雑感

パソコンのキーボード並びの謎

2021年8月23日 (月) 投稿者: メディア技術コース

ちょっとB級な感じの映画「ガンズ・アキンボ(2019)」で主人公がパソコンに向かってネットの書き込みをする場面があります。この主人公、プログラマーという設定なのに、やたらにキーボードのタイピングの手つきがぎこちないので気になってしまいました。もう21世紀でいろいろな機器が発達していく中、まだこの“キーボードをタイピングする”という技術がすたれずに現役だというのも不思議な気がします。

スマホ慣れしている皆さんだと、文字を打つとき指をずらして文字を選択するフリック入力の方がなじみが深いでしょうか。フリックでも結構な速度で文字を入力することができますが、キーボード入力の利便性はまだまだ勝っています。

本学では1年生の前期の「情報リテラシー演習」の最後にタイピングのテストを行います。タイピングはきちんと練習すると(そして位置を覚えると)、両手の各指の打鍵の範囲がムリなく決まるため、結構早く文字を入力することができるようになります。

 

さて、タイピングを練習する上で、ちょっと嫌なのが、このキーボードの“キーの並び”でしょうか。キーのアルファベットの配置の仕方は、よく見ると謎が多く、覚えるまで苦労します。この一見ランダムな配置、実は最初はある規則に則った並び方だったモノが、その後に利便性を求めて変更を重ねることで、今の”よくわからない”配置になった経緯があります。

 

そもそもタイプライターが発明されたのは19世紀中ごろ(1800年代)ですが、商業的に量産され始めるのは、20世紀初めくらいで、タイピングの効率化(要は当時使いやすいように)を図るうちに、最終的に1882年に作られたQWERTY配列が採用されたようです。現在のパソコンのキーボードもこれに準じた配列になっています(なので、機械的なタイプライターの制約から生まれた並びが残っている所もあります)。1_20210806105101

このキー配列の基本は上段にAEIUOの母音を配置して、残りをアルファベット順に中段は左から右に、下段は右から左に並べた形になっています。ただし、この基本形から、当時の年号である、19XXや18XXが打ちやすいように数字の8,9の近くにI(数字の1と兼用)を配置したり、モールス信号の解読結果を打鍵しやすいように、Z,S,Eを並べたり、さらに下段からTQPRYが上段にうつったり、英語だと“RE”という並びが単語によく出てくるので、並べて配置したり…、といろいろな経緯で変更が行われ、現在の並びになっています。

なので、現代のキーボードを眺めて見ると、一見ランダムな配置に見えますが、中段は左から右、下段は右から左にアルファベット順に並んでいるのが(おぼろげながら)観察できると思います。

その昔の映画「スタートレックIV 故郷への長い道(1986)」では未来から1980年代にタイムスリップしたクルーが、音声入力ではないコンピュータ(当時最新のMacintosh Plus!)のキーボードを見て「キーボードとは面白い(”Keyboard, how great””)」と意気込むような場面がありましたが、21世紀でもこの形のキーボードは長く活躍していきそうです。


参考:
https://kotobaken.jp/qa/yokuaru/qa-35/
https://www.typewriter.be/timeline.htm


(以上文責 メディア学部「情報リテラシー演習」担当 永田)

2021年8月23日 (月)

自分の才能を見つける方法

2021年8月 7日 (土) 投稿者: メディア技術コース

 2年前の入学式の日の学部ブログで「得意なことを見つけよう」という話をしました。その1年後の同じ日、NHKの朝ドラで、私の言いたいことがこれ以上ないくらいピッタリな言葉で表現されました。
 
 小学生当時の主人公に音楽の才能があることを見い出した教師の言葉です。
 
 『人よりほんの少し努力するのがつらくなくて、ほんの少し簡単にできること、それがお前の得意なもんだ。それが見つかれば、しがみつけ。必ず道は開ける』(「エール」2020年4月4日放映)
 
 先日の1年次生向け必修科目「メディア学入門」の最終授業でこれを紹介したところ、小レポート課題で「もっとも参考になった話題」として最多の履修生が取り上げました。その授業トピックでは「好きなことを得意なことにする」話もしましたがこれはいずれ別のブログ記事で紹介します。
 
