授業紹介

【プロジェクト演習インテブロ】NHK交響楽団公演の収録

2024年7月 5日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

76日(土)横浜のみなとみらいホールで行われた、プロジェクト演習「インテブロ(intebro)」の公演収録に立ち会いました。これはNHK交響楽団の第129回オーチャード定期公演の模様を「インテブロ(intebro)」の学生さんたちが収録・編集する演習です。

NHK交響楽団は1942年に活動を始めてから82年の歴史をもつ日本を代表するオーケストラ。この日の指揮は秋山和慶さん(日本指揮者協会会長。83歳、若い!)、そしてピアノはアレクサンダー・ガジェヴさん(イタリア出身の29歳。2021年ショパン国際音楽コンクール第2位)。このすごい公演の収録を「インテブロ(intebro)」の学生さんたちがどのようにこなすのか。立ち会うだけでもドキドキしてしまいます。

当日、学生さんたちは朝早くから、大量の収録機材の搬入、カメラやケーブルなどの会場設置、そして収録コントロール卓の設営などに追われていました。公演開始が午後3時30分、その1時間前までにはスタンバイと収録チェックを終えなければならない。まさに「時間との競争」の作業です。以前の公演収録では、ギリギリまで追い込んだこともあったと聞きましたが、この日は大学院生や4年生の「収録経験者」もしっかりサポートして、午後2時には遅いお昼ご飯(弁当)を摂る余裕がありました。

この写真は公演直前の最終ミーティングの様子です。学生リーダーを中心に収録作業の確認が細かく行われています。私もテレビ局で何度も収録を経験してきましたが、真剣さと緊張感ではプロを上回っていた気がしました。

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そして午後3時30分収録開始。収録コントロール卓では、カメラの映像を選ぶ「スイッチャー」の学生さんの両隣に、「公演進行」と「台本進行」担当の学生さんが陣取ります。「台本進行」の学生さんは、あらかじめ作っておいた曲進行に合わせた「カメラ割り台本」を曲の進行に合わせて読み上げ、スイッチャーとカメラマンに指示します。そして「公演進行」の学生さんは、実際の楽譜とオーケストラの進行を確認し、スイッチャーに指示を与えます。この学生さんは楽譜が読めることはもちろん、今日の公演の曲を完全に暗記していました。

私が後ろで「ひええええ」と感心していると、4年生が「みんな、毎日の厳しい収録の練習で曲は覚えちゃってますよ」と涼しい顔。確かに、撮影している3人の「カメラマン」だって、曲を暗記していなかったら、映像の画角(サイズや動き)を変えることはできません。クラシック音楽の公演収録をしたことがない私は、淡々と収録作業を進めていく学生さんたちのシステマティックな動きに圧倒されていました。休憩で、近くを通られたN響の楽団員の皆さんも、興味深そうにご覧になっていました。

 収録後は「お疲れ様」を言う間もなく、すぐに撤収作業に入ります。重たい機材の運搬はもちろん、カメラ・ケーブルの撤収もテキパキと学生さんたちが中心になって進めます。テレビ局では分業が当たり前で、制作スタッフだった私は撤収作業を手伝おうとして技術スタッフから「事故ったら、誰が弁償するの!?」と怒鳴られた経験がありますが、お見事。「技術スタッフの華」といわれるケーブルの「八の字巻き」も上手にこなしていました(私はうまくできません)。

収録に携わった学生の皆さん、そしてご協力いただいたスタッフの皆さん、本当にお疲れ様でした。編集も頑張ってね。(メディア学部、山脇伸介)

2024年7月 5日 (金)

プロジェクト演習「アドバンストCGアニメーション制作」2023年度後期 学生作品の紹介

2024年6月14日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

皆さんこんにちは。メディア学部 特任講師の川島です。
今回は、私の担当する演習授業のうち、「アドバンストCGアニメーション制作」の学生作品を紹介します。
今週はこれまで、「インタラクティブ・ゲーム制作 グラフィックスコース シネマティクスチーム」「インタラクティブ・ゲーム制作 グラフィックスコース Unreal Engineチーム」の学生作品を紹介してきました。これらはゲーム業界におけるビジュアルアーティストやテクニカルアーティストになるための知識とスキルを学習するためのコースですが、今回紹介する「アドバンストCGアニメーション制作」は、テレビ番組や劇場映画のCGアニメーション制作に携わるためのスキルを学ぶコースです。1年次前期には初級クラスである「オリジナルCGアニメーション制作」で基礎を学んだうえで、さらに高度な技術を学びながら、よりレベルの高いアニメーション作品制作をチームで行います。CGを扱うという意味では共通するところもありますが、ゲームビジュアルとアニメーションではその先の応用技術が全く違いますので、両者は異なるコースとしてそれぞれ開講しています。
それでは、作品をどうぞ!


