研究紹介

「Fun Theory」 の実践

2024年12月20日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

特任准教授の安原です。

昨年、拙ゼミで身近な社会における課題の解決手段として「The Fun Theory」を使った実験装置を開発し、卒業論文にまとめたゼミ生がいました。

彼が解決を目指した課題は「ゴミの分別の促進」です。現在、少なくない数のヒトがゴミの分別を面倒なことだと感じています。居住する地域にもよりますが、特にペットボトルのキャップと本体を分別してゴミ箱に捨てることは、あまり為されていない状況が見られました。

どうすればキャップを分別することを促進できるのだろうか?という課題に対し、キャップをコレクションのように集めさせる、というヒントから、集めたものを並べる、それが何かの表現手段になる、集めたキャップで絵を作る、という発想に至りました。キャップには様々な色があります。その色のキャップを並べることでゲームのドット絵のキャラクターを描く装置を設計し制作しました。

その装置にキャップを投入すると、そのキャップは色彩センサーで色を判別され、内部の小型ベルトコンベアによって、その色が必要な列に落とされ、絵を生成する仕組みです。とても単純な装置ですが、実際に制作すると数多くの難題にぶつかりました。内部が暗すぎて色識別センサーが判断できない、巻き取ったベルトにより軸径が変化してステッピングモーターの回転回数が当初の想定とズレてしまう、ベニア板が実験中にたわむため、板に取り付けたモーターの軸からベルトが外れるなどの様々な問題を根気よく一つずつ解決して装置を完成させました。
設計と実際の装置はこうも違うのかと、実践する意味の重要さを自分も改めて学びました。

完成した装置を大学の休憩室に運び込み、キャップの分別実験を行ったところ、装置のもの珍しさが勝ってしまったようで、実際にキャップを捨てるより、装置自体に感心して興味を持ってくれるヒトが集まっていた様に思います。

この実践の研究を行ったゼミ生はこの成果を卒業論文にまとめ、昨年の春に芸術科学フォーラムで無事に研究のポスター発表をして卒業して行きました。モノ作りの過程で得た多くの問題解決の教訓を実社会でも生かしてほしいと希望しています。
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2024年12月20日 (金)

「おもしろい・たのしい」を設計する

2024年12月18日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

特任准教授の安原です。

前回の記事で触れた、自分がリサーチをしている「インタラクティブコンテンツデザイン」というテーマは、ヒトとデジタルメディアとのより良いコミュニケーションを実現するための工学です。

ヒトとデジタル機器とのインターフェイスの設計やコミュニケーション手法の設計はとても広大な分野に及ぶ学際的な領域の研究です。

フォルクスワーゲン社が手掛けた「The Fun Theory」というヒトに楽しいと感じさせるインタラクティブな装置や仕掛けを用いて、ヒトの生活行動をそうとは意識させずに変えてしまう、という取り組みがあります。

上りのエスカレータばかりが混雑している地下鉄の出口階段に、ピアノの鍵盤を模したパネルボードを各段に敷き、ヒトが乗ったときに音が鳴るようにしたところ、多くのヒトが、エスカレータではなく、音が出る階段を楽しみながら上るようになった実例や、空き缶やゴミのポイ捨ての多い公園に、ゴミを投げ込むとヒューンと深くまでゴミが落下する音を出す仕掛けを加えた「底なしのゴミ箱」を設置したところ、その不思議なゴミ箱の音を聞いて確かめ、楽しむために、通りがかりのヒトがポイ捨てされた缶を拾ってそのゴミ箱に投げ込む「ゴミ捨て」が促進されて、公園がきれいになった実験などが有名です。

そのように、ヒトは行ったアクションに対してフィードバックを返されることで、過去の経験からこれが何であるのかという記憶を思い返します。

ピアノに似た階段だけどこんなに大きなピアノはない、ゴミ箱だけどそんなに深くはないはずだ、という自分の経験とのズレが、新しい体験をフックとして、ヒトの感情を揺さぶり、興味と楽しさ、そして学びが生じます。

