社会

身近にひそむ数学(7): 黄金比と自己相似

2021年8月15日 (日) 投稿者: メディア社会コース

シリーズ最終の今回は、黄金比と自己相似との関係に焦点を当てたいと思います。自己相似とは、全体と部分が、ある見方において同じであることをいいます。図形を扱うフラクタル(マンデルブロー集合、コッホ曲線、…)が自己相似の研究分野として有名ですが、統計や数式などにも自己相似の概念は存在します。

さて、第4回の話の最後の方に、対数螺旋(黄金螺旋を含む)という用語が出てきました。対数螺旋は下の図のようなイメージのもので、以前お話ししたオウムガイやヒマワリに現れる螺旋形状の近似モデルです。動物や植物以外にも、台風や鳴門海峡の渦潮などの自然現象の近似モデルにもなりえます。ただ、自然現象は気流や海流の影響を受けるので、その近似精度は一定にはなりません。

Log_spiral_mathematica

ちなみに、この対数螺旋は、極座標系において次のような方程式で表されます。上の螺旋図は、a=10b=0.2に設定したときのものです。

Log_spiral_equation

この対数螺旋の性質の一つとして、自己相似性があります。これは、任意のα、β(α<β)に対して、小さい螺旋(―∞<θ<α)は、それを適当に回転拡大することで大きい螺旋(―∞<θ<β)に重ねることができるというものです。オウムガイの例で言えば、貝殻の成長(渦模様の拡張)が、生まれてから死ぬまで一定のパターンで変わらないということです。この自己相似に繋がるパターンを、ほぼ黄金比が定めています。

さて次に、黄金比を自己相似の数式で表すことを考えましょう。皆さんは、連分数という概念をご存じでしょうか? 連分数とは、q 0を整数、q n(n=1,2,3,…)を自然数として、下の左のような式で表される分数のことです(※ 正確にはこの形式は正則連分数といいます)。連分数には有限のものと無限のものとがあります。永遠に右下に延び続けるものが無限の連分数です。

Continued_fraction_gr

さて、ここで、上の右の式のように、すべてのq i(i=0,1,2,3,…)を1に設定した無限の連分数をΦとおきます。どうです … このΦはシンプルでどこか美しく、自己相似性を感じませんか?

ここで、Φの最初の“1+”のあとの大きな連分数の塊を見てください。この分母に着目すると、Φそのものですね。つまり、

Gr_eq

が成り立つということになります。この2次方程式を以前の回で見た記憶はありませんか? 変数の文字は異なりますが、第2回に出てきました。そう、この方程式の解は黄金比の1.618…です。

実は、Φという記号を今回まで取っておいたのですが、Φはπやeと同様に数学定数として定着しています。身近に存在する黄金比のことですので、是非とも覚えていただければと思います。

折角ですので、同様の有限の連分数を数列{f n}として見てみましょう。

Fibonacci8

f 4あたりで法則は見えてきたと思いますので、f 5以降の詳細な計算は省略しています。

フィボナッチ数らしきものが多々見えてきましたね。実際、ここで定めている数列{f n}とフィボナッチ数列{F n}との関係は、

Fibonacci9

となっています。この数列の逆数の数列{1/f n}の極限値は、以前見たように黄金比Φです。これで先の2次方程式との繋がりが認められました。

なお、Φは無限多重平方根で、次のようにも表現できます。この数式にも自己相似性が感じられますね。

Continued_squared_root

自然や芸術、数学など、様々な世界で“美”を魅せる黄金比は神秘的です。皆さんが美しいと感じるとき、そこにはもしかしたら黄金比やフィボナッチ数列がひそんでいるのかもしれません。

文責: メディア学部  松永 信介
2021.08.15

2021年8月15日 (日)

身近にひそむ数学(6): フィボナッチ数列による幾何トリック

2021年8月14日 (土) 投稿者: メディア社会コース

今回は、図形を用いた騙しのお話をしたいと思います。騙しとは言っても、健全な遊びのトリックですのでご心配なく! 途中からフィボナッチ数列が顔を出します。

下の図を見てみましょう。左右に正方形と長方形が並んでいますが、左側の正方形をガイド線に沿って4つに分割し、それをジグソーパズルのように組み替えて右側の長方形ができています。なお、ガイド線の作成のために用意した小さなマスは1辺が1の正方形です。

Carol1

さて、綺麗にパズルが整いましたが、それぞれの面積を考えましょう。左側の正方形は、8×864です。一方、長方形の方は、5×1365です。??? 何が起きているのでしょう?

