプロセッサーとインプラント

先天性難聴児の場合、最初から聞こえるようにはなりませんが、数ヶ月たつと音が聞こえるようになり、その後発語も出来るようになり、療育を続けていけば数年で自然な発話が出来るようになる子どももいます。人工内耳をしてピアノを上手に弾く方もいます。

<補聴器や人工内耳の聞こえと情報保証>
補聴器や人工内耳をしたからといって、将来健聴者と全く同じように聞こえることはありません。これらを装用した方が「聞こえやすく」なるにすぎません。雑音下や複数で話をしている時には、特に聞き取りにくくなります。そのため、小学校の普通級に通う聴覚障害児の場合、先生に専用マイクを首から下げてもらい、ワイヤレス補聴援助システムにより声を直接補聴器や人工内耳に伝えます。また、なるべく板書をしたり、大きなディスプレイに視覚的に表示するなどといった情報保証が、学校における聴覚障害児への配慮として必要です。補聴器や人工内耳を装用した人が社会に出ていき、健聴者と共に生活をするケースが増えていくと考えられます。学校だけでなく、職場や公共施設においても、十分な情報保証をしていき、多様性のある社会を実現することが求められる時代となりました。

次回は、ICTを活用した聴覚障害者支援についてお伝えします。

 

 


メディア学部 吉岡 英樹

Img_6054

略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在のコンテンツビジネスイノベーション研究室は2020年度にて終了し、聴覚障害支援メディア研究室として新たなスタートを切る。

2019年11月23日 (土)

[シリーズ難聴-8]「手話」の演習(その3)

2019年11月22日 (金) 投稿者: メディア社会コース

前回は、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」で行っている手話講座の1日目についてご紹介しました。「あいさつ」「天候」「家族」といった、日常的によく使う言葉や言い回しを覚えました。今回は、手話講座の2日目についてお伝えします。「仕事」「趣味」自己紹介」についての手話を学び、最後にこれまで学んだ手話をいろいろ組み合わせて、より自然な会話を練習します。

最初に「仕事」についての手話を学びました。「会社員」という手話は、昔の証券取引に由来して、両手を頭の横で動かし、片手で「OK」と同じ形を作って胸に当ててバッジのようにして「員」を表します。今の学生が昔の証券取引をイメージするのは難しいかもしれませんが、このように由来している事柄が古いものは多々あります。「大学生」の手話は、アメリカの大学で卒業式にかぶる四角い帽子の角をイメージして、頭の近くで親指と人差し指を2回摘み「大学」を表現します。その後、親指と人差し指を上下に動かして、ランドセルの肩掛けを表現し「学生」を表現します。これらを組み合わせて「大学生」となります。ランドセルの表現の他にも、昔の「はかま」の紐を結ぶ様子で「学生」という表現もあります。これも、今の学生にはなかなかイメージするのが難しいですね。

次に「趣味」についての手話を学びました。「映画」「読書」「旅行」などの手話を覚えました。「旅行」は「SL機関車」のような仕草と「遊ぶ」の手話を組み合わせて「旅行」となります。これもまた「SL機関車」という古い乗り物が由来となっていますが、今であれば「飛行機」と「遊ぶ」を組み合わせて「飛行機で旅行に行った」と表す方が分かりやすいかも知れません。

最後に、「自己紹介」についての手話を学びました。手話では上の苗字を手話で表現し、下の名前を指文字で表します。例えば、「田中」は両手の中央3本の指を重ねて「田」という漢字を作り、次に片方の手の親指と人差し指で「コ」の字をつくり、もう片方の手の人差し指でそれを串刺しにして「中」という漢字を表します。「鈴木」は最初に「鈴」を鳴らす仕草をして「鈴」を表し、次に両手の親指と人差し指を広げて下から上に伸びている様子を表現して「木」を表現します。ちなみに、私の名前である「吉岡」は、鼻が伸びている仕草で「良い」を表し、「けいがまえ」を両手で描いて「岡」と表現します。自分の苗字がどんな手話なのか、一度調べてみると楽しいと思います。