これも、インタラクティブな装置だからこそ実現した、ヒトの生活に潤いを与えるインタラクティブコンテンツデザインの良い実践例だと思います。
 
ー安原

是非よろしければ「The Fun Theory」をネットで検索して動画ビデオを御覧ください。

 

 

2024年12月18日 (水)

「NICOGRAPH 2024」にてポスター賞を受賞しました

2024年12月16日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

特任准教授の安原です。

https://www.teu.ac.jp/information/2024.html?id=261

自分の主催する
InteractiveContentsDesignLabのゼミ生が「NICOGRAPH2024」にてポスター賞を受賞しました。

皆様からのたくさんのご支持を賜りましたことに感謝いたします。

受賞した「自動文字サイズ補正サイトのシステムに関する研究」は、スマートフォンの文字が老視などの原因で小さくて見にくい時、スマートフォンと顔との距離を自動検出して、顔を近づけた時にフォントサイズを大きく変化させて文字を読み易くする手法が従来から試みられていました。しかし、同時にヒトはよく見ようとして顔を近づけることが多く、せっかくのサイズ補正が不安定になる欠点がありました。

本研究は、ヒトは文字が見えにくい時、自然に目を細める「仕草」をすることを利用し、表情を計測してフォントサイズを補正するシステムを考案しアンドロイドフォンに実装しました。

ヒトは文字が読めると再び目の開き方を普通の状態に戻すので補正を止めます。

今後、従来の距離での補正システムとの様々な比較を行いながら発案したシステムを検証し、卒業論文にまとめます。

ヒトのふるまいをそのままにメディアとの良い関係をデザインするという拙Labにふさわしい研究で、栄えあるNICOGRAPHの「ポスター賞」を頂けたことがとてもうれしいです。これを励みにさらにヒトの生活に潤いを与えるインタラクティブコンテンツの研究に取り組んでいきます。

ー安原

 

 

2024年12月16日 (月)

先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」(その3)

2024年11月 8日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

本シリーズの最後となる3回目は、受講生の研究をご紹介します。

これまで本ブログで紹介した先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」 での取り組みは、その2のような機材体験でした。下記の過去記事もご興味がありましたら、ぜひご覧ください。

 ■先端メディア学/ゼミナール(ミュージック・アナリシス&クリエイション)で「打ち込み」に打ち込みました[2019.12.21]
 ■授業紹介:1980年代のハードシーケンサーへのデータ入力[準備編][2021.11.30]
 ■授業紹介:1980年代のハードシーケンサーへのデータ入力[実践編][2021.12.04]


その1に書きましたが、先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」の受講生は2017年度前期の開講から2024年度前期までで32名を数えます。授業名の通り「楽曲分析」「音楽制作」を行う学生が多く、今年度前期の受講生は以下のようなテーマでした。
(★のテーマの学生は現在、私の研究室に所属して新たな研究テーマに取り組んでいます)

 ★ボーカロイド楽曲「まにまに」は何故ヒットしたのか(3年生)
 ★ドラマ内における音楽とセリフの関係の分析:
  ①ドラマ『アンサング・シンデレラ』 ②ドラマ『silent』(3年生)
 ★木管五重奏への編曲:
  Valkyrie「Le temps des fleurs」【「あんさんぶるスターズ!!」より】(3年生)
 ■ヨルシカの楽曲分析とそれに基づく楽曲制作:
  ①「思想犯」【アルバム『盗作』より】 ②「嘘月」【EP『創作』より】(3年生)
 ■「オープンコードを用いたギター演奏において、コードトーンの高音域に
  一貫した押弦箇所が存在するコード進行」の歴史的変遷の調査(2年生)


そして、この後期に受講している3名の学生はいずれも、これまでとは一味違ったユニークなテーマを掲げています。現在取り組んでいる研究について学生たちにコメントしてもらいましたのでご紹介しましょう。