実は、右側の長方形は正方形の4つのパズルピースで構成されているのですが、微妙に隙間があり、それが見えてないのです。ここで、正方形およびその4つのピースの水平方向と鉛直方向の辺の長さを確認しましょう。使われているのは358で、フィボナッチ数列の第4項、第5項、第6項です。また、長方形の方には、新たに13が登場しますが、これはフィボナッチ数列の第7項です。実は、これらのフィボナッチ数が、巧みにいたずらをしていたのです。

では、何が起きているのかを、まずイメージ図で確認しましょう。小さなマス目は省略していますが。元の正方形と正しくピースをあてはめた長方形は下の図のようになります。わかりやすいようにかなり誇張していますが、長方形の方には微妙な隙間(グレーの部分)ができています。この隙間は平行四辺形で、その面積は1です。これが、先の6465の差に繋がっています。

Carol2_20210814122101

このパラドックスとも言える幾何トリックは、あの有名な『不思議の国のアリス』を著したルイス・キャロルが考えたとされています。作家のイメージが強いルイス・キャロルですが、彼は多才な人物であり、数学や論理学にも精通していました。このパズルからも、その片鱗が窺えますね。

さて、{3, 5, 8}(={F4, F5, F6})は確かにフィボナッチ数ですが、それはたままではないのかと思うかもしれません。しかし、これは必然で、{8, 13, 21}(={F6, F7, F8})でも、{21, 34, 55}(={F8, F9, F10})でも通用するトリックです。ただし、連続する3項であれば何でもいいというわけではありません。{F5, F6, F7}や{F7, F8, F9}などではうまくいきません。実は、偶数の項から始まる連続3項の組のときのみ、このトリックが機能します。では、その裏付けは何なのでしょうか?

フィボナッチ数列の性質の1つに、

Fibonacci7

というものがあります。これは、高校で習う数学的帰納法で証明できますが、ここでは割愛します。注意したいのは、nが奇数か偶数かで、右辺が-1か+1で異なるという点です。さて、いま、この式を後で使いやすいように、正方形の方で使う連続3項が{Fn-2, Fn-1, Fn}(n4以上の偶数)であるとします。偶数項から始まる連続3項ですね。このとき、正方形の面積はFn^2(Fn2乗)であり、隙間を含んだ疑似長方形の面積はFn-1Fn+1 です。ここで、nは偶数ですので、上の式よりFn^2=Fn-1Fn+11となり、隙間部分の面積が1であることがわかります。

最後の数式による説明は少しややこしかったかもしれませんが、先に図でイメージを描いてもらいましたので、それとなく理解できたのではないかと思います。なお、先ほど説明しましたように、偶数項から始まる連続3項を使えば、この幾何トリックは機能します。しかし、隙間の面積は1で一定です。したがって、例えば{F2020, F2021, F2022}の組でもこのトリックは成り立つのですが、隙間は相対的に小さく目視できないことでしょう。あとの種明かしが大変になります…。

文責: メディア学部  松永 信介
2021.08.14

2021年8月14日 (土)

身近にひそむ数学(5): フィボナッチ数列を体験して理解する?

2021年8月13日 (金) 投稿者: メディア社会コース

これまで4回に渡り、黄金比やフィボナッチ数列などについ話をしてきました。ここからの3回は、これらに関連するよもやま話をしたいと思います。今回の話はそれほど固い内容ではありません。数式も出てきませんので、ブレーク(小休憩)にちょうどよいでしょう。

さて、電車に乗るのに急いでいて、駅の階段を大股で1段飛ばし(2段で1歩)で上った経験はありませんか? ただ、階段が長いと、体力的にもたずに途中で1段になったりしますよね。

Stairs

その日の急ぎの度合いや体力によって、その上り方は違うことでしょう。例えば、20段の階段に対して、

2段・2段・2段・2段・2段・2段・1段・2段・2段・2段・1段”

という日もあれば、

2段・2段・2段・2段・2段・1段・1段・2段・1段・2段・1段・1段・1段”

という日もあるでしょう。では、毎日異なる上り方をするとした場合、何日必要でしょう? これは、数学的には「20を、12のみの和で表現するときにできる式の場合の数を求める」という問題になります。この問題はそれほど難しくはなく、高校1年で習う順列と組合せの概念だけで十分に解けます。

元の20段の階段の問題に話を戻しますが、駅で実践するのはやめておいた方がよいでしょう。というのも、問題の答えは10946日で、約30年かかるからです。先ほど数学の問題に置き換えましたが、それであれば机上計算で10分もあれば解けると思います。トライしてみてください。