■ アーティファクト / アーキメイジエンターテインメント
凶悪な魔物がはびこる現代、主人公のアキは買い物帰りの地下駐車場にて銃を乱射する魔物に遭遇する。アーティファクトと呼ばれる不思議な道具や武器を使って立ち向かっていく現代風アクションファンタジー。主人公がなんとか敵に近づこうと苦戦し逃げ惑いながらも奮闘するアクションシーンに注目して見て欲しいです。

■ Daily Life / かぼちゃ
この作品は、家庭用ロボットが普及した時代に、
両親から誕生日プレゼントでもらった家庭用ロボットH3と共に、山奥で暮らしている、少女ヒナナが、共に昼食の準備をするという物語です。少しでも穏やかな、心温まる時間を提供したいという思いから、この作品を制作しました。2人の仲睦まじい姿を優しく見守っていただけたら嬉しいです。

■ おまえのせいだ!! / K+α
気ままに旅をしている人外(サミュエル)と人間(ロシュ)の2人。ある日、2人は日銭稼ぎのためドラゴンの卵を採取するクエストを受けた。卵を無事に採取し、帰路についた2人だが、ふとしたことから卵の押し付け合いがはじまる。
魔法が当たり前にある世界観とテンポの良い掛け合いをお楽しみください。

■ フライドシップ / BlueWater
おなかをすかせた海賊たちが船の上で釣りをしていると、船員の一人が釣り竿に引き込まれて海に落ちてしまう。ロープで引き揚げてもらい助かったと思いきや近くに謎の影が…!?突如衝撃音が鳴り響き海からクラーケンが現れる!
海賊たちはクラーケンを倒そうと立ち向かうも全く歯が立たずクラーケンにめちゃくちゃにされてしまう。このままやられてしまうのか?!
海賊たちのドタバタコメディをお楽しみください。

2024年6月14日 (金)

プロジェクト演習「インタラクティブ・ゲーム制作 グラフィックスコース Unreal Engineチーム」2023年度後期 学生作品の紹介

2024年6月12日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

皆さんこんにちは。メディア学部 特任講師の川島です。
この記事では、私の担当する演習授業のうち、「インタラクティブ・ゲーム制作 グラフィックスコース Unreal Engineチーム」の学生作品を紹介します。
この授業は、先日ご紹介した「インタラクティブ・ゲーム制作 グラフィックスコース シネマティクスチーム」で基礎を学んだ学生が次にチャレンジする、中級者向けの演習授業です。本演習では、PlayStation™やNintendo Switch™の大型ゲームタイトル開発でも活用されているプロフェッショナル向けツールであるUnreal Engineを使った高度なゲームビジュアル表現技術について学ぶことができます。後期は、ゲームビジュアル表現について学び始めて3期目の2年生と、5期目で最後のチーム制作を行う3年生がそれぞれのクラスで学んだことを活かしてグループワークに取り組みました。今回はブログ記事ということで動画を掲載していますが、すべての作品はゲームとして実際にプレイすることができます!
それでは、作品をどうぞ!
■ Blessing of Death / かぼちゃホイホイ
魔法が存在する枯れ果てた世界。あらゆる資源が枯渇し、人類は間もなく絶滅の時を迎えようとしている。生物が延命するために残された手段は他の生命体からエネルギーを抽出し、自らの糧にすることだけ。弱者は淘汰され続け、強者のみが命を繋ぎとめる。次第に惑星上の生物は次々とその数を減らし、終末までの刻限は迫りつつあった。

■ Яook / ぷるぷるミルフィーユ
ーー宝石に蝕まれたスチームパンクの世界。整備士の少女は、機械の暴走を止めるため塔の街へ。高い塔を中心に栄えた鉱山の都市は、過剰な宝石エネルギーで暴走した機械に溢れ廃墟と化していた。自前の二丁拳銃で、機械蜥蜴を蝕む宝石を撃ち砕いていく主人公。すると、突然 街のシンボルである塔が動き出し、主人公を目掛けて攻撃を始めた。二丁拳銃で機械蜥蜴を倒しエネルギーを溜め、バズーカで塔を倒せ!