【Aさん】(2年生)

私は「病みカルチャーと音楽の関連性」について研究を行っています。

現在、Z世代の若者を中心に「病みカルチャー」が流行しています。これは、メンタルの不調や自己肯定感の低さをあえて表出させたサブカルチャーであり、ファンションやSNS上でのコミュニティなど様々な場面で波及しています。有名な例では「地雷系ファッション」「トー横界隈」が挙げられるでしょう。

病みカルチャーは音楽とも大きな関わりがあります。そして、これらの音楽には、カルチャー独自の特徴があるのではないかと私は考えました。

そこで、病みカルチャー内で流行している楽曲を調査し、これらの共通点の考察に取り組んでいます。このカルチャーは現在進行形で発展しているため、文献調査はもちろん、SNSを活用した情報収集も欠かせません。

今後の最終発表では、病みカルチャーに関連する音楽の特徴について結論づけ、音楽という視点から、若者のサブカルチャーが今後どのように発展していくのか考察したいと考えています。

日本の新しいサブカルチャーを深掘りする、意義のある研究にできるよう努めたいと思います。

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【Tさん】(1年生)

私は、自分自身がバレエを習っていた経験から「バレエ音楽と振付の関係性」についての研究に取り組んでいます。

バレエを完成させるには音楽と踊りの調和をとることが非常に重要です。そこで、音楽を体で表現するにはどのようなことが大切なのか、バレエ音楽の楽譜の解析や使用されている楽器の調査、また、振付に組み込まれている「パ」(ステップ)の種類や意味を考え、それらを照らし合わせて分析を行います。

今回は「『コッペリア』第1幕よりスワニルダのバリエーション」を研究対象としています。

この研究を通して、踊りと音楽の調和のとり方を考え、振り付けに込められた意味を理解することで表現力の向上につなげると共に、自分自身も楽しく、より美しく踊ることができると考えています。

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【Mさん】(1年生)

私は今回、SQUARE ENIXが手掛けたゲーム『NieR:Automata』のフィールドBGMである『遊園施設』の楽曲分析を行っています。このタイトルは大学でゲームサウンドを学びたいと思ったきっかけでもあり、毎日四苦八苦しつつ楽しく分析しています。

調査としては、インタビュー記事や感想記事などを読んで、制作面での楽曲意図を考察しました。現在はAIによるアプリケーションを使用して音源分離し、自身でスコアに起こして曲構成を分析するなど、様々な側面からの調査を行っています。

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当講義を共に受講する仲間たちや先生からの質問やアドバイスも研究の良き刺激となっています。これから、この楽曲がゲーム作品にどのような影響をもたらしているのか紐解いていくのが楽しみです。

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今後、それぞれの研究がどのように展開していくか楽しみです。


(メディア学部:伊藤謙一郎)

2024年11月 8日 (金)

先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」(その2)

2024年11月 6日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」の紹介の第2回は「シンセサイザー体験」です。

皆さんは、シンセサイザー(synthesizer)を知っていますか? 実際に触れたことがなくても、名前を聞いたり実物を見たりしたことがある方は多いと思います。音楽制作や楽器演奏を趣味にしている方は、ソフトシンセサイザーやハードの機材を持っているかもしれませんね。

では、シンセサイザーの語源はご存知でしょうか?

これは英語のsynthesize(合成する)が元になっています。ですから、シンセサイザーは「音(音色)を電子的に合成して作る楽器」と言えるでしょう。

シンセサイザーの中には、ピアノや弦楽器、管楽器、もちろんシンセサイザーならではの電子的な音も含めて、あらかじめ用意(プリセット)されているものもあります。

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 楽器のカテゴリを選ぶダイヤル部分    カテゴリ内の多様な音色が選べます    プリセット型は外観が比較的シンプル