ここで、短い階段階段で考えてみましょう。1段の階段(?)では、1段1歩しかないので1通りです。2段の階段の場合、“1段ずつ2歩”か“2段1歩”の2通りです。3段の階段の場合、“1段ずつ3歩”、“最初の1歩が1段で次の1歩が2段”、“最初の1歩が2段で次の1歩が1段”の3通りです。あと4段と5段の階段の場合だけ考えますが、これ以降は*歩という表現は省き、1歩ごとの段数を+の記号を使って連ねる形で表現します。4段の階段の場合、1段+1段+1段+1段、1段+1段+2段、1段+2段+1段、2段+1段+1段、2段+2段の5通りです。5段の階段の場合、1段+1段+1段+1段+1段、1段+1段+1段+2段、1段+1段+2段+1段、1段+2段+1段+1段、2段+1段+1段+1段、1段+2段+2段、2段+1段+2段、2段+2段+1段の8通りです。というわけで、元の階段の問題に照らし合わせれば、5段の階段の場合は8日間必要ということになります。もっとも、数分あればその場ですべてのパターンを試せますが…。

今一度整理すると、1段の階段では1通り、2段の階段では2通り、3段の階段では3通り、4段の階段では5通り、5段の階段では8通りとなりました。ちなみに、6段の階段では13通り、7段の階段では21通りです。……… どこかで見覚えのある数が並んでいませんか? そう!フィボナッチ数です。実は、フィボナッチ数列の第2項以降の値が、ここでは階段の上り方の場合の数になっています。一般的に記すと、n段の階段を11段か12段かで上るときの場合の数(順列)は、フィボナッチ数列の第(n1)項の値となっています。ですので、先ほどの20段の階段の問題の際に出てきた10946は、実はフィボナッチ数列の第21項の値です。フィボナッチ数列は、本当にミステリアスですね。

文責: メディア学部  松永 信介
2021.08.13

2021年8月13日 (金)

身近にひそむ数学(4): フィボナッチ数列の誕生秘話と自然美

2021年8月12日 (木) 投稿者: メディア社会コース

今回は、前回紹介したフィボナッチ数列に関して、その誕生秘話(前半)と自然界との偶然的な接点(後半)という2つのトピックに分けて綴りたいと思います。

まず初めに、フィボナッチ数列の誕生秘話についてです。前回の記事で、この数列はフィボナッチ著の『算盤の書』(1202年刊行)の中の「ウサギの問題」の項目で登場したということを記しました。

この問題は、実は非現実的な設定でのウサギの繁殖シミュレーションなのですが、内容的に理解しやすく、フィボナッチの着想が見て取れるので、図を交えて簡単にご紹介します。なお、この種の数列による数学モデルは、昨今我々を悩ませている新型コロナウィルスの増殖モデルの形成や実行再生産数の算出などに活かされています。

さて、その繁殖シミュレーションのイメージ図を先行して示します。なお、このシミュレーションでは、ウサギのつがいが1つの単位です。ウサギの総羽数でイメージしても構いませんが、その際は2で割って考えてください。

Fibonacci5

以下が、このシミュレーションのルール(公理)です.

0° 生まれたばかりの1組の子ウサギのつがいがいる

1° 子ウサギのつがいは、1ヵ月後に成長ウサギのつがいとなる

2° 成長ウサギのつがいは、1ヵ月後に1組の子ウサギのつがいを産み、親ウサギのつがいとなる

3° 親ウサギのつがいは、永遠に親ウサギのつがいとして、1ヵ月ごとに1組の子ウサギのつがいを産む

上の図でこのルールの適用シミュレーションを確認しましょう。ルール0°は0ヵ月のところで一回適用されるだけです。初期設定みたいなもので、子ウサギのつがいがその時点で1組いるという状態です。1ヵ月後には、ルール1°の適用により、成長ウサギのつがいが1組います。2ヵ月後には、ルール2°の適用により、親ウサギとなったつがい1組とその子ウサギのつがい1組がいます(計2組のつがいがいる)。3ヵ月後には、ルール1°、ルール2°、ルール3°が同時適用され、親ウサギのつがい1組、成長ウサギのつがい1組、赤ちゃんウサギのつがい1組がいます(計3組のつがいがいる)。4ヵ月後以降も同様に、ルール1°、ルール2°、ルール3°を同時適用していくだけで、つがいの数は自ずと決まっていきます。

フィボナッチは、この1ヵ月ごとのつがいの数の並びに興味を示し、そこに様々な代数的性質を見出しました。これが、13世紀初頭に誕生したフィボナッチ数列の原点です。

ここで、先の図において、子ウサギ(つがい)をあらためて子供ウサギ(つがい)と呼び、また翌月に子供ウサギ(つがい)を産む成長ウサギ(つがい)と親ウサギ(つがい)をまとめて大人ウサギ(つがい)と呼ぶことにします(以降、混乱を生じない限り“つがい”という表現は省略します)。