 得意なこと、つまり才能を見つけるいくつかの方法は2年前の記事で書きました。今日はその記事では書かなかった別の方法を紹介します。かなり高い確度で才能を見つけることができます。
 
 それは「親に訊いてみる」ことです。
 
 皆さんが生まれた瞬間から、親は常に「この子には何の才能があるだろうか」と真剣に思いながら皆さんを見ています。20年近くもの長い間、それだけの真剣さで観察しているのです。何に向いているか、何に向いていないか、わからないはずがありません。
 
 多くの人はそのような話題について親と話すことはないかもしれません。照れくさいですからね。でも改まって訊ねてみれば、きっと的確な指摘が返ってくるはずです。もし悲観的な答えしか来なかったら、きっと照れているんだと広い心で理解してあげましょう。
 
 私も3人の20代の子の親です。彼らがそれぞれ何が得意か観察し続けました。ただ、改まってそういう話はしませんでした。何かきっかけがあるときに「○○って向いてると思うよ」とつぶやいた程度です。本人たちは自分で考えて進路を選びました。紆余曲折はありましたが(特に金銭的に(笑))結果的に3人ともそれぞれに向いていると私と妻が思う職業に就いたか就く予定です。親2人×子3人の6ケースで観察結果が概ね合っていたと推測できますので、良い確度ではないかと思います。
 
メディア学部 柿本 正憲

2021年8月 7日 (土)

Zoom でプレゼンタイマーを実現する

2021年8月 5日 (木) 投稿者: メディア技術コース

渡辺です。みなさんこんにちは。このブログではしばらくご無沙汰してしまいました。

さて、今回は Zoom でプレゼンタイマーを利用する方法について説明します。先日、大学院の中間審査会が実施され、その際に私が Zoom のタイマーを担当したのですが、複数の先生から「あれってどうやるの?」という問い合わせがありました。実際にはそこそこ設定が面倒で、簡単には説明できなかったので、今回このブログを通じてやり方を記しておくことにしました。

画面共有を使えばいいのでは?

Zoom には「画面共有」という機能があり、これを使えば PC 上の画面を簡単に他の利用者に見せることができます。これを使えば簡単にプレゼンタイマーを実現できるように思えますが、これがなかなか都合が悪いのです。まず、画面共有機能は通常は1名しか行えません。この共有をプレゼンタイマーで使用してしまうと、実際の発表者が画面共有が行えなくなります。複数人が共有する設定にすることもできるのですが、このときに発表者の画面を表示していると、プレゼンタイマー側の音声が聞こえなくなってしまうんです。このように、画面共有機能の利用はかなり使い勝手としては悪いものになってしまいます。

では、画面共有ではなく、通常のカメラとマイクのかわりにプレゼンタイマーと音声を流せるようにできればと思うのですが、Zoom の標準機能だけではできないんですね。Zoom では、カメラやマイクは OS 側が「カメラ」「マイク」として認識しているデバイスしか受け付けません。

こういったことから、Zoom の中でプレゼンタイマーを快適に利用するのは中々に難しいわけです。

仮想カメラ・仮想マイクの利用

そこで、仮想カメラと仮想マイクという概念を用います。仮想カメラは「OBS Studio」というソフトウェアを、仮想マイクは「VB-Audio Virtual Cable」というソフトウェアを利用します。これらを使えば、通常のアプリケーション画面や PC の音声出力を「カメラ」や「マイク」からの入力として OS 側に流し込むことができます。

インストール

まずは、以下のソフトウェアをインストールしましょう。

OBS Studio (https://obsproject.com/ja/download)
「ダウンロードインストーラ」をクリックし、インストーラーをダウンロードして実行して下さい。

VB-AUDIO Virtual Audio Device (https://vb-audio.com/Cable/)
この中の「VBCable_Driver_Pack??.zip」という名前のインストーラーをダウンロードし、解凍して「VBCABLE_Setup_x64.exe」を実行して下さい。

Ear-Trumpet (https://www.microsoft.com/ja-jp/p/eartrumpet/9nblggh516xp)
マイクロソフトストアから入手してインストールして下さい。

OBS の初期設定

全てインストールしたら、OBS を起動してみます。OBS は、アプリケーションの画面や音声を一旦統合し、場所を再配置するなどして外部出力するためのソフトウェアです。Youtuber や VTuber のような生配信を行う際の標準的な編集ツールとなっており、聞いたことがある人も多いと思います。