ですから、プリセットボタンやダイヤルを回せばすぐに「いろいろな音が出る楽器」と思われがちですが、本来は「ユーザーが自ら音を作る楽器」なのです。
(もちろん、プリセット機能のあるシンセサイザーも、プリセット音のエディットやゼロの状態から音の作成が可能です)

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 ツマミやスイッチを動かして音作り   VCFの設定で音色が大きく変化します    作った音を記憶して呼び出せます

こうしたシンセサイザーの原点に立ち返り、先週の授業では学生たちがアナログシンセサイザーでの音作りを体験しました。

どの学生もアナログシンセサイザーに触れるのは初めてということで、まず最初に音作りの基本原理(VCO, VCF, VCA)を説明しました。しかし、イメージした音を初心者が作るのは、やはり難しいので、製品マニュアルに掲載されているセッティングチャート(その音色を作るためのツマミの位置や配線方法を指示したイラスト)を見ながら音作りを行いました。

このセッティングチャートには、「トランペット」「ヴァイオリン」「オルガン」「ベース」「ハイハット」などの楽器音のほか、「サイレン」「嵐」「光線銃」「流れ星」といった音の作り方が書かれています。実際の「流れ星」に音はありませんが、セッティングチャート通りに作って聴いたところ、全員揃って「なるほど〜」と納得の声を上げました。
(昔のアニメのシーンで耳にするような効果音です。イメージできますか?)

今回使用したシンセサイザーは、コルグ「MS-20 mini」シーケンシャルサーキット「Prophet-5(ver.3.3)」ローランド「JUPITER-4」の3台です。いずれもたくさんのツマミやスイッチがあり、それらを動かすときの感触も新鮮だったようです。
(これら3台は、そっくりに作られたソフトウェアシンセサイザーもあります)

以下の写真はその時の様子です。(音をお聞かせできないのが残念です…)


【MS-20 mini】
(1978年に発売された「MS-20」の復刻版です。モノフォニックなので和音は出ません。本体右側に配置された端子どうしをパッチケーブルで接続すると、より複雑な音色を作成できます)

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セッティングチャートを見ながら音作り   パッチケーブルを繋いでいるところ     ちょっとした加減で音色が大きく変化


【Prophet-5(ver.3.3)】
(1978年から1984年にかけて製造され、ver.3.3はその最終型です。2020年からはver.4が販売されています。5音ポリフォニックで、ver.3.3は作成した音色の記憶数が40から120に拡張されています)

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黒のパネルと天然木を組み合わせた本体  機材の状態が悪く、この日はここで断念…


【Jupiter-4】
(1978年に発売された4音ポリフォニックで8つの音色を記憶できるシンセサイザーです。自動アルペジオ機能が搭載されています)

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 横一列に配置された扱い易いツマミ類    音色が大きく変わるVCFの数値を調整中   VCAで音の立ち上がりと持続を設定



最後に、学生たちの感想をご紹介します。


【Aさん】(2年生)
それぞれの機種によって音の特徴が大きく異なっていたことが興味深かったです。
例えば、管楽器を模した音作りをした際、どの機種も同じ音が出るわけではないのです。無限大の音が作り出せる一方で、機種によって音の「クセ」があるからこそ、シンセサイザーの音作りはより奥深いものになり、より音作りの可能性が広がるのではないかと思いました。


【Tさん】(1年生)
つまみの役割などを考えながらシンセサイザーをしっかり触ることは初めてでしたが、音源となるものによって音階がつかないものもあり、実際に考えながら触ってみることで新たな発見ができて非常に面白かったです。一つの音を作るにも多くの工夫がされていて音作りの奥深さを感じました。
さらに、この機械一つで無限の音色が出るということに魅力を感じました。Prophet-5、Jupiter-4はMS-20 miniとはまた違い、ケーブルがなく、つまみやスイッチだけで非常に多くの変化があって驚きました。今はパソコンを少しいじればどんな音色も作れますが、当時はつまみの微妙な違いで音色に変化をつけていたと考えると感慨深いです。