■ Droid's Without Fairness / おいしいたけ
SFというジャンルは人々を架空の世界へと魅了させたジャンルの一つです。我々は魅了されたチームです。この作品はアゴンという主人公が単独で乗り込んで敵を一掃するのですが、その道中いろいろなSFシーンに出会うでしょう。そのようなワクワク感を楽しんでくれたら幸いです。

■ Fleek Beat / Plenty
舞台はネオンがきらめいている夜の街。そこではビーツと呼ばれる、音楽が持つ人の感情を揺さぶる力を強化させる機械が流通している。人々はビーツを使用して日々元気に楽しく生活している。街では日夜ライブが開催されていたが、突然何者かに乗っ取られてしまう。今まで楽しい音楽が鳴り、人々も心躍らせながら生活していたが、突如鳴り響いた悲しみ・絶望の音楽に心を飲み込まれてしまう。異変を素早く察知し、主人公は事態を収拾するためにステージへと向かう。

■ 風とフィオの螺旋 / アーク
水都の王からの伝令により「瓦礫王ドミニアーム」と「ゴミィ」が街に出現し、町を汚染していることを知った主人公「風使いのフィオ」。苦しめられている人々を救うためフィオは水都ゼノヴィアに降り立つ。風でモノを吸い込む聖風武装「ウィンドキャッチャー」を駆使してギミックや瓦礫、さらにはゴミィ達を攻略し、瓦礫王ドミニアームを打倒するファンタジー3DアクションアドベンチャーRPG

2024年6月12日 (水)

プロジェクト演習「インタラクティブ・ゲーム制作 グラフィックスコース シネマティクスチーム」2023年度後期 学生作品の紹介

2024年6月10日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

皆さんこんにちは。メディア学部 特任講師の川島です。
この記事では、私の担当する演習授業のうち、「インタラクティブ・ゲーム制作 グラフィックスコース シネマティクスチーム」の学生作品を紹介します。
 メディア学部のプロジェクト演習では、ゲームクリエイターを目指す学生が実践的に学ぶことができる「インタラクティブ・ゲーム制作プロジェクト」として複数のコースを開講しています。本科目では、「グラフィクスコース」という名称どおり、ゲーム業界におけるビジュアルアーティストやテクニカルアーティストになるための知識とスキルを学習することができます。クリエイター職は新卒でも即戦力を求められる場合が多いため、在学生は4年間かけて初歩から応用までをしっかり学びます。このプロジェクト演習では、ほとんどの学生は1年生の後期から約3年間をかけ、グループワークによる作品制作を通じてゲームのグラフィクスを実際に制作するテクニックを磨いています。今回紹介するのは、そのうちの「シネマティクスチーム」という初級者の皆さんが1学期間かけて作ったショートアニメーションです。まだ未熟な部分もありますが、これを繰り返していくことで見違えるようにレベルアップしていきますので、今後が楽しみです!
それでは、作品をどうぞ!
■ ハイシン / Project:試練
 配信という現代的な要素と廊下という日常にある風景から非日常に急に突き落とされる恐怖を堪能していただければ幸いです。

■ 空想獣の召喚者 / 空想現像所
 今回制作した【空想獣の召喚者】では、孤独な状況にある主人公が、初めて召喚した子と仲間になる場面を作りました。注目してもらいたい点は、光の調整による状況描写や、主人公と召喚獣にお揃いのブローチがついていることです。皆さまには、仲間が出来た時の温かみを感じたり思い出したりして欲しいです!