OBS をはじめて起動すると、どういう使い方をするかのダイアログが出てきますが、とりあえず「仮想カメラのみ使用する」を選んで下さい。次に「ファイル」→「設定」を選んで、以下のように設定して下さい。

  • 「出力」→「映像ビットレート」: 800 Kbps
  • 「出力」→「エンコーダ」: ソフトウェア (x264)
  • 「出力」→「音声ビットレート」: 128
  • 「映像」→「基本(キャンバス)解像度」: 1920x1080
  • 「映像」→「出力(スケーリング)解像度」: 1920x1080
  • 「映像」→「縮小フィルタ」: バイキュービック
  • 「映像」→「FPS共通値」: 30

これで初期設定は OK です。

OBS での画面取り込み

次に、OBS の仮想カメラに映す画面を取り込みます。事前にブラウザを表示しておきましょう。その後、OBSの「ソース」というウィンドウの下にある「+」記号を押し、「ウィンドウキャプチャ」を選択し、「新規作成」を選びます。すると、どのウィンドウをキャプチャするかのダイアログがでてきますので、対象のウィンドウを選んで「OK」を押して下さい。あとは、「仮想カメラ開始」ボタンを押せば、そのウィンドウが仮想カメラデバイスに出力されるようになります。

OBS 側のウィンドウキャプチャを調整すれば、表示サイズを縮小したり、逆に特定部分だけを拡大して表示することも可能ですので、色々試してみて下さい。

VB-Audio による仮想マイク

次はマイクです。まず、サウンドの出力を「CABLE Input (VB-Audio Virtual Cable)」に設定します。すると、スピーカーからは一切音声が流れなくなります。ボリュームは一旦小さめに設定しておくとよいでしょう。

Zoom の設定

ここまできたら Zoom を起動します。まず、カメラを「OBS Virtual Camera」に設定して下さい。その次に設定の「オーディオ」を開き、以下のように設定します。

  • 「スピーカー」: 「システムと同じ」
  • 「マイク」:「CABLE Input (VB-Audio Virtual Cable)」
  • 「自動で音量を調整」: OFF
  • 「背景雑音を抑制」: 低
  • 「ミーティング内オプションを表示」: ON
  • 「高忠実度音楽モード」: ON
  • 「エコー除去」: OFF
  • 「ステレオオーディオ」: OFF

これで PC 上で何か音を鳴らしたときに、Zoom のマイク側の音量計で反応があれば成功です。

EarTrumpetによる音量ミキサー

この方法で PC 側の音が Zoom のマイク音声として認識されるようになりましたが、入って欲しくない音まで入るようになってしまいます。例えば USB の接続音や、メールやメッセージの通知音なども入ってしまいます。これを抑制するため、EarTrumpet を利用します。EarTrumpet のアイコンをインジケーターから選択すると、アプリケーションごとに音量を設定できます。これを使って、ブラウザ以外の音は全て切っておきます。

プレゼンタイマーの用意

私は、プレゼンタイマーとしては Time Keeper (https://maruta.github.io/timekeeper/) をよく利用しますが、このあたりは好みで好きなページを利用してもらえれば良いですし、なんならブラウザではなくアプリでも構わないと思います。以前はプレゼンタイマー用のアプリは多く公開されていたのですが、最近はあまり多くないようですね。

まとめ

今回は、Zoom 会議に参加する PC とタイマー用 PC は別に用意することを念頭に解説を行いました。しかし、OBS を駆使すれば 1 台で会議とタイマーの両方を切り替えて使用することもできなくもないです。(個人的には、別々の PC にした方が快適だとは思いますが。) OBS を使えば様々な応用が考えられますので、色々活用してみてはどうでしょうか?