【Mさん】(1年生)
実際につまみを回したり、スライドさせることで音が変化するので、音を作っているという実感が得られました。つまみの特性を知ることで、音の可能性が無限に広がるのがとても興味深かったです。



この授業では、今後もさまざまな体験の場を設けていきます。


(メディア学部:伊藤謙一郎)

2024年11月 6日 (水)

先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」(その1)

2024年11月 4日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部の伊藤謙一郎です。

本日から3回にわたって、先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」についてご紹介します。

先端メディア学(1年次後期・2年次前期)は2016年に、先端メディアゼミナール(2年次後期・3年次前期)は2017年にスタートした少人数のゼミ形式の科目です。2024年度は、17名の教員がそれぞれ専門とする分野での研究指導や制作指導を行なっています。先端メディア学・ゼミナールの概要はこちらをご覧ください。

私は2017年度前期に先端メディア学を開講し、今年で8年目となりました。これまで32名が受講し、うち18名が私の卒業研究「ミュージック・アナリシス&クリエイション」に進んでいます。さらに大学院に進学して専門的な研究に取り組む学生も6名おり(現在1名在籍)、その中には1年次後期から3年次前期まで全て受講した学生もいます。音楽に特に強い興味をもつ学生が集まり、自身の研究テーマだけでなく音楽に関する話題について学生たちが自由にディスカッションする雰囲気が私自身とても好きですし、そうした中で学生から学ぶこともあってとても刺激的な時間です。

毎回の「学生の研究進捗報告」「音楽関連の映像資料視聴(または音楽鑑賞)」のほか、たまに「体験コーナー」なるものを設けることもあります。科目名の「先端」にとらわれず、最新の物事だけでなく、それらが歴史的にどのようなプロセスを経て現在に至ったかを実体験を通して考えることで、今日の音楽表現やテクノロジーを新たな視点で捉えることができるでしょう。

例えば「カセットテープ」。CDの出現によって姿を消しつつあったレコードが数年前に再び流行し、アーティストが新譜をサブスクやCDだけでなくレコードでもリリースしたことで話題となりましたが、最近はカセットテープでもリリースされるものもあります。10代、20代の若い皆さんは、「カセットテープ」という名前を聞いたことはあっても実際にその音を耳にしたことがある方は少ないのではないでしょうか。好きなアーティストのカセットテープを買ったとしても、それを聴くための機材や環境がないと難しいですよね。

ちなみに私の自宅ではカセットデッキが今でも現役で、中学から大学にかけてエアチェック(ラジオ番組などを生テープに録音することで、タイヤの空気圧のチェックではありません)したカセットテープが700本ほどあります。写真はその機材とカセットテープの一部です。
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私の研究室にもカセットデッキがあり、この機材はカセットテープブームが起こるより前に購入したものです。
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先日の第4回(10月17日)の授業では、この「カセットテープ」を取り上げ、カセットテープに録音された音を実際に学生たちに聴いてもらいました。聴いたのは、小林克也さんがDJを務める『渡辺貞夫 マイ・ディア・ライフ』というラジオ番組で、1985年1月5日(土)に放送された『最新ピットイン・ライヴ1』から「ランデヴー」という曲です。(※ライヴハウス「六本木ピットイン」は今から20年前の2004年7月に閉店しています)

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学生たちは一様に「すごく音が良い!」と驚いていました。演奏だけでなくライヴ会場全体の音も収録されていて、まるで会場の中にいるような臨場感を味わったようです(その音をブログでお伝えできないのが残念です)。生まれて初めてカセットテープを手にした学生もいて、このようなアナログなものから厚みのある豊かな響きがすることにびっくりしていました。渡辺貞夫さん(今年で御年91歳!)の温かなサックスの音色にも感動したようです。

上の写真を見ての通り、カセットのインデックスは「週間FM」というFM雑誌のもの、そしてエアチェック情報は全て手書きです(高校1年生のときの字)。こうしたカセットテープが今も700本近くあり、どれも思い出があって捨てられずにいます。
(最近、カセットテープが再び増えてきたので保管用の木製ラックを新たに入手しました)