さて、2回という短い演習で沢山の手話を覚えました。その前に学んだ指文字と合わせて、ペアになって手話コミュニケーションをよりスムーズに行う練習をしました。台本は図の通りです。

001_20191112164401

図:手話コミュニケーション練習の台本

最初は少し恥ずかしいので表現が小さくなっていましたが、最後には慣れて来た様子で、口話と同じように気持ちを込めて手話を表現することが出来るようになってきました。棒読みだと気持ちが伝わらないのと同じで、手話で伝える時は表情や体の動きも重要な要素となります。

さて、いよいよ発表です。まず全員耳栓をして、ほとんど聞こえない状態にします。やはり聞こえてしまうと、反射的に声を出して音声に頼ってしまうからです。見ている人も、聞こえないことで、発表者の手話に集中することが出来ます。発表後の学生の感想として、「手話はとても難しかった」「手話が通じた時は嬉しかった」「少しだけろう者の気持ちが分かったと思う」「話についていけなくなって困った」などがありました。コミュニケーションの難しさを実感することで、聞こえることを前提とした私たちの社会において、聴覚障害者の方々がどんなことで困るのかを想像することに繋がると期待しています。

次回は、補聴器と人工内耳についてお伝えします。

 

 


メディア学部 吉岡 英樹

Img_6054

略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在のコンテンツビジネスイノベーション研究室は2020年度にて終了し、聴覚障害支援メディア研究室として新たなスタートを切る。

2019年11月22日 (金)

[シリーズ難聴-7]「手話」の演習(その2)

2019年11月21日 (木) 投稿者: メディア社会コース

前回は手話の歴史についてお話しました。聴覚障害者が虐げられていた過去や、手話が言語として認められていなかったことを初めて知った方もいいのではないでしょうか。今ではテレビなどで手話通訳者の方を見ることも多くなりましたので、手話を見る機会も多くなってきたのではないでしょうか。英語を学ぶのと同様、手話も新しい言語として学ぶことになります。手話が使えるようになると、ろう者の方など話ができる人が増えるのです。少し知っているだけでも、街中で困っている方を助けることが出来るかもしれません。

メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」では、同時手話通訳士による手話講座のDVDを見ながら、手話を学びます。今回は手話講座の1日目についてお伝えします。

Img_7809
図:手話を練習している学生の様子

まず最初に「あいさつ」です。コミュニケーションの基本ですね。「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」を覚えます。実は、「おはよう」という手話は「朝」と「あいさつ」という手話を組み合わせています。「こんにちは」は「昼」と「あいさつ」、「こんばんは」は「夜」と「あいさつ」です。次に、「初めまして。よろしくお願いします。」ですが、「はじめて」「良い」「お願い」を組み合わせることになります。このように、一つのフレーズを覚えると、いろいろな言葉を同時に覚えることにもなります。

次に「天候」です。「晴れ」「曇り」「雨」「雪」などを覚えます。では、「強い雨」はどのように表現するのでしょうか。「強い」と「雨」を組み合わせることも出来るのですが、「雨」という手話を少し大きな動作で、表情もつけることで「強い雨」を表現することができます。手話は手だけではなく、気持ちを込めた動作や表情が重要となります。音声言語を使う人が、言葉に気持ちを込めて強弱をつけたり、イントネーションを変えたりするのと同じです。手話も、相手に言いたいことが伝わるように、上手に"話す"ことが大切です。

最後は、「家族」です。 「私」「お父さん」「お母さん」「息子」「娘」などです。頬を人差し指ですっとなぞって「血の繋がり」を表し、「男」を表す親指を出して「お父さん」、小指だと「お母さん」となります。親指がお腹から出てくる様子を表して「息子」、小指なら「娘」となります。手話はそれぞれの表現に意味がありますから、それを同時に覚えれば習得するのが早くなります。

次回は手話講座の2日目についてお伝えします。

 


メディア学部 吉岡 英樹

Img_6054

略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在のコンテンツビジネスイノベーション研究室は2020年度にて終了し、聴覚障害支援メディア研究室として新たなスタートを切る。


 

2019年11月21日 (木)

より以前の記事一覧