この内容、実は半年ほど前に一度ブログの記事にしようと思っていたのですが、その時期にはちょうど大学も全学的に対面授業を実施するようになり、このようなノウハウはお蔵入りするのではと思いお蔵入りにしました。しかし、今になって改めてコロナ感染が拡大してしまい、当面はまだまだ遠隔での発表の機会は増えそうです。本記事の内容が、Zoom でプレゼンを管理する人達に少しでも役立てば幸いです

(メディア学部教授 渡辺大地)

 

2021年8月 5日 (木)

全国からありがとうございます♪

2021年7月 6日 (火) 投稿者: メディアコンテンツコース

こんにちは!
exSDプロジェクトの伊藤彰教です。

メディア学部は開学からまだ20年余り、伊藤彰教研究室「exSD」プロジェクトはオープンしてからまる3年しか経過していない研究室です。学部も研究室も決して伝統あるところではないですが、それでも興味をもって学生さんが集まってくれるのは大学として本当にありがたいことです。

先日、新しく研究室に所属する学生さんも決まり、簡単な顔合わせをしたところ、驚くほど多くの地域から東京・八王子に集まってくれていることを知りました。

「そういえば、わずか3年とはいえ、今まで伊藤彰教研究室にはどれくらいの人が集まってくれているんだろう…」

ということが気になってマップを作ってみました。

Exsd21_jpmap

北海道・青森・新潟・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・静岡・ 岐阜・滋賀・三重・大阪・兵庫・愛媛

本当に多くの地域から、サウンドデザインを学び、研究するために集まってくれていることが実感できます。研究室が独立する前の数年間を含めると、お付き合いのあった学生さんではさらに長野・山梨・鳥取から集まってくれました。研究室運営教員としては大変にありがたいです。

サウンドデザイン研究室、メディア学部、東京工科大学はまだまだ「ひよっこ」ではありますが、それでもこれだけ広くから集まってもらっていると思うと、これからも頑張らないといけませんね。

全国の高校生のみなさん。音や音楽に興味が少しでもあるようなら、ぜひ東京工科大学メディア学部を選択肢に入れてもらえるとうれしいです。exSDプロジェクトがみなさんをお待ちしています♪

2021年7月 6日 (火)

研究室選択で重視すべきことは?

2021年6月22日 (火) 投稿者: メディア技術コース

助教の戀津です。

三年生の皆さんは、今まさに卒業研究の研究室選びをしている時期ですね。
私は柿本先生と合同でビジュアル&コンテンツインフォマティクスというプロジェクトをしており、昨日で3回目の説明会を行いました。
その中で説明したことと、質問にあったことを絡めて少しお話します。

ビジュアル&コンテンツインフォマティクスは技術コースですが、コンテンツコースの内容に近い部分も扱います。
特に、三上・兼松先生のコンテンツプロデューシング/ゲームイノベーションプロジェクトとはかなり似ています。
もちろんコースが違い、別研究室である以上厳密には方向性の差はあります。しかし、(だいぶ大ざっぱに言うと)コンテンツ制作手法にかかわる研究であればどちらの研究室でもテーマにできます。

昨日の研究室説明会で、あるモノに関する音の再現についてこの研究室でテーマにできるか?という質問がありました。
私の回答としては、「可能か?はYes、適しているか?はNo」です。

音の再現、という点に関しては、間違いなく大淵学部長をはじめサウンド関係の先生方の方が適しています。
専門の教員に見てもらえるということは当然大きなメリットで、初歩的な部分のサポートからより専門的で複雑な部分の議論など、専門外の我々では対応できないことは多々あります。

一方、専門の異なるところから、別の視点で対象に取り組むというのもメリットがあります。
今回の質問を例にすると、ゲーム中で登場するなどの架空の物品に「それらしい音をあてる」というあたりで、実際の音響の分析とは別のアプローチが考えられます。(もちろんサウンド系研究室でもそういう研究は可能です)
ただし、その場合には初歩的な部分のサポート含め、対応できない部分も多くあります。

また、近隣分野だったり応用の範囲で少しなら対応できる場合もあれば、全く範囲外で何のサポートもできないということもあります。
後者の場合は流石に「できない」と言わざるを得ないですね。私の場合はソーシャルやビジネスのテーマだとお手上げです。
専門外の事を扱う負荷の量と、その考え方は教員によって様々なので、負荷が高すぎれば当然ながらNoとなります。

そのため、今回の質問(テーマ)であれば可能ではあるが適していない、というような回答になるわけです。テーマにできるかもしれないけど教員の負荷が高いということですね。
そういう場合には、自分自身で情熱を持ってわからない事は調べ、それでもわからない事は専門の教員に自ら聞きに行くという主体的な行動が求められます。
指導教員にだけ負荷を求めるのでなく、その分自分自身がしっかり動くということですね。そのような姿勢であれば、多少専門外の事でもテーマにできるかもしれません。