次回は「シンセサイザー体験」をご紹介します。


(メディア学部:伊藤謙一郎)

2024年11月 4日 (月)

私、公、持続的成長

2024年11月 1日 (金) 投稿者: メディア社会コース

われわれは、私財をすべて自分の子孫に遺すべきか、その一部を恵まれない他者のために寄付すべきか。また、成果主義という言葉があるように、ある個人ないし組織が実現した経済的利益は、全てそれらに成果報酬として帰属すべきであろうか。一方、対照的に自己責任という言葉があるが、十分な報酬の得られない人は、全ての原因は自らの能力と努力不足のためなのであろうか。

これらのいささか社会的に不協和を惹起する問いは、何も規範的な観点から発したものではない。いずれの問いにも、下記のように私的な利益の追求と公益性の担保という、経済的な選択が関わっている。すなわち、現在(自分)と将来(子孫)、私(自分)と公(他者)との関係において生ずる選択問題である。

公的なインフラ、公的資本、社会的な諸制度等をなす社会的制度基盤は、私的な事業資本と異なり、経済成長を直接的に生み出すわけではない。加えて、その整備には、私的な事業資本に投下できるはずの希少資源の一部を犠牲にする。しかし、自由な経済活動は、自らの経済的営為だけで完結できず、一方、私的な事業資本は、社会的制度基盤の生み出す外部効果を通じて、より生産力を発揮しうる。

筆者は、長期的な経済成長計画において、社会的制度基盤の整備にどの程度投資すれば、マクロ経済的にどの程度の効果が得られるか、シミュレーションを行った。まず、数値解析した結果からは、初期段階で低水準の資本規模にある開発途上経済においても、ケインズ政策的な公共事業を展開することなく、市場による最適成長計画を超える社会的厚生水準に達することが可能である。加えて、有限希少な資源をより節約した長期的配分を実現する。

さらに、OECD加盟国の1995~2022にわたる時系列データから、加盟各国の固定資産がGDPを生み出す弾力性の推定と、社会的制度基盤に相当する諸変数の有効性について実証分析を行った。その結果、公的な社会秩序整備、経済的環境整備および研究開発に関する公的支援と、市場所得ベースのGini係数が、上記弾力性に対して5%以下で統計的に有意であった。Gini係数に関する結果は、可処分所得ベースではないことから、事後的な所得再分配政策よりも、企業活動と並行的に労働分配率を高水準に誘導する施策の方が有効であることを示している。

以上の数値計算、実証分析から私利私欲のみを追求すると自らの経済的利益を毀損することがわかるであろう。最後に、上記の固定資産・GDP弾力性の推定値を一部紹介しよう。欧米諸国の中では、米国0.85、英国0.84、ドイツ0.83、フィンランド0.89、スペイン0.89、イタリア0.62等である。この値はITを基盤とした産業構造を反映した経済全体の生産性と捉えて良い。わが国は0.4で推計の可能な32カ国中圧倒的な最下位であった。

(メディア学部 榊俊吾)

2024年11月 1日 (金)

2024年度学会報告/見通し

2024年10月30日 (水) 投稿者: メディア社会コース

今年度の学会は、現地参加が増加してきました。一方でオンライン併用も多く、参加者増加が期待されます。今年も以下のとおり多くの参加可能な学会が予定されています。しかし、本年度は残念ながら、現時点で当研究室の参加者はなく、12月に一人予定している段階です。地方会場は旅費/宿泊費の値上がりもあって予算上厳しいものの、今後の自発的な参加に期待しているところです。

ビジネス科学学会全国大会(明治大学6月29日→筆者参加、学生不参加)

日本地域政策学会第23回全国研究京都大会(龍谷大学7月6~7日→不参加)

情報コミュニケーション学会第11回社会コミュニケーション部会(敦賀市生涯学習センター8月25日→不参加)