死合 / 大和魂
ある権力者の悪事を知り、その下から去った浪人。それを逃すまいと権力者は刺客として忍者を差し向ける。闇討ち、騙し討ちを厭わない相手に浪人は勝てるのだろうか...
この作品は、我々が一学期を通して学んできたことを用いた、和風アクションアニメーションです。最も注目していただきたい部分は、正統派の剣士である浪人と、暗殺を得意とする忍者の搦め手というバトルアクションシーンです。

君の祈りの雨 / NieR Graphics
 世界を蝕む雨によって沈んだ都市、悲しみに沈んだ時雨、それを食い止めんとする日葵の二人の想いが、激しくぶつかる。
 海に沈んだ廃墟都市を舞台にした、異なる思想を胸に対峙した二人による戦闘シーンをイメージして制作しました。良くできたと思う部分は、海に沈んだ廃墟群と、日葵の剣で煙を切り払う部分です。カット数がそれなりに多かったにも関わらず、チームのみんなにはとても頑張ってもらったと思います。

命の樹 ユグドラシル / ユグドラシル
テーマ「強い想いと輪廻の再会」
10年前、エルフの少女は大切な人を亡くしてしまった。
長い時を生きながらも、初めて直面する別れ。
悲壮にくれた彼女は、もう一度彼の人会うために、命が輪廻する場所として世界に語り継がれてきた一つの伝説を目指して旅をする。

2024年6月10日 (月)

点群データの問題と見せかけて透視投影の問題(続き)

2024年5月31日 (金) 投稿者: メディア技術コース

 前回記事の続きです。
 
 実世界を計測してxyz座標を得た点群データに対し、これを直接CG画像として描画する研究事例を授業で紹介しました。
 
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 この画像を見ると描画時の視点に近い方は点群がまばらに分布しています。一方遠くの方は密に分布し、画面上で一定サイズに設定した円盤状の点はすき間なく描画されています。なぜそのように見えてしまうのか、という問題でした。
 
 レーザーを照射した計測点の位置に対して、描画時の仮想視点が前方にありその視野角が計測時の視野角より大きいから、というのがその答えです。これを図示して考えてみます。
 
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 左の図のうち、白く描いたのはレーザー計測時のレーザー光線です。一定範囲の視野角の中で多数のレーザー光を照射しますがここでは6本だけ模式的に示しています。赤く描いたのは描画時に設定したカメラ(視点)位置から視界が拡がる様子です。長短の水平線は視界を区切るために設定する必要のあるクリッピング面です。
 
 右の図は描画時にシステムが実行する投影変換(透視投影)の結果です。ちょうど左図の視界の台形(逆台形)部分が正方形になるような空間の変換が行われます(もちろん実際には3次元空間でのことで、台形は四錐台に、正方形は立方体になります)。左の赤い線は「カメラ座標系」での視界で、右の赤い四角は「正規化デバイス座標系」(あるいはクリッピング座標系)での視界です。
 
 正規化デバイス座標系の図に付記した小さな矢印は視点からの視線の向きです。視点に近い方ではレーザー光線の間隔が大きく、遠い方ではその間隔が小さいことがわかります。
 
 各点群は必ずどれか1本のレーザー光線上の1点に位置します。視点からの距離によってレーザー光線の分布間隔が狭くなっていくことが、近くの点群はまばらに見え遠くの点群が密に見える理由です。
 
 点群の性質に関する問題のように見えて実は透視投影を理解しているかを判定することができる問題です。研究としての意味は薄いですが、3次元CG技術の教育上はたいへん興味深い問題と言えます。
 
メディア学部 柿本正憲

2024年5月31日 (金)

点群データの問題と見せかけて透視投影の問題

2024年5月29日 (水) 投稿者: メディア技術コース

 メディア学部3年次前期の専門科目「3次元コンピュータグラフィックス論」では毎週の授業で事前に履修生から質問を募り、授業時間ではその回答に時間を割いています。その質問の中で面白いトピックがあったので紹介します。
 
 その日の授業テーマは「モデリングシステム」です。その中で実物を直接計測してCGモデルを作成する技術をいくつか紹介しました。計測した点群情報を直接CG表示する事例として、メディア学部の演習講師でもある渡邉賢悟先生の研究を紹介しました。以下はそのスライドです。
 