すると、下の図の左のような、抽象的な絵のモデルを作ることができます。ここで、○は子供ウサギを、●は大人ウサギをそれぞれ意味し、線は親子関係あるいは大人としての継続関係を意味しています。このような絵のモデルは根付き木(特に、根付き2分木)と呼ばれ、情報数学を支える一つの重要な概念です。

Fibonacci6

一方、右の図は、左の図を上下に反転させたうえで、子供ウサギと大人ウサギの区別を無くしたものです。地に根を張った木に見えますね。これが根付き木と呼ばれる所以です。この右側の根付き木は、実はフィボナッチ木という名前が付いています。自然界のすべての木がこのような構造をもっているわけではないですが、成長過程で太い枝(成長が見込まれる枝)と細い枝(成長が期待できない枝)に分岐することはよく観察されることです。これに葉を描き加えると、それなりに違和感のない木に見えるはずです。

さて次に、フィボナッチ数列の自然美について記します。前回、規則的に正方形を敷き詰めて長方形を拡張的に形成するするということを通じて、フィボナッチ数列の幾何学的解釈を行いました。下の図は、前回の図に少し手を入れたものです(数字情報は消しています)。赤い螺旋(らせん)が、ここでの話の主役です。

Log_spiral

図があるのでそれとなくイメージが湧くと思いますが、この赤い螺旋は各正方形に収まる最大の四分円を、連続性と数学的滑らかさを担保して繋げてできているものです。ただし、曲率は一定ではありません。最初に用意する1辺の長さが1の正方形が並ぶところまではよいのですが,サイズの違う正方形を繋げる際に曲率は変わります。見た目ではあまりわかりませんが…。

そのような細かなことを無視すると、赤い螺旋は美しく見えますね。ところで、このような螺旋形状に近い動物なり植物を連想できますでしょうか? 動物としてよく引き合いに出されるのは、オウムガイやアンモナイト(化石)です。これらの巻貝の形状は、曲線として正確に一致しているわけではありません。実は、螺旋の数学モデルは複数あります。ここでは、自然が生み出す神秘くらいに留めておいていただければ結構です。興味のある方は、対数螺旋を入口に、いろいろと調べてみるとよいでしょう。

では、植物の方はどうでしょう。松ぼっくりやヒマワリの種の配列構造が、実はこの螺旋と酷似しています。ヒマワリを例に挙げると、黄金螺旋と呼ばれるものになっています。ヒマワリの種の配列は、中心の種に始まり、360度を黄金比で分割した角度である約137.5度(黄金角)の位置に次の種がつくという性質をもっています。そして、その繰り返しで数千もの種が密集し,あの美しい模様がができているのです。また、中心の方にある螺旋状に並ぶ種の数として 21 個、34 個、55個、89個などのフィボナッチ数を確認できます。自然界は不思議ですね。

文責: メディア学部  松永 信介
2021.08.12

2021年8月12日 (木)

身近にひそむ数学(3): フィボナッチ数列と黄金比

2021年8月11日 (水) 投稿者: メディア社会コース

前回、黄金比について触れましたが、今回はそれと深い関係のあるフィボナッチ数列{Fn}についてお話しします。このフィボナッチ数列は、数々の非常に興味深い性質をもっています。黄金比との関係は最後に回すとして、まずはこのミステリアスな数列の基本について見ていきます。

その数列は、“1123,5,813213455891442333776109871597258441816765,…”と続くものです。最初の20項だけ記しましたが、何か規則性が見えますか? 実は,この数列は次のような漸化式で表されます。

Fibonacci1

初項と第2項を1に設定し、それ以降の項は直前の項ともう一つ前の項の和で定めています。例えば、第4項の3は12(第2項+第3項)として,第7項の1358(第5項+第6項)としてそれぞれ表現されていますね。この数列上に現れる数は、フィボナッチ数と呼ばれます。

そもそも、フィボナッチとは何かというと、1213世紀にかけて活躍したイタリア人数学者の名前です。この数列の概念が最初に登場したのは、1202年に発刊されたフィボナッチ著の『算盤の書』の中です。この数学書は、彼が影響を受けたアラビア数学の内容を中心にまとめられているのですが、「ウサギの問題」という項目があり、そこにフィボナッチ数列の誕生秘話が記されています。架空のウサギの繁殖シミュレーションによるのですが、非常に面白く興味深い内容です。これについては、次回ご紹介します。

次に、フィボナッチ数列を幾何学的視点で見てみましょう。下の図は、いくつかの正方形を敷き詰めてできている長方形です。各正方形の中の斜字体の数字は、面積ではなく、その正方形の一辺の長さです。