情報文化学会関東支部会(東京経済大学国分寺キャンパス8月31日→不参加)

社会情報学会全国大会(香川短期大学9月14~15日→不参加)

情報文化学会全国大会(城西国際大学紀尾井町キャンパス10月26日→不参加)

ビジネス科学学会九州支部会(中村学園大12月7日→未定)

社会情報学会第一回中国四国支部会(島根大学12月14日→学生1名参加予定)

情報文化学会九州支部研究会(遠隔2025.2月11日→未定)

社会情報学会第二回中国四国支部会(香川短期大学2025.3→未定)

情報文化学会北海道支部研究会(北大2025.3予定→未定)

情報文化学会関東支部会(2025.3予定→未定)

第21回情報コミュニケーション学会全国大会(2025.3予定→未定)

(メディア学部 榊俊吾)

2024年10月30日 (水)

2024年度卒研の紹介

2024年10月28日 (月) 投稿者: メディア社会コース

本日10月28日より、30日、11月1日の3回を担当します。第1回の本日は「2024年度卒研の紹介」、8日は「2024年度学会報告/見通し」、10日は「私、公、持続的成長」です。

本日10月28日より、30日、11月1日の3回を担当します。第1回の本日は「2024年度卒研の紹介」、8日は「2024年度学会報告/見通し」、10日は「私、公、持続的成長」です。

 

2024年度卒研の紹介

2024年度卒研生の研究テーマを紹介しましょう。当卒研では、およそ社会/経済/ビジネスに関するものであれば、ほぼ制約なく、学生の最も興味のある対象をテーマに選択しています。本年も多彩なテーマが挙げられており楽しみです。

コーヒー業界の歴史と今後の展望

自動車産業の海外戦略に関する研究

映画産業に関する研究

わが国の自動車産業の現状と展望

ボウリング業界に関する研究

アイスクリーム業界の現状と展望

映画プレイスメントに関する研究

サッカー業界の現状と展望

例年、夏学期は就職活動に多忙な時期で、研究に時間を割くことが難しいこともあります。しかし、毎日30分、1時間のわずかな時間でも継続的に調査を行い、事項を引用とともに記録し、自分の仮説を追加し、時にそれまで収集した資料集同士の関係を整理していくと、自分の研究の方向性が見えてくる瞬間が訪れます。毎日の小さな努力が実を結ぶ、これが人文社会科学系学問の特徴であると思っています。夏休みも既に過ぎ、この間の努力の成果が見え始める時期です。10月も下旬に差しかかり、そろそろ着地点(結論と今後の展望)を見据えた、今後の取り組みに期待しています。

(メディア学部 榊俊吾)

2024年10月28日 (月)

前期の三上・栗原研の学会発表

2024年10月16日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の三上です.

三上・栗原研究室の学部学生は,2月から3月にかけての学会で発表することが多いですが,4月から9月にかけての前期も大学院生を中心に学会発表に行くケースが多くあります.今回はそのいくつかを紹介したいと思います.

(1)NICOGRAPH International 2024

芸術科学会が主催する国際会議で,海外での開催のほか国内の大学でも開催しています.国際会議ですので原稿も英語で執筆し,発表も英語で行うことになります.しっかりとした査読があり,不十分な内容では発表ができません.

今回は,「おとなり」といってもいい,東京都立大学の南大沢キャンパスで開催されました.大学院博士課程の谷村さんがポスター発表を行っていました.(わたしもVRのセッションのChairとして論文発表のオーガナイズをしました)
国内での開催ということもあり,国際会議初挑戦の学生も多く初々しい発表も多くありました.

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NICOGRAPH International2024

(2)情報処理学会Entertainment Computing 2024(EC2024)

情報処理学会が主催するエンタテインメントに関連する研究会のシンポジウムで,2023年は東京工科大学で開催しました.今年は北の大地「北海道」の北海道情報大学での開催となりました.この学会では,口頭発表のほかエンタテインメントにかかわるシステムなどを実際に体験できるデモ発表が多く実施されます.