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 これに対して次のような質問がありました。
 
『画像を見ると、端の方が中心に比べて点群の間隔が広くなっているように見えるのですが、レーザー計測には近い距離ほど計測しづらいという特徴があるのでしょうか?』
 
 私の回答は以下の通りです。
 
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 いいえ。
 
 計測点から一定間隔でレーザー照射向きの角度を変えながら計測します。むしろ遠くなるほど範囲が拡がり点群の間隔も広くなります。
 
 ではなぜ近い所がまばらになって見えるのか。ちょっと考えてみてください。
 
 これがわかった人は空間把握と分析の感覚が鋭いと思います。
 
 私も考え付くのに少し時間がかかりました。その理由はおそらく「計測した際のレーザー発生点よりも描画の際の視点がより前方にあり視野角も広いから」だと思います。描画時の視点に近い場所はより強く拡大され、結果的にまばらに見えてしまうのでしょう。
 
 授業中に板書で図示して説明します。
 
 この質問は、点群に関する知識や性質を問うというより、透視投影を理解しているかを問うクイズのようなものですね。興味深いです。
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 長くなりますのでこれの解説は次回とします。
 
メディア学部 柿本正憲

2024年5月29日 (水)

物語における「日常」という機能

2024年5月 3日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

こんにちは。メディア学部の兼松です。

私が担当しているプロジェクト演習「シナリオアナリシス」では、ストーリー分析の方法などを解説する座学パートがおわり、現在、受講生がそれぞれ選んだ作品の分析に取り掛かっているところです。

メディア学部では今年度の1年生から新カリキュラムになり、プロジェクト演習の履修可能数が変わりました。その影響か、もともと聴講生が多かったシナリオアナリシスもほとんどの学生が履修生になり、また受講人数自体もだいぶ増えました。しかも、今年の1年生は特に意欲的で、授業時間内に全員分のディスカッションがおわらないという、ある意味嬉しい悩みを抱えてる状況です。

さて、そんな1年生たちですが、物語を分析する際に苦戦しているポイントに共通点が見えてきました。それは物語に含まれる「日常」というフェイズ(物語に含まれる機能)についてです。

大抵の映画では、大小様々なストーリー、エピソードが複雑に絡み合っています。例えば刑事物の映画だったとしても、最初から最後までずっと事件の捜査をしているわけではなく、中には同僚との確執、ヒロインとの恋愛など、様々な要素が含まれています。これらの毛色の異なるエピソードを視聴者に見せる順番は、究極的には制作者側の自由です。しかし、無秩序に見せていっても、視聴者側は「一体どんな話なのか、何が起こっているのか」理解できません。そこで制作者側は、伝えたいテーマやストーリーを理解してもらえるように、エピソードを出す順番をよく考えて工夫しているのです。この工夫の一貫として、多くの映画では、まず最初に主人公の人物像、主人公を取り巻く環境、世界観などを伝える場面から始まります。私たちはこれを「日常」フェイズと呼んでいます。

ただ、この「日常」という言葉がなかなか厄介ですね。

私は最近時間の合間に、「ダンテズ・ピーク」という映画を見ました。1997年の映画なので今の大学生からしてみれば、だいぶ古い映画ですね。この映画は簡単に言えばパニックもので、火山の噴火という自然災害から様々なトラブルに見舞われながらもなんとか生き延びる、という内容が描かれています。ちなみに映画の途中に画面が激しく明滅する場面があるので、もしご覧になる際は注意してください。

この映画では、冒頭でいきなり火山の脅威から逃げ惑う人々が描かれます。主人公も火山の噴火によって飛んでくる岩から逃げ惑う姿が描かれますし、しかも主人公の恋人はこの飛んでくる岩の犠牲になって亡くなってしまいます。

平和に暮らしている我々の感覚からすれば、こんな地獄のような場面を「日常」とは感じられなくて当たり前です。

ですがこの映画では、こういった経験をしているからこそ、仲間に反対されながらも火山の危険が迫っている人々や街に貢献しようとする主人公の姿が描かれます。ですので、描かれている事象自体が我々の日常からかけ離れていたとしても、「視聴者に対して、まず主人公の人物像を説明する」という意味で、物語における「日常」の機能を果たしている場面だと考えられるのです。

こういったことは始めて物語を分析しようとする1年生にはなかなか難しいですね。シナリオアナリシスでは、学生の皆さんが好きな物語において、何が「日常」なのか、何が「異変」なのかなどをディスカッションできればいいなと思っています。興味がある方はぜひ受講してください。

2024年5月 3日 (金)