Fibonacci2

では、どのように敷き詰められているのかというと、まず初めに一辺が1の正方形を2つ横に並べ、その上に一辺が2の正方形が並び,さらにその左に一辺が3の正方形が並び,…という規則に基づいています。この説明は厳密性を欠いていますが、図からどのように長方形が拡張していっているのかはわかると思います。この長方形をさらに拡張するのに必要な次の正方形の一辺の長さは?またその位置は? これらの質問に答えられれば、規則はおそらく理解できていることでしょう。

すでに気付いていると思いますが、次々と登場してくる正方形の一辺の長さはフィボナッチ数列を形成します。ここで、各長方形の縦横比(長辺/短辺)を考えます。最初は、一辺が1の正方形2つが並んでいる状態です。これは212です。次の一辺が2の正方形が追加された状態では、321.5となります。さらに次の一辺が5の正方形が追加された状態では、531.666…となります。もう、おわかりですね。F(n+1)Fnを次々に計算しているのです。最初の正方形が1つのときも含めて整理すると、次のような表ができあがります。

Fibonacci3

下段の比の値は、増減を交互に繰り返していますね。しかも、その増減の振れ幅が徐々に小さくなっていることに気付きます。実は、この比の数列は黄金比に向かっています。数学的に言えば、黄金比に収束するということす。式で表すと、次のようになります。

Fibonacci4

意外や意外、フィボナッチ数列が黄金比を特徴付けているのです。黄金比に美があったように、フィボナッチ数列にも自然美が関係しています。次回は、ウサギの問題の話とこの自然美について紹介します。

文責: メディア学部 松永 信介
2021.08.11

2021年8月11日 (水)

身近にひそむ数学(2): 貴金属比(黄金比ほか)

2021年8月10日 (火) 投稿者: メディア社会コース

貴金属とは、文字通り、貴い(貴重な)金属のことであり、その総称の意味合いもあります。この貴金属の特長として、イオン化しづらく(化合物になりづらく)安定性があるという性質があります。一昨日オリンピックが閉幕しましたが、この約2週間、金メダル・銀メダル・銅メダルの行方に一喜一憂しましたね。実は、このうち金と銀は貴金属ですが、銅は貴金属ではありません(ご参考までに…)。
貴金属は全部で8つあります。残りの6つは調べてみてください。

さて、化学の講義のような話から始まりましたが、ここからが身近にひそむ数学の話です。安定性のあるものは、希少価値が高く美化される傾向にあります。そこで、美を感じさせる数の比のことを、いつしか貴金属比と呼ぶようになったのです。前回の白銀比(大和比)は貴金属比ではないのですが、親戚関係にある貴金属比が今回のお話の最後の方で出てきます。

さて、この貴金属比は一つではなく、第1貴金属比(1:(1+√5)/2)、第2貴金属比(1:(1+√2))、第3貴金属比(1:(3+√13)/2)、… と続きます。一見、無秩序に思われる比の並びのように映りますが、これらは1と貴金属数と呼ばれる値との比になっています。すなわち、次のような“1:貴金属数”という関係になっているのです。

Metallic_ratio

皆さん、黄金比という言葉を聞いたことはありませんか? 実は、第1貴金属比の別称が黄金比です。この比は、自然界や芸術の世界に多々見られることから、最も美しい数学の比として黄金比(Golden Ratio)と呼ばれるようになりました。自然界での例は割愛しますが、芸術の世界で有名なものをいくつか紹介しておきます。

ミロのヴィーナスは、へその位置を境にその上半身と下半身の長さの比が黄金比とされています。また、レオナルド・ダ・ヴィンチ作のモナリザは、顔の部分を長方形で切り出したとき、その縦横比が黄金比になっていると言われています。一方、著名な建築物にも黄金比ではないかと言われているものがあります。エジプトの一部のピラミッドは、その高さと台座の一辺の長さの関係が黄金比であるとされています。また、ギリシャのパルテノン神殿も、その高さと台座の幅の関係が黄金比であるとされています。いずれも少なからず誤差があり、厳密性が担保されているとは言い難いのですが、ただ美を追求すると、自ずと黄金比に近いものができあがるのかもしれません。

さて、この比(約“11.618…”)の長方形は黄金長方形と呼ばれます。この長方形の特長的性質は、短辺を一辺とする正方形をもとの長方形の端から切り取った残りの部分が、また黄金長方形になっているというものです。この性質に基づいて、下図を眺めながら実際に黄金比を求めてみましょう。

Goldenratio

大元の黄金長方形の短辺の長さを1、長辺の長さをxとします。ここから、1辺の長さが1の正方形を切り取ると、短辺の長さがx-1、長辺の長さが1の長方形が残ります。これが、元の長方形と相似関係になるので、次のような計算ができます。