話を戻し、似た分野の研究室の場合ですが、そのテーマを研究するという点においてはどちらでもいいといえるでしょう。
すると研究室選択で何を重視すべきか、というタイトルの話にようやくつながります。(私の話は前段が長くなりがちですね・・・。)

まず第一には「やりたいテーマに適しているか」があります。これは当然ですね。
そして第二に、あるいは同等程度に重視してほ
しいのが「教員との相性」です。
人間同士ですので、どうしても人格の良し悪しとは別に相性があります。私見ですが、この相性が研究生活及び学生生活に及ぼす影響はかなり大きいです。
相性をこれからはかるのは難しいですが、これまでの二年間で接してきた中で感じたものがあるならばそれは重要な指標になります。
それに、情熱をアピールして専門外のテーマをお願いするなら、事前にある程度の良好な関係性があるのが望ましいですね。

前段で書いてきた、テーマの適性から大きく逸脱せずに複数の研究室が該当するならば、是非主宰の先生との相性を検討してみてください。
皆さんがよりよい研究生活ができ、よい成果が出ることを祈っています。

2021年6月22日 (火)

「無理」と言われると実現したくなる

2021年6月21日 (月) 投稿者: メディア技術コース

 3年生向け講義「3次元コンピュータグラフィックス論」の先週の授業では「レイトレーシング」を取り上げました。今日の主題はその技術ではなく、履修生からの質問を受けて考えた大事なことです。誰にとって大事かというと、非定型的な仕事(何らかの「問題解決」)をするすべての人にとってです。
 
 まず、質問のあったスライドページを示します。
 
 1_20210621035801
 
 レイトレーシング法はCG画像を生成する一手法で、検索すれば多くの説明が出てきます。手法のポイントは、画像の一画素一画素について、視線に相当する直線(レイ)と物体モデルとの交点を見つけてその画素で見える物体表面色を計算(シェーディング)する、という点です。
 
 このスライド内容に対して次のような質問がありました。
 
 質問
 『
 逆に直線との交差計算ができない形状とは例えばどんなものがあるのでしょうか?
 』
 
 もっともな質問です。ついそうツッコミたくなるスライドですからね。これに対する私の回答は以下の通りです。
 
 回答
 『
 面積のない形状、つまり点や線です。交差計算自体は実行可能ですが、交点が求まらない場合がほとんどだからレイトレーシングは事実上できない、ということになります。
 
 例えば、ベジエ曲線をレイトレーシングで描画することはできません。点群データもできません。
 
 そもそも、点や線は、仮にレイとの交点があった場合でも、その交点をどういう明るさでシェーディングすればよいか、レイの反射方向はどうなるか、などに関する計算方法はありません。その意味でも点や線は無理、ということになります。
 』
 
 ここから先は私の研究者としての独り言です。
 
 「無理」と言われると研究者としては、完璧じゃなくてもそこそこ妥当な方法で何とか実現できないか、と考えたくなります。実現できれば新たな研究成果になるかもしれません。
 
 例えば、レイと点・線との交点は通常は求まりません。ただ少し現実的に考えると、近い所をレイが通るならその点・線が見える、とみなすこともできます。近い、というのは、距離を測り、事前に定めた距離と照らし合わせれば判定できます。これだと交差判定が実現できます。
 
 シェーディングに相当する計算も、距離が近いほど明るくするなど、妥当なやり方はあります。
 
 実際、点とレイとの距離を使って妥当な交差判定ができる、というのは「メタボール」のレイトレーシングの基本的な考え方になります。
 
 研究者に限らず、価値のある仕事をする場合に上記例のような発想は重要です。
 
 「不可能」と言われたら、「ゴール設定を多少変え、完璧じゃなくても有用な解決法があるはず」と考える癖をつけておくと、「問題解決力」の基礎体力になります。
 
 ちなみに、問題解決力のための別の基礎体力は「豊富かつ雑多な知識」です。大小さまざまの困難な問題を解決するのに必要なのは創造性です。創造性は、知識概念の量と組み合わせる力との掛け算です(ジェームス・W・ヤング「アイデアのつくり方」)。
 