プロジェクト演習デジタルキャラクターメイキング(2024年度前期)

2024年5月 1日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部の兼松です。

今年度の授業も始まり、今は14回中2〜3回終えたところですね。
私が担当しているプロジェクト演習デジタルキャラクターメイキングもちょうど最初の座学パート、キャラクターを作るにあたって知っておいてほしい前提を学ぶ部分が終わったところです。

デジタルキャラクターメイキングは、簡単に言えばアニメやゲームなどに登場するキャラクターの作り方を学ぶ演習です。
しかし、「キャラクターの絵の描き方を教えてもらえる」ような授業ではありません。
アニメやゲームのキャラクターは、作品にこめられたテーマやストーリーを視聴者・ユーザーに伝える役割を担っています。したがって、外見以上に内面もしっかり作りこんでいかなければなりません。したがって、内面を中心に設計しつつ、内面に合わせて外見も考えていく、といった形になっています。

さて、私が担当しているプロジェクト演習はこのキャラクターメイキングと、シナリオアナリシスの2つがありますが、どちらも基本的には半期ごとに同じ演習を繰り返し開講する形をとっています。つまり、1年生からスタートして徐々にレベルアップしていくというよりは、どの学年のどの学期から始めても良いことを重視しているということです。
すでにどちらの演習も10年以上(私がまだ本学の学生だったころから)続いていますが、もともとアニメやゲームなどを制作する他のプロジェクト演習をメインでとりながら、シナリオやキャラも並行して学びたいという学生が多かったからです。
実際、私の演習では履修者よりも聴講者のほうが多い傾向で、多い時は受講生の8割が聴講でした。これはもともとプロジェクト演習は同時に1つしか履修登録できないという縛りがあったからですね。

しかし、今年度の1年生からは新カリキュラムが始まり、状況が少し変わってきました。
新カリキュラムについては、大学WEBサイトで紹介されていますので、そちらをご覧ください。
https://www.teu.ac.jp/gakubu/media/curriculum2024.html

プロジェクト演習に関するところだけ簡単に言えば、同時に2つ取れるようになったのですが、これによってデジタルキャラクターメイキングでは、例年よりもだいぶ受講生自体が増えました。それだけでなく、ほとんどの学生が履修登録をしたそうです。
もともと数人の履修生+残りは全部聴講生という状況が完全に逆転した形です。
もちろん、新入生が入ってくる前から、履修が増えるだろうなぁと予想して準備していたのですが、さすがに完全に逆転するとは思っておらず、ちょっとびっくりしました。

また、今年は今の段階から年度末のアニメジャパン出展を目指したいと言っている学生がいたのも、例年と少し違うところですね。
もともと私のプロジェクト演習は半年ごとに受講生が入れ替わることと、どちらのプロジェクト演習も文字情報を主体的に取り扱うことから、なかなかこう言ったイベント出展に落とし込むのが難しい面があります。ですが、せっかくですので良い形で出展できるように、これから学生と一緒に計画していきたいと思っています。
私のプロジェクト演習では、特に継続して受講している学生(半年だけでなく、何度も参加している学生)については、各期の最初に「今期はどういうチャレンジをしたいか」ということを相談しています。プロジェクト演習では、通常の授業と違って、こういった個別指導に近いようなカスタマイズも臨機応変にやりやすいのも魅力だと思っています。

2024年5月 1日 (水)

プロジェクションマッピングの撮影

2024年3月22日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさんこんにちは。コンテンツコースの椿です。

専門演習「プロジェクションマッピング基礎」では、プロジェクションマッピングの作品を作ります。作った作品は、動画と写真を撮影して提出してもらっていますが、撮影がうまくできないと時々言われます。

うまくいかない例は大きく2つに分けられ、1つは露出に問題がある場合です。写真が白飛びしていたり、全体的に暗すぎたりして、はっきり写っていないというものです。プロジェクションマッピングは、暗い背景と作品の明るい領域が混ざっているため、露出をオートで撮影するときれいに撮れないことがよくあります。これは、露出を自分で調整したり、作品の背景の暗さを変えると、改善することが多いです。

もう1つは、色が変わってしまう場合です。白いはずの部分に色がついて写っていたり、画面全体が緑がかったりするものです。これは、原因が2つあるようで、1つは色かぶりが起きているものです。色かぶりの場合は撮影後にPhotoshopなどで修正してもらうときれいになります。