Godenratio2

確かに1.618…という値が得られますね。ちなみに、パスポートや現在主流の名刺は黄金長方形です。もちろん黄金比を意識してデザインされているのですが、このように黄金比は身近なところにも存在するのです。

続いて、第2貴金属比についてお話しします。こちらは黄金比の次ということで、白銀比(Silver Ratio)という名が付きました。この比(約“12.414…”)は、黄金比と比較すると、かなり開きのあるものです。黄金長方形と同様に、この比に基づく白銀長方形というものがあります。この長方形は、正八角形の一辺とその対辺を鉛直の2本の対角線で結んでできるものとしてイメージができると思います。実際に作図してみると、この比が確認できます。白銀長方形は少し細長くなります。

さて、この白銀比(第2貴金属比)が前回の白銀比(大和比)とは異なる比であることにはすでに気付いていることと思います。ただ、この2つのタイプの白銀比には不思議な関係があります。それぞれの比の値からすれば自明なことですが、第2貴金属比の長方形から、その短辺を共有する最大の正方形を切り取ると、大和比の長方形が残ります。逆に、大和比の長方形から、その短辺を共有する最大の正方形を切り取ると、第2貴金属比の長方形が残ります。ですので、これら2つの白銀比は無縁ではなく、親戚関係にあると言えます。

なお、ここでは説明しませんが、第3貴金属比には青銅比という別称があります。この記事の冒頭で、銅は貴金属ではないと説明しましたが、この貴金属比では、金(黄金)・銀(白銀)に続く形で、銅(青銅)はある意味市民権を得ています(厳密には銅と青銅は違うのですが…)。ちなみに、金(Au)・銀(Ag)・銅(Cu)の仲の良さは元素周期表からも見てとれます。久しぶりに、元素周期表を眺めてみてください。メダルの金・銀・銅の序列の妥当性がわかるはずです。

文責: メディア学部 松永 信介
2021.08.10

2021年8月10日 (火)

身近にひそむ数学(1): 白銀比(大和比)

2021年8月 9日 (月) 投稿者: メディア社会コース

数学はいまや体系化された学問ですが、その発展のきっかけは常に自然や日常の中にありました。ここからの7回の記事では、特定の比や数字を取り上げ、身近な数学に触れてもらいたいと思います。初回は、白銀比(大和比)について紹介します。

デジタル時代に入り、ペーパーレス化が進んでいますが、それでも紙の書籍(教科書、雑誌、文庫本等)に触れる機会は多くありますよね。また、授業や試験の際には、紙の配布資料があります。さて、これらの書籍や配布資料の紙サイズの縦横比について、皆さんは考えたことがありますか?

例外はありますが、日本における標準的な本や印刷用紙のサイズはA?判かB?判です。まずは、国際標準規格であるA判を取り上げます。このA判の中でも主流のA4判は、短辺が210mmで、長辺は297mmです。この比ですが、短辺:長辺≒1:√2(ルート2)です。A判の用紙では、短辺の長さがaのとき、長辺は必ずa×√2となります。これは、B判にも通ずる話です。この比が白銀比(大和比)です。白銀比には実はもう一種類あるため、それと区別する意味で大和比という別呼称を併記しています。もう一つの白銀比については、次回お話をします。

さて、なぜこの比が生まれたのでしょうか? これは、An判(n=0,1,2,3,…)を一つの等比数列モデルとして考えるのに都合がよい値(美しい値)であるからです。A判はA0841mm×1189mm)から始まります。ちなみに、このA0判の面積はおよそ1平方メートル(1辺が1000mの正方形の面積)です。このA0を半折りにしてできるサイズがA1です。さらに、それを半折りしてA2ができ、そのA2を半折りするとA3となります。下の図で、それとなくイメージは沸きますよね。

A4_size

すなわち、数列を一つ先に進む際には半折りにして切る(1/2倍)、数列を一つ戻る際には用紙を2枚並べて繋げる(2倍)、という操作がA判のサイズを規定しているのです。一応、A12まであります。

次に、B判ですが、こちらは国内規格です。A判との関係は、An判の対角線を一辺とする相似な長方形がBn判です。下の図は、A4B4の関係です。なお、B判もB0からB12まであります。先ほど、A0判の面積が1平方メートルと記しましたが、B0判の面積はおおよそいくつでしょう? 中学生でも解けるレベルの問題です。暇なときに考えてみてください。

A4_b4_20210809114901

 

身近な本のサイズを確認しましょう。例外はありますが、教科書や参考書の多くはA5判、文藝春秋などの大衆雑誌はB5判、小説などの文庫本はA6判、マンガなどはB6判です。なんとなくピンときましたか?