 さらに蛇足ですが、私自身もいま大学教員として困難な新しい問題に直面していますが、ゴール設定を多少変えてでもなるべく最適な解決策を仲間と一緒に模索するのを楽しんでいるところです。

メディア学部 柿本 正憲

2021年6月21日 (月)

たくさん映画を見ましょう

2021年4月17日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

これまで私はこのブログで「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介してきましたが、過去にこんな記事を書きました。

「シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その2」

http://blog.media.teu.ac.jp/2020/09/post-0d02b3.html

『大変興味深いことなのですが、シナリオを書こうとする学生の中には「主人公が最後に死ぬ話を書きたいです」と言ってくる人が定期的に現れます。もちろん毎回別な人です。ところが、いざ具体的な内容を教えてもらうと「主人公が最後に死ぬ」という、構想だけが強すぎるせいか、唐突に「主人公が死ぬ」とか、特に必然性もないが「主人公が死ぬ」という内容だったりします。』

この記事で触れた、プロジェクト演習シナリオアナリシスに定期的に現れる「主人公が最後に死ぬ話を書きたいです」と言ってくる学生さんたちには、ある共通点があります。それは

「他の人とは違った特徴をもった作品に仕上げなければ注目してもらえない、と考えた」

・・・というものです。毎回別な学生さんなので、多少言い方が違ったりするので、「ありきたりの作品にはしたくなかった」「既存作品のパクりだと言われたくないから」など、ニュアンスに若干の差はあるのですが、端的にいうなら「新規性」「独自性」をなんとか出したいという、とても積極的な創作姿勢に基づいた思考です。そしてそれ自体は決して間違ったことではないです。

ただ「他の人とは違った特徴をもった作品」のシナリオを書くためには、他の人の作品をたくさん知って「他の人がまだ取り扱っていないことがなんなのか」を見極められるようになる必要はあります。

その点で言えば、安易に「主人公が最後に死ぬ」だけのシナリオを考えてしまうのは、既存作品のリサーチ不足から「主人公が最後に死ぬ作品は、他の人がまだ取り扱っていないに違いない」という思い込んだに等しく、「他の人とは違った特徴をもった作品」の見極めができていない、と自ら言っているようなものです。

前述した過去の記事では映画「グラディエーター」を取り上げていますが、妻子のかたきを討つために「主人公は最後に死ぬ」という点だけで見れば、それほど新しい発想ではありませんが、現代にはもはや存在しない、奴隷同然の剣闘士(グラディエーター)が、その時代の最高権力者を相手に、当時の、ありとあらゆる手段を用いて本懐を遂げるまでを描き切るとなれば、そのシナリオは「他の人とは違った特徴をもった作品」として認識されるに至ります。

シナリオライターになるためには「たくさん映画を見ましょう」というアドバイスはよく耳にしますし、ただ漫然と見るだけでは全く意味がありませんが、少しでも、意識的に既存作品との差別化されたポイントを見つけ出そうとして見ていたなら、それはシナリオライターにとって、間違いなく重要な知識となります。

そういう意味では、「他の人とは違った特徴をもった作品」のシナリオライターを目指す皆さんは「たくさん映画を見ましょう」

(文責:兼松祥央)

2021年4月17日 (土)

研究の分業:技術的な課題と本質的な課題

2021年4月 4日 (日) 投稿者: メディア技術コース

助教の戀津です。
昨日の記事で紹介した春木さんの研究について、リミテーションという観点から追加のお話です。
(まだお読みでない方は先に紹介記事をお読みください)

春木さんの研究は、本来「実在の」樹木を対象とするものでした。
実在の樹木をもとに、その中のどの枝をどう剪定すると、剪定後にどのように生長するというのを予測・可視化するというものです。
樹木の適切な剪定には高度の知識と経験を要するため、そこを補助するというのが目的でした。

これを達成するためには、まずは実際の樹木の形状をPC等に取り込む必要があります。
そこで、研究開始当初は樹木情報の取り込み方法について調査をしていました。

フォトグラメトリと呼ばれる、対象物をたくさんの方向から見た写真を大量に撮ることで3DCGとして取り込む技術があります。
観光地の大きな建物や、人間大の石像、小さいものではフィギュアなどが対象としてよく取り込まれています。
原理上はiPhoneなどのスマートフォンでも行えるため、多くの研究者や技術者が日々精度の向上に打ち込んでいる技術です。