三上研究室からは,川島先生とともに指導している横山さんがバンダイナムコスタジオとの共同研究において研究開発した内容を発表しました.また,デモ発表では学部学生の松浦さん,大学院の釣部さんに加え,助手の栗原先生もご自身の研究を発表しました.

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松浦さんの発表

ECでは,多様なエンタテインメント研究に際し,審査員のそれぞれの視点から推しの研究を推薦する「レコメンデモ」という制度があります.本年度は大学院生の釣部さんが「レコメンデモ」を受賞しました.

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レコメンデモを受賞した釣部さん

(3)日本デジタルゲーム学会夏季研究発表大会

日本デジタルゲーム学会が主催する夏の研究発表大会です.今年度から三上が学会の会長を務めております.東京工芸大学の中のキャンパスで開催され,三上研からは川島先生と共同で指導している大学院生小杉さんが,参画しているバンダイナムコスタジオとの共同研究の成果を口頭発表にて発表しました.また,インタラクティブなデモを行うインタラクティブ発表に大学院生の荒木さん,西村さんが発表を行いました.

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小杉さんの口頭発表

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西村さんのインタラクティブ発表

前期の学会発表は,大学院生の発表が多く,学部の学生の発表はこれから本格化します.ぜひ皆さん良い研究を進めてもらい,春にもまた多くの研究発表を報告できればと思います.

なお,その他の研究発表も含め下記にまとめます.

[1] Akifumi Tanimura, Suguru Matsuyoshi, Yoshihisa Kanematsu and Koji Mikami,Distribution of Setting Information Elements for Characters Introduction in Japanese Animation,NICOGRAPH International2024,2024.6
[2] 山地 阿世流,伊藤 彰教,三上 浩司, 音源包囲型マルチマイクレコーディングを用いた立体音響表現の印象評価, 研究報告音楽情報科学(MUS), 2024-MUS-140(68), pp.1-4. 2024.6.
[3] 横山 雅来, 鈴木 雅幸, 菅野 昌人, 山口 翔平, 川島 基展, 三上 浩司:「ビデオゲームコンテンツに向けた現実の光を正確に再現したHDRIを用いるLookDev環境の構築法」, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2024論文集, pp. 79-85 (2024).
[4] 栗原 渉 , 三上 浩司: 水滴噴霧による松かさ鱗片の乾湿運動を用いた松かさ転倒駆動手法の基礎検討,エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2024論文集, pp. 424-426 (2024).
[5] 釣部 彩花 , 栗原 渉 , 兼松 祥央 , 松吉 俊 , 安原 広和 , 三上 浩司: トリガーの抵抗制御による投げ銭時のユーザ体験向上手法の提案,エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2024論文集,pp. 453-457(2024).
[6] 松浦 優 , 栗原 渉 , 兼松 祥央 , 三上 浩司: ビデオゲームにおいて炎の燃焼を表現する触覚デザインについての基礎検討,エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2024論文集,pp. 488-491(2024).
[7]荒木海斗,栗原渉,松吉俊,兼松祥央,安原広和,三上浩司:高難易度アクションゲームにおける プレイヤーに気づかれにくい 動的難易度調整手法,日本デジタルゲーム学会夏季研究発表大会,インタラクティブ発表,2024.9
[8]西村響,栗原渉,兼松祥央,松吉俊,安原広和,三上浩司:ポーカーゲームAIにおける表情による駆け引きの実装,日本デジタルゲーム学会夏季研究発表大会,インタラクティブ発表,2024.9
[9]小杉勇翔,鈴木雅幸,菅野昌人,山口翔平,川島基展,三上浩司:HDRIを用いた物理ベースレンダリングによる質感表現が設定しやすい環境の検討,日本デジタルゲーム学会夏季研究発表大会,口頭発表,2024.9

2024年10月16日 (水)

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