さて、最後に、大和比と呼ばれる所以についてです。諸説ありますが、大和(現在の奈良の辺り)の地に建立された法隆寺に、白銀比がいくつか見られるというのが有力です。法隆寺の金堂の2階の台座の幅と1階の台座の幅が、ほぼ白銀比の関係にあります。また、同じ法隆寺内の五重塔の5階の屋根の幅と1階の屋根の幅も、ほぼ白銀比の関係にあります。当時はもちろん白銀比という概念はなかったわけですが、美しさを追及していったら、自ずとこの比になったのかもしれせんね。ロマンを感じます。

文責: メディア学部 松永 信介
2021.08.09

2021年8月 9日 (月)

ユーザインタフェースから見た山手線の列車到着案内版の表示変更

2021年6月 2日 (水) 投稿者: メディア技術コース

新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインするための研究を行っている研究室です。

今回は雑談的な内容になります。JR東日本では、2019年~2020年にかけて長年使用されてきた山手線の駅の案内の情報が変更になりました。さてどのような変更でしょうか?ホームの行先、列車到着時刻、など、情報として十分な気がしますね。

Photo_20210530223301

答えはこちらです。これまでは列車到着時刻が表示されていましたが、今後は何分後に到着するかを表示するようになります。

https://www.jreast.co.jp/press/2019/tokyo/20191015_1_to.pdf

Photo_20210530223302

プレスリリースによると以下の取組によるものです。


JR東日本では、グループ経営ビジョン「変革2027」においてお客さまに提供する輸送サービスの質的変革を掲げ、お客さまが快適に感じていただけるご利用環境の実現に取り組んでいます。今回、東京支社では山手線などの駅のホーム上における列車の到着までの時間などのご案内の充実を図るため、以下の取り組みを実施します。

〇 山手線全駅のホーム上の発車標に、列車が駅に到着するまでの時間「約○分後」の表示を実施し、列車到着までの時間をより分かりやすくお知らせします。

〇 山手線をはじめとした東京支社管内の一部の駅において、ホーム上の発車標を LED から LCD 化(液晶ディスプレイ化)し、視認性を向上します。

〇 2019年3月から東京支社管内の一部の駅において、ホーム上における自動音声による英語案内放送の充実を図ってまいりましたが、山手線全駅や中央(快速)線、中央・総武(各駅停車)線などの一部の駅に拡充します。

考察力の鋭い人はその本質的なまでわかっていると思いますが、これは利用者の生活スタイルの変化に対応した結果になります。従来は多くの会社員・学生は腕時計をしていたので、旧スタイルの表示でもあと○○分で列車が到着すると分りましたが、スマートフォンの普及に伴って腕時計をしている割合は年々減少傾向です。実際、マクロミル社の時計やスマートウォッチに関する調査(201811月実施)

https://honote.macromill.com/report/20181129/

によると、時間チェック、メインで使うものは、男性:「腕時計」が多数で55%、女性;「スマホ」が多数で62%、です。約半数以上の人が腕時計をしていない現状では、列車の到着案内が○○時○○分という表示では、半数くらいの人がバッグからスマートフォンを取り出すか、ホームにある時計を探さなければいけなく、適切な情報提示ではない、ということになります。
したがって今回の列車の到着案内が「約3分後」という表示になり、直観的に大体の目安が伝わります。その上、時刻の引き算もしなくてよいということです(笑)急いでいる時はありがたいですね。

最近はスマートウォッチがブームになってきていますので、さらに近い将来はまた別のより良い提示方法が採用されるかもしれません。

 

2021年6月 2日 (水)

【コロナ時代の広告コミュニケーション⑦】「⾒えないものと闘った⼀年は、⾒えないものに⽀えられた⼀年だと思う」(メディア学部 藤崎実)

2021年5月23日 (日) 投稿者: メディア社会コース

2020年から始まったコロナ禍は、20215月の現在も進行中です。
新型コロナウイルスの感染拡大による新しい生活様式は、現実問題として、今でも私たちの日常に大きな影響を与えています。

2020年は、夏の風物詩だった夏の甲子園も中止になったり、各地のお祭りなども取りやめになったり。私たちの日常生活に多くの影響を与えましたが、そのひとつに受験生に与えた影響が挙げられます。

大塚製薬はカロリーメイトのCMとして、毎年、受験生を応援するCMを作り続けてきましたが、7弾目の2020年は、始めて受験生と先生の関係を描いたCMを作りました。新型コロナは目に見えないウイルスです。そうした目に見えないものと闘った受験生と先生の関係を描くことにしたのです。