しかし、残念ながら調べた範囲では現在の技術では樹木のモデルを得るのには向いていませんでした。
上で挙げたような建造物や像などは、細かな部品はあるにしろ一つの大きな塊の物体です。
それに対し樹木は、葉があると枝の様子を確認することができず、また冬季など枝だけの状態ではスカスカの形状になるためうまく取得ができませんでした。
一定の空間内に多数の細い枝があるという状況では、撮影する角度を少し変えると手前や奥にある枝が違う映り込み方をするため、空間的な配置の認識が難しかったものと思います。
何とかして枝の情報を入力できないか、春木さんはずいぶん試行錯誤してくれましたが、最終的には「今回は実際の樹木を扱わない」という結論になりました。

前置きが長くなってしまいましたが、ここからが今回お話したいことです。
本来の目的は樹木の剪定を補助することなので、もちろん実際の樹木を入力できることがベストです。
しかし、この研究は樹木の枝を剪定した後にどのように生長するかをシミュレーションするのが一番重要なポイントです。
仮に樹木の情報を入力できても、生長シミュレーションができなければ目的を達成できません。
逆に、樹木の情報は実在のものでなくても、シミュレーション方法が確立されていれば仮の情報でシミュレーションができますし、今後技術が発展し実在の樹木を入力できるようになるかもしれません。

この場合、フォトグラメトリ等で実在の樹木の情報を取得できないことは技術的な課題で、生長シミュレーションが本質的な課題にあたります。
こういう時に、「この研究ではこの部分は取り扱わない」というものをリミテーションと呼び、将来的な課題として論文で挙げておくという方法があります。

同じような例として、VR技術の研究があります。ヘッドマウントディスプレイを装着した仮想空間体験は、理論やプロトタイプは1960年代には研究されていました。
当初は機材が大きすぎたり高価すぎたり、また精度も低いものでしたが、体験に関する理論の研究は進んでいました。
それから多くの時が経ち、
多くの技術者が積み重ねてきた技術の進歩によって小型で安価な機材が市場に出回り、個人でもVR体験が行えるようになりました。
長い歴史をかけた壮大な分業ですね。これもまた研究活動の素晴らしい点です。

卒研という限られた期間において技術的な課題は必ずしも春木さん自身が解決する必要はないため、本質的な課題に注力するという決断をしました。
結果、生長予測と可視化部分の実装という形で成果を残し、学会発表も行う事ができました。

今後フォトグラメトリ(またはその他の技術)の精度が向上し、リアルタイムに目の前の樹木の形状を取得できるようになればより一層この研究の成果が輝きます。
その時が来るのを楽しみにしています。

2021年4月 4日 (日)

研究紹介:流量推定を用いたラテアートシミュレーション手法(学生奨励賞受賞)

2021年3月31日 (水) 投稿者: メディア技術コース

助教の戀津です。
今回は、3/18~20にオンラインで開催された、情報処理学会全国大会での発表のご報告です。

情報処理学会では、多くの投稿の中から似たジャンルの研究を10件前後まとめて、セッションという名前で発表会を行います。
そして、セッションごとに座長の選ぶ学生奨励賞というものがあります。およそ5~6件に1件程度選ばれるという形です。

私は柿本先生と一緒に卒研ゼミを担当していますが、情報処理学会は柿本・戀津研の研究内容と親和性が高く毎年何件か発表を行っています。
今年は2件の発表を行い、そのうち中村哲平君の『流量推定を用いたラテアートシミュレーション手法の提案』という研究が学生奨励賞を受賞しました!
去年は佐藤君白崎君、一昨年は渋谷君が学生奨励賞を受賞しており、私の着任前から合わせるとなんと6年連続の受賞です。

研究内容は、タイトルの通りラテアートについてです。
ラテアートはエスプレッソコーヒーにフォームしたミルクを注ぎ、その注ぎ方によってカップの液面上に模様を作るというものです。
流体力学によるシミュレーションをしたり、CGでラテアートの再現を行う研究は多くされていますが、今回はラテアートを習得する際の練習過程に着目しています。