しかし、色かぶりとは思えないほど色が大きく変わっている場合や、様々な色がついている場合もありあす。これはおそらく、プロジェクタが時分割で色を出していることが原因だと思っています。プロジェクタの光源から出た光は白く、カラーホイールを通すことで色をつけています。例えばRGB3色のカラーホイールが使われている場合、カラーホイールが高速で回転し、光が通る場所の色を変え、高速でRGBの映像が順に投射されます。RGBの切り替わりが非常に高速であるため、人が見ても切り替わりが分からず、色が混ざって見えます。しかし、カメラは、露出時間が短ければ短い瞬間の色だけを撮影するため、RGBの色が混ざらず、色が変わってしまうのです。これは、撮影を工夫しても解決しないことが多く、他のカメラで撮ってもらうようにしています。

2024年3月22日 (金)

2023年度後期「音楽創作論」での作曲(その3):作曲者によるピアノ演奏と楽曲解説

2024年3月 1日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の伊藤(謙)です。

本日は、前々回記事での「開始音と拍子の決定」、前回記事での「部分動機の作成」「動機の決定」を経て作曲されたピアノ曲をお聴きいただきましょう。

【演奏動画】『冬暁に咲く花』(2023年度「音楽創作論」制作曲)

最終回の授業では私の演奏で曲を披露し、曲を聴いた学生たちに曲名を考えてもらったところ131の曲名案が集まりました。一昨年の曲『雪月夜』、昨年の曲と『揺蕩う夜空』同様、今回も明け方といった情景をイメージしたタイトルが非常に多く(例年、そうした雰囲気の曲を作ろうとする意識はないのですが…)、の文字が入ったものもいくつか見られました。

今年も魅力的な曲名案が数多く寄せられて、選定は非常に難航しましたが、最終的に、K君が考えてくれた『冬暁に咲く花』を選びました。この曲名には、視覚[暁と花]と触覚[冬の寒さ]、聴覚[静まり返った周囲の様子]といったさまざまな感覚が盛り込まれているのが素敵ですね。私にはとても思いつかないタイトルです。ちなみに「冬暁」は「ふゆあかつき」と読み、「冬の寒い夜明け」を意味する言葉のようです。

さて、この曲の作曲についても少しお話ししましょう。

動画の楽譜では、音符のいくつかに色がついています。「Aさん考案の部分動機【B】水色その変型【B´】「M君考案の部分動機+N君考案の部分動機で作られた動機【A】その変型【A´】のフレーズであることを示します。

これらのフレーズを楽曲展開の軸にして、次のような4つのセクションで全体を構成しました。


 ・第1セクション[第 1 〜10小節]:【B】の反復が中心
 ・第2セクション[第11〜20小節]:前半は【B´】、後半は【B】を中心とした展開
 ・第3セクション[第21〜32小節]:前半は【A】+独自フレーズの反復が中心、
                    後半は【A´】【A】の組み合わせを導入
 ・第4セクション[第33〜39小節]:【B】を長調で展開し、最後に【A】を置く



作曲にあたって苦心した点は2つあります。

1点目は、雰囲気が大きく異なる【B】【A】のフレーズによるセクションをどのように組み合わせるかということです。2点目は、リズムも音型も複雑な【A】のフレーズへの和声付けです。

1点目については、【B】【A】の両方に共通して含まれる3連符を、曲全体を統一するリズムに設定し、それぞれのセクションの移行部分にも導入することで自然な繋がりを心掛けました。

2点目に関しては、さまざまな和声付けの試行錯誤を重ねて、音楽の方向性が明確になるようドミナントモーションのコード進行を適用しました。また、【B】シンプルなハーモニーに対し、【A】複雑なハーモニーを導入することで、サウンド(響き)のコントラストも意識しています。

なお、最後の音は曲頭の音と全く同じになっていて、ループして聴いてもスムーズに繋がると思います。

来年度の「音楽創作論」を履修する学生がどのようなフレーズを考えてくるか楽しみですし、それに私が触発されてどんな曲を作るのか今からワクワクしています。

それでは、またお会いしましょう。


(メディア学部 伊藤謙一郎)

2024年3月 1日 (金)

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