キャッチコピーは、「⾒えないものと闘った⼀年は、⾒えないものに⽀えられた⼀年だと思う」。

Photo_20210523122601
(画像出所:大塚製薬の広告情報サイト 
https://www.otsuka.co.jp/adv/cmt/graphic202011_01.html

このCMの主人公は、受験生と先生ですが、日本中の、そして世界中の人が、この物語の二人と同じく、見えないものと闘った日々を過ごしたことでしょう。

CMのタイトルは、「見えないもの」篇です。
本編に加えて、メイキング映像も必見です。是非ともご覧ください。

◎カロリーメイトCM「見えないもの」篇 120
◎カロリーメイトweb movie「見えないもの」篇 メイキングmovie
https://www.youtube.com/watch?v=Yn1oVXam8I0

Photo_20210513043701

(画像出所:大塚製薬の広告情報サイト 
https://www.otsuka.co.jp/adv/cmt/graphic202011_01.html

「広告は時代を写す鏡」と言われます。
大塚製薬のこの「見えないもの」篇は、まさにコロナ禍での私たちの暮らしを切り取り、多くの制約の中で頑張った受験生の姿を映し出したCMだと言えます。

広告には答えがありません。作り手の考え方によって、人を笑わせたり、心をあたたかくしたり、人に勇気を与えたりすることができます。
そして、誰かの心の中で、いつまでも生き続けることもあるのです。

(メディア学部 藤崎実)

2021年5月23日 (日)

【コロナ時代の広告コミュニケーション⑥】さて、今夜、私が頂くのは、(メディア学部 藤崎実)

2021年5月22日 (土) 投稿者: メディア社会コース

コロナ禍の日本に生まれた新風景のひとつに、Uber Eats(ウーバーイーツ)の配達員の姿が挙げられるでしょう。
以前のように気軽に外食できなくなった環境変化に対応すべく、2020年のコロナ禍では、フードデリバリーサービスが急激に定着しました。

それまでの日本のフードデリバリーサービスの分野では、ピザの配達が一般的に定着した感がありました。
しかし、コロナの環境変化に対応すべく、ファーストフードも、ファミレスも、一斉にフードデリバリーサービスに参入を始めたのです。(例えば、マクドナルドがマックデリバリーを始めたり、すかいらーくグループでは、ガストやバーミアン、ジョナサンなどが挙げられます)

しかし、何と言っても、配達員がお店を回って運んでくれるUber Eatsの普及には目をみはるものがあります。
そして、そうしたUber Eatsの普及を後押しするためのCMは、多くの人の印象に残っていることでしょう。

今までにさまざまなバージョンのUber EatsCMが作られてきましたが、それらのCMをよく見ると、全てのCMに同じキャッチコピーが使われていることに気づくでしょう。

それは、「さて、今夜、私が頂くのは、」というキャッチコピーです。

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(上記の画像出所:Uber EatsのYouTubeチャンネルより)
https://www.youtube.com/watch?v=b4xJhhOC1k0
https://www.youtube.com/watch?v=owyt1T04yeY
https://www.youtube.com/watch?v=9YuFGNb5WEQ

通常、企業やブランド、サービスの主体は、生活者に伝えたいことが山のようにあるのが普通です。
せっかく広告を作るのであれば、その機会に、あれも伝えたい、これも伝えたいと考えるのが普通です。

でも、多くを伝えたからといって、多くが伝わるわけではないのです。
結局のところ、広告というのは、ひとつしか伝えることはできません。
それは秒数の問題ではなく、人は一度に多くの情報を受け取ることができないためです。

しかも、生活者は本来企業が伝えたいことに興味を持っているわけではなく、自分に関係することにだけ興味があるのです。

Uber EatsのCMは、企業が伝えたいことを多く伝えるのではなく、生活者にとって関係のあることだけに絞ったことで、成功したCMと言えるでしょう。
キャッチコピーをひとつに絞ったことで、シリーズ全体を通して、壮大な連呼CMになっている、と考えることもできます。

なお、一見、シンプルなコピーですが、Uber Eatsのキャッチコピーは、相当な勇気がないと採用できないと考えることができます。
というのは、「さて、今夜、私が頂くのは、」というキャッチコピーは、あえて言えば、あまりにも平凡で、何の飾り気も、欲もないコピーだからです。

でも、だからこそ、いろいろなシチュエーションやパターンで使えるキャッチコピーだとも言え、相当考え抜かれたキャッチコピーであると私は思います。一言で言うと論理的で頭の良いスタッフの方々により制作されていることが見受けられるのです。

あなたが、もしUber Eatsの広告プランナーだったら、どういうキャッチコピーを考えるでしょうか。
もちろん、広告の企画には答えがありませんので、いろいろな考え方があることでしょう。

(メディア学部 藤崎実)

2021年5月22日 (土)

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