実際にラテアートを練習する時は、水を使って練習します。本物のエスプレッソとミルクを使いカップに注ぐと混ざってしまい回収ができず、一回ごとに材料費がかかってしまうためです。(また、材料を無駄にしないために毎回飲まないといけないですね)
しかしもちろん、水をカップに注いでもラテアートの模様は描けません。そこで、この研究では水を使って練習しながらラテアートの模様を描くことで練習効果の向上を目指しています。

ラテアートの練習という目的に対し、当初次のような方法を検討していました。

La1

ピッチャー底部認識法と名付け、ゼミで検討をしていました。スマートフォンの画面に向かって注ぎ込むイメージで、実際のピッチャーを傾けるものです。
ピッチャーの底に円形のマーカーをつけ、内側カメラでマーカーがどのくらい楕円になって見えているかを検出することでピッチャーの傾きを検出、どのくらいミルクが注がれたかを計算するというものでした。

しかし、実際にこの方法を試行錯誤していたところ、意外とマーカーがうまく写らないことや、空っぽのピッチャーで注ぐ動作だけするのはイマイチといった欠点が見つかりました。
画面に向かって注ぐというのは大変直感的で魅力的ではあったのですが、本体が下にあることによって実際の水が注げないというのは大きな欠点でした。
そこで、中村君が新たに次のような方法を考えてくれました。

La2

新しい手法では、カップに向かって実物の水を注ぐという実際の動作に大変近い形を取りながら、カップ上部に据えたスマートフォンの画面上にラテアートの模様を描画できるというものです。
フレキシブルアームを使う必要が出てしまいましたが、スマートフォンが上に来ることによって実際に水を注ぐことができるようになりました。
これは当時柿本先生も私も想定していなかった新しい着眼点でした。学生本人が自身の研究について一番時間を使い、考えてくることで教員の発想を超えてくれるのが卒業研究指導の一番嬉しい時と感じます。

これを実現するには、画像処理を使った水の流量推定やリアルタイムなシミュレーション、カップ上への描画など解決すべき課題が大変多く、残念ながら今年度内の研究では練習手法までの完成には至りませんでした。
しかし、流量推定実験の結果までをまとめたことと、このアイディアが研究の肝となり、冒頭に書いた通り学会でも評価していただけました。
研究室で引き継いで研究を進め、いつか完成させたいと思います。

2021年3月31日 (水)

三上・兼松研の学生も無事卒業していきました!

2021年3月27日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部助教の兼松です。

先日の萩原先生の記事でも紹介されていましたが,八王子キャンパスでは19日に卒業式が行われました.三上・兼松研の卒研生たちも無事卒業していきました.
もう耳タコな話だとは思いますが,今年度の卒研は遠隔中心ということで,かなり例年とは違った1年になりましたね.ゼミや普段の研究を遠隔中心でやることについては,人それぞれ感じ方が違うと思います.
ふとしたときに研究室にいる仲間と話したりできないといったことはもちろん,仲間の様子をみてモチベーションを高めたり,何かしらの締め切りに対する危機感を抱くといったことが,例年よりしづらかったといったこともあったと思います.
そんな大変な環境の中,今年度の三上・兼松研の卒研生たちは,私が当初考えてたよりもずっと仲間とうまく協力しあって,例年の卒研以上に毎週こつこつと進捗を出せていたように感じます.

今の状況が落ち着いたとしても,おそらくは今年嫌というほど体験した遠隔でのやりとり,遠隔を取り入れた仕事・生活はより一層身近で,重要なものになっていくと思います.
卒業生のみなさんは,メディア学の学士として認められたわけですから,今後も自分の専門性としてメディアをうまく活用し,社会で活躍してくれると信じています.

また,私自身のこととしては,今年度は私自身が指導教員を務めた学生を初めて送り出す年になりました.
研究の過程では一波乱も二波乱もあり,今思えば私自身もうまく導いてあげられなかったと感じる部分もありますが,まだまだ教員としては未熟な私の考えをよく汲んでくれて,かなりの成長を見せてくれたと感じています.
卒業式後に研究室で学位記を渡すのも初めての体験でしたが,正直ちょっと泣きそうになったのは秘密です.

(文責:兼松祥央)

2021年3月27日 (